表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/40

第一次石山合戦

 姉川の合戦で勝利した織田軍は敗走する浅井の軍勢を追撃したが、小谷城を落とす事は困難と判断し、横山城のみを落として、岐阜に引き揚げて行った。


 織田の兵力が手薄となった畿内では、新たな動きがあった。

 摂津では荒木村重が池田勝正を追放し挙兵した。

 背後で荒木を唆していたのは三好三人衆の一人 三好長逸で、荒木の挙兵成功に合わせ、三好の軍勢を阿波から摂津に再び送り、野田城と福島城を築城した。

 三好三人衆は続いて古橋城を攻め、この城を落とした。

 戦を仕掛けて来た三好三人衆を討伐するため、信長は岐阜を出立すると天王寺に本陣を置き対陣した。

 信長方でもある将軍 義昭も数千の兵を率い、中嶋城に入った。


 兵数的にはこの時点ですでに織田方が三好三人衆の兵数を上回っていた。

 その織田方に雑賀・根来の傭兵部隊が加わると、戦力差はさらに広がり織田軍による三好勢が籠る野田、福島城への攻撃はさらに激烈なものとなっていった。

 さすがに抗しきれないと判断した三好側は和睦を申し込んだが、勝利は時間の問題と考えていた信長はこれを拒否し、戦の継続を選んだ。




石山本願寺の薄暗い一室。


「顕如様。

 浅井、朝倉は信長が摂津に張り付いている今が好機と織田の背後を衝く事を承諾し、兵の準備を進めております」


 本願寺顕如が浅井、朝倉に遣わしていた使者が戻って来て、顕如にそう言った。


「よし。浅井。朝倉が動くか。

 ならば、浅井、朝倉の軍勢がこの地にたどり着くまで、信長をこの地より逃がしてはならぬ。

 近江、摂津の門徒たちに書状を送り、決起を伝えよ。

 私も出よう」

「しかし、それは危険すぎます」

「信長の正体を見定めねばならぬのじゃ」


 そう言うと顕如は立ち上がり、仏門に入っている身でありながら、甲冑に身を包んだ。

 その日の夜、甲冑姿の顕如は石山本願寺境内に置かれたの鉄砲隊の中にあった。


「放て!」


 顕如の命で、鉄砲隊が織田軍の側面に鉛玉の雨を降らす。

 予想もしていなかった側面からの銃撃は織田の兵たちを混乱に陥れた。

 特に織田側についていた雑賀衆は側面からの攻撃と言う事ではなく、別の意味で激しく混乱し始めていた。


「おい。本願寺には孫一様が入っておられるのではなかったか?」

「左様。

 あの攻撃は孫一様に相違あるまい」

「と言う事は孫一様は織田を敵としたと言う事ではないのか?」

「我らも本願寺に入らねば」


 雑賀衆の棟梁 鈴木孫一が本願寺側である以上、自分たちもいち早く本願寺に向かわねばならない。

 その日から、織田の軍勢の中より雑賀衆の姿は次第に消えて行き、本願寺側に移って行った。


 一方、琵琶湖を南進していた浅井、朝倉の軍勢は近江 坂本にて織田の軍勢に阻まれ、京に向かえずにいたが、仏敵 信長討伐のため、共に戦うようにと顕如から要請を受けた叡山の僧兵たちが参戦すると、情勢は一気に浅井、朝倉有利となった。

 援軍を得た浅井、朝倉の軍勢は織田方武将を討ち取り、坂本を抜けて山科まで兵を進めた。

 坂本が破られた事を知った信長は三好三人衆を相手に戦をしている場合ではなくなり、兵達を急遽京に向け動かし始めた。


 三好長逸はそんな機会を逃さず、将軍を襲うに違いないと柳生は読み、私達は柳生の指示の下、中嶋城近くに潜んで三好長逸が現れるのを待っていた。

 そこに武将に率いられた兵たちが現れた。


「よいか。

 あれは間違いなく、三好長逸の軍勢に違いない」

「確かに。何やら、人ならざる気を感じます」


 柳生の言葉に空真が言った。


「て言いますか、あれですよね?

 妖狐って!」


 多くの足軽たちの中を進む立派な鎧兜を身に纏った馬上の男を指さして、私が言った。

 その男は鎧の一部であるかの如く、小さくて白い、そしてかわいい子狐を肩に乗せているのだ。

 誰が見ても、それである。かわいいのは?? だけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