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結婚詐欺なら間に合ってます!〜ステゴロ最強系男の娘エルフに騙された俺は、下僕犬にジョブチェンジさせられた挙句トラブル頻発して命を脅かされています〜  作者: 来世
第二章 人体力学の極意

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43話 報酬、良かったから


「ねぇ、何で依頼(クエスト)受けることにしたの?」


「静かにして。少し寝るわ」


 馬車に揺られながら、対面に座るリアムに尋ねる。


 俺の質問に対し、奴は「寝る」と言って返答しなかった。


 しかし、その目は忌々しげに細められるだけで閉じられる気配は無い。


「ねぇ」


「だから、寝るって言ってるでしょ」


「意味無いと思うよ」


 俺は溜息を吐きながら窓の外を眺める。


「……どういう事よ?」


 馬車の目的地は、田舎町レジル。依頼内容は新ダンジョンの難易度調査。


 馬車が動き出してから、リアムは頑なに俺との会話を拒否していた。


 盗聴(・・)を警戒しているのだ。


 確かにルーニアの無駄に高い情報収集能力を知れば、そのくらいは当然と言える。


 しかしそんなもの、無駄と断ぜざるを得ない。


「この依頼も“指輪”も、彼女からもたらされたものだからね」


 指輪を通してのやり取りは、第三者に悟られる事がない。


 でも、そもそもこの指輪をくれたのも彼女なのだ。


「……そ。本当、気に触る女ね」


「かもね。で、質問なんだけど」


 リアムはあの猫耳情報屋に対して嫌悪感を隠しもしない。だったらさ、


「クエスト、何で受けたの?」


「報酬、良かったから」


 金か。


「それに、あなたが言ったんでしょう?」


「ん?」


「“情報屋は嘘を吐かない”」


「あぁ、まぁそうだね」


 ルーニアは、“役に立つ情報”として今回の依頼を紹介した。


「……あんなのと仲良くしてるなんて、どうかしてるわ」


「はは、かもね」


 俺自身、ルーニアの事は詐欺師と考えて警戒している。彼女のせいで巻き込まれたトラブルは、今までも数知れずあった。


 しかし、それ以上に彼女の“言”には価値がある。


 彼女が居るからトラブルが起こるのか、トラブルが起こるから彼女が現れるのか……鶏か卵か、どちらが先かを考える事に価値は無い。


「でも、このクエストで(・・・・・・・)分かるよ(・・・・)


 問題は既に、トラブル(・・・・)が起き(・・・)ている(・・・)ということだ。


「たぶんね」


「気楽ね。全く……たぶんで巻き込まないで欲しいわ」


「いや、参加するって決めたの、君だからね?」


「仕方ないでしょう」


 ルーニアは俺との取引に基づいて情報を持ってきた。リアムが参加する必要はなかったのだ。


 でも、奴は参加を決めた。その原因は、


「“剣聖”が出てきたんじゃ、ね。あれ以上目立つのはさすがに不味いと判断したわ」


 レイスだ。


「僕が言うのも何だけど、あなた、もう少しお友達は選んだ方が良いわよ?」


「はは……気を付けてはいるんだけどね……」


 アイツ……マジで何考えてやがるんだ。




☆☆★★★★★☆




「おはよう、騎士様」


 リアムは明るい調子で挨拶する。


「それで、どうしてギルドに?」


 当然の疑問。私立騎士団の団長が、朝からギルドに何の用だ?


「落とし物の依頼かしら。それだけ目が高い所にあると、探し物も難しいでしょう。ほらシュート、お友達のゴブリンを紹介して差し上げなさい」


「あぁ……ゴブリンならもう討伐しちゃったんだ。悪いね」


 ゲビル、ボコっちゃったからね。ま、あれでくたばるとも思えないけど。


「目的は落とし物の捜索ではない」


「ふーん……」


 俺はそれとなく周囲を見渡す。


 レイスの登場により、周囲はざわついていた。慌ててギルドを飛び出す人もいるくらい。


───ヤバい取引でもしてたのかな?

