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腐敗スキルで異世界グルメ!  作者: 柚子鮪


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1/5

草原での目覚め





「うわ、明るっ」 

いきなり眩しさを感じ、俺は咄嗟に布団を被った。

眠い目をこすりながら、布団を少し持ち上げる…

ぼんやりとした緑色

目を強めに擦った後布団を退かし、今度はしっかりと目を開けた。

………………

「なんだよ…これ」

目の前に広がる、見覚えのない青々とした草原の中、俺はそう呟いた。   


□ ■ □ ■


俺は小林敬斗、埼玉の男子校に通う帰宅部の男子高校生だ。

昨日はちょっと遅く起きて、朝ご飯食べて、バイト先に行って、賄いを食べて、家に帰って夜ご飯を食べて、ベットで寝た。特段おかしなことはなかった。 

なのに、俺は今…草原の中にいる。

「ベットごと草原の中って…」

寝ぼけているからか、パニックは起こさなかった。

「ドッキリ…か?」

いや、そんな大掛かりなドッキリを俺に仕掛ける人は思いつかないな。それに誰かが部屋に入ったら気付くはずだ。

もしかして………流石にないか?……………けどこの状況って……

「異世界転生?」

いや、この状況からして…どちらかといえば………

「異世界転移?」

あまりに非現実的なことが、今はやけに身近に感じた。

とにかく、こういう時はまず人に会うべきだよな……… 


■ □ ■ □ ■ 


ベットに立って辺りを見渡していると、「草原」だけではなく色々と地形があると分かった。

「よくみると遠くに森があるな、あと壁か?あれ」

俺が起きた時に見た方向にはいくつかの丘のようなものが見え、その反対側には森と灰色の壁があった。

草原にも傾斜があり、遠くには川も見える。

そして人工物であろう壁…その高さはそれほどだが、かなり大きく見える。

今は何か行動を起こしたほうがいいと思い、枕元にあるスマホをポケットに入れ、壁に向かって歩き始めた。



ようやく門のそばまで来た。ここまで辿り着くのにかなりの時間がかかった。

道中何度石を踏んで痛い目にあったことやら…

俺はすぐ近くにある門を見た。

「動物園の入場口みたいだな…」

4mくらいある扉の端には2人の門兵が立っていて、壁には窓口?がある。

やっぱり人がいると、少しは安心するな。

そんなことを思いながら、ここに来るまでのことを思い出す…


■ □ ■ □ ■


ここまで来る途中、寝ぼけた頭がはっきりしてきて、いくつも不安な想像をしてしまった。

人工物らしい壁があるのは間違いないが、そこを通してくれるのか?

そもそも何でそんな大きな「壁」が必要なのか、この草原はそこまで危険なのか? 

なんかこの草原異様に静かじゃないか?やっぱり何かいるの?

そのそもこの世界の人と、言葉が通じるのか?

通じなかったとして、俺は生きていけるのか?

もし言葉が通じたとして、これからどう金を稼いでいくのか?

この服装だと怪しまれるのではないか?

そんな想像をした一方で、今いる「ここ」は、まず間違えなく「地球」ではないことに気づいた。

休憩している時にふと空を見上げてみたが、やけに太陽?が大きかった、しかも、スマホのGPSアプリも使えなかった。それが分かっただけでも幸いとして…。

生きるためにも、何とかするしかない。

俺は勇気を出し、受付にいる茶髪の女性に話しかけた。

「こんにちは、私はコバヤシと申します」

ちょっと不自然な気もするが…問題ないだろ。

「こんにちは、コバヤシさん。レイヘムの街にようこそ、まずは、この街に来た目…的、あなたはどうやってここまで来たのですか?」

よしっ!日本語通じる!

心の中でそう考えながら、質問について考えた……途中で質問変わらなかったか?

「あの…それってどういう意味なんですか?」

「えっと…………馬車もないのに…1人でどうやってこの街までたどり着いたのですか?…随分軽装に見えますが」

なるほど、ちゃんとした道で行くと賊も居るだろうからな。

……待った、これってマズい流れだよな。ここで怪しまれたら入れないんじゃないか?

「に…荷馬車には途中で降ろされました、あと荷物も持ってかれました」

焦っていた俺は自分でも驚くくらいに饒舌に嘘をついた。荷馬車…存在しててくれ。

「………そうですか。生きていてよかったですね…ただ、コバヤシさん、いまあなたは手持ちのお金が無いということですね?」

よしっ、いけた!

