初手からダンジョンかよ…
「もしかして君、風魔法が使えるの?」
銀髪ショートの、半袖半ズボンで小手を付けた美少女が俺に話しかけてきた。
俺が戸惑っていると、少女は俺のステータスをじっくりと見て、こう呟いた。
「君…無職って…まだ決めてないんだ。あと、レベル1って……駆け出しなんだね。ただレベル1にしてはステータスが高いね。あと鑑定スキル持ちね…。それに…悪臭、悪食、空気操作…聞いたことないスキルだ」
少女がステータスをタップしようとしてようやく俺は気を取り直した。
「君…誰?」
なんだ?このさらっと列に横入りした少女は?
「ああ、自己紹介がまだだったね、僕はマヤ・ライヘム、魔法使いだよ。それより君、風魔法みたいなスキルが使えそうだよね!「空気を自由自在に操れる」ってあったし」
少女は朗らかにそう言った
「うん、まだ使ったことはないけど」
「それじゃあさ…僕と臨時パーティーを組んでみない?」
「えっ…なんで?」
いきなりどうしたんだ?この子は?
「ずっと風魔法が使える人を探していたんだ。代わりに君のレベル上げを手伝うよ!レベル103の僕がね!」
少女はそう言うと、どこからか金色のカードを取り出した。
マヤ・ライヘム A………
この子がレベル103って……けど、カードにもAって書いてあるから……多分本当だよな。
しかも、レベル上げを手伝ってくれるのはいい条件だし、色々とこの世界の常識を教えてもらいたいから、断る理由がないな。仲間がいたほうが安心できるし、何より楽しそう。
「俺の名前は小林敬斗です。初心者なので、色々教えてくれると嬉しいです。これからよろしくお願いします!」
「コバヤシくんね。あと、そんなかしこまらないでよ。君には僕からパーティーを組んでほしいって言ったんだから」
「うん、分かりまし…、分かった」
「じゃあ、行こっか、付いてきて!」
そう言われ、俺と少女はギルド付属の食事処に歩いていった。
■ □ ■ □ ■
ギルド付属の食事処で、俺は朝食に黒パンと野菜スープを頼んだ。
黒パンは硬かったが、野菜スープは薄いけど優しい野菜の甘味がしてまあまあ美味しい。
食事を取りながら、俺は少女に冒険者の基本知識などを聞いていた。
「冒険者がランクを上げるには、沢山の任務を成功させるか、危険な任務をいくつか成功させる必要があるんだよ。ちなみに、僕はソロでAランクまで上り詰めたんだよ!」
「Aランクって、どれくらい凄いんですか?」
「Cランク以上で中堅冒険者って言われるようになって、生活はかなり楽になる。Bランク以上が上級冒険者とされてて、Cランクよりもずっと数が少ないよ。Bランクに留まる人は少なくて、大半が死ぬか、Aランクに上がるよ。Sランクは…僕が目指してるランクだね」
じゃあ、マヤさんって上級冒険者の中でも上澄みの人なんだな。
「そうなんですか。あと、俺の職業って何にしたほうが良いと思いますか?」
俺の職業…魔術師とかやってみたいな。
「うん、コバヤシくんは俊敏性以外のステータスが大体同じ位だし、斥候がいいと思うよ。」
斥候か、なんか格好よさそう。
「じゃあ、どうやったら斥候になれるんですか?」
「どうって…斥候として行動したら斥候になれるでしょ」
ああ、そういうもんなんだな。
「分かりました。じゃあ、武器は何がいいですか?」
「片手剣がいいよ。君の俊敏性を活かせるからね」
片手剣ね。武器を売ってるところか…、武器屋ってどこにあるんだ?
