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◇そして世界は巡っていく、そして世界は今日も此処に在る

※こちらはボイコネライブ大賞向け作品になります。

■世界は無数に広がっている、それは次元も時間軸も然り、そして世界は無秩序という訳では無かった。

そこには明確なシステムが混在しており、世界に秩序をもたらす調停者が居るのだった。

クロ:なぁ……ワタル。今回も過保護過ぎないか?

ワタル:何を言っている? 僕は調停者として立派に職務を全うしているに過ぎないよ

クロ:職務? これが? エラーの最後まで付き添っては看取るまですることを?

ワタル:そうだ

クロ:へぇー、また君は周りに変わり者と言われるだけだよ?


■世界は無数に広がっていて、システム化されていた。

そして当然の如く、バグが発生しては──それらをエラーと呼んでいた。

エラーを取り除くにはもう一度他の世界のシステムに組み込む事で消去させるプロセスが必要になっていた。

ユイ:お疲れ様です

シロ:また無駄に労力を掛けたのかい?

ワタル:お疲れ様です、ユイさん

クロ:あぁ──そうなんだ。こいつのこれはもう立派な病気だな

ユイ:……言い過ぎですよ。彼は立派に職務を全うしているではありませんか。それ以上もそれ以下もありませんよ

シロ:はーい

クロ:自分の苦労はそこの立派な職務の判定の中には入らないんだな

ユイ:……

ワタル:クロ──悪かったって、ユイさんも困ってる。次からは気を付けるよ

クロ:いつもお前はそう言う──いつかその優しさが……

ユイ:そこまでです

シロ:クロ、口を慎め

ワタル:……?


■そしてワタルは次のエラーが発生し、それの職務に移る事になるのだった。

ワタル:次のエラーは突然の事故死の少女か

クロ:少女ね。──これはまた面倒くさそうだな

ミノリ:えっ。ここはどこ……?

ワタル:いらっしゃい。何もない空間でごめんね

クロ:それはこいつの想像力が無いからだろ

ミノリ:えっと……男の子に──猫?

ワタル:男の子か……そうだね、僕は男の子でもあり調停者なんだ

ミノリ:調停……しゃ?

クロ:世界のバグ……エラーに対処する存在だな

ミノリ:どういう……こと?

ワタル:クロ、それだと彼女は分からない。混乱してしまう

ワタル:ミノリさんかな?

ミノリ:は、はい

ワタル:君には転生して貰う。そこで一生を過ごして貰いたいんだ

ミノリ:てん……せい?

ワタル:そうだ。世界はたまに理不尽になる。だから、それに巻き込まれた君を救済しようと思っているんだ

クロ:……上手い言い回しだな

ミノリ:私は死んじゃったのですか?

クロ:死んじゃってるね

ミノリ:……

ワタル:悪いようにはしない。それに僕がガイド役になろう

クロ:おいっ! ワタルそれは業務が(※い……)……むぐぐ

ワタル:クロ……静かに。彼女の是非が聞けない

ミノリ:……わかりました。宜しくお願い致します

ワタル:わかった。じゃぁ、行こうか


■ミノリは異世界へと転生することになるのだった。

ワタル:ここの世界は魔法と剣のファンタジーだね

クロ:そして中世的だな

ミノリ:ですが楽しいです。お陰様で仲間も見つかりました

※背後ではミノリのギルドメンバー達が楽しそうにはしゃいでいる。

ワタル:もう……大丈夫そうだね

クロ:心配し過ぎだ

ミノリ:はい! 大丈夫です! ここまで本当にありがとうございました!

……

……

※そして時が経ち

ミノリ:あなたは……

ワタル:やぁ、ミノリさん

ミノリ:時たま見てくれているのは気付いてました。……本当にありがとうございました

クロ:また最後まで看取っていやがる

ワタル:これも職務ですので

ミノリ:本当に……ありが───

クロ:亡くなったな

ワタル:……

クロ:いつまで続けるんだ、こんなこと。辛いだけだぞ?

ワタル:……そうだね

クロ:これからもそうやって続けていくのか?

ワタル:僕はそうしたいからね

クロ:けっ。変わり者……のバカ野郎……


■そして何も無い空間──世界の隙間にて

ユイ:あら……お疲れ様ですワタルさん

シロ:変わりはないか?

