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執筆などのつれづれ

ゴブリンって……弱い?

作者: 風待月


 問いたい。

 ゴブリンって、弱いの?

 多くの人はそういうイメージなの?



 ○ ○ ○ ○ ○



 なろう系作品を読むと、決して低くない割合で、序盤の敵としてゴブリンが登場する。

 最近はさすがに数が少なくなってきた、主人公がチートもらって異世界転移するストーリーだと、盗賊と二分する割合で高貴な人か商人を襲って主人公が俺TUEEEするための噛ませ犬第一号役だろう。

 人間以外、モンスターに異世界転生してしまう作品だと、スライムだと某大御所作品があるからか、ゴブリンを最弱として主人公とする作品が散見できた。

 他にもゴブリンを最弱と設定している作品も見受けられる。


 これがどうも自分にはすんなり納得できない。ひっかかりを覚える。


 勘違いしないで頂きたいのは、自分もゴブリンを、ドラゴン並みに強いモンスターだとは思っていない。ゲームでも小説でも漫画でもアニメでも、序盤で登場する雑魚モンスターという見解は一致している。


 ただ、『最弱』とまで評される存在か? という疑問を抱いているだけだ。

 単体と複数体でまた扱いが違うだろうが、ゴブリン・シャーマンとかゴブリン・リーダーみたいな上位個体でなくても、RPGで最初に戦うボスキャラくらいの強さをイメージするのだ。使いまわしで後々雑魚モンスターとして出てくるような。



 いやまぁ、この辺りは、自分が古いアナログゲーマーなことも影響しているのだが。


 例えばスライム。最弱モンスターの代名詞だろう。

 だがテーブルトークRPGだと、スライムは強敵として設定されているシステムが多いので、自分もそのイメージなのだ。

 不定形で狭い隙間にも侵入し、擬態したり天井から落ちてプレイヤーを奇襲し、物理攻撃に対して非常に耐性が高い、厄介なクリーチャーといった感じで。


 ただし『ウィザードリィ』『ドルアーガの塔』『ドラゴンクエスト(以下ドラクエ)』といった大御所ゲームを経て、スライムが最弱モンスターのイメージが定着した経緯は割と有名な話なので、知っていれば理解もできる。



 だけどゴブリンはなぁ……?

 なんで弱いイメージがついたのか、首をひねるのだ。



 まず、ゴブリンは人間と比較して肉体的には貧弱なれど、ある程度知性があり、原始的な道具を使うといったイメージが一般的だろう。

 しかもオスしかおらず、多種族の女性を攫って繁殖なんてエロ仕様であれば、それなりに筋力がなければ不可能であろう。


 この時点で最弱の王座をかけて戦えば、スライムに勝つだろうと思ってしまう。スライムがいなかったり、スライムの強さがアナログ基準の世界観なら知らんけど。


 漠然としたイメージだけでなく、具体的な例を出していくと。


 『ダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)』『トンネルズ&トロールズ(以下T&T)』といったファンタジー世界のテーブルトークRPGだと、ゴブリン退治はお決まりのセッション(ゲームシナリオ)だ。

 クライマックスで倒すことがゲームの目的となるので、ゲームマスターは、プレイヤーたちと互角か少し弱いくらいに調整する。つまりプレイヤーの立場で見れば、ナメてかかれば全滅させられることもありえる強い敵なのだ。


 前述『D&D』『T&T』もそうだが、ゴブリンを単純なモンスターではなく、種族としている設定も多い。エルフ・獣人・ドワーフといった亜人種と同等に、個々の能力値、特に腕力・体力は劣れど、総合的には決して雑魚扱いできない存在としている。


 ファンタジーサイバーパンクTRPG『シャドウラン』だと、ゴブリンという種族やモンスター(クリッター)は登場しないが、ゴブリン化現象(ゴブリナイゼーション)という言葉が登場する。

 ある日突然魔法の概念が登場し、一部の人間がエルフやドワーフ、オークやトロールといった亜人種になった現象だ。つまり亜人種=ゴブリンという扱い。弱者のニュアンスはない。


 トレーディング・カード・ゲーム流行の走りとなった『マジック・ザ・ギャザリング』においても、ゴブリンは外せない。赤単ゴブリンデッキは、比較的安価で作れてコンボが使いやすく安定した強さを発揮できた。


 アナログゲームから離れると……


 現在のゴブリンのイメージを作り上げた、J・R・R・トールキンの『指輪物語』『ホビットの冒険』だと、オーク≒ゴブリンとして使われている。原作と映画版『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』とも使われ方がちょっと異なっていて少々複雑なのだが……

 肉体的にはせいぜい人間の子供くらいだが、知能を持ち、火薬や武器の発明に関わるなど、知能が低いとされているゴブリン像よりも凶悪な印象の設定がなされている。


 邪悪な種族としてではなく、日本語では小鬼と訳されているが、J・K・ローリングの『ハリーポッター』『ファンタスティック・ビースト』シリーズにもゴブリンは登場する。グリンゴッツ魔法銀行で魔法界の金融を(ぎゅう)()っている。下手すると人間よりも優れた存在だ。


