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守られ、見ているだけ……

 大坂から大和に向かう峠。

 当然、アスファルト舗装されていないばかりか、勾配もきつい。

 峠を進む人影もまばらで、耳に届くのは私たちが地面を踏みしめる音と小鳥たちのさえずりだけの静かな空間。

 だったんだけど、何やら悲鳴のようなものが風に乗って耳に届くようになってきたかと思うと、視界の先にこちらに向かって来る人々の姿が映った。

 その背後には妖たち。


「うわー、逃げろ!」

「助けてくれぇぇぇ」


 どうやら、人が襲われているらしい。


「いくぞ!

 さなはルリを守れ!」


 柳生の言葉で、空真と藤井が柳生と共に妖たちに向かって行く。

 逃げて来る人たちと入れ替わり、柳生たちが妖たちの前面に立つと戦いが始まった。


 柳生と藤井は手にした刀で妖たちを斬り捨てている。

 これは物理的に肉体を破壊して、妖を退治している。

 一方、空真は懐から取り出したお札を妖に向けて投げつけている。

 そのお札は紙だと言うのに、空を裂き、一直線にターゲットとした妖に向かって行き、妖に触れた瞬間、妖は眩い光の粒となって消え行く。

 これが法力と言うものなのだろう。


 次々に妖たちが倒されて行く。


「全然、余裕じゃないんですか?」

「あれは雑魚の妖だからね」


 雑魚?

 雑魚と言えば統一したキャラで、一目でわかる存在でいて欲しい。

 だけど、虫のような容姿のもの、獣のようなもの、人型のもの、目の前の妖たちは様々。


「どれが雑魚だか分かるんですか?」

「ずっと戦って来たからね」


 ですよねぇ。

 データベースとか辞典的なものとかある訳もなく、これは経験を積むしかないらしい。

 まあ、私が戦う事は無いけど。


「でもね。雑魚は大物に率いられているからね。

 油断はできないのよ」


 それはこの手の物語のお約束。

 なんて、思っていると、子供の泣き声が聞こえて来た。


「えーん、えーん」


 どうやら、襲われた人たちの中に子供がいて、どこかに取り残されているらしい。


「さな、ルリ殿をつれてこっちに来い」


 柳生の言葉で、私とさなが柳生たちに近づく。

 なぜだか行って子供を助けなければと言う使命感で私も怖さを忘れていた。


「えーん、えーん」


 峠道の横の木の根元で年中さんくらいの男の子が泣いていた。


「さな。

 ルリ殿とその子を守りながら戦うのは危険だ。

 念珠筒で道を開き、その隙にここを脱出する。

 その子を私の背中に!」


 柳生の言葉にさなは頷くと、泣いていた子供に近づいた。


「大丈夫だよ。

 お姉ちゃんたちが助けてあげるからね。

 あのおじちゃんの背中に!」


 そう言いながら、泣いている子を抱きかかえ、柳生の背中に乗せた。


「よし、さな」


 柳生の言葉に、さなが腰に付けている袋の中から、太めの口径の銃のようなものを取り出し、前方に向けた。

 空真や藤井がさなの背後に駆け戻って来た。


 ドォン!


 そんな音と火花、煙が筒先から発せられ、何かが前方に飛び散った。

 すると、前方の妖たちが空真のお札に触れた時と同じように、光の粒になって消えて行く。

 峠道の前方に妖のいない空間ができた。


「みな、走れ!」


 柳生の言葉に私もみなも走り出す。

 私は決して速くない。だと言うのに、柳生をあっさりと抜いてしまった。

 子供を背負うとそんなに遅くなるの??

 なんて思っていると背後で何かが倒れる音がした。

 振り返ると、そこには地面に倒れ込んだ柳生の姿があった。

 そして、背中に背負っているのは子供ではなく、人の形をした岩??


「こなき爺か!」

 

 柳生が倒れた事に気づいた空真が言った。

 空真は懐から新たなお札を取り出して、こなき爺に向けて投げ放った。

 さっきまでと同じように、妖のこなき爺に向けて一直線に進んで行く。

 そして、こなき爺に触れて、こなき爺を倒す。と思っていたのに、お札はその直前で何かにぶち当たったかのように勢いを失い、地面に落下した。


「札を受け付けぬか!

 このままでは柳生殿が圧し潰されてしまう」

「空真殿、まずはまわりの妖たちを片付けましょう」


 藤井が言った。

 雑魚を片付けてから、こなき爺をなんとかすると言う事らしい。

 さなは私を守りつつ、背中に背負っていた弓矢を放ち、戦いに参戦した。


 早く倒さないと柳生の命が危ないらしいけど、妖たちは雑魚とは言え、数が多い。

 みんなで戦っていても、いつ全滅させられるか分からない。

 みんな??

 私は?

 戦っていない。ただ、守られて、見ているだけ……。

 それでいいの?

ブクマに評価下さり、ありがとうございました。

励みにして更新頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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