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クリスマスにプロポーズされる話

作者: 香月 東


12月24日の夕方。


職場で関係者家族を招いてクリスマス会パーティーをやった。


今は職員と、準備を手伝ってくれた助っ人数人でその片付けをしている。

私は事務室で、事務員の方と一緒に倉庫から持ち出した物品が紛失したりしていないか、

事前に作成した一覧のチェックを手伝っていた。


「お疲れ様でーす。」


そこに、サンタの衣装と大きな袋を抱えた彼が入ってきた。


プレゼントの管理も私の仕事だったこともあり、

彼はサンタの格好をしてプレゼントを配る係を引き受けてくれていた。

プレゼントは配り終えたはずだが、彼が抱えている袋の中にはまだ何か入っているようだ。


「遅くまで片付けお疲れ様です!ということで、皆さんにもプレゼント、

もとい、差し入れを持ってきましたー」


そう言いながら彼が袋から取り出したのは、やや大きめのクッキー缶。

パーティー用のケーキを購入した、近所のパティスリーの商品だった。


「おや、××××のクッキーですか」「差し入れありがとうございまーす」


彼が缶の蓋を開け、他の差し入れと並ぶようにテーブルの上に置くと、事務員の方や、

ちょうど会場の片づけを終えて戻ってきた同僚達がめいめいに手を伸ばし、それぞれ好みのクッキーを取って去っていく。


私もありがたく頂くことにして、ジンジャークッキーを手に取る。


噛み砕くとショウガの香りが広がり、パーティーで料理もケーキも目一杯食べたのだが、少しさっぱりしたような気分になった。


なるほど、甘党な彼がジンジャークッキーを好むのはこういうことか、と納得していると、衣装と袋を片付けてきたらしい彼が事務室に戻ってきた。


そのまま私の横にパイプ椅子を持ってきて座る。


そして、ボランティアの方へ、と箱に書かれた、誰かの手作りらしいチョコブラウニーに手を伸ばし、包装を剥きながら訪ねてくる。


「ん。今日は何にしたの?」


「これは、……ジンジャー。」


「……んぐ、珍しいね。どうだった?」


「んー、案外いいかも?」


「そっか。それはよかった」


口に含んで飲み込んで、私の答えを聞いて、言葉を続ける。

人によってはじれったいと思うかもしれないが、私は彼の会話のテンポが好きだった。


今日のような、疲れている時は特に。


テーブルの近くに寄せられていたゴミ箱に空になった包装を放り込んで、

持参したらしいウェットティッシュで口や手を拭いて、彼はポケットから黒い小箱を取り出しながら言う。


「おぉそうだ、もう一つプレゼントが残ってるんだよ」


「私に?」


「他にいる訳ないじゃん。」


彼がサプライズとは珍しい。


そう思いながら、彼から手渡された小箱を開けて見ると、その中身は空だった。


どういうつもりなのか。そう言おうと思い彼を見ると、彼は照れ隠しのつもりらしい苦笑いをしながら続けた。


「やっぱり、サプライズは好きじゃなくてさ。明日のデート、午前中は指輪を買いに行こう」


明日は一日中家で相手をしてもらうつもりだったのだが、しょうがない。


「いいよ。奢りね」

「もちろん。プレゼントだから」


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