第5話
魔法少女ってやつはコスチュームも変身すると着替えられるらしい、俺は営業時代に着ていた安物スーツに似た衣装を身にまとっていた。スーツの見た目はしているが動きやすさはかなり感じる。というか動きやす過ぎる、住宅街の屋根を伝って飛び回っている。
「いた」
違和感の消えない高い声を耳にしながら魔法少女が魔物と対峙しているのを見つけた。魔法少女にはあまり詳しくないが、1人は負傷し意識不明。もう1人が孤独に対峙しているが恐らく危険に違いない。
無言のまま駆け出す!
「もうっ、無理かも……。って何!?」
間に合ったぞ!凡骨、平原ッ!先程把握した身体能力の漫画みたいな上昇に甘えて俺は飛び込んだ。手に骨を握りタコのような魔物の触腕を払う。
「それじゃ黒霧を吸っちゃうわ!ダメ!!」
骨で掻き回した所からは黒霧が晴れ、中央の紫に光る核が見えてくる。棒術などは分からないがとにかく叩く。タコのような輪郭の煙は度々骨を弾いてきてヒビか入る。
「嘘…杖が折れて、そんな……」
後ろの少女から声がするが今は無視だ。
「折れたなら、もう一本!凡骨平原!」
段々と弾性を増してタコ型の霧の塊だったものが巨大なタコになっていく。煩わしい。大人の背骨程の長さの骨を握りながら走り回るがリーチが足りなすぎる。
「実態があるならさぁ!お前からも骨が生やせるんじゃねぇか!?凡骨ゥ平原!」
案の定タコを縛るようにオレンジ絞り器見たく山型に骨を生やす。大量の黒霧が舞うがお構い無しだ。そのまま自分の足から鏃のように骨を組んで蹴りこんだ。
「これでトドメだよ!タコが!」
核を砕ききり、その石以外カスミひとつ残らない。倒し終えたことを確認すると先程の少女が慌てて駆け寄ってきた。
「あなた動かないで!黒霧を吸いすぎて不味いわ、所属はどこ!?組合の担当官の名前は!」
「俺は、なんだろうな?」
「え?き、記憶が、そんな…」
「いや、ちがう!そう!俺は野良だ。野良魔法少女だ!」
「そんなの、そんなの許すわけないでしょ!良いわ今からあなたを縛ってでもしょっぴく!」
不味い、逃げないと。今日は逃げてばっかりだと笑いながら少女に背を向ける。俺が殺したこの少女がどんな身分かも分からないし。
「凡骨平原!」
その少女との間に壁を作り、足の裏から骨を生やして跳ねるように逃走する!とっさに思いついたにしてはこの移動いいね、採用。
「待ちなさい!」
言葉とは裏腹にもう1人の少女のために動けないその子を尻目に、俺は胸にやけるような痛みが走り始めたことを無視しながら逃げた。
激しく痛む体と裏腹に、俺は昔を思い出す。
「俺は、誰かを守れるぞ……!」