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『溺愛以外お断りです!』17




「待って、信じられないわ」

「レナード!あんなに何回も作戦会議を開いたのに肝心の貴方がしくじってたなんて、どうすれば…!」

「まだ伝えてなかったの?指輪のサイズは教えたはずよね?それとも作り直しでもしているの?」


 怒涛の勢いで友人二人から責められるレナードを見ていたら、私は居た堪れない気持ちになった。


 ミレーネがどうして私の指輪のサイズを知っているのかについては疑問が残るけれど、二人してこういった場を準備してくれていたのは嬉しい。問題は私がまだ一言もレナードから結婚の意思を聞いていないことなんだけど。



「コーネリウス国王だって協力するって言ってたじゃない。フェリス王妃なんてもうベビーベッドを注文したって言ってたわ」

「ミレーネ、それは流石に早すぎるわ」

「だってグレイス、この男、一年余りイメルダと一緒に生活してまだ結婚してないのよ?信じられる?」

「まぁまぁ。婚約期間が一年っていうのは普通よ。色々と見極める必要があるし……」

「違うわ、レナードは奥手過ぎるの。なんだかんだと理由を付けて忙しそうにしてるけど、そんな風だからあの狐男に盗られるのよ」


 ショックを受けた顔でレナードが頭を押さえる。

 私は突然飛び出した元婚約者の話に眩暈を感じた。


「君たち……好き勝手に言ってくれるけどなぁ、」

「なに?もっともな言い訳でもあるの?」

「こっちはずっとセイハム大公の動向を追っていたんだ。またイメルダや彼女の大切な友人が被害を受けることがないように、注視して……」

「それはそれ、これはこれよ」

「リゲルくん。君の妻を連れて帰ってくれるか?」


 レナードが話し掛けた先で、残念ながらクレサンバルの王子はケーキのクリームを削ぐことに全力だっため、答えを得ることは出来なかった。


 使用人たちがクスクスと楽しげに笑いながら「切り分けましょうか?」と声を掛ける。グレイスは溜め息を吐いてその申し出を受け入れた。





 ◇◇◇





 かくして、一連の出来事は幕を閉じた。


 ミレーネとグレイスのサプライズは成功とは言えなかったかもしれないけれど、私たちは大いに飲んで食べて楽しい時間を過ごした。最後には父ヒンスもデ・ランタ伯爵家に姿を現したりして、私は久しぶりの父との会話を楽しんだ。



「………イメルダ、起きてる?」


 夜着に着替えたレナードが扉から顔を覗かせる。

 私は慌てて居住まいを正して、そちらに向き直った。


「起きてるわ。どうしたのこんな時間に?」

「ごめん、少しだけ話をしたくて」

「良いわよ。私も貴方と話したい気分だった」


 立ち話もなんなのでソファに座るように進めると、レナードは首を振って「このままで良い」と言う。いったい何の話が始まるのかしら、と緊張が身体を走った。


「今日の件……すまなかった」

「ふふっ、良いのよ。面白かったから」

「大切なことは一番良いタイミングで伝えたくて、頃合いを伺い過ぎてしまったんだ」

「みんなは知ってたのね?」

「そうだね。色々と助けてもらったよ」


 レナードが私の前で片膝を突く。

 差し出された手には小さな白い箱が置かれていた。


「………私が開けて良いの?」

「もちろん。気に入ってくれると嬉しい」


 パカッと開くと、金色の指輪が目に飛び込んだ。中央には可愛らしいエメラルドが鎮座し、それに寄り添うようにダイヤが二つ並んでいる。



「イメルダ、結婚してほしいんだ」

「……貴方が言うと本当に王子様みたいだわ」


 涙で見えなくなった視界の向こうで「一応王子だからね」とレナードが冗談っぽく笑う声が聞こえる。言葉はしばらく出て来そうになくて、代わりに精一杯の気持ちを込めて愛しい背中を抱き寄せた。


「これは……了解だと受け取っても良い?」

「ええ。嬉しくって…夢じゃない?」

「君は面白いことを言うね。婚約が決まった時からある程度こうなると想像してると思ったよ」

「願ってはいたけど、自信はなかったから……」


 正しくはなくても、正解ではなくても。

 私は辿り着くことが出来た。


「イメルダ、君が生きたいように生きてくれ。僕はそれを一番近くで見ていたい。君が喜んだり、怒ったり、泣いたりする姿を、全部一緒に」

「………出来れば怒りたくはないわ」

「なるべく気を付けるよ」


 私たちは顔を見合わせて笑った。


 レナードが私を抱きかかえて、私たちはふかふかのベッドの上で昔のようにはしゃいだ。くすぐったり、くすぐられたりしながらやっと涙が乾いた頃、そういえばとレナードが不思議そうに問い掛けた。



「グレイス嬢の小説のタイトルって何だったの?」


 私はハッとして固まる。

 恥を偲んで勇気を出して口を開いた。


「…………す、よ」

「え?」

「“溺愛以外お断りです”……!」


 驚いて固まるレナードに枕を投げ付けて、私たちはまたベッドに倒れ込む。ドタンバタンと繰り広げられる物音を何と勘違いしたのか、後日王妃から口枷と鞭のセットがプレゼントされたことをここに記しておく。







おわり。






ほぎゃ…… 16話と17話の順番を間違えるという痛恨のミス。意味不明になってごめんなさい……


いいねくださった方もごめんなさい。

評価などいただけますと喜びます。ではでは…

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