第7話
それから1週間、自分が虫に喰われた場所から財布やらを回収しいつの間にか振り込まれていた退職金と貯金を怪しまれないよう毎回コンビニを変えつつ引き出して生活していた。
「警察に真昼間から怯えるのめんどくせぇな」
「変身前のウミの服をずっと着ているせいミイ、早く服を買えミイ」
「そんな無駄な金はないんだわ、スティックパンと水が今週のメインメニューだぞ」
「そういえば忘れてたミイ」
カメラのない河原の橋桁の下でそう言うと、レイクはフサフサとした胸元から俺が割ったであろう先週倒した魔物の核の欠片を取り出した。どうやら魔物というのは本来俺みたいに自然発生せず前兆が必ず発生前にあるため俺はなかなか獲物にありつけないでいた。
「それ!お前、こんなとこで!?」
「魔力がない人には見えないミイ、ちなみにこれは組合が買い取ってくれてるミイ」
この野郎、俺が野良で魔法少女組合から逃げてるのを忘れてやがるのか?
「さっさと捕まって組合に入れミイ、その方が楽だミイ」
「何度も言うが楽な道を紹介してお前になんの得があるんだよ、レイク」
「お前のせいでお尋ね者妖精になった事をレイクは忘れないミイ!」
ああ、そうだった。回想は5日前に遡る。
●●
「おい」
「なんだミイ?」
「魔法少女やれって言われてもちょっと知識が足らん、特にお前の」
「こっちだって骸骨のことをなんも知らないミイ」
「それもそうだな、この関係はこれで行こう」
「それがいいミイ」
俺はレイクを連れてとある方角へ向かう、そう恐らく俺が死んだ場所だ。暗くなり人通りが減ったのを見計らって動く。
「どこへ行くミイ?」
「少し黙って着いてきてくれ」
あった、財布があったのがでかい。スマホは綺麗に真っ二つだったので使えないが仕方ない。
「それって、お前のミイ?」
「聞くな」
「わ、わかったミイ」
ATMでとりあえず金を下ろそうとしたが気がついた。
「なあ?服ってどうしよう」
「その着てるやつはこの国の正装じゃないミイ?」
「さっきの交戦時に1人へツラ割れてるんだよね」
「そういうことは早く言うミイ!」
「悪かったって」
「うーん、賭けなんだけど1個思いつくミイ」
「と、言いますと?」
「変身前のウミの服がもしかしたら残ってるミイ……」
ああ、物凄い嫌なんだろうな。
「俺は着るぞ、お前はただ俺を恨め。それでいいよ」
「……。ミイ。」
変身を解除してみる、唸ったら行けた。
「いやまあ、これはこれで放置児童感やばいな」
「そういうこと言うなミイ!」
「おう、悪かった」
「とりあえずお金を調達してくるミイ!」
「……それはいいんだけどさ、ウミには帰るところは、その、無いのか?」
「あんな所家じゃないミイ、生計だって魔法少女としてウミは自分で立ててたミイ、最近は虐められて難しかったみたいだったけど……ミイ」
「そっか、ならいいや」
「でも寝床はどうするミイ?」
「そりゃお前、野宿だよ」
「流石に身体を壊すミイ!?」
「まあ野良魔法少女ってのは恐らく処分対象みたいだったから仕方ないだろ」
そうだ、俺は借り物の身体を早く磨り潰さないと行けないのだから。
「さて、金ない飯と言えばこれだよな」
「何買ったミイ?」
「捨て値売りのおにぎりと1番安い水、あとカツみたいな駄菓子」
「なんか凄いことしようとしてないミイ?」
河原に移動した俺は真っ暗な川辺に座る。あとはこれを骨盤っぽい皿みたいな骨の上にぶちまけて、啜る!
「人間しょっぱくてスルスル食えればなんでもいいんだよ」
「ちょっと人間として終わってるミイ」
「元は骸骨だからな」
今や、な。
「そういうことしてる時に限って運が悪くなったりするもんミイ、それこそ魔法少女に見つかるとか」
「君こんな時間に何してるの?」
ゲェ!フラグ立てやがって!
「その妖精に話しかけられてました!助けてお姉ちゃん!」
逃げるに限る!元はと言えばフラグ立てたレイクのせいだろ。
「やりやがったミイ!」
「とりあえず、お話聞こうかポム」
「レイクは無罪ミイ!」
「名前はレイクっと」
「レイクも逃げるミイ!!!」
「あー!待ちなさい!!!」
2人して逃げるも、最初に出会った路地で再会した。
「災難だったな、お尋ね妖精」
「骸骨、お前ほんといい性格してるミイ」
「とりあえず、もっと逃げ方は工夫しねぇとな」
「全くだミイ」
●●
「あの子、多分噂にあった野良魔法少女ね」
「そうポム、しかも相当な魔力量ポム」
「組合に報告しなきゃ」
残念ながら、骸骨もしっかりとお尋ね者であった。