質問ばっかりになるけど、仕方ない。
「武器屋ってどこにあるんですか?」
「このギルドの近くにいいお店があるよ。今から案内するよ」
そう言って、俺たちは冒険者ギルドから出た。
■ □ ■ □ ■
「ここだよ!じゃあ入ろっか」
武器屋は冒険者ギルドから歩いて2分位のところにあった。
中には様々な武器がジャンル別で分けられていた。
一際目を引く、丁寧に飾られたバスタードソード、何本も並べてあった槍、大きなハンマーや色々な形のメイス、大型のナイフ、弓や弓の弦、とにかく沢山の矢、そして様々な長さの片手剣があった。
「親父さん!初心者でも扱いやすい片手剣を一本見繕ってよ」
少女はカウンターにいる厳ついスキンヘッドのおじさんに声をかけた
「まさかこの街で初心者向けの片手剣を見繕うとはな…」
スキンヘッドのおじさんはそう呟きながら、少女に片手剣を渡した。
「これが俺の勧めだ。かなり軽い上に切れ味がいい。俺の弟子の自慢の一品だ。」
俺は少女から片手剣を受け取った。
「思っていたより軽いな。しかも握りやすい」
「あんたの手の大きさには、これくらいの太さが合うと思ってな。どうだ?気に入ったか?」
「はい!いくらですか?」
「鞘付きで10000モルだ。この質にしては相当安いぞ?」
「えっ………、これより安い品ってありますか?」
「あるにはあるが……、初心者向けとは言い難いぞ」
横を見ると、少女は「逆になんで買わないの?」と不思議そうな顔をしていた。
俺は、ただ黙っていた。
これを買えるお金がないんだよ。
俺が親父さんにそのことを言い出そうとしたその時、
俺の様子から何かを感じ取ったのか、マヤさんが俺の代わりに金貨1枚を差し出していた。
「親父さんっ。これください!」
俺って、年下に武器奢られるような奴なんだな…
「毎度ありっ!おまけに初心者向けに片手剣について色々教えてやるよ」
そうして、俺は片手剣の振り方や、手入れの仕方について教えて貰った。
武器はマヤさんの「アイテムボックス」に入れてもらっている
マヤさんが、買って貰った片手剣をどこかに消してしまった時は驚いたが、彼女曰くそれは「アイテムボックス」
の中に入れているのだという。
そのスキルは持ってる人が稀で、レベルが上がった時に運良く身につけた人と、生まれた時から使える人がいるという。ちなみにマヤさんはレベル32になったときに身についたそうだ。
あと、「アイテムボックス」に入れている荷物の重さは感じないらしい。
羨ましいな。そんな実用的なスキル持ってて。
■ □ ■ □ ■
俺達は武器屋を後にして、マヤさんの指示で市場まで向かっていた。
「いい買い物したねぇ。コバヤシくん。君が買ったやつ、あの値段にしてはかなりいい得物だよ。この街ではもっと質のいい得物を買う人がほとんどだから、売れ残ってたんだろうね!」
そんなことを言われながら、俺はまだマヤさんに借りたお金のことを考えていた。
「マヤさん、さっきは本当にありがとうございました」
「いいよいいよ。僕には簡単に稼げる金額だからね」
マヤさんがさらっと言ったその言葉は、俺の心にさらなるダメージを与えた。
「そういえば、マヤさんはどんな職業で、どんな武器を使うんですか?」
「職業は魔法使いで、使う武器はナイフだよ」
そう言ってマヤさんは腰に手を当てた。
そこには鞘に入ったナイフが付いていて、その大きさは25cmほどに見える
俺の知ってる魔法使いと全然違うよ…使う武器って杖とかじゃないの?
「あと、なんでそんな風魔法が使える人が欲しかったんですか?」
「それはねぇ、僕のスキルに関係してるんだよね。まあ、明日ダンジョンで教えるよ!」
えっ?俺たち明日ダンジョンに行くの?
それに、会って翌日に入って…実力とか分かってないのに大丈夫なの!?
「待って、俺ダンジョンに行くこと止められてるんですけど…」
「大丈夫、僕、なんと蘇生魔法が使えるから!」
凄いっていうのは分かるけど…、そういう問題じゃない。
「それに、コバヤシくんって、僕からお金借りてるでしょ。ダンジョンで稼いだらすぐ返せるよ!」
うわっ!この子恐っ!
「じゃあ、俺のこと絶対に守ってください!頼みますよ!」
「言われなくても、ようやく見つけた風スキル持ちなんだし、絶対に守るよ!」
そのようなことを話しながら、俺たちは市場にたどり着いた。
「そういえば、市場で何を買うんですか?」
「ダンジョンの中での食料だよ!とにかくたくさん買わないとね。」
えっ?そんなに長い間ダンジョンに籠もるの?
「どうしたの?……ああ!水については心配しなくていいよ!僕水魔法使えるから」
俺がそれだけ心配そうな顔をしていたのか、マヤさんは俺にそう言った
ただ…そういう心配じゃないんすよ
「あと、ここでは塩漬けの干し肉を一塊、黒パンを7日分、リンゴ2個を買うよ!」
何故にリンゴ?
