最低のウニを食べさせてくれるアニサキス
「ヘイッ!お待ち!」
『出来るだけ不味くて不快な寿司を頼む』
そう『男』は注文したはずなのに出てきたのはマグロ二貫。さっさとこれを食べて帰ろう……
「うんっ!?」
食品サンプル!?食えないことはない硬さだ。噛めば噛むほど合成樹皮の味が口に広がる。
こりゃ不味い!
この店。あなどれないぞ?
バキッ!バキッ!ゴキッゴキッ!……ゴクン!
「次頼む」
「ヘイッ!」
イカ二貫。
イカ二貫だ。
新鮮なネタ。美しいシャリ。
味も美味い。こりゃあ本当にただのイカ……
「……じゃない!」
アニサキスだ。
喉を通っていくのが分かる程に大きくて生きの良いアニサキス。
ふっ。すっかり親方のペースだな。
「唐揚げ寿司お待ち!」
唐揚げ寿司ねぇ。
回転寿司で見たことがあるぞ。
変わり種だが不快なネタじゃ。
「揚げてないだと!?」
親方がニヤリと笑った。
私を試してるな?生の鶏肉ぐらいで今さらビビってたまるか。
「うん。いーいカンピロバクターだ」
「ありがとうごぜえます」
生の鶏肉に付着する食中毒菌。
胃の中で先ほどのアニサキスとカンピロバクターが喧嘩している。
「お客様。ちっと。うんこしてまいります」
絶対に客に言う必要の無いことだ。
せめてトイレに行ってきますだろう。
うんこ確定か。
ん!?まさか次の寿司ネタは……
「お待たせしやした。ウニです」
ウニ……か。見た目は似ているが『アレ』では無さそうだ。
少しホッとして口の中に入れると不快感がパァーッと拡がった。
「うんこしてたらひらめきやしてね。便器の水で手を洗ってそのまま握りやした」
「……オーマイガー」
この男はサプライズの天才か?『うんこを寿司にする』そんな幼稚な事しか思いつかなかった自分が恥ずかしい。
「こいつが今夜の〆でさぁ。ウニ丼でございます」
ウニ!?2連続で!?いくらなんでもそりゃあ芸がない。
もう便器の水の味には慣れた……。
「……こりゃあ立派なウニ丼だ」
丼から溢れんばかりの山盛りの『大将』のウニ。
さっきのウニでもうこないと思ってた『あいつ』が最後に来た。
まるでソフトクリームみたいにとぐろを巻いている。
「ションベン……いや、おしっこ、いや。特製醤油でお召し上がりください」
私は大将の昼ごはんを推理しながらウニを食べた。
未消化のニンニク。ニラ。
餃子かな?
「おうえっ!おえっ!おええええっ!」
消化する前に出来るだけ吐かないと。
「面白い見せもんだったぜぇ」
暗い山の中で口に指を突っ込んで吐いている私を見てヤクザの男が笑っている。
寿司を平らげる事で私の借金は380万円から320万円になった。
「次に利息分も払えなかったらもっと『うまいもん』食わせてやるからな?」
どうせ私は来月も支払えない。
もういっそ毎月寿司を食うことで借金を返済するか?