第3話
プチプチを潰す感覚、と言えばいいだろうか。手当り次第暴れるというのはなんて気持ちが良いのだろう。
悲鳴や怒号が聴こえると思ったのだがそんなことはなく、結局目も見えないままだから何だかベットでバタバタしているだけのようにも感じる。
それも悪くないけどな。
とにかく身体が軽くていい、とてもいい。こうやって俺が腕を脚をよく分からない何かを全く疲れ知らずに振り回せることが快感だ。昔からずっと呼吸器が弱く運動なんてもってのほか、成長と同時に改善されたその体質もそれを言い訳に体を甘やかし続けた。その事には無限の後悔がある。
やめよう、夢の中でまでそんなことは考えたくない
「と、とまとまとまって!!」
なんだ?
「ま、魔物を退治するのが魔法少女、わたしがあなたを倒すんだから!」
「いけー!」
「がーんばれ!がーんばれ!」
知らない声がわんさか聞こえてくる。
「まずは!黒霧を散らす!」
身体に異物が入り、通り抜ける感覚がある。すると身体が重くなってきた。面倒だ、そして怖い。まるで肉を刃物で削がれているような感覚にどこに行ったか分からない首筋から冷や汗を感じた。
腕を声の方に振る。
「ほらー霧を浄化しない死んじゃうよ!」
「う、うん!!」
なんで楽しそうな声がするんだ!?俺がこんなに怖い思いをしてるのにおかしいだろ!?
…俺はフェイントをかけ、1番近い声の主を身体に取り込むように腕で薙ぎ払った。
「ゲホッ」
仕留めた!……仕留めた?
「ヤバい、やばいよ!!あいつ見た目と違って知能個体だ!」
「応援要請!!魔法少女1名殉職!魔物は知能個体!」
反対側から声がする、俺は今女の子を1人殺したのか…?
俺は、なんて、なんてことを……!
その子の遺体を攫って俺は逃げ出した。逃げるしかない、俺に出来ることは今それだけだ。
「コ、コレハユメダ!」
逃げる度に身体から何かが剥離していく、そして俺がもとの体くらい小さくなったころ。
「ウミー!大丈夫かミイ!?…そんな、まさか」
「オマエハ、ナンダ?」
うわ!?俺変な声!
「その子と共に産まれた妖精、名前はレイクだミイ」
その自己紹介とは反対に態度や視線は俺をまるで縊り殺したいような目だ。
でも当然だろう、自分の知り合いの亡骸をその仇に見えるものが、いや仇そのものが抱えているのだから。
そう思うとさらに頭が冷えていき目も視力を回復し始めた。そして分かる、痩けた少女を白い白骨死体が抱えているのが。そう、俺だ。
「オレ、ドウナッテル……?」
すると青いコアラのような妖精とやらが俺に返した。
「ボクの大事なウミを抱えて今にも殺戮の限りをしそうだミイ」
「ソンナコト、ノゾンデ、ナイ」
絶望が広がる度に身体が崩れていく、抱えているからわかるがほんの少しだけ息をしている彼女を床に横たわらせた。そして、どんどんと俺の身体は崩れていく。
「まさか、逃げるミイ!?そんなの許さないミイ!!!」
しかし身体の骨は風化して砂となっていく。そして、俺は………。