あと…7日ダンジョンに籠もるの確定ですか…
そろそろ風呂に入りたかったんだけど…
そういえばこの世界に風呂ってあるの?後で聞いてみるか。
「じゃあ、まずはあの店だよ!」
そうして、俺らは市場で明日の食料を確保した、
■ □ ■ □ ■
「いやぁ、干し肉がかなり安かったね。思ったよりたくさん買っちゃったよ」
俺たちは市場で黒パン、リンゴ、干し肉の順に買い、彼女のアイテムボックスに入れてもらっている。
合計で4880モルしたが、その分の代金は俺が支払った。
今のうちに少しでも返しておかないとな。
ちなみに、俺たちは今市場で昼食を食べている。
早速黒パンと干し肉を食べたが、味は酷かった。
黒パンはなぜか酸っぱく、硬かった上にボソボソしていた。水で戻した干し肉はとにかく硬くてしょっぱく、噛めば旨味はあったが、昔食べたビーフジャーキーとは大違いだった。
それでも、マヤさんに出してもらった、浮遊してる水玉を飲んで、どうにか流し込んだ。
俺が昼食を食べ終わった後、マヤさんは今から俺と彼女の分のポーションを買いに行くらしい。
俺も彼女と一緒に薬屋まで行った。
[下級ポーション]
一本3000モル
[中級ポーション]
一本10000モル
[上級ポーション]
一本20000モル
[毒消しポーション]
一本20000モル
[魔力回復ポーション]
一本5000モル
もう…何なんだろう。
「買わないという…選択肢は?」
「毒にやられたり、酷い怪我したときに後遺症が残っていいんだったらね」
そう言うと、マヤさんは俺に笑いかけた。
そして、店員さんに流れるように金貨5枚を渡し、上級ポーション1本、毒消しポーション1本、そして彼女の分の魔力回復ポーションを2本受け取った。
俺って…なんて惨めなんだろう。
買い物が終わった後、マヤさんは俺の耳元で小さく、
「君のレベル上げのためだからね。ちゃんと返してよ」と微笑みながら囁いてきた。
マヤさん、怖いです。
背筋が冷える感覚を覚えながら、俺たちは薬屋を後にした。
■ □ ■ □ ■
「じゃあ、ダンジョンに入る前に僕は銭湯に入ろうかな。君はどうする?」
「銭湯って、いくら…ですか?」
「そんな心配しなくても大丈夫、1000モルだよ。それに何かあったら貸してあげるから」
1000モルか…昨日の宿を借りても300モル余るな…
風呂にはすっごく入りたい。ただ、夜食代が…
そう悩んでいると、マヤさんがいきなり歩き出してしまった、
はぐれてはまずいと思い、俺はマヤさんに大人しくついていった。
■ □ ■ □ ■
「ここが銭湯だよ。銭湯から出たら、銭湯の前で待っててね」
そう言われ、俺も心を決め、俺たちはそれぞれ銭湯に入った。
3日ぶりの風呂、最高だったよ。
異世界転移する前日も朝風呂に入る予定だったから、風呂には入れていなかったんだ。
ダンジョンの中では風呂に入れないだろうから、これが入り納めだと思って…
俺は、銭湯の中で寝落ちしていた。
「君、流石に酷いんじゃないの?金を借りた相手をこんなに待たせるなんて…」
「返す言葉もございません。本当にごめんなさい」
マヤさんは、無表情で俺を叱りつけていた。彼女の俺を見る目は冷たかった。
彼女が痺れを切らし、店員さんに俺を呼んできてもらうまで、俺は湯船の中で眠りこけていた。
辺りはもう薄暗くなっていて、かなりの時間彼女を待たせていたのだと分かる。
中学生くらいに見える少女に2回も大金借りて、迷惑かけてる俺って…
虚しくて恥ずかしくて、説教中何回か泣きそうになったよ。
「まあ…今回は僕が君を銭湯に連れてきたのもあるし…これくらいにしとくよ。ただ、次はないからね」
ひとしきり叱られた後で、マヤさんは怒りの矛を収めてくれた
「とりあえず、もう君の注意力は信用できない。これからは常に僕と一緒に行動するよ。ダンジョンで君から目を離したら、君すぐ死にそうだからね!!」
いつもこんなことするわけじゃないんだよ…って言っても、マヤさんは信じてくれないだろう。
俺のことを、初日から仲間を長時間待たせるような奴って思ってるだろうしな…。
というか…「これからは」って…宿も同じってこと?
「えっ、宿とかはどうするんですか?」
「宿も同じに決まってるでしょ、君寝坊とかしそうで不安だし」
…待って、それはまずくない?
「えっ、気にしたりしないんですか?」
「大丈夫、そっちのほうが節約できて、君にもいいでしょ?」
「えっと、そういうことじゃなくて」
「うん?……ああ、そういうことね。それなら大丈夫。君相手ならどんなハンデがあっても絶対に負けないよ。…あと……そんなことをしようとしたら、流石の僕も手加減はしないよ」
そんな冷静に分析しなくていいです、虚しくなるから。
「マヤさんって強いんですね…」
「そうだよ!Aランクの中でも、かなり上の方だと自負してるよ!」
