「異世界の台所と最初の挑戦」
ロリスに案内され、翔太とモモは村の中心部に向かった。質素だが活気ある村には、空に巨大な魚のような生き物が浮かび、見たことのない野菜が地面に植わっている。
「ここが村の台所だよ。」
木と石で作られた素朴な建物に入ると、大きなかまどや石の調理台があり、村人たちが忙しそうに働いていた。
「転生者が来るたびに新しい料理を教えてくれるんだ。」
ロリスの言葉に、翔太は戸惑いを隠せなかったが、手渡された食材に目を留めた。
「これは『ルーク芋』。加熱すると柔らかくなるが、時間が経つと固くなる。こっちは『フレアハーブ』。加熱すれば香りが立つが、生だと苦い。」
翔太は考え込んだ後、台所に立ち、手際よく調理を始めた。
翔太はルーク芋を薄切りにし、バターでじっくり炒めた。次にフレアハーブを刻み、ガーリックオイルで香ばしく仕上げ、出汁とともに煮込む。湯気とともに立ち上る芳醇な香りが村人たちを引き寄せた。完成したのは、ルーク芋のクリーミースープ。とろりとした舌触りと、ほのかなハーブの風味が絶妙だった。
「これでどうだろう?」
スープを口にした村人たちは驚きの声を上げた。
「こ、こんな柔らかいルーク芋は初めてだ!」
「フレアハーブがこんなに香り高いなんて…!」
翔太はホッとしたが、同時に疑問が湧いた。
「どうしてこの村では、食材を活かした料理が少ないんですか?」
ロリスは苦笑しながら答えた。
「魔物の被害で農作物が少なく、食材を加工する余裕がないのさ。」
翔太は心に決めた。
「僕の料理で、少しでもこの村の生活を豊かにしたい。」
その夜、星空の下でモモに寄り添われながら、翔太は呟いた。
「ここで新しい人生を始めよう。料理を通じて。」
翌朝、翔太は村人たちのため、さらなる挑戦へと台所に立つ。