8 卵は孵ってしまえば、買ってもらえないって事
俺はこの際、魔法袋を買ってしまうことにした。大容量の魔法袋だったから,値段も大容量だ。これから飛竜を倒しに行くなら必要だと思ったが、シルに怒られてしまった。
親竜では無く卵を捕りに行くんだとか。
聞いてないようとは言えない。仕方が無い。これから必要になるんだから,先行投資だ。またいっぱい魔物を倒せば良い。直ぐに元が取れるさ。
俺も、そろそろ魔物を倒していこう。シルのようには行かないが,剣術には自信がある。もう少し練習すれば獲物を一太刀で倒せるようになるはずだ。首を狙うと良いらしいがなかなか難しい。
シルのようにコッソリ近づく事も出来ないからな。俺のシルは最高だ。あっという間に魔物も魔獣も倒してしまえる。然も、手加減してだ。
今も、コッソリ飛竜の巣に近づいてい行き,卵を持ってきた。3個持ってきたらしい。何でも、必ず一個は残してこないとだめだとか。ちゃんと下調べまでしていたなんて、さすがはシルだ。
卵は,ひとつひとつ色も大きさも違っている。一つはマーブル模様の大きい卵。もう一つは中くらいの大きさで,赤い縞々模様だ。最後の一個は一番小さい、普通の鶏卵と見た目も大きさも同じくらいだ。こんなに小さくては、人や物を運べる竜は生れないのでは無いか。シルも、残った卵も同じくらいだったから仕方が無い。と言っていた。早速仕事が片付いた。帰ろうとしたら親竜が巣に帰ってきた。
此方を大きな目でぎろりと見て、大きく口を開けた。
まずいぞ、シル。本当に飛竜は大丈夫なのか。なんか,怒っているようなんだけど。
「ゴル!逃げるよ。なんかこの卵孵ってる!親を呼んだみたい!」
「シル。無理だ、此処で親竜を、仕留めるしか無い!隠密使って隠れていろ。」
よし。シルは卵と一緒に隠れたな。こい!飛竜。お前の首を一太刀で刈ってやる!
相手は,飛べるメリットがあるが此方を狙っているから、降りてくる。絶好のチャンスだ。
ギャルうう!ザスッ!
あ、チョットしか切れない。
まずいぞ。刀の刃が薄いからな。矢張、此方の大剣を使った方が良かったか?
もういちど旋回して飛竜が降りてくる。最後のチャンスだ。今度こそ仕留めるぞ。
「ムン」気合い一閃。渾身の一太刀が入った。良かった。助かったー。ふー。
飛竜が轟音を立てて、落ちてきた。未だ息があるが血が流れていくに従い目の光が薄まって、その内死んで仕舞った。
「やったね。ゴル!大物仕留めて、魔法袋も使えていっぱい稼げたね。」
そうだ。買っておいて良かったじゃないか。終わりよければすべてよし!
シルはちゃっかり残りの卵も持ち帰った。
飛竜便屋に持って行くと、買い取り金額が凄いことになった。でも、孵って仕舞ったのは引き取ってもらえなかった。シルは食べてみようなんて恐ろしいことを言う。
可哀想じゃあないか。僕が飼う。と言ったら頭をはたかれた。
「また、余計な物をしょいこむ。」と言われた。でも小さいトカゲだぞ。邪魔に成らないと思うんだ。
トカゲは此方を涙目で見て、お辞儀をした。へー、お辞儀するトカゲ。可愛いじゃ無いか。
冒険者ギルドには飛竜の親を持って行った。これも大変喜ばれた。
飛竜の素材は,色々な物に使われる。肉はチョット堅くて美味しいとは言えないそうだが、売れた。
もう魔法袋の元は取れて、儲けが出た。よかったあ。