そんな強い人にパーティー組んでもらえて良かったよ。
「じゃあ、僕の借りてる宿まで行こうか!」
そうして俺たちは、マヤさんの借りてる宿まで向かった。
■ □ ■ □ ■
「明日起きたらすぐダンジョンに向かうからね、早めに寝ておくんだよ」
俺たちが宿に着いた後、マヤさんは俺にそう伝えた。
彼女が借りた部屋は大部屋で、食事付きで1泊6000モルだった。
「僕も稼げるようになるまでは馬小屋泊まりだったなぁ」
マヤさんはそうしみじみと呟きながら銀貨6枚を出した。なんかもう…虚しい。
ちなみに、夕食はこの世界定番の野菜スープと黒パンで、やっぱり黒パンは固く、野菜スープは薄味だった,
あと食後にマヤさんが歯磨きをしているのを見ていたら、俺に新しい歯ブラシを1つくれた。
歯ブラシは何かの動物の毛でできていて、意外と丈夫そうだった。あとハーブ入りの歯磨き粉も使わせてもらったよ。
歯磨き粉は文字通り「粉」で、口に水を少し含んで使った。マヤさん曰くどちらも高級品で、薬屋で売っている物らしい。
壊さないよう丁寧に使わないと…。
■ □ ■ □ ■
部屋に入ったあと、マヤさんは明日行くダンジョンについて説明をしてくれた。
「レイヘムのダンジョンは14階層ある高難易度のダンジョンだよ。難易度が高い分、宝箱とかが豪華で、買取金額がいい魔物がよく出るんだ〜」
「高難易度って…どれくらいですか?」
「ギルドの推奨は、Cランク以上の冒険者だね。」
「俺、Fランクなんですけど… 」
「大丈夫!僕がいるから!」
そう言い、彼女はそれぞれの階層に出る魔物について話してくれた。
「1階から3階まではとにかく沢山のコボルトリーダー、ゴブリンリーダーとオークリーダーが出る。あとその進化先が少しだけ出るね。僕たちはここを2日間かけて攻略するよ」
「初手からリーダーって付くやつかよ…レベル1の無職が来ていいとこなんですか?」
俺、真剣使うの今日が初めてだぞ、あと戦闘をするのも人生初なのに…
「大丈夫だよ!僕は敵を見つけ次第無力化するから、君は急所を攻撃するでだけいいよ!」
じゃあ俺本当に役に立てないじゃん、荷物も全部持ってもらってるし。
「次に、4階ではオーガとレッドオーガが出るよ、たまにその進化先も出る。こいつらがドロップする革と魔石は高く売れるし、経験値も美味しいから、ここにも2日滞在して、5階まで行くよ」
「5階には…上げてったらきりがないんだけど、グリーンサーペント、フォレストスコーピオン、ポイズンリザード、ホワイトポイズンキャタピラ、レッドキラーワスプ、そして…ポイズンアナコンダとかの、毒を持った魔物が目白押しなんだよね…。君がいるからこの階層はすぐに抜けるよ!」
マヤさんが毒消しポーションを買ったのはあれが理由だったのか!
でもそれだったら1本で足りるのか?俺多分すぐ油断して毒食らうぞ、
「毒消しポーションって、たった1本で十分なんですか?」
「うん!僕解毒魔法使えるから!」
「それなら毒消しポーションを買う必要あるんですか?」
「僕もホワイトポイズンキャタピラくらいの毒だったら魔法ですぐ癒せるけど、グリーンサーペント位即効性の毒になるとまずいからね。すぐに対処しないと、その部分が腐っちゃうんだよ」
そう言って、彼女は自分の付けてる左手の小手を外して見せた。
その腕は手首から肘にかけて、酷い火傷を暗い色にしたような見た目をしていて、所々赤いツヤがあった。
手首と肘の中央辺りには、2つの紫色の大きな点のようなものがある。
手首から先は、右手と比べて肌の色が赤みがかっていた。
その傷は彼女がまだCランクになりたてで、毒を消す魔法を覚えたての頃、自分の実力からすれば簡単な、蛇系の魔物の討伐依頼を一人で受けた時にできたのだという。
相手は猛毒持ちだが動きはとてと遅く、すぐに「勝った」と思ったらしいのだが、
「手負いのくせして、普段より素早い動きで左腕に噛みついてきてね………油断してたから結構深くまで噛まれちゃったよ」
すぐに魔物の首を落として応急処置をしたから、腕の機能は問題ないらしいが…
それから彼女は小手を買い、両腕に付けるようになったのだという。
「もしもう一度あいつとやりあえたら、あいつの口を地面に縫いつけて、さんざん踏みつけてやるのに…」
彼女は、苛立ったような目をしながらそう呟いていた、怖いです。
「それだけじゃなく、魔力はなるべく温存したいからね」
「ああ、そういう意味もあるんですね」
というか、彼女と同じように、俺も小手買えば防御に使えるんじゃないかな…
「俺も小手買えないかな…」
「これオーダーメイドで、ミスリル合金のプレートが埋められてあって、布はジャイアントメタルスパイダーの糸を編んだもので、合計250000モルもしたよー。それでも買える?」
へ?
