グラン・ゲリエ①
裂け目の発生から1週間が経過した。その間に、日本では今回の事案に関して下記の内容が発令された。
1
裂け目のことを今後、変わらず裂け目と呼称していく
2
裂け目に入ることのできる選ばれた人間を"攻略者"と呼称する
3
裂け目より出現した生物を"異界生物"と呼称
4
裂け目の制限時間が0になると裂け目が活性化し、異界生物が現れる
5
攻略者にのみ閲覧可能なカウントダウンタイマーの存在と、タイマーがゼロになった瞬間世界が終わる
他にも細かいこととかままあるが、世界全体がカウントダウンタイマーの存在を公にするとは思ってもいなかった。
そして俺は1週間経った現在、通常通り高校生としての生活を送っていた…とは言っても1週間ぶりの学校ではあるが。
なんか、やけに視線が集まってるな。なんでだ?
そんな疑問を抱えつつ、教室に入るとクラスのみんなが歓声を上げた。
「ついにきたぞぉ!我らが攻略者様だ!囲め囲め!」
「へ?何こってちょ!まじ何!?」
クラスメートは基本皆友達だが、ここまで囲まれると流石に引くな
「って!待て待て胴上げはやめろぉ!」
「詩音テメェ!攻略者になりやがって!うらやましいなちくしょう!てか俺の母さん助けてくれてありがとうな!」
今俺に向かってそう叫んできたのは中学からの腐れ縁である大村叶斗
「なんだと叶斗!てか俺お前の母さん助けたの?気づかなかった!」
「俺の親父と弟も助けてくれてサンキュウな詩音」
こちらは保育園時代からの大親友九条鏡夜
「鏡ちゃんの親父と弟は覚えてる!でっかくなったな弟くん!」
その他にもいろんな人が俺や俺を通して他のメンバーに感謝の言葉を伝えてきた。
なんてわちゃわちゃしてると、ホームルーム開始のチャイムと同時に担任の先生が入ってきて、俺含め全員怒られた。
「えー皆さん。いくら感謝していようが、いきなり胴上げはダメです。そしてチャイムは守ってください。」
「「「「はーい」」」」
先生はその後、俺に感謝の言葉を述べ、ホームルームを始めた。
普段はここで名簿を開き出席を取るが、なぜか開かなかった。
「それでは皆さんに一つ報告があります」
先生は何やら含みのある言い方をしてきた。
「本日、転校生がやってきます!」
歓声が起こった。
そして俺も喜びの声をあげた。
1週間ぶりの学校で転校生は嬉しさ倍増だ。
「しかも二人です!」
さらに歓声が上がった。
俺もさらに歓声を上げた。
「男女一人ずつです!」
さらにさらに歓声が上がった
俺もテンションが最高潮になった。
「さあ二人とも入って!」
入ってきた二人を見た瞬間、これまでの人生でいちばんの大声を上げた
いや、流石に1番ではないか……それでもトップ10には入る大声だ
「転校生を紹介します!氷川玲奈さんと夜刀雅さんです!みんな拍手!」
そう、玲奈とミヤビンが転校してきた。
⭐︎★⭐︎
「き、希望丘高校から転校してきました……や、夜刀雅です。み、見ての通り貧弱なのでその…いじめないで欲しいです」
「湘南台高校から転校してきました。氷川玲奈です。そこのエルぼ……詩音とはもうなかなかの関係です。これからよろしく」
二人は二人らしい挨拶をしたのち、なぜか空席だった俺の両脇の席にスッと座った。
…………おいおい
「おいおいおいおい!待て待てお前ら!なんで転校してきた!」
「え?だって……日足さんが攻略の情報共有を円滑にするために日足さん以外の攻略者を全員一箇所にまとめたいって言うから」
「あ、あとね。日足さんが詩音くんの家広いし部屋たくさん余ってるから住んじゃえって言うから」
「私たちは親の許可取ってるよ。てか私は親に無関心貫かれてるせいでなんも言われなかったし」
あー頭の処理が追いつかん!つまりなんだ!?
