生活費
翔太が異世界に来てから数日が経った。ミーナやエリスの助けを借りながら、街の生活に少しずつ馴染んでいく中で、翔太は現実的な問題に直面していた。
「生活費…どうしよう。」
異世界とはいえ、食べていくにはお金が必要だ。今のところ、ミーナやエリス、村長の家に持ち回りで居候させてもらっているが、ずっと甘えるわけにはいかない。
ある日、ミーナが夕食の席で切り出した。
「翔太、これからどうやって生計を立てるか考えてる?」
「うーん、正直なところ、まだ具体的なプランはないんだ。」
エリスが笑いながら言った。
「それなら、冒険者ギルドか商業ギルドへの登録を検討してみたら?どっちも新参者向けのサポートがあるから、生活の足掛かりを作るには最適よ。」
翔太は少し考え込んだ。
「冒険者ギルドって…モンスターを退治するのが主な仕事だよね?正直、戦闘は自信ないな。」
ミーナが穏やかに頷き、続けた。
「なら商業ギルドの方がいいかもしれないわね。翔太さん、料理が得意なんでしょう?この街では、祭りやイベントで屋台を出すのが一つの稼ぎ方なのよ。」
エリスが補足するように言う。
「特に、この街では月末に大きな収穫祭があるの。そこに間に合えば、屋台でかなり稼げるはずよ。初期費用もそれほどかからないし、試してみる価値はあるわ。」
「屋台か…確かに、俺の料理で稼げるかもしれない。」
翔太は少し胸が高鳴った。自分の得意分野を活かして異世界でスタートを切るというのは、彼にとって魅力的な提案だった。
商業ギルドでの登録
翌日、ミーナとエリスに案内されて翔太は商業ギルドを訪れた。そこは大きな建物で、多くの商人や職人たちが出入りしている。
「初めまして。新規登録をご希望ですね?」
受付に立つ女性がにこやかに応対する。翔太は少し緊張しながら頷いた。
「はい。屋台を出して生活費を作れたらと思って。料理はできます。」
登録には、初期費用として銀貨数枚が必要だったが、ミーナが貸してくれると言ってくれたおかげで何とかクリアできた。利子は美味しい料理にしてくれるらしい。さらに、商業ギルドからは「初心者セット」として、簡易的な屋台の設置キットや基本的な調理器具を借りることができた。
「敵情視察は大事よ!さあ、食べるわよ!」
村の中心の広場にはいくつか屋台が出ており、恰幅のいい女性が肉や魚を串に刺し焼いていたり、ナンのような小さなパンを窯で焼いていた。
いい匂いが漂っている。
「生臭さはないし、パリッとしててうまいな。シンプルイズベストって感じ。」
「味付けもほぼ塩って感じだけど、案外美味しいのよねえ。」
美味しそうに肉を頬張るミーナやエリスを横目に、あれこれと思案に耽る翔太であった。