250000モルって…小手一つに…俺が買ってもらったの剣25本分…だよな
俺が理解できずに唖然としている間にも、彼女は呑気に「あの頃の自分にとってはすごく大きい買いものだったな〜」などと言っている。金持ちって怖いな…。
「まあ、初心者が「身の程に合わない防具」を買っちゃうと、それに依存するようになっちゃうから、お金が貯まっても当分買わない方がいいよ」
「そういうもんなんですね…」
「まあ、5階層の敵なら、僕が警戒しておけばまず噛まれないで倒せるから大丈夫。次に、6階層はガーゴイルとトロル、そして…ストーンゴーレムが出るよ。僕たちはゴーレム相手には魔法くらいしか対処法がないから、この階層もすぐに抜けたいね」
彼女曰く、ゴーレムは物理攻撃に弱く、倒すなら、ウォーハンマーやバスタードソードなどを用いるのが定石らしい。
彼女もそれらの武器を使うことはできるらしいのだが、あまり得意ではないらしい。
「そもそも、ただのゴーレムを必死になって倒しても魔石くらいしか落とさないからね…。しかもあいつら相当厄介だし…。あんま魔石落とさないし…。僕も沢山のゴーレムを時間かけて倒したのに、魔石を7個しか落とさなかった時は泣きそうになったよ」
そのような理由から、ゴーレムは冒険者から親の敵のように嫌われている魔物だという。
なんかもの凄くタチの悪い魔物なんだな…関わりたくない。
「とにかく、僕たちはすぐにそこを抜けて7階層に行くよ。7階層にはゾンビ、スケルトンたちがたむろしてる。ただ僕、あいつらの相手は結構得意だからね。ここで7日目までレベル上げして、エレベーターを使って引き上げるよ」
なんか聞き慣れた言葉があった気がするんだけど…
「エレベーターって…人を引き上げる装置のことですか?」
「よく知ってるね!ダンジョンのエレベーターは宝石とか価値があるものを使うと動かせるんだよ。ダンジョンに入った後は、エレベーターを使わないと帰れないんだ」
「それでね、手に入れた素材の大体2割を支払えば、ダンジョンから抜けられるよ」
「ただ、仲間に怪我人がいたり、武器が壊れてたり、水や食料が尽きてたりすると、払わなきゃいけない代金は一気に跳ね上がるね。例えば、一刻を争う大怪我をした仲間が居たりすると、命以外の全て置いてかないと出られなかったりもするんだよ」
「命以外の全てって…」
「持ち物全部、ダンジョンで手に入れた魔物の素材も、なんなら服や、……下着すら置いてかないといけなかったりする……」
真っ裸にさせてダンジョンの外に追い出すって…
あと、逆に言えば、下着を置いていったらエレベーターが使えたことがあるってこと…だよな。
もしかして…ダンジョンって変態なのか?
「ダンジョンってそんな狡い一面もあるんですね…」
「ただ、エレベーターとかセーフゾーンの中とか、階層の合間の階段とかでは絶対に僕たちに攻撃はしてこないよ」
「何でですか?」
「そんなことしたら、冒険者がそのダンジョンを信用しなくなって、ダンジョンに誰も来なくなっちゃうからね」
「それって…どういうことですか?」
「ダンジョンはね、ダンジョンに入ってきた人間の排泄物とか死体とか、装備品とかを吸収して成長するらしいんだ。だから魔物を生み出したり、罠を作ったりするんだよ。ダンジョンの中に宝箱があったり、人間にとって有用な素材を落とす魔物が多いのも、人を呼び寄せるためらしいんだ。セーフゾーンの中にお手洗いがあるのも、人間の排泄物が目的だって言われてるよ」
排泄物や死体で成長して、宝箱とかドロップ品とかでエサを呼び寄せるって…なんだか食虫植物みたいだな。
あとトイレはあるのか…そこは安心した。
「それでね、この世界には沢山のダンジョンがあるんだけど、それらのダンジョンの間には暗黙の了解があって、エレベーターとかセーフゾーンの中とか、階層の合間の階段とかでは魔物も罠もないんだ。もしどこかのダンジョンがそれを破ったら危険なダンジョンって思われて、誰もそのダンジョンに来なくなるでしょ?」
その理屈は納得できる。ただ…
「それならなんでゴーレムがダンジョンに出るんですか?」
「…………言われてみれば、まあ…。…多分予算不足なんじゃない?ゴーレムなんて砂だけだから1番作るの楽そうだし、ドロップ品として回収される部分も少ないからね。まあ、そこはダンジョンの匙加減だと思うな」
そういうもんなのか。
「とりあえず、もうそろそろ寝るよ。僕はこのベットで寝るから、君はダンジョンでの練習も兼ねて、床で寝てみてね。毛布は僕のを貸すから」
え?まぁ、この宿代出してくれたのはマヤさんだし…
「一緒のベットに入れさせてくれたりは…」
「調子乗って勝手にベットにに触り次第、拘束して股間に凍結魔法かけて、それを砕いてやるからね」
ダメだったか…
もちろん、ただベットで寝たいだけだ。美少女と一緒のベットに入りたかった気持ちなんて微塵もない。
訂正する。少しは…ある。
ただ、それは去勢されてまですることじゃないな。
俺は大人しく彼女に毛布を貰い、上着を枕にして横になった、
■ □ ■ □ ■
「体が…ガッチガチだよ」
俺は今、寝る前より確実に疲れが溜まっていて、なんなら背中に痛みすら感じる
昨夜、早いうちにこれは眠れないと感づき、マヤさんに助けを求めたとこまでは良かった。