 飛び出したおじさんの顔は覚えた。今度話を聞いて(強請って)みようっと。


「……貴様に会いに来たのだ」


 レイスはリアムを見据えて言い切った。


───へぇ……何それ、嫌な予感させる物言いだね。

 レイスは目を細める。ゴミを見るような冷たい視線は相変わらずだ。


「それは光栄ね。でも生憎、僕達はこれから仕事なの。日を改めてくれるかしら?」


「仕事、その男とか?」


「えぇ、そうよ」


「冗談。貴様ら二人揃った所でいったい何の役に立つと言うのだ」


「言い過ぎだろ」


 世の中には猫の手も借りたい程切迫した依頼主やら猫にストーキングされて黒歴史ぶっ放される冒険者やら色々いるのだ。


「特別な事はしないわ。僕達はただ出来る事をするだけよ。それではね」


「……待て」


 「そうはさせん!」とでも言いたげなレイスに呼び止められる。未練がましいぞ、お前。


「……何かしら」


 流石のリアムもちょっとイラついてるね。指輪を通じてストレスが流れ込んでくる。


「提案だ。私が貴様の相棒となろう。喜べ」


「……何を言っているの?」


 何、君もナンパ?


「勝負だ、シュート」


「え……俺と、勝負? 何の??」


「彼女の相棒の座を賭け、私と戦え」


「おいおいそんな話をややこしくするなよ。で、リアムの相棒だっけ? そんなもんいくらでも……」


 トン。


「……賭けられる訳ねぇだろああん!? 騎士が賭博とか汚ねぇことやってんじゃねぇよ!!」


「その通りよ。下らない冗談に付き合っている暇は無いわ。行きましょうシュート」


「では、金を出そう」


 ピクッ、と。


 リアムの耳が跳ねたのを、俺は見逃さなかった。


「金だ。欲しいのだろう? 私が受けるクエストに同行し、勝負を受けろ」


 リアムは踵を返してレイスに背を向けたまま、動かない。


 一ミリも、微動だにしない。もしかして、立ったまま死んでる……?


 しかしそんな沈黙は、


「逃げるのかにゃ?」


 猫耳少女の煽りで掻き消された。


「ふぅ〜〜……」


 リアムのクソ長い溜息。長い。肺活量どうなってんの?


「……勝手ね。僕達二人を拘束するなら、それなりの報酬が必要よ?」


 ゆっくりと振り向いたリアムが言い放つ。


───Eランクだけどね!!

 報酬額を吹っかけて引き下がらせようって魂胆か。リアムも上手いね。


「報酬は言い値を出そう。クエストにおける装備、クエストで受けた怪我の治療もこちらで負う事とする。どうだ?」


 強気だなぁ、そんなこと言って良いの?


 こっちも全力出しちゃうよ?


