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結婚詐欺なら間に合ってます!〜ステゴロ最強系男の娘エルフに騙された俺は、下僕犬にジョブチェンジさせられた挙句トラブル頻発して命を脅かされています〜  作者: 来世
第二章 人体力学の極意

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41話 悪ノリが過ぎるよ、全く


「クエストの達成を確認致しました。こちらが報酬です」


「ふふ。ありがとう」


 地上に上がった俺達は一度家に帰り、身嗜みを整えてからギルドへ向かった。リアムの服が裂けてヤバかったのもあるが、それ以上に大きな問題があった。


 体臭がヤバかったのだ。


 ちなみにリアムは服を着替えただけだ。常時結界、やはり万能である。


『ちょっと、ちゃんと身体洗ってきた? まだ臭いわよ』


 部屋を出て再出発したギルドへの道中、リアムは俺の体臭を指摘した。


 馬鹿にするなよ。俺は一度風呂に入ったらヘソのシワまで丁寧に洗う主義だ。


『少し、離れてちょうだい』


 辛辣な言葉。わざとらしく鼻をつまんで軽蔑の視線を寄越してきたのだった。


 それにしても地下水道はヤバかった。鼻栓してたのに貫通して臭かったのだ。


「そうだ、報告したい事があるのだけど、良いかしら?」


「はい、何でしょう」


 リアムは切り出す。


「地下で強力な魔獣に遭遇したの。討伐したのだけど、素材は残らなかったわ」


「そうですか……残念ですが、討伐の証明になる素材がなければ、追加の報酬を出す事は出来ません」


 報告を聞いてくれたのはサリーだった。


 そしてどうやら彼女は、こちらの討伐詐称を疑っているらしい。


「いえ、そうじゃないの。その時の魔獣、異常な性質を持っていたのよ。骨格が定まらなかったり、異常な再生力を持っていたり、ね」


「なるほど」


「それに魔力も感じなかった……あれは普通の魔獣じゃないわ」


「そうですか……するとつまり、リアムさんは───」


 サリーは怪訝な表情を崩さない。


「───“魔物が出た”と、言いたいのでしょうか?」


 ま、妥当なリアクションだね。


「ギャハハハ!」


 ギルド全体が冒険者達の笑い声で包まれる。


「くくく、おいねぇちゃん、御伽噺の読み過ぎじゃねぇか?」


 近くに居た冒険者の一人が笑い声と共に言う。すると更に周囲の笑い声は大きくなった。


「夢でも見てたんじゃないのか? それに、倒した、だって?」


 また別の男が話に入って来る。


「えぇ、そうよ。結界と爆発を利用して焼いたわ」


「ぶふっ! エルフのねぇちゃんが、火を使ったのか?」


 男は嘲笑する。


 森に住むエルフは、火を嫌うらしい。自然を愛するエルフだからそりゃね。


 そして魔力の相性で有利な関係にある点で、人間はエルフを見下している。特に戦闘面で。


───辞めとけよ……血を見るぞ?

 だがリアムはその例に漏れる存在だ。奴はバリバリの武闘派。そりゃあ、火も使うのだろう。


「それに、ぷっ、相棒がソイツだろ?」


「おい雑用、デートで地下水道はねぇだろ」


 男達は顔を醜く歪めて言う。それは本当にそう!