「はい、少しも残っていません」

「そうですか…。あなたもご存じでしょうが、受付で通行料を貸す事は原則としてできません。その代わり…あなたがこの街を出る際にまとめて支払って頂くことも可能です」

通行料が必要なのか…きついな。

「いくら必要なのでしょうか?」

とにかく今一番気になったことを聞いた。

「本来の通行料は2000モルとなりますが、貴方がこの街から出る際には8000モルお支払いしていただいます。」

1モルが何円くらいかは分からないが、手数料?なのか4000モルも必要になるみたいだな。

まあ、今はそんなことよりも…衣食住の確保が優先か。

「では、コバヤシさんの氏名を教えて下さい」

「小林、敬斗です」

「コバヤシ・ケイト………珍しい名前ですね、では少々お待ち下さい………………コバヤシさん、こちらが滞納証となります」

「また、この証明書を紛失・破損してしまった場合、再発行料として5000モルのお支払いが必要となるので、大切に保管してください」

「最後に、記入されている内容はこちらで間違いありませんね?」

俺はホストカードほどの大きさの羊皮紙を受け取った。

紙には見慣れない文字で、「通行料滞納証 コバヤシ・ケイト」とあった。

「はい、間違いありません」

あれっ?知らない文字なのになんで読めるんだ?

まあ…異世界転移者特典だと思えば……

「それでは…コバヤシさん、ダンジョンの街レイヘムへようこそ!」


■ □ ■ □ ■ 


「異世界…異世界だ…すごっ…」

俺は今、この街から溢れ出ている「異世界感」に圧倒されていた。


■ □ ■ □ ■


門を通った向こうはきれいに舗装された広場だった。 

中央には15-20mはありそうな女性の像がそびえ立ち、2つの舗装された道路が広場で交わるように通っている。

道路に沿うように建てられたレンガの家々の間には洗濯物が干してあり、生活感を感じさせる。とにかく「The・中世ヨーロッパ」のような街並みだった。

しかもここには当たり前のように……獣人が歩いている。いや、この世界ではそれが当たり前なんだろう、多分。

こんな様子を見ると「俺は異世界に来たんだ!」って実感が得られた。親や友達は心配してるだろうけど…そこはどうしようもない。

受験勉強はしてなくて、彼女も…いなかったし、親への執着もないから、失う物は同年代の高校生よりも少ない。

それに楽観視かもしれないけど、この世界での生活を楽しみにしてる自分がいる。

退屈だったからな…あの生活。

異世界で人生 やり直すことになったけど………吹っ切れて異世界を楽しむか!


■ □ ■ □ ■ 


何をするにも、まずはお金が必要になる。

というわけで俺は今着てる服を売って、そのお金で街の人が着ているような服と靴を買おうと思う。

この服のままだと場違い感がすごいし、足が痛くてたまらない。

それに、俺の着てる無地の白シャツと黒のスラックスは…いい値段で売れると思う。

スマホは…この文明をみる限り売らないほうがいいかな。

「すいません、中古の服を買い取ってくれて、安い靴も売っている店を知りませんか?」

俺は、現地民っぽいガタイの良い中年男性に話しかけた。

「それならサロベツ服飾店がいいよ、あそこなら安い靴も売ってるしな。あと…あんた、靴はどうしたんだ?」

「いやぁ、いろいろあったんですよ」

本当にいろいろあったんだよ

「そうか、何があったかは分からないが…頑張れよ」

サロベツ服飾店への道を教えてもらった。


■□ ■ □ ■


「まさか服が20000モルで売れるとは…」

店で売ってる一番安い上着とズボンと靴を買っても15500モルも残った。

多少は買い叩かれてるのかもしれないけど、それでも…働かずに何日か生活は出来るだろだな。

ちなみにお釣りには金貨1枚、銀貨5枚、銅貨5枚をもらった。 

そういえば、こっちに来てから何も食べてない…それにあんな歩いたし。

ここに来る途中いくつか屋台があったな、ちょっと寄ってみるか。


■□ ■ □ ■


「よう、そこの兄ちゃん、うちのビッグピジョンの串焼きを食ってってくれよ!」

ビッグピジョン…ピジョンって……鳩かよ!

ただ、匂いは美味しそう。

肉汁が炭に滴り落ちて、ジュージューと音を立てている。

「これいくらですか?」

「一本50モルだよ!」

えっ…安っ!物価低いのかな?

