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柳生の仲間に加わった!

「あのう。さっきお話に出ていた織田殿って、もしかして織田信長ですか?」


 なぜだか私は声を抑えながら、さなに聞いてみた。


「織田様をご存じでしたか。

 そのとおりですよ」

「やはりそうですか。

 今、その織田様はどう言う状況なのでしょうか?」

「足利義昭様を奉じて京に入られ、将軍となられた足利義昭様を補佐されておられますが」


 登場人物だけではなく、その役割と言い、信じたくはないけど、やはりここは戦国時代の日本らしい。


「もう一つ、お教えいただけませんでしょうか?

 私、化け物を見たような気がするのですが、あの時、戦っていたのは皆さん方で、私を助けてくれたのも皆さん方なのでしょうか?」

「そうですよ。

 私たちは松永久秀様の命に従い、あやかし討伐を任務にしているのです」


 やっぱ化け物がこの世界にはいるらしい。


「あの時は助けてくれて、ありがとうございました。

 で、あの妖ってなんなんですか?

 いっぱいいるのですか?」

「妖って、ずっと昔に大陸で跋扈していたらしいんだけど、軍事力を高めた大陸の人に追われ、この国に逃げて来たらしいの。

 そして、当時のこの国の人々が苦労の末、妖たちを一度は抑え込んだらしいんだけど、何年か前から再び姿を現わし始めたのよ」


 うーん、歴史で織田信長が足利義昭を奉じて京に入ったってのは習ったけど、この時代に妖がいたなんて話は知らないんだけど……。

 て言うか、なんで私はこの世界に来たの?

 私は令和の女子高生だよね?

 それを改めて確かめたくて、自分の姿を見直してみた。

 私の高校の制服のセーラー服。

 間違いない。

 この服装から、きっとこの人たちは私を異国の人と思っているのだろう。

 

 なんて事をしている内に、さっきの男の人が戻って来た。

 話から言って、この人は柳生宗厳。


「さな、我らはここを引き払うぞ」

「ついにですか」

「何かあったのですか?」


 私のその問いに柳生が答えてくれた話はざっとこんな感じだった。


 まず、この屋敷は柳生たちの拠点で、堺にある。

 京に軍を進めた織田信長はその堺に矢銭二万貫を要求したが、三好三人衆の勢力も未だ健在であり、信長が擁立した足利義昭の力も不安定である事、妖の脅威には柳生たちの力があれば事足りる事などから、堺の町衆は信長の要求を拒否した。

 ところが、織田軍の勢いは衰える気配すらなく、ここのところ増えて来た妖を相手に繰り返される戦いの中で、柳生の戦力はすり減らされ、もはや堺を妖から守れる状況にはなくなってきていた。

 そこに再び矢銭の要求があり、支払いを拒否すれば攻める、逆に支払えば人からも妖からも庇護してやるので、どちらかを選べと堺は脅されたらしい。

 そんな中、堺の有力町衆の一人である今井宗久が話をとりまとめ、二万貫の矢銭を支払う事で決したらしかった。



「と言う訳で、我らがここにいる理由も無いし、松永様の多聞山城に移ることにした。

 で、そなたはどうする?」


 私にある選択肢って、何?

 一人でここに残る?

 どうやって、生活費を稼ぐかと言う問題が。


 ここを出て、一人でどこかでひっそり暮らす?

 生活費の問題はついて回るし、そもそもどこにって問題が。


 この人たちについて行く。

 とりあえず、信用できそうな人たちだけど、問題は松永久秀。

 大悪党で、鬼のような形相した人物。そんなイメージの人物の所に行くのは、ちょっと怖い?

 いや、鬼のような形相でも人間だ。妖よりかはましな気が……。

 答えはこれしかなくない?


「ご一緒させていただくと言うのは可能でしょうか?」

「それは構わぬが、戻るととことか、行くとことか、本当に無いのか?」


 私は言葉ではなく、頷く事で答えた。


「そうか。

 なら、自己紹介もまだだったようじゃから、我らの仲間を紹介しよう。

 さな、皆を呼んでまいれ」


 “皆”、どれだけいるのかと思えば、呼ばれて来たのは二人だけだった。

 そして、紹介された柳生の仲間たちは。


 柳生宗厳。

 剣技を得意とする大和の地を治める松永久秀の家臣で、このメンバーの頭領の中年男性。


 さな。

 柳生に雇われた忍び集団の唯一の生き残りで、飛び道具や火薬を用いた攻撃を得意とする私と同じ年頃の女性。


 空真。

  錫杖やおふだを介した法力による攻撃を得意とする僧侶崩れの若い男性。


藤井俊直。

 柳生に剣術を学ぶ青年。


 そして、次は私の自己紹介の番。


「西方の知られていない国の姫で、名はこの国の読みでルリ。

 家臣の謀反で国外追放になって、この国にやって来たんです。

 言葉は船の中にこの国の言葉が分かる宣教師がいて、教えてもらいました」


 名前以外は全くの嘘。

 でも、信じてもらえたので、良しとしよう。


 そして、私達は峠を越えて、大和の地を目指すため、堺を出たのだった。

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