「全部日足さんが悪いのか!?」
まぁそんなこんなで、新たに攻略者本部となった我が家には4人の居候が転がり込んだ。
⭐︎★⭐︎
浅羽家の住人が5人になってから1週間が経過した。
「お前ら起きろぉ!遅刻するぞぉ!」
浅羽詩音はこの上なく楽しんでいた。
なぜか、そう。彼には他者との生活自体が久しい物であるため、わちゃわちゃした日々が楽しくてたまらないのだ。
「うぅぅ。あと30分……って痛ぁ!何すんのエル!何も叩くことないじゃない!」
「うるせえ玲奈!ってあ!カイチョー二度寝するな!ミヤビンを見習え!もう起きて朝飯の準備してくれてるぞ!」
「おう詩音!プロテインが無い!買ってくる!」
「待てほむっさん!あんたの愛用プロテインはこの辺だと近所のスーパーにしか売ってない!まだオープンしてないぞ!落ち着けええええ!」
とまあこんな具合で、俺の喉はそろそろ潰れそうです。そしてこんな日に限って……
「しおーん!朝ごはん持ってきたよー。なんか賑やかだね!カイチョーあたちとのゲームが盛り上がってるのかな?」
ゲッ、なんで今持ってくる黒百合!退院したの昨日だろ!
なんてあたふたしてると、昔渡した合鍵を使い家に入ってきた音が聞こえて18秒後、下階から甲高い女性の叫び声と甲高い男の声、図太い筋肉の叫び声が鳴り響いた。
「な、なるほど…ね?つまりこの人たちは攻略者の人たちで、連絡を極力円滑且つ迅速に進めるために共同生活してる…と?」
「そうだよ黒百合ちゃん。私たちは詩音と助け合って、日々を生きているのです」
「おい待て玲奈。お前に関しては助けてばっかで助けられた覚えがないぞ」
「詩音はちょっと黙ってて」
なんて押し問答をしてるうちに、朝食の準備をしていたミヤビンが完成したよと告げながら、合計6枚のプレートを持ってきた。
夜刀雅特製朝ごはん
1st
近所のスーパーで昨日の夜20%オフになってた今日が賞味期限のパンを使ったトースト
2nd
元々冷蔵庫に入ってたベーコンをカリッと焼いたカリカリベーコン
3rd
家庭菜園で採れた新鮮なトゥメイトゥ
4th
ジャム各種と特売で買ったバター
5th
各種ドリンク
以上が、本日の朝食です
黒百合を加え、計6人で今日の攻略について話し合う時間が始めた。
「とりあえず今日も普段通りのパーティーで行く?」
「流石に少し変えない?俺たちスキルが3人とも独立しすぎて連携もクソもないんだけど」
「俺たちもだ!リーダーのスキルは多分詩音と組むのが1番じゃないかと思うぞ!」
「ぼ、僕は炎堂寺さんとならいい感じに攻略が進められる気がするんだ。あ、あと、肉体変化系のスキルと僕のスキル効果の反応も見たいから」
「私は変わらずエル坊と組む。今はまだ連携がきついけど、オールラウンダーのエル坊に合わせて援護できるようになれば他にも活かせる気がするし」
「攻略って言ってもいろんなパターン試してるんだ。私もなんか手伝おうか?事務作業とか、雑務とか」
わちゃこちゃむちゃぺちゃしながら朝食を済ませ、5名は学校に、1名は自身が経営するジムへと向かい浅羽家を後にした。
登校中、突如として全世界の人間に新たなメッセージウィンドが現れた
<メッセージ>
第1章ゲームスタート"2ndクエスト"
裂け目の攻略
裂け目を合計1万回クリアせよ。これは世界共通のクエストである。
クリア報酬
コインショップのラインナップ増加
失敗条件
制限時間切れ
残り時間
ー07:23:59:59ー
新たなクエストが始まった。
「裂け目を1万回クリア……しかもあと8日しかないよ」
黒百合がそう口に出した。
そう、あとたったの8日だ。一つの裂け目をクリアするのに時間と精神力、命をかける必要がある。
そんな中世界全体で1万回も裂け目をクリアしなくてはならない。