「焼きたてを6本ください」 

そう言って、屋台の親父さんに銅貨3枚を渡した。 

「まいどありっ」

親父さんから焼きたての串焼きを受け取った。

片手で串焼きを5本持ちながら、串焼きに齧り付く。

塩で味付けされた肉は硬くて、少し臭みがある…。

ただ、朝から何も食べてなかったから、不味くは感じなかった。

多分串焼き6本じゃ足りないな。

そう考え、串焼きを食べ終わった後、鍋で料理をしてる屋台に近づいた。

「何を作っているんですか?」

「ジャガ芋ととフト豆のトマト煮込みだよ、兄ちゃん食ってってよ」

「これください」

「はいよっ、一杯120モルだよ!」

親父さんから、銀貨に似た、小さい硬貨を8枚貰った。

金銀銅と来たから……これは鉄貨かな?

木皿とスプーンを親父さんから借り、豚肉抜きのポークビーンズを木皿に盛ってもらった。

「味…薄いな。具も少ないし…」

豚肉抜きポークビーンズには他に、玉ねぎ、人参などが少しだけ入っていた。

「………美味しい食事が食べたい」


■□ ■ □ ■

  


「ごちそうさまでした」

俺は皿を親父さんに返し、あてもなく道を彷徨っていた。

一食470モルか…安いな。野宿すれば…最悪10日は耐えられそうだ。

これからやりたいこと、やるべき事を考えてみる…………

異世界に来たからには、こっちの美味しい食事とか楽しんでみたい!

そういえば門の受付嬢さんここがダンジョンの街って言ってたな。じゃあダンジョンにも行きたい!

あとダンジョンがあるってことは、ここは王道な剣と魔法の世界だろうな…じゃあ魔法も使いたい!

それに…もしかしたら異世界転移者特典のチートとか持ってるかもしれないし、俺のステータスとかも知りたい。

やらなきゃいけないことは…お金の確保か。

世界観的に冒険者は居るだろうし、やっぱり冒険者で稼ぎたい。

ここが王道のファンタジー世界とすると、冒険者ギルドもあるはず。

そろそろ暗くなってきたし、今日は宿でも借りて、明日の朝一番にギルドを探すか。

とりあえず、今日は街の人におすすめの安い宿を聞いて、そこで夜を過ごそう。


■□ ■ □ ■


聞き込みをしていると、悪い事実が浮かび上がってきた。

ここレイヘムの街では比較的安い宿でも1泊2000モルはするという。

聞いたなかで一番安い宿が1300モルだったため、そこに泊まろうと思ったが「あそこの店員は手癖の悪い人が多く、警戒心のない客の荷物を盗む」と街の人に警告され、1泊1700モルだがまだ信用できる宿屋に泊まることにした。

あと宿屋を見つける途中で、冒険者ギルドも見つけた。

営業はしていなかったが、かなり大きな建物で、広場の近くの人目につく場所にあったよ。

夜食は我慢して、明日はギルドで冒険者について色々と教えてもらうか。

俺は疲れていたからか、案外すんなりと眠りについた。



目を覚ますと、そこには天井があった。

ただ、見慣れない天井だな。

やっぱり……もう一度ベットで寝たら元通りとはいかないか。

バイト代振り込まれるまであと2日だったのに…勿体ない、1円も使えずに異世界転移するなんて…。

「とりあえず、昨日見たギルドまで行くか」

一応手持ちのお金を確認して、俺は冒険者ギルドまで歩き出した。


■□ ■ □ ■


「騒がしいな…なんか安心するけど」

昨日の草原のことを思い出すと……

ギルドの中はさまざまな見た目、種族の人が入り乱れていた。中には中学生くらいに見える人もいたよ。

とりあえず、暇そうにしている20歳くらいの茶髪ショートの受付嬢に声を掛けた。

「どうしましたか?魔物の素材の買い取り、ステータス確認の受付はあちらですよ。こちらは冒険者への依頼、パーティー申請と冒険者登録の際の受付です」

そう言って、女性は右に手を向けた。

「………門の受付嬢さん」

ここでも働いていたんですか…。

とりあえず、ステータス確認は後でやるとして

「冒険者登録をしたいのですが」

俺がそう言うと、受付嬢さんは「信じられない」とでも言いたげな目で俺のことを見た。

「………あなたは…レイヘムの街に何をしに来たんですか?」

えっ……どういうこと?


■□ ■ □ ■


なるほど……

レイヘムの街は隣の街から遠く離れていて。草原地帯を通り抜けるにも魔物が出るので、護衛を付けるかそれなりに強くないとここまで来れない。

更にレイヘムの街に入る際は、他の街と比べて高い通行料を払わなければいけない。 

そこまでしてこの来る者たちの大半は、ダンジョン目当ての経験を積んだ冒険者か、その冒険者相手に商売をする商人ってことか…。

というかあの草原魔物いたんだ!

