第4話
体が少しづつ感覚を取り戻す、まるで何かにインストールされるようにゆっくりと。
そろそろわかる、これは夢なんかじゃない。俺は本当に数時間魔物になっていたし先程の女の子は俺が殺した。その事実を受け入れることが苦しい、頭を抱えたくて仕方ないが腕がまだ無い。そうしてほんの少しの時間が経ち。
目を開けると女の子になってました。
「なにこれ、え、俺どうなってる?」
「なっ!?ウミを返すミイ!お前さっきの魔物だろミイ!?」
「しらねぇ!なんなんだよこれは!」
もはやどんな服だったか分からないほどボロボロの衣装を着た俺が叫ぶ、先程やや茶色だった彼女の髪は真っ黒に染まっていた。俺は、この少女を殺すに飽き足らず身体を乗っ取ったのか……。
「こんなの…どう償えっていうんだ」
レイクが俺の周りを飛び回りつつ詰る。
「辛い日々を生きて、やっと魔法少女になって世界を見返せるところだったミイ!でもその心が死んでもその身体を誰かに辱められ、魔法少女達からは疎まれたミイ!出てくミイ!もう楽にしてあげて欲しいミイ!」
「俺に、死んでくれって話か?」
「そうだミイ、でもウミはみんなの為に戦えて嬉しいって言ってたんだミイ、だから」
「だから?」
目を強く合わせ、レイクは俺にこう告げた。
「戦うミイ、死ぬまでそうやってウミに償えミイ。魔法少女は強い正義の心や締め付けられた心を力に戦うんだミイ、だから1人の女の子をそのまま身体に縛り付けるお前はきっと強いミイ。」
ああ、そんな言葉を待ってたんだ。
「教えろ、レイク。俺はどう戦えばいい?」
「1度しか教えないミイ、骸骨」
「はは、いいなその呼び方」
「目を閉じるミイ」
「あいよ」
言われた通り目を閉じる。
「頭に1番最初に浮かんだ言葉を唱えてみろミイ」
「ああ、わかった」
脳裏に映るのは骨になった俺、心の死んでしまったウミという少女、あの虫。そして砕けた俺の身体。
「”凡骨平原”」
すると俺の手に大腿骨ほどの骨が握られ下はコンクリートだと言うのに数本の同じくらいの骨が生えていた。
「もう魔法すら違うんだミイ……、まあいいミイ。その骨を振り回して戦えってことミイ。後は魔物は中心の核を砕けば死ぬこと、魔物から散る黒霧は吸ったら精神をやられることを覚えておくミイ」
「よし、わかった。それで魔物ってのはどう探せばいい?」
「ウミの携帯に魔物の出現を報告するアプリが入っているミイ、そこ以外を開いたら許さないミイ!」
手でレイクを制しながら告げる。
「ちょうど、警告が来てるな。行ってくる」
足元の骨を感覚的に消して、俺は駆け出した。
「せめて、沢山役に立って死ぬミイ……」
そんな甘い言葉は、聞こえなかったことにした。