「デートじゃないわ、仕事よ」


「そうかそうか……なぁ、ねぇちゃんよぉ、そんな臭え仕事しなくとも、どうだ? 一晩俺の相手をしたら倍の額を払うぜ」


「おい抜け駆けすんな! 俺ならもっと出すぞ!」


 話は随分と脱線し、やがて謎の競売が始まった。


───『下衆が……』

 怒ってますね。


 そんなリアムの殺気に気付かない三流冒険者達。彼らの狂騒は終わりそうにない。


「やぁ色男、今日も随分と人気者だね」


「ん? あぁ」


 声を掛けられた。


「まぁね。君こそ、今日は一段とイケてるね」


 言って、お互いに笑う。


「聞いたよ、シュート。遅くなったが、結婚おめでとう」


「はは、ご祝儀は是非束で持って来てね」


 現れたのは、爽やか冒険者で人格者のフェインだ。


「紹介するよ。こっちが、えぇと……妻の、リアムだよ」


「……よろしくね」


「リアム、彼は仕事仲間のフェインだ」


「噂に違わぬ美しさ。会えて光栄だよ」


「そういうあなたは、よく鍛えているわね」


 やっぱフェインは人格者だ。彼の物腰の柔らかさで、リアムの溜飲もいくらか下がったらしい。


「シュート、実は今日、僕は別れの挨拶に来たんだよ」


「へぇ、そっか」


 フェインは冒険者で人格者で良いとこの坊ちゃんだ。


「帰るんだね」


「あぁ」


「おいなんだテメェ抜け駆けか!?」


「ズリィぞ! そいつは俺のエルフだ!」


「……ゆっくり話したかったけど、それも無理そうだね」


「あぁ、ここは僕が引き受けよう。薄汚い歓声で悪いけど、僕達なりの祝福と思って欲しい」


 言って、ウインクしたフェインは魔力を解放する。


「最後のお祭りだ! ライスシャワーになりたい奴は表に出ろ!!」


 本当、悪ノリが過ぎるよ全く。




☆★★★★☆★☆




「おい、待てよ」


 帰路。まるで待ち伏せでもしていたかの様に俺達を呼び止める声がした。


「……よぉゲビル、奇遇だね。そっちも仕事終わり?」


「あぁ、そんなとこだ」


「そっか、お勤めご苦労様」


───もう釈放されたんだ。

 俺は顔面を殴られたのに、ほぼ無罪とかふざけんな。


「あら、またゴブリンね。本当、この街の治安はどうなっているのかしら」


「へっ! 強がってられんのも今の内だぜ」


 醜く笑ったゲビルは、ゆっくりと剣を抜く。柄や鍔に派手な装飾が施された悪趣味な剣だ。


「ははは、やだなぁゲビル、そんな怖いもの出して、どうしたの? ここに魔獣は居ないよ?」


「いや、居るだろ。ゴブリンがよぉ!」


───認めた!?

 何故か、突如醜悪な魔獣に自らジョブチェンジしたゲビルが剣を手に迫って来る。


「死ねや!!」


「ッ!!」


 俺は身構える。


───やるか……ここで……?

 しかし、俺の不安は杞憂に終わった。


「……うるさいのよ」


「ご、ご主人様!?」


 動いたのは、リアム。奴は短いナイフを手に、ゲビルの剣を完全に押し留めている。庇ってくれたっぽいね。


 鍔迫り合いは互角に見えるが、リアムから殺気を感じない。まるで子供の相手をしているかの様だ。


「……チッ!!」


 剣では敵わないと判断したのか、ゲビルが距離を取った。


 リアムは動かない。というか、そもそも相手にしていない。


「やるな、エルフのくせによぉ」


「あら、僕のいた里に、ゴブリンに遅れをとるエルフは居なかったわよ?」


 苦虫を噛み潰した様な顔のゲビルに対し、リアムは涼しい表情だ。


「……馬鹿にしてんじゃねぇぞ、下等種族の分際で!」


───死にたいの?

 ゲビルは怒りをあらわにし、あろう事かエルフ族に対する差別意識を口にした。


「……あなた、仲間はどうしたの?」


 対峙するリアムは意外にも落ち着いていた。ただ肩を竦め、溜息を吐いてから問い掛けただけだった。


「へっ! 二人とも寝てらぁ!」


「そう」


 リアムはゴブリン語を理解した!