魔物と一度も会わなかったの…幸運だったんだな。

「…貴方はダンジョンに入らない方がいい、新人冒険者がレイヘムのダンジョンに入っても…無駄死にするだけです」

受付嬢さんは真剣な表情で、俺にそう忠告した。

じゃあ冒険者登録だけしてもらうか。

「分かりました、では…冒険者登録だけお願いしてもよろしいですか?」

それでも…冒険者になってて損はないだろ。

「……はい、しかし…レイヘムの街で冒険者登録をする方なんて、聞いたことすらありませんよ」

受付嬢さんによると、Eランク以下の冒険者は1ヶ月に1回は、合計10000モル以上素材の買取をしてもらうか、何かしらの依頼を受けなければ、登録が抹消されてしまうらしい。

再登録をするにも、手数料と登録料を払わなければいけないのだという。

駆け出しの冒険者は基本、冒険者登録をした街で簡単な任務を沢山こなし、少しずつ実力をつけて、難易度の高い任務を受けるらしい。

だが、この街で冒険者として活動を始めても、実力に見合った任務がないから仕事が無く、冒険者以外の仕事で他の街へ移る代金を稼ぐことになるのがオチだという。

……神様は俺をなんてところに転移しやがったんだ

そもそもモンスターだらけの草原に送り込むなんて、実質殺しにかかってるし…酷いな。

まあ、ここまで来たんだし、もう登録するけど。

「では、お名前と性別、使用する武器を教えて下さい。」

「小林、敬斗、16歳の男です。使用する武器はステータスを見てから決めます」

「コバヤシ・ケイトさん……ありがとうございます。では登録料として、5000モルをお支払いください。」 

5000モルって…結構するな、

俺は、金貨1枚をポケットから出した。

「では、少々お待ち下さい。………………………。はい、お待たせしました、こちらがお釣りとなります。登録内容はこちらでお間違えありませんか?」

俺は銀貨5枚とプレートを受け取った

その鉄?製の薄いプレートには、やはり見慣れない文字で、「コバヤシ・ケイト F」とあった  

「こちらが貴方の冒険者としての証明証となり、魔物の素材の買取履歴などもこちらに保存されます。この証明書をお持ちであれば、街の通行料の割引と、素材の買取金額の優遇を受けることができます。ただし無くしてしまった場合には、手数料と再登録料の8000モルをお支払い頂くので、気をつけてください」

あぁ…割引あったのか。この街に入ってから冒険者登録しても…損しかないってことだな。

勿体ない…。

「分かりました、ありがとうございます」

そう言って、俺は隣のステータス確認の列に並んだ。どうやらステータス確認はセルフサービスらしい。

俺の前に並んだ人は、自分の番が来ると、置いてあった水晶玉に右手を乗せた。

すると四角く半透明な画面が空中に浮かび上がり、ステータスが表示された。 

前の人は、画面を左手でタップして、自分のステータスを眺めている。

俺の前の人が離れた後、俺も同じように目の前にある水晶玉に手を乗せた。


[名前] 小林敬斗

[年齢] 16

[職業] 無職

[レベル] 1

[体力] 112

[魔力] 124

[攻撃力] 94

[防御力] 107

[俊敏性] 132

[スキル] 悪臭、鑑定、悪食、空気操作


俺は無職じゃねぇ!バイトもやってたし高校にも通ってたからニートですらない!

あと鑑定は分かるけど、何だよ悪臭とか悪食って!

そう思って、悪臭と書かれた部分をタップした。


[悪臭]

魔物の忌避する悪臭を体内から出し、

野生の魔物から襲われなくなる。

 

ああ、魔物にとっての悪臭ってことね…。自分でもそんな臭いとは感じていないし、多分人には分からない匂いなんだろう。

というか、草原で魔物と会わなかったのって、このスキルのおかげか…神様は俺を見捨ててはいなかったんだな。

俺は他に気になったスキルをタップしていく  


[鑑定]

鑑定をすることで、物や生物についての情報を得ることができる


[悪食]

どのようなものでも噛み砕き、消化、分解することができる

また、食べたものによっては新たなスキルが追加され、ステータスが上がる。


[空気操作]

空気を自由自在に操る事ができる。


ああ、このスキルたち異世界転移者特典かも!!

空気操作って強そうだし。

俺が水晶玉から手を離そうとした、その時

「もしかして君、風魔法が使えるの?」

俺の隣には、中学生ほどに見える、銀髪ショートの美少女が立っていた。


初投稿です!

10話くらいまで描き溜めしてます。

残りの9話を添削してから、一気に投稿するつもりです。

改善点、並びに疑問点がございましたら、ご連絡いただけると嬉しいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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