魔法使いって言ってたから、睡眠魔法とかも使えるんじゃないかって…その予想は当たっていたんだ。ただ…
マヤさんがノータイムで睡眠魔法を掛けてくるなんて、思いもしなかったよ。
当然俺は受け身も取れず、そのまま床に倒れた。
睡眠の姿勢も床に倒れた時のままなので、俺は結局脳に溜まった疲れが癒されただけで終わった。
「ああ、体が痛い…」
「ごめんね。ただ君あの魔法が無かったら寝れなかったんだし、昨日君も僕を待たせたから、これでおあいこだね?」
「………はい。あと音だけで俺の場所を見ずに魔法を当てられるなんて…本当にすごいですね」
そう、昨日彼女は、こちらを見もせずに、人差し指を俺に向けて睡眠魔法を掛けてきたんだ。
彼女が「君相手ならどんなハンデがあっても絶対に負けないよ」と言ってたのは正しかったんだな。
「うん。目と耳もかなり良い方なんだよ」
Aランクでこれなら、Sランクってどんなに強いんだろ…
「じゃあ、朝ご飯食べに行くよ〜」
そう言われ、俺は宿の1階に降りた。
ちなみに朝ご飯は黒パンとサラダと鳩肉のスープだった。
朝ご飯を食べ終わった後、俺はマヤさんと共にダンジョンまで向かった。
■ □ ■ □ ■
「これが…ダンジョンか」
今、俺たちはダンジョンの前にいる
ダンジョンの入口には壁の入口と同じように、屈強な門兵が2人いて、受付もあった
「またあの受付嬢さんいるよ…これもう運命だろ」
何個バイト掛け持ちしてるんだろ…
そんなことを考えながら、俺たちはダンジョンの受付待ちの列に並んだ。
体感で10分ほど待ち、ついに俺たちの番となった
「あら、お久しぶりです、たしか…名前は…」
「コバヤシです」
「あなた…冒険者だったんですか。それなら…あの草原を抜けてもおかしくはないですね」
「……この街で冒険者になったんですけど…」
受付嬢さんが気の抜けたような表情をするのを傍目に、俺達は配られていた用紙の質問に答えていった。
■ □ ■ □ ■
「じゃあ、ダンジョンに入るよ!」
ダンジョンの入口自体はちょうど思ってたほどの大きさだった。
石でできた小さめのピラミッドのようなものがあり、その周りの地面が石になっている。
ピラミッドにある入口の横幅は、門兵の持ってる槍3本分くらいで、大体5mくらいだと思う。高さも同じくらいだ。入り口の奥には、石でできている階段が見える。
俺はマヤさんに続き、ダンジョンに入った。
■ □ ■ □ ■
入り口の奥の階段を降りてすぐのところに、一階層への入り口はあった。
階段は思っていたほど長くはなく、学校の一階分の階段と同じくらいの段数だった。
「ここから先がダンジョンだよ。中に入ってからは、絶対に、僕より先に歩かないでね」
今俺の目の前には、紫色の壁がある。
マヤさん曰く、ここから先に進むと引き返すことはできないという。
「じゃあ、準備はできた?」
マヤさんは腕を伸ばしながら、俺にそう聞いてきた。
「はい、大丈夫です」
そう答えると、マヤさんは紫色の壁を通り抜けていった。
俺もマヤさんに続いて、壁を通り抜けた。
■ □ ■ □ ■
「引き返せないって、こういうことなんだな」
通り抜けた後、後ろに振り向くと、今通ったはずの紫色の壁はなくなっていて、代わりに行き止まりとなっていた。
今俺たちは高さと横幅が5m程の、四角型のトンネルの中にいる。壁には一定の間隔で松明が取り付けられていて、一定の明るさを保っている。
そして今、俺たちの目の前には3つの分かれ道がある。
というか…
「向こうにいる緑のやつって…」
中学2年生の男子くらいの体格をした、肌が緑色の魔物が4体ほどいた。
鑑定してみるか?
「あれがゴブリンリーダーだよ。まだ気付かれてはないみたいだね。あっちは行き止まりなんだけど…倒しに行こっか!」
そう言うと、マヤさんは赤黒く綺麗な刃のナイフを抜き、ゴブリンリーダーに向かって駆け出した。
「えっ、突撃!?」
俺がそう呟くよりも早く、マヤさんはゴブリンリーダーのすぐそばまで近づいていた。
小鬼がマヤさんに気付くと同時に、マヤさんは小鬼の手首を切り落とし、目を切りつけた。
マヤさんは、目を押さえた小鬼を思いっきり蹴飛ばし、空中にナイフを投げ、近くにいた小鬼の顔面に触れた。
その小鬼は反応する間もなく、地面に崩れ落ちた。
そしてマヤさんは落ちてくるナイフを掴み、逃げる小鬼との距離を一瞬で詰め、後頭部にナイフを突き刺した。
残った1体は、マヤさんに棍棒を振りかぶった。
マヤさんはその小鬼を見ると、体勢を低くして、脇の下を通り過ぎた。
小鬼の腕が床に落ち、脇から大量の血が出たと思うと、マヤさんは腕がなくなった小鬼の首に手を回した。
バキッ
何かが折れたような鈍い音がした後、マヤさんは小鬼の首を掴んで、頭を床に打ち付けた。
小鬼は大きく痙攣した後、動かなくなった。
まだ目を押さえている小鬼に向かってマヤさんはゆっくり歩き出し、目を押さえている左手を切り落とした。
小鬼が甲高い悲鳴を上げたと思うと、マヤさんは喉に向かってもう片方のナイフを突き刺して黙らせた。
「3体生かしてあるから、こっち来て〜」
返り血を一切浴びていないマヤさんは、俺にそう声をかけた。
マヤさんつよっ!怖っ!
