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朝顔の観察日記 CASE.07


昭和Y・S

――――――――――――――――――――――――――――――――


08月31日

はれ

たねをうめた。


よるまでみていたけどめはでませんでした。



09月01日

はれ


あさみたけどめはでてませんでした。


――――――――――――――――――――――――――――――――



 確信犯である。

 これは、提出された教師が読んだ反応にその後の行動までもを先読みした物。

 故にまんまとそれにのせられ、この生徒に告げた事に


「この続きを書きなさい」


 と、この生徒はニコリと笑い


「はい、わかりました」


 そう、とても素直な返事を返し、夏休みの宿題を夏休み後に悠々とする事に成功したという。




 ちなみにこの生徒は転校生であり、一年生時のこの観察日記の提出物は転校前の学校から送られて来た物である。


 ……危険因子の証拠として。


 私は5・6年生時を受け持ったが、この生徒程に恐ろしい生徒は後にも先にも見た事が無い。


 いつだったか、勉強に関して注意した折に次の様な台詞を吐かれてハッとしたのを覚えている。



「漢字なんて今ですらワープロが在んだからその内計算機みたいのが出るでしょ!

 そもそも日本語なんか古い言葉と全然変わってるんだから今ウチらが話してる言葉が日本語になってくんじゃないの?

 英語だって翻訳機が出れば覚える必要もなくなるし。せいぜい物を作る側に回る人達に必要な専門知識ってな感じじゃないの?

 数学も難しいのは税金の計算とか色々必要なんだとか言ってるけど、その面倒な計算しなくてもいいようにした方が早くね?

 計算出来る出来ないで損得が生まれる税金って、それこそ問題じゃん!

 歴史も勝った奴等が勝手に作り変えてるって歴史を教えといて歴史を覚えろとか……アホくさっ!」



 この十年程の後に98やXPといったWindowsPCの普及により、そして今や世の中をスマホが席巻している事に、彼の言葉が現実になった世界を見ているようで何とも返す言葉が今になってみれば無い。


 歴史とは史実であって事実ではない事も、税金のカラクリにしたって当時からキチンと彼の話に向き合っていれば昨今のような税金や補助金の搾取に至る術も防げた可能性すら有る。


 けれど当時の私はそれでも覚える事の大切さを説く他になく、作る側になるかもしれない生徒だって居るだろ! と、言うと彼が返して来た台詞に私は恐ろしくなったのだ。



「なるほど、そうかも! でも色んな機械が出来たら教える先生も機械になって、先生も要らなくなんじゃないの?」



 私は返す言葉に詰まり、想像に恐ろしく、それが本当になる気がして……うるさい馬鹿が! と、自分の思考ごと煙に巻いた記憶が恥ずかしい。



 けれど、この他にも彼が言っていた言葉が現実を捉えているとすれば恐ろしく真理を得ていた話がある。


 今から20年程の前に彼と偶然駅前の無料駐輪場で会った際の事だ。



「駅前の無料駐輪場を撤廃して放置自転車増やせばそれもシルバー人材センターの儲け。先生はシルバー人材センターどう思う?

 どうせ自転車排除目的で車道拡幅して『外車輸入増やすから日本の車も買ってよぉ』ってアメさんに外交する為でしょ?

 駐輪場無くなったら電車乗る人も減るだろね」




 その後知った事に……

 当時の政権が奨めた政策に乗り、市区町村に対し国交省及び警察機構の奨励する道路拡幅工事事業計画案に基き、駅前開発に対しても……



 それまであった無料駐輪場の撤廃を進める為に、市区町村が持つ無料駐輪場が有れば撤廃と同時に有料駐輪場にシフトさせシルバー人材センターへの報酬とその後の土地転売計画を容易とする。


 それが地主の土地であれば、その土地に対して無料駐輪場は課税対象とする旨を地主に伝え、駅前のマンションやテナントビル等への転用を奨めていた。

 と、ある議員の息子である教え子から聞かされた。



 その議員の息子曰く、物事の本質が見え過ぎているが為にあの生徒は、以前から悪事に手を染める国や組織の輩が作る社会にとっての危険分子とされており、彼の作り出す事や物やの全てを潰し続け、彼の尊厳すらも組織的な数で作る偽りにより貶めているという。


 そして、もうすぐあの生徒は殺されるが、警察も病院も、ある議員達の特権により自然死とし事件として扱われる事も無いだろうとの事。


 

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