「それなら良いわ」


「え、良いの??」


「決まりだな」


「で? どのクエストを受けるのかしら?」


「これだ」


 リアムの質問に対し、レイスは懐から一枚の紙を取り出す。


───へぇ……。


「“レジル新ダンジョンの調査”」


───やっぱ君も(・・)、そっち側なんだ。

 レイスが掲げる用紙に記載された内容、その表題は既視感のあるものだった。


 そしてもう一つ。


───『ディケード商会、ね』

 リアムも覚えていた様だ。依頼主にも既視感があった。


「準備しろ。間もなく出発する」


「えぇ。早い方が良いわ」


 二人のやり取りを聞いて、シーナが近づいて来る。


「依頼の受注ですね。では手続きがありますので、どうぞカウンターに」


 ギルド職員の顔に戻った彼女は、テキパキと手続きを済ませていった。


「……今回は、随分と豪華な役者を揃えたね」


「にゃはっ!」


 結局、彼女の思惑通りに話は進んでいる。いったい何を企んでいるんだか。


「頑張ってにゃあ、シュー君。ちゃんと全力でやるんだにゃ?」


「うん、そうだね」


 ダンジョンか。想定外のクエストだけど、まぁ大丈夫でしょ。


「久々に滾ってきた。まぁ任せてよ」


 なんせ俺は昨日、ダンジョン配信を見て予習してきたのだから。




☆☆★★★☆★☆




「着いたみたいよ。なるほど、寂れた街ね」


 到着した町の様子を見るなり、リアムはそう呟いた。


「都市には人と金が集まるけど、田舎はこんなもんだよ」


 俺は町並みを眺めながら返答する。


 レジルは、田舎町だ。確か畜産が有名だったはず。


 ギルドの支部があるだけで、冒険者などはほとんどいない。若者は家業を継ぐか、都市へと出稼ぎに出るかが主な選択肢だ。


───俺の今世での故郷と似た様なもんだね。

 田舎町特有の穏やかな雰囲気に、懐かしさを感じながら感慨に耽る。


「こんな町も、ダンジョンがあれば一気に栄えるのよね。人間って本当に不思議だわ」


 リアムの言う通り、ダンジョンは街の繁栄に大きく貢献する。


 ダンジョンから取れる資源は人々の生活を潤わせ、それを求める冒険者が集まるのだ。


 そして人が集まれば、産業も儲かる。その内ここも、たくさんの宿が立ち並ぶ宿場町になるだろう。


「しかしそれも、私達の仕事にかかっている」


 別の馬車で移動していたレイスが声を掛けてきた。


「今日はもう遅い。お互い宿に入り、明日に備えるとしよう」


「はは、珍しく気の利いた提案だね」


 レイスの言葉。


 外は明るいけど既に夕刻だ。ダンジョン内は当然暗闇で、探索には時間が掛かる。帰ってくる頃には深夜になっているだろう。


「……準備は万全に整えておけ。足を引っ張るようなら置いていく」


「そう言うなら、勧誘は前日までにして欲しかったけどね」


 言って、俺達は宿へと移動した。


「リアム様、シュート様両名はご夫婦であると聞いております」


 宿の仲居さんの説明。嫌な予感がした。


「えぇ。まだ新婚だけどね」


 リアムは意味深に微笑んでいる。


 案内された部屋は、ダブルだった。


「案の定……」


「し、失礼致しました、何か問題がありましたか?」


 げんなりした俺の様子を見て、仲居さんが心配そうに声を掛けてくる。


「いや、出来れば部屋はべつ……おふっ!」


「問題無いわ、ありがとね」


 苦言を呈しかけた俺を肘で突き、リアムは明るく返答する。


「そ、そうですか」


「えぇ、ひと時も彼と離れたくないの。お気遣い感謝するわ」


「い、いえ……」


 仲居さんの顔がみるみる赤くなっていく。ここでも男の娘の威力は、その凄まじさを遺憾無く発揮していた。


「ふぅ」


 部屋に入り、扉を閉めるとリアムが溜息を吐く。


「悪かったわね。でも、ここで離れるのは得策じゃ無いと判断したわ」


「気にし過ぎだと思うけどなぁ……」


 二人だけになっても、リアムは口調を戻さない。


 目の前には、親子三人が川の字で寝ても余りある広さの大きなベッド。それが、一つ。


───え、もしかして俺、旅先でも床ですか?


───『安心しろ、僕は今晩こっちで寝る』


 言って、リアムはソファに腰掛ける。


───マジで!? よっしゃぁぁああ!!

 俺はクソデカいベッドに全身でダイブした。


「……クエストが終わるまで、極力一人にならないで、お互いにね」


 子供の様にはしゃぐ俺の様子に溜息を吐きながら、リアムは真剣な表情で告げる。


───『あの女、それに“剣聖”の言動も怪し過ぎる。どこから刺客が湧いてくるか分からないからな』


「大袈裟だなぁ。ビビってるの?」


───刺客なんか小指で倒せるくせに。


「冒険者の少ないこの町では、時々屈強な魔獣が出るという話よ……ま、噂程度だけどね」


───『そうか分かった。刺客が現れたらまずお前から始末する事にしよう』


───いや何で君が刺客になるんだよ。


「ふーん。まぁ、ダンジョンなんて初めてだしね。入る前から怪我してたら世話ないか」


「そういうこと。荷物を置いたら出ましょう。食堂は下の階らしいわ」


 俺は無言で頷き、部屋を出るリアムに追従した。


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