俺は、床に倒れている小鬼と、異様に強いマヤさんに恐る恐る近付いた。
「早くとどめ刺さないと、僕の経験値になっちゃうよ?」
マヤさんにそう言われ、俺は片手剣をゴブリンリーダーの喉に突き刺した。
■ □ ■ □ ■
「うん、ちゃんと殺れたね」
俺がゴブリンリーダーたちにとどめを刺した後、マヤさんは俺にそう言った。
小鬼を仕留めた時、死体が地面に吸収されていき、上から小さい石のようなものが落ちてきた。
「これって…何?」
「それが魔石、魔物についていて、ダンジョンでは魔物を仕留めると落とすよ。ゴブリンは魔石しか落とさないから、まあまあ嫌われてる魔物だね。ただ、無駄に強いゴーレムよりは全然マシだよ。」
彼女によると、魔石は魔道具や魔力補給に使うことができ、かなりの需要があるそうだ。
「じゃあ、元の場所に戻ろっか。」
そう言われ、俺たちは元のルートへ戻っていった。
■ □ ■ □ ■
「どうしたんですか?」
探索を続けていたところ、俺の前を歩いていたマヤさんが急に立ち止まった。
「うん、あそこにあるね、数は…2つかな」
「何が2つあるんですか?」
マヤさんはその質問に答えず、そのまま前に歩いていった。
シュッ
マヤさんに向けて何かが飛んできたと思うと、それが地面に叩き落とされた。
「これ…矢!?」
地面には、2本の矢が転がっていた。
「うん、これで終わりだね。コバヤシ君、これがダンジョンの罠だよ」
「罠って…そんな物まであるんですか!?」
「うん、「僕の前を歩くな」って言ったでしょ?」
「それ、そういう意味だったんですね」
よくよく考えてみれば、ダンジョンに罠があるなんて、ファンタジーの定番だな。
「そうだよ!あと、罠の位置も頻繁に変わるから、一度通った道だからって安心はできないんだよ」
「じゃあ、まだ罠があるかもしれないんですか?」
「うん、ただ罠は階層ごとに3-4個くらいしかないから、気を付けてさえいれば大丈夫だよ!」
あと2-3個あるってことか。マヤさん、よろしくお願いします。
そうして、俺は歩き出したマヤさんについて行った。
■ □ ■ □ ■
「次からは、俺も戦闘してもいいですか?」
マヤさんはゴブリンリーダーに続き、オークリーダー、コボルトリーダーとも戦い、何度も生かしたまま制圧した。
ちなみに、オークは小さめの力士くらいの二足歩行の豚で、コボルトリーダーは獣人の獣度を強くして悪人顔にした様な見た目だった。
ちなみにドロップ品はそれぞれ肉と魔石、革と魔石だったよ。
俺も戦いを見ているだけではつまらなく感じ、戦闘に参加したくなった。
「いいよ、じゃあ、次の戦闘で、僕が風魔法使いを求めてた理由を教えてあげる」
そういえば、自分のスキルに関係してるって言ってたな…。
…スキルってどう使うんだ?
「あと、スキルの使い方が分からないから、使い方教えて欲しいです」
「分かった。今教えちゃうね」
「ありがとうごさいます!」
「まず、スキルを使うときには、自分がスキルを使う様子を想像する必要があるんだ。今、何か想像してみて」
想像する…か。
とりあえず、目の前にちっちゃい竜巻がある様子を頭に浮かべた。
今、目の前に…竜巻ができた気がする…
透明だからわかんないよ。
「うん、そんな感じだよ、君は竜巻を起こしたのかな?」
「うん、うまく行ったかは分かんないですけど」
そう言うと、マヤさんは俺に手を向けた。
「うんうん、いい感じだよ!ちゃんと竜巻になってる!」
ああ、成功してたんだ。これ次の戦闘で使うか!