 きっとエルフを日本に広めただろう、和製ファンタジーの金字塔、水野良の『ロードス島戦記』。1988年刊角川文庫版『ロードス島戦記 灰色の魔女』の時には既に、主人公たちが最初に戦った敵はゴブリンだ。

 しかしゴブリンの群れを主人公と親友ふたりで殲滅しようとするも、瀕死の重傷を負う。見込みの甘さがあったとはいえ、装備を整え鍛えられた人間でも死にかねない敵として描写されている。


 最近のファンタジー作品でも、十文字青著『灰と幻想のグリムガル』、蝸牛くも著『ゴブリンスレイヤー』でも、単体ならまだしも集団ならば強敵、場合によっては人類の脅威になりうる。


 ファンタジーから離れてゴブリンを探すと、他にもあった。

 マーベル・コミックの『スパイダーマン』に登場するグリーン・ゴブリン。原作『The Amazing Spider-Man』にて最初にスパイダーマンと本格的に戦う悪役(ヴィラン)だ。

 造形をモチーフにしているだけで、ファンタジー生物のゴブリンとは直接関係ないが、序盤の敵ではあっても弱いはずがない。代替わりしながら何度もスパイダーマンと戦う宿敵として描かれる。


 更になろう掲載作品、ローファンタジージャンルでのダンジョンものを見ると、浅階層で出現するものの最上層最弱の敵ではなく、もう少し進んだ先に登場する敵という設定が多いように思う。

 しかも人間に近い二足歩行のモンスターということで、精神的忌避感を乗り越えて倒せるか、立ちはだかる壁として機能している設定も見られる。


 このようにゴブリンに、『序盤の敵』というイメージはともかく、『弱い』というイメージは覆されている場合が多い気がしてならない。


 ○ ○ ○ ○ ○



 なら逆に、明確にゴブリン=最弱と定義している作品はあるのか?

 そう思って探したら……あったよ。しかも超大御所。

 『ファイナル・ファンタジー(以下FF)』シリーズだと最弱モンスターはゴブリンだったよ。


 しかし自分もそうだったが、『そんなイメージない』という人も多いのではないかと思う。

 作品ごとに扱い方が違うのだ。このあたりドラクエにおけるスライムとは全く違う。


 ストーリー序盤で戦闘する、最弱モンスターとしての扱いは、シリーズ通してだとFF5で止まる。FF6日本版、FF8・FF10では登場しない。(FF6北米版には登場。ただし終盤の敵)

 以降はマチマチになる。

 FF7だと終盤でないと行けない島の地域限定モンスター、FF9だと序盤の敵ではあるが、その前に対人イベント戦闘が複数回あり、またステータス的にもゴブリンよりも弱いモンスターが存在する。FF13でストーリー後半に登場と、純粋にステータスを比べるとむしろ強くなっている。

 FF11以降になると純粋なモンスターではなく、獣人や亜人種という扱いになっている。登場し、戦いはしてても、モンスターとは違う扱いをしている。名前も違うパターンも。

 FF15になると純粋なモンスターに復帰するが……特別なモンスターになっている。しかも強い。


 ゴブリンが序盤の最弱モンスターとして扱われていたシリーズ初期を、リアルタイムでプレイした世代は記憶があやふやだろうし、アーカイブを探ってまで旧作をプレイする若いプレイヤーも絶対数は少ないだろうから、どうしてもゴブリン=最弱のイメージは薄くなるだろう。


 同じスクウェア社(当時はエニックス社合併前)の作品ということで、魔界塔士SaGa、ロマンシング・サガ、聖剣伝説といったシリーズ、FFの派生作品でもゴブリンの名は見る。

 しかし扱いはFFシリーズと同じで、必ずしも序盤最弱モンスターではない。



 ○ ○ ○ ○ ○



 自分としてはこんな感じなんだが……


 ゴブリンってやっぱり、最弱モンスターだと思う?


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― 新着の感想 ―
[一言] あたしは『妖精事典』という、フォークロア研究の大著を元にしました。(以前、図書館で借りてきて通読しました) 用語の大元の用途を理解するには役立ちました。(ファンタジー用の資料には不適切でした…
[良い点] そもそも、最弱ってなんなんでしょね? 最低限『モンスター』である以上、『一般人』にとっては脅威であることは間違いないと思うのですが。 [一言] ちなみにあたしは、『第一次RPGブーム世代』…
[良い点] 異世界もの、あるあるのおっしゃっていた第1異世界人との邂逅、モンスターに襲われてる人を助ける。 マッチポンプ過ぎて、あまり使われなくなりましたが、ここで都合がいい存在として、最適化された部…
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