ワタル:お疲れ様です

クロ:あぁ──いつも通りだ。そう……いつも通りだ

ユイ:何かあったらお気軽にご相談くださいね

シロ:ふーん、じゃぁまた

ワタル:はい、では……

クロ:……

※そしてユイとシロが消えて……

ワタル:くっ──

クロ:どうしたんだ?

ワタル:いや、何でもない

クロ:……


■ある日の夢?の中

知らない世界、でもどこか懐かしい……まるで地球と呼ばれる世界のそして高度に成長した社会。

ワタル:これは夢……?

ワタル:でも、どこか懐かしい……

ワタル:テレビ──緊急事態速報……?

アナウンサー:世界は核戦争が始まりました。世界は人が生きていくための物資がもう有りません。

ワタル:これ……は……?

クロ:……ワタ──

ワタル:クロの声……? 夢から醒めないと──

クロ:ワタル!

ワタル:!!

クロ:やっと醒めたか

ワタル:すまない、夢というのを見ていたみたいだ

クロ:夢?

ワタル:おかしいな……。調停者は夢など見ないはずなのにな

クロ:……なぁ、ワタル。実は──

※そして、クロが話そうとしたタイミングで来訪者が訪れる。

ユイ:こんにちは

シロ:やぁ

ワタル:ん?

クロ:……

ユイ:いえ、すみません。一瞬あなたのシステムの気配が消えたような気がして

シロ:何かあったかい?

クロ:……何もなかった

ユイ:……本当ですか?

クロ:……僕の存在にけて言う

シロ:そうだね、私たちは調停者の監視システム。嘘はつかないものね

クロ:……そうだ

ワタル:すみません、何か心配を掛けたようで

ユイ:いえ、私も新米のあなたの管理を任されていますから気になさらずに

シロ:エラーと関わり過ぎてると狂うとも聞くからね

クロ:……

ユイ:お邪魔してしまいましたね

シロ:ユイ、エラーが発生したみたいだ

ユイ:では私達はこれで

シロ:何かあれば報告するように

クロ:……

ワタル:分かりました

※そして、来訪者は立ち去っていく。

ワタル:ごめん、クロ。何か言いかけていたね

クロ:何でもない、……何でもない

ワタル:……?

クロ:ほら、エラーの発生だ

ワタル:……そうか、分かった。行こうか──クロ

クロ:あぁ──そうだな


■そして、ワタルとクロはエラーをいつも通り看取るのだった。

そして、いつも通り……が続くと信じていたのだった。

ワタル:クッ……

クロ:ワタル!? おいっ! しっかりしろ……!

ワタル:……

クロ:意識を──しっかり持つんだ! ワタル! ワタ……

※そしてワタルは夢?を見る

アナウンサー:日本も終わります。残り……秒で着弾します。

ワタル:これは……

クロ:そうだよ──

ワタル:クロ?!

クロ:大丈夫──僕の権限でシステムはループさせて誤魔化してる

ワタル:……クロ、これは──

クロ:分かってるんじゃないか?

ワタル:……僕はエラーなのかい?

クロ:エラーだね、そして大きな不具合の中で生まれたエラーだ

ワタル:世界に在るのは小さな規模のエラーだけじゃないのか?

クロ:大きなエラーも当然ある。その際は小さなエラーの消去に携わるようにさせて……。小さなエラーの消去の時に合わせて大きなエラーも少しずつ消去していくんだ

ワタル:……

クロ:でも──ワタルはダメだった。寄り添い過ぎた

ワタル:どういうこと……?

クロ:エラーに寄り添い過ぎて、ワタルのエラーは減るのではなく……増え続けていたんだ

ワタル:これはその弊害と?

クロ:弊害はワタルだけじゃない

ワタル:えっ?

クロ:僕もどうやらシステムとして壊れてるみたいだ

ワタル:どういうこと?

クロ:僕は調停者の管理システム。調停者に不具合が発生したら最悪は……強制消去するのが職務なんだ

ワタル:……

クロ:それが現に共に消滅することも無く、ワタルを助けている

ワタル:ごめん

クロ:謝るな。分かっていたんだ──僕にも変な自我が芽生えていたことに

ワタル:……これからどうしたら──

クロ:世界の……中心に行こう

ワタル:……中心?