「じゃあ、次の戦闘では僕のスキルも見せてあげるよ!」
一体どんな能力を持ってるんだろうな。
「ちなみにこれ、どう止めるの?」
「無風の状態を想像すればいいよ」
俺は竜巻を止め、マヤさんについて行った。
■ □ ■ □ ■
初めての実戦が、ボス戦になるとはね…
今、俺たちの前には大部屋が広がっていて、これまでより多くのゴブリンリーダー、オークリーダー、コボルトリーダーの群れがいた。
それぞれ8-9体ずつ位いて、立って周りを歩き回っていた。
「ここが一階層のボス部屋だよ。じゃあ、ここで僕のスキルを使うね」
そう言うマヤさんの手には、黒い霧のようなものが浮かんでいる。
「何ですか?これ」
「絶対に吸っちゃダメだよ!!!……猛毒だから」
じゃあ、マヤさんの手に浮かんでいるのは毒ガスってことか。
「じゃあ、マヤさんの言ってたスキルって、これを作り出すスキルのことですか?」
「うん!この空気を吸うと、どんな相手でも眠るように倒れてから死ぬんだよ。僕がAランクまで早くたどり着けたのも、このスキルとアイテムボックスのおかげかな」
吸ったら即死の毒ガスって、超凶悪だな。
「風魔法が使える人を探してたってことは……、これを遠距離攻撃に使いたいってことですね」
「ご名答!この毒ガスをここからあいつらの口元まで飛ばしてほしいんだ。このスキル強いけど、使い方間違えると自分にも影響出るからね!」
「……?、吸っちゃったことあるんですか?」
「直接吸ったのは一回だね。かなり気分が悪くなったよ」
マヤさんは毒に慣れているため、そこまでの影響は無かったらしい。
というか…マヤさんって、毒関連で痛い目にあってること多いな。
「じゃあ、やってみますね」
黒い霧がゴブリンの口元まで飛んでいく様子を想像した。
幸い、霧が黒かったから想像は容易かった。
「うんうん、いい感じいい感じ!」
今、霧はゴブリンの口元に飛んでいった。
霧を吸ったゴブリンが膝から崩れ落ちた。周りのゴブリンは、必死にあたりを見渡して、敵の位置を探っている。
次はあいつの口元だな。
■ □ ■ □ ■
そうして、俺は15体のゴブリンリーダー、オークリーダーとコボルトリーダーを仕留めた。
「ふふっ!やっぱり思ってた通り!これなら…どんなに強い魔物でも、遠くから殺せる!」
マヤさんがそんなことを呟いている。
「そろそろ毒ガスが薄まってきて、効きが悪くなってきたから、新しいの出してもらえますか?」
「これ、1日に1回しか作り出せないんだよね。ただ、これだけでもすごい成果だよ!残りのやつらは倒しちゃおうか。君はあのゴブリン2体を倒してね」
そう言うと、マヤさんは魔物に向かって駆け出していった。
「じゃあ、弱ってないゴブリンとの実戦と行きますか」
俺もマヤさんに続いてボス部屋に入っていった。
■ □ ■ □ ■
「ハァ…ハァ…なんか…強くね?」
俺が振る刃はことごとく避けられ、なんなら2体のゴブリンの攻撃を避けるので精一杯だった
マヤさんが無双する様子を見てたのと、強そうなスキルを手に入れて…俺調子に乗ってたな。
「空気操作…空気操作…」
俺はゴブリンの頭を周りの空気で潰す想像をした。
頭蓋骨の折れる鈍い音がして、ゴブリンの頭は血と肉の塊となっていた。。
「っしゃあ!まずは一体!」
じゃあ、もう1体も…
待て、余裕ができたから別の使い方も想像してみるか!
じゃあ…、空気を固定して、防御に使ってみるか!
そう考え、俺は自分の周り空気を固定した。
やべっ、動けない
俺はスキルを解除し、ゴブリンの攻撃を剣で受けた。
うーん………、どう使えばいいんだろう…、あっ、固定を敵に使えば…!
そう思って、棍棒を振りかぶったゴブリンの周りの空気を固定してみた。
「うわっ…その体勢でよく倒れないな」
ゴブリンは自分の体が動かないことに困惑しているようだった。
「コバヤシくん、すごいね…そのスキル…」
マヤさんが俺にそう呟いた。
良かった、結構強い力手に入れられて。
というか…いい倒し方…空気をドリル…いや杭みたいにしてみるか。
ゴブリンの顔の前に、空気で杭を作り、それを固定した。
「じゃあ、これを前に飛ばして、、、うん、うまく行った」
目の前には、額に穴の開いたゴブリンがいた。
「じゃあ固定を全部解除して…」
ゴブリンは重力に従い、前に向かって倒れていった。
「………、随分と凶悪なスキルだね。本当に自由自在に操作できるみたいだ」
マヤさんは俺にそう言った。
俺が魔物を2体倒すより先に、他の8体倒し終わってたあなたに言われたくないです。
俺たちは地面に転がっているドロップ品を拾い集め、ボス部屋の奥へと行った。
■ □ ■ □ ■
「これがセーフゾーンか…」
体育館ぐらいの広さで、両側の壁にはいくつかの扉があり、中央には太さ5mくらいの柱が立っていて、奥には下の階層に続く階段がある。
中には沢山の冒険者パーティーがいたが、意外と静かだった。
階段付近にはオーク肉とニンニクを使った屋台を出しているツワモノもいて、酷い飯テロを起こしている。
ちなみにお値段は…かなりのボッタクリだったよ。
「じゃあ、ここで半日くらい休憩して、次の階に行くよ」
俺たちは近くの空いてる場所に座った。
じゃあ、俺がさっき気になったことを試してみるか。
俺のスキルは何も、[空気操作]だけじゃないからな。
■ □ ■ □ ■
[空気の固定]………指定した部分の空気にかかる力に対して、等しい垂直抗力が発生するように想像すること。
これによって、その部分の空気は固定される。
二話です。
改善点があれば、ぜひ感想にて教えてください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