「仇討ちなんて立派ね。でも残念、相手を間違えているわ」


「いいや、合ってるぜぇ」


 ゲビルは手に魔力を集める。どうやら魔法を使うつもりらしい。


「これは仇討ちなんかじゃねぇ! ただの八つ当たりだからな!」


 ゲビルは叫び、手のひらの魔力を解放。


 放出された魔力は燃え盛る炎へと姿を変え、ゲビルは球状にしたそれをリアム目掛けて放った。


「……無駄よ」


───無詠唱にしてはデカいね。でもリアムには常時結界(レインコート)がある。

 ゲビルの火球は威力が高そうだ。しかし、リアムも負けじと無詠唱で結界を展開し、応戦する構え。


 ゲビルの実力も中々のものだ。魔力操作の自然さ、無詠唱で中位魔法を扱う手腕も合わせて賞賛。


 しかし、リアムは常に全身を結界で覆っている。壁として設置するのではなく、服の様に薄く展開し身につけているのだ。


 とんでもない魔力操作の技術。


 短い付き合いだが、俺はリアムの敗北など想像できない。だから、ゲビルの攻撃は失敗するだろう。そう信じて疑わなかった。


「あぁそうかもな、だが!」


 しかし、結果は想像通りではなかった。


「なっ」


 リアムは驚愕の声を上げる。


 奴の結界は、確かにゲビルの火球を防ぎ切った。しかし、結界との衝突の最中、ゲビルが放った魔法は別の目的を果たした。


「煙幕……!」


 ゲビルは放った火球に何か仕込んでいた様だ。結界に衝突した瞬間、爆発と共にとんでもない量の煙が生じた。


───器用な奴、だが不味い!!

 わざわざ使ったダメージにならない魔法、攻撃が目的ではない。だとしたら!


「……お前だけは殺す!」


「うおっ!」


 やはりというか、ゲビルの狙いは俺だ。煙の中、正確に俺の位置を見計らってタックルを仕掛けてきた。


「ぐえっ」


 組み倒され、マウントを取られた。


「前から気に入らなかったんだ、その薄ら笑いと減らず口がよぉ」


 ゲビルは醜い笑みを浮かべ、剣を構える。


───躊躇ったら、死ぬ! やるしかない!

 俺はポケットの中のものを取り出し、ゲビルの顔面に向けて突き出す。


「喰らえ!!」


「うお!? くっせえ!!」


 俺が出したのは、地下水道での作業時に使っていた手袋。それをゲビルの鼻に当てて怯ませ、


「ぐむっ!!」


 口内にぶち込んでやった。


───我ながら、最悪の攻撃だ。

 腰が浮いてマウントポジションを崩したゲビルを、渾身の腕力と脚力で押し退け、離脱する。そして、


「悪く思うなよ!!」


 ゴン、と。


 俺は腰に差した剣、それを鞘ごと抜いてゲビルの脳天を強かに叩く。するとゲビルはゆっくりと体勢を崩し、倒れ伏すと動かなくなった。


「やるじゃない。ただあなた」


 リアムは賞賛の言葉をくれる。


「そんな臭いもの、よく持ち歩けるわね」


 が、その目は軽蔑の色をしている。


「帰りも離れて歩いてね」


 解せない。




☆☆★★★☆★☆




「それにしても君、本当強いよね。どれだけ修行したの?」


 家へと歩きながら、疑問を口にする。


「……ほんの百年程度よ」


「……君、何歳なの?」


 とても冗談には聞こえなかった。


 リアムの言った修行期間は、俺の想像の丁度十倍だった。


 奴の実年齢について気になったが、どこかで「エルフに年齢を聞くのは失礼」と聞いた事がある。


 まぁ、異世界には異世界のジェンダー感覚があるって事か。


「一人で生きていくには、それなりに力が必要なのよ」


「すごい説得力だね」


「あなたも、鍛えてあげようか?」


「はっは! 残念だけど俺は一人じゃないからね!」


 ご主人様(リアム)がいる限り。残念極まる。


 そうして談笑しながら帰宅し、食事をとってから再度家を出た。


 今日は、おじさんが出てくる日だからね。



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