クロ:僕も行った事はない。けれども、そこが世界のシステムの中心なんだ。何か……方法があるかも知れない

ワタル:わかった。クロ──ありがとう

クロ:僕たちは……パートナーだからな


■そして、ワタルとクロは少ない望みを抱えて世界の中心へと向かうのだった。

ユイ:待ちなさい!

シロ:何かおかしいと思ったんだ!

※そして世界の隙間を縫って移動するワタル達に調停者たちは襲い掛かって来るのだった。

ユイ:おかしい

シロ:彼らの能力の高さはなんだ?!

調停者たち:魔法が弾かれる!

調停者たち:超能力も掻き消される!

クロ:ふん、ワタルを舐めるな。ワタルはお前たちと違って寄り添いあって来たんだ!

ワタル:ずっと色んな世界を巡っては付き添って──経験を吸収してきた事が役立つなんてね

ユイ:くっ! ダメ……止められない!

シロ:ユイ! このままだと追い付かない……!

調停者たち:これ以降は我ら調停者は立ち入ってはいけない世界の中心の領域!!


■そして、ワタル達はユイとシロ、その他多勢の調停者たちの猛攻を振り切って世界の中心のエリアへと踏み込むのだった。

ワタル:ここは……

クロ:世界の中心──。なんだ、この無数の光は……

ワタル:この光……中心へと収束している

※世界の中心は無数の光が溢れていて中心に向かって収束しているのだった。

クロ:ワタル……! これはただの光じゃない!

ワタル:そうだね、これは……記憶? いや、システム? 情報なのか?

クロ:この光の束、1つ1つがシステム……?

※莫大な量の光は中心へと近付く度に収束が光が溢れていくのだった。


■世界の中心──そこには巨大な光り輝く大樹と……そして、こじんまりとした家があるのだった。

ワタル:家……?

クロ:樹……?

※一人と一匹は首を傾げつつも隣り合う光り輝く大樹と家に近づいて行くのだった。

ワタル:凄いな……全ての光がここに集まっているのか?

クロ:光じゃない──記憶、システム、なんていったら良いんだ?

ミカ:……いらっしゃい

クロ:誰だ!?

グレ:ミカに向かって誰だとはなんだ!

ミカ:まぁ……グレ、よしなさい。きっと時間が凄く経っているのよ

ワタル:時間……?

グレ:ふんっ。そんなことも分からないのか?

※目の前には物凄く高齢な……老衰しているお婆ちゃんと同じく年老いた灰色の猫が居るのだった。

ミカ:世界は時間軸が違うから流れる時は違うでしょう?

ワタル:はい、それは知っています

グレ:なら、分かるんじゃないか? ここの時間の経過する遅さが

クロ:何を言って──そんなの……世界の隙間の時間とおな……え?

ワタル:クロ?

クロ:おかしい、遅すぎる──ほとんど静止しているのと同じじゃないか……

ミカ:ふふふ

グレ:やっと気付いたのか

ワタル:えっ──そうなるとあなたは……

ミカ:そうね、私もあなたと同じくらいの年齢の頃に……このグレと一緒にここに来たの

グレ:……お前たちも俺と一緒なのだろう?

クロ:一緒とは?

グレ:見て分かる──クロお前は壊れてる

クロ:……

グレ:俺も壊れてる……意味は分かるな?

クロ:……まさか

ミカ:えぇ──そうね。私に引き継がれたのはだいぶ昔に感じるわね

ワタル:えっと──引き継がれるとは?

ミカ:ここの管理のことね

ワタル:管理?

ミカ:世界は私の事を神様とも呼んでいるのよ?

クロ:……

グレ:……

ワタル:あなたは神様なのですか?

ミカ:そんなことあるはずないじゃない。あなたと一緒の存在よ

ワタル:ですが……

ミカ:私は引き継いだの。ここの……世界の中心──この大樹の管理をね


■そして世界のシステムの全容が明かされる。

ミカ:世界は大樹から出来ているの

ワタル:えっ?

