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灰の神話  作者: そーゆ
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交錯する記憶

### 第五話:山賊の過去


リノアたちはエリナの家を後にし、荒野を抜けて山道へと差し掛かっていた。切り立った崖と曲がりくねった道が続き、風が岩の間を唸るように吹き抜ける。カイルが「こんな場所、嫌な予感しかしねぇ」と呟き、テオが「気をつけろよ」と風を軽く操って周囲を探る中、ミラが「何か聞こえる…」と不安げに耳を澄ませた。リノアは石版と本を握り、仲間たちを励ますように「大丈夫、私たちなら乗り越えられる」と声を掛けた。


その瞬間、岩陰から叫び声と共に十数人の人影が飛び出してきた。山賊だ。ボロ布に身を包み、錆びた剣や棍棒を手に襲いかかってくる。「荷物を置け!命が惜しけりゃな!」とリーダらしき男が吠えた。一行は即座に身構え、戦闘が始まった。


テオが風を渦に変え、山賊の足を止め、カイルが拳と短剣で突進する者を次々と叩きのめした。ミラは小さな魔法の光球を放ち、敵の目をくらませ、リノアはエリナから教わった簡単な炎の呪文を唱え、地面に火の線を引いて退路を塞いだ。山賊たちは魔法の力に圧倒され、数分と経たずに膝をついた。


リノアは息を整えながら、「殺さないで、生け捕りにして!」と叫んだ。カイルが「面倒くせぇな」と文句を言いながらも、山賊のリーダを縄で縛り上げ、他の者もテオとミラが押さえつけた。山賊たちは抵抗を諦め、うなだれた。


リーダの男は額に汗を浮かべ、「お前ら…ただの旅人じゃねぇな。何者だ?」と睨みつけた。その時、リノアの革袋から石版が滑り落ち、地面に転がった。男の目が石版に釘付けになり、顔色が変わった。「その石…まさか、お前ら律師を追ってるのか?」


一行は驚き、互いに顔を見合わせた。リノアが「どうしてそう思うの?」と尋ねると、男は苦笑いを浮かべ、「俺たちにゃ見覚えがあるからさ」と吐き捨てた。そして、縛られたまま語り始めた。


「俺はダグって言う。20年前、俺たちは『赤狼傭兵団』って名で食ってた。結構な大所帯で、精鋭の魔法使いも何人か抱えてたよ。だが、ある日、律師と鉢合わせちまった。5人の黒ローブが俺たちの野営地に現れ、何も言わずに襲ってきた。炎と雷が降り注ぎ、仲間は一瞬で半分以上死んだ。俺たちは必死に戦ったが、まるで歯が立たねぇ。あいつらは俺たちが持ってた古い遺物——石碑や金属の欠片——を壊して回り、『これで終わりだ』とだけ言って去った。生き残ったのは俺を含めて数人だけだ。それ以来、傭兵稼業は畳んで、こんな山賊暮らしさ」


ダグの声は震え、目には恐怖が宿っていた。テオが「律師が遺物を狙うってのは本当なんだな」と呟き、カイルが「20年前か…まだ活動してたのかよ」と唸った。ミラは「でも、なぜそんなことを…?」と怯えた声で尋ね、リノアは石版を拾い上げ、「それを知るために、私たちは旅をしてる」と静かに答えた。


ダグは目を伏せ、「忠告しとく。あいつらに近づくのは死にに行くようなもんだ。俺みたいになりたくなければ、さっさと引き返せ」と警告した。だが、リノアは首を振った。「もう戻れないよ。真実を知るまで進むしかない」。彼女の瞳には揺るぎない決意が宿っていた。


一行は山賊たちを縄で縛ったまま置き去りにし、再び山道を進み始めた。ダグの言葉が頭に残り、風が一層冷たく感じられた。律師の過去と石版の秘密が、少しずつ繋がり始めている——リノアはそう確信し、仲間と共に前を見据えた。

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