もしかしたら俺は…俺たちは、
「もう普通に生きていくことは不可能かもな」
カイチョーが口にした。俺・玲奈・ミヤビンの3人が考えたことを。
「とりあえず、しばらく学校はお休みだね。雅、学校に連絡ってできる?」
沈み出した場の空気をよくするために、玲奈が手を叩きながら明るく口にした。
「りょ、了解。……………あ、も、もしもし。2年18組の夜刀雅です。あ、せ、先生方も確認してましたか。その件なのですが…あ、出席停止扱いにしてくれるんですね。あ、ありがとうございます。し、失礼しました」
よかった。とりあえず学校の方は大丈夫そうだな。
「黒百合お前だけ先に行ってろ。言い方あれだがお前は一般ピーポーだ。邪魔になる」
カイチョーはそういった。
あえてそう言ったように俺は思う。俺だってそう言うと思う。
だってあいつは同じ学校で、幼馴染で、お隣さんの仲良しだから。
「わかってるよ会長。でも、私も何か………!」
「死んでほしくないんだ黒百合。君は俺の大切な人だ」
俺がそういうと黒百合はわかったと言い残し、一人学校に向かって歩き出した。
俺たちはその場で日足さん・ほむっさんに連絡をとり、仮本部の我が家に再び集合した。
日足さんは時間がないと前置きをしつつ現状について話し始めた
「現状、各国首相らとのリモート会談の結果、攻略者に関する世界法案は通りつつある。そして、急遽始まったこの“クエスト“は連絡の取れる国の攻略者は攻略にあたり出したそうだ。我々も動こう……と言いたいところだが、緊急性を要する事案だ。未だ攻略に参加したことない私が参加しても足手纏いだろう。大人しく法案等についてを進めさせてもらう。」
「了解だ日足。俺たちは5人全員で裂け目の攻略にあたる。詩音・玲奈・俺のパーティーと、雅・炎堂寺のパーティー、この二つで行くぞ。俺たちは右側、炎堂寺たちは左側を頼む」
「「「「了解!」」」」
⭐︎★⭐︎
「おいマスター!展開はまだか!?」
炎堂寺以上の屈強な体躯を持ち、光に美しく反射する銀色の髪をもつ男が、巨大な異界生物の尻尾を受け止めながらそう叫んだ。
「黙れ豪山!僕に指図をするな!」
マスターと呼ばれた男は、ゲームに出てきそうな魔法使いのローブを身に纏い、先端にカラフルに輝く球を装着した杖を握っていた。
「避けろ豪山!大地の歴史よ!今ここに権限せよ!隆起する大地!」
マスターがそう叫んだ瞬間、豪山はすぐに異界生物の尻尾から離れた。
次の瞬間、豪山が立っていた地面が隆起し、異界生物の尾を貫いた。
「ナイスマスター!第一スキル!《豪傑》偉大なる戦士!」
尾を貫かれ、その場から移動を制限された異界生物は突如数倍にまで膨れ上がった豪山の腕力に頭蓋を粉砕され、生命活動を停止した。
「マスター。もっとスキルの展開早くしてくれよ。俺結構ギリギリだったんだけど」
「黙れ豪山。僕の動きは完璧だ。むしろ耐えられない貴様の方に問題がある」
「へいへいそうですか。流石1000年に一度の大天才様は違いますねえ」
そう言いながら裂け目の内部を進む二人。
彼らが詩音らのゲーム仲間にして、神奈川県内にいない残りの二人
“豪山“と“マスター”である。
豪山:レベル11
マスター:レベル12
帝宮アリス
性別:本人は男と言っています。「俺は男だ!」
年齢:18歳
趣味:読書とゲーム、雑魚の蹂躙(ゲームの中でだぞ)
スキル:聖剣降臨
詩音らの通っている学校の生徒会長。気さくで誰とでも分け隔てなく接することから、学校全体の人気は高い。
最近の悩:スキルの名前がFPSの略称・アイス・パンとコートという、なんかまったく別の物を連想できてなんかやだ
現在の神奈川県内攻略者の中では最強だと自負している