ミカ:世界は大樹の枝葉というのかしら……

グレ:エラーとは成長する過程での不要部分ともいうのかな

クロ:……それは

ミカ:えぇ──この樹が起源なの

ミカ:世界は1つの実から始まって、この大樹の成長に合わせて広がっているの

ミカ:世界の広がりは成長に合わせて、時間も養分の行き届きによって変わるの

ミカ:そして大樹の一番近くはほとんど時間は止まっているのは養分が既にいつも満ち足りているからかしらね

ワタル:ここには誰も居ないのですか?

ミカ:今はあなた達とわたし達しか居ないわね

ミカ:大樹がそれ以上は寄せ付けないの……そして、どうやら選んでるみたいね

ワタル:選んでるとは?

ミカ:心当たりはない? 周りと何か違う部分……無かったかしら?

クロ:……ありありだね

グレ:……きっとミカと同じだね

ミカ:私と多分一緒ね。変わり者しか辿り着けないし受け入れられないから

ワタル:僕は認められたと?

ミカ:そうともいうし、残酷だけれども任されたとも言えるわね

ワタル:それは……

ミカ:ここは全てのイノチの場所ですから

グレ:……生かすも殺すもお前たち次第ということさ

ミカ:ごめんなさいね、こんな大役嫌でしょう?

グレ:……ミカは嫌だったのかい?

ミカ:私はそんな事無かったわよ? グレと一緒に最期まで居られるのだから幸せだわ

ミカ:それに最期にこうやって心が通い合える仲間とも会えたのだから

グレ:……俺も壊れてしまっているが、それでミカとこんなに幸せなら本望さ

ミカ:ワタルさん

グレ:……クロといったな

ミカ:後任お願い出来るかしら?

グレ:……お願い出来るか?

ワタル:────────

クロ:────────


■そして悠久の時が経ち──。

ユイ:シロ! 追い付かれちゃう!

シロ:何を言ってるんだ? ユイ、沢山寄り添いあってきた中で培ってきたものがあるだろう?

ユイ:それもそうね──それに私とシロなら!

シロ:あぁ、こんなへっぽこ調停者たちなど目ではない!

ユイ:シロ! あなたのいう薄い希望だけれども世界の中心へはこのルートで……

シロ:合っている! 大丈夫だ

ユイ:えぇ、そうね

シロ:それにしても私たちも焼きが回ったものだ

ユイ:ごめんなさいね!

シロ:いや、今にして思えば懐かしい思い出だ

※あのワタルとクロの件以降、ユイとシロはモヤモヤを抱えてしまい──システムに報告、そして悠久の時をエラー対処の一時凍結として凍結処理されていたのだった。

そして、悠久の時が経ち──世界のシステムが凍結解除の判断を下し目を覚ました一人の女の子と一匹の猫だったが、ワタルとクロの事を未だに処理が出来ておらず、まずは彼らを模倣することから始めたのだった。


────そして、彼女らは……。

シロ:ユイ! 後もう少しで──

ユイ:うん! 目の前に見えてきた!

調停者たち:くっ! 何も通じないとは!

調停者たち:これ以上は立ち入ってはならない世界の中心の領域!!


■そして、彼女らと彼らは悠久の時が経ち──再開し、そして分かりあうのだった。

ユイ:ワタル……あなた随分と老けたわね

シロ:クロ? お前もふにゃふにゃだな!

ワタル:お久しぶりです。 ……本当にお久しぶりです。

クロ:お前も──か。

シロ:おかしいか?

クロ:いや、何故か嬉しいよ。

シロ:そうか、何故か私も嬉しいんだ

ワタル:では引き継ぎの話に……


────そして世界は巡っていく、そして世界は今日も此処に在る。

お読みになって下さりありがとう御座いました。

きっと、これからも世界は続いていくのでしょう。

それは世界に理不尽なエラーが無くなるまでか。

はたまた、世界を構成する大樹が枯れるまでか。

永遠は無いけれども、膨大な時間は流れていくのでしょう。

改めて、お読みになって下さりありがとう御座いました。

また、彼らの彼女らの物語が……何処かで紡がれる事を。

そして、次の引き継ぎの調停者の物語もあるのでしょう。

だって、そこに世界は在るのだから──。

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