市場へ
翌朝、翔太はミーナとエリスの案内で、隣町にある市場へと向かった。馬車に揺られること約1時間。町に近づくにつれて活気が増し、遠くから聞こえる賑やかな声や笑い声に、自然と翔太の気持ちも高ぶる。
市場の入口に到着すると、目の前には色とりどりの食材が所狭しと並べられた屋台が広がっていた。果物、野菜、香辛料、そして見たこともない魚や肉――まさに異世界の食材の宝庫だ。
「すごいな……こんなに色々揃ってるなんて。こっちの世界にも、こんなに豊かな市場があるとは思わなかった。」
翔太は目を輝かせながら、ひとつひとつの屋台を眺めた。
ふと足を止めたのは、籠に盛られた白い粒。まるで真珠のように輝くそれは、どう見ても米だった。
「これ……米!?本当に米なのか?」
翔太が驚いていると、店主の中年男性が笑いながら答えた。
「ああ、これは『シルバーライス』だ。栽培に手間暇かかるから、麦ほど安くはない。」
翔太は思わず米を手に取り、その感触を確かめた。しっかりとした粒立ちに、ほんのり甘い香りが漂ってくる。
「これは……絶対美味い!こんな食材があるなんて!」翔太の胸には、すでに新たな料理のアイデアが浮かび上がっていた。
市場を歩く中で、翔太は目にするものすべてが新鮮だった。ミーナに勧められて、串焼き屋台で甘辛いタレが絡まった肉串をかじれば、肉汁が口いっぱいに広がる。次にエリスが買ったのは、薄いパン生地に野菜を包み込んで焼いたもの。外はパリッと香ばしく、中は野菜の甘みが詰まっている。
「どれもすごく美味しいな。この世界の屋台料理も負けてない。」
翔太は感心しながら、目にする食材や調理方法にインスピレーションを得ていった。
屋台営業への準備
市場で仕入れたシルバーライス、ムーンホッグの肉、スターリーハーブを手に、翔太はさっそく屋台で試作を開始した。まず米を丁寧に炊き上げ、甘辛いソースを絡めた具材を包み込んで肉で巻く。炭火でじっくり焼き上げた肉巻きライスボールは、試作品とは思えないほどの仕上がりだった。
エリスが一口食べて目を丸くする。
「なにこれ……こんなにジューシーで香ばしい料理、初めて食べた!」
次の祭りまでに、仕入れのための材料費をしっかり稼ぐぞ! 翔太の皮算用は膨らみ始めた。