気付けばそれが出会いだった
太陽が頭上を通り過ぎ、やや人の賑わいが落ち着いてきた時分。
ここ商業区域は、ロゼム共和国で最も賑わうとされる場所である。通りに沿って軒を連ねる露店や屋台からは自慢の商品を歌う口上が聞こえ、それを眺めながら品定めしていく客でごった返している。喜々とした騒々しさが所狭しと飛び交っていた。
この光景に馴染みの無い者からすれば、これでも十分賑わっている印象を受けるだろう。しかし、ここを拠点にする者から見れば、今この時間は落ち着いていると言える。その証拠に他の露店を見れば、さっきまで熱弁を振るっていた店主は小僧に店番を任せてさっさと食事を摂りに席を外している。
そう今が休み時なのだ。
日が落ちる頃には街にある外壁の門が閉じる。そうなると街に駆け込むように旅人やら行商人やらが滑り込んで来て、これからより一層忙しくなるのだ。休息を取るのなら今のうちにが、鉄則だ。
しかし、今日は違った。普段、街の中で聞くことのない声が商業区域を塗り替えていった。
「いやああああ!!誰ーーー、ブフアッ、、助けーーー」
「この先は危ない。早く避難しろ!!」
「なんで街中に魔獣が!?警備隊は何してんだよ」
街の西に位置する商業区域から走って避難する人たちが押し寄せてくる。中には魔獣にやられたのか、断末魔の様な叫びも混ざっていた。避難誘導の呼びかけに呼応して逃げ惑う者たちにより、街の賑わいは叫喚と混乱へと変わっていく。
中には怖いもの知らずなのか野次馬根性なのかなんなのか、魔獣が出没したという商業区域へ向かおうとする者もいた。
そして。
おいらはその真っ只中で避難する側の人間だった。商売道具である武器や防具を早々に片付けた後、一目散に走り始めていた。
いた、のだが。
「お、重いぃぃぃい!というか、お前ら早く進めよ!動けねえだろうが!!」
街の中での魔獣出没という異常事態にいち早く反応し逃げ出したはいいが、商売道具の重さは半端ではなかった。
荷物を背負い、抱え、双肩に掛け、必死に脚を動かすも後から逃げてきた者達にあっという間に追い抜かれ、挙句混乱する人々の中で身動きが取れなくなってしまったのだ。
「おおおい!こんな事してる間に魔獣が来ちまったらどうすんだ!退け、どぉおおおけってばっ!」
人混みを押しのけながら強引に進むことしばらく、ようやく開けた場所に出ることが出来た。
道沿いに林立する木の下に駆け寄ると全身に纏った荷物もろとも腰を下ろした。
「だぁーーー、はぁ、はぁ。もぉおおむり!もうダメだ!ッーーー、はぁ、休憩。休憩しなきゃ死ぬ」
玉のような汗を全身から流しながら、荷物をゴトゴトと下ろしていく。
腕で額の汗を拭い、手で扇いでいると、ようやく異変に気がつく。
そう、やけに人が少ないのだ。安全圏に逃げて来たはず、そうしたらもう少し人がいてもいい筈……。なのだが、その道なりに並ぶ露店にすら人の姿は無かった。
荒い息を落ち着ける中、その原因はすぐにわかることとなる。
ド、バッッッッガガガガガ!!!!
家屋の壁を二階から突き破り、三メートルもありそうな巨躯を持つ獣が露店を下敷きにしながら躍り出たのだ。
「ーーーーーーッ!?」
咄嗟に声を上げそうになる自分の口を必死に抑えながら、その身を小さく縮こまらせる。
(やばいやばいやばいやばい!来やがった、なんでどうして!?逃げな、いや、え?無理だろ、今ここからじゃ完全に逃げれない!隠れねぇと、くっそ!!)
しかし、自分の背にある大量の荷物を盾にして、身を潜めようと試みたが、どうにも失敗する。全身の震えが手足を支配してしまっていた。
(くっそおおお、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!)
動けない男の様子をまるで知らない魔獣は鼻息荒く、不穏な足音を立てて広場を歩き始める。
半ばパニックに陥りながらも目の前の状況から視線をそらすことが出来ない。男の頭の片隅では、冷静に状況を観察する自分がいた。
あの魔獣は、竜種ーーードラゴンだ。デケェ、この街道があの図体だけで半分は埋まっちまってる。
おいらは確実に西の商業区から中央の繁華街へ続く街道を走って逃げて来た筈だ。商業区に現れた魔獣は、今頃事態を聞きつけた警備隊が討伐に向かっている頃だ。そう思っていた、のにーーー。
「クソッ!」
小さく声が漏れ出る。
そう思い込んでいたのか。
人混みで前も後ろも判断が付きにくい状況の中、合間に見える景色だけを頼りに何とか進んだ。
だが、どうだ。
あんなに必死になってたどり着いた先が死地だったとは、笑えない冗談にも程がある。
人混みで飛び交う悲鳴。足音。そして自らが担ぐ荷物の奏でる金属音。周囲の変化に気付く余裕がもう少しあれば引き返していただろうに。
それも今この状況となっては虚しい後悔である。
視界に入る魔獣は、低い唸り声を上げながら長い尾で瓦礫と化した露店を蹴散らし、辺りを警戒していた。
鋼色の鱗に覆われた全身は日の光を反射させるほどに眩いものだったが、至る所に傷が目立った。おそらく警備隊との交戦の上、ここに逃げて来たのだろう。その証拠に身体の半分は覆うであろう片方の翼膜が破れていた。
しかし、その顔が赤く塗られているのは、ダメージの所為ではないだろう。
というか、警備隊が獲り逃したとばっちりじゃねえこれ?などと考えても意味はない、か。
「少なくとも、ドラゴンは人を食すって訳か。おいらも時間の問題かね」
口の中が乾いているにも関わらず、唾を飲み込んでしまう。
打開策が、自分が取るべき正しい行動が何一つ浮かばなかった。それでも、当初のパニックからは何とか復帰できた。
さて、本当にどうすっかね。
「おい、そこのにぃちゃん。その布に包まれてんの借りていいか?」
と、突然声がした。
この状況に似つかわしくない、軽々しい物言いに魔獣のことも忘れ振り向く。と言うか、普通にびっくりして反射的に振り返ってしまっただけだが。
「なんだよ、にぃちゃんそんな顔して。何か嫌なことでも合ったのか?すごい汗だぞ。良かったら水飲むか?ほら」
そう言って突き出してくる水筒へ無意識に手をのばし掛けて、ようやく口がぴくりとわななく。
そしてーーー。
「お、おお、おんまえ!なっ何言ってんだ!この状況!!この状況分かって言ってんのか?ああっ?!」
「うわっ、もー。いきなり叫ばないでよ」
耳に人差し指を入れ塞ぐ少年?は、苦情を漏らす。
しかし次には向き直り、少年は大きな瞳をしっかりと自分に合わせてきた。肩まで伸びる黒髪には赤いメッシュが入っており、髪を耳に掛けながらにんまりと笑顔を向けてくる。
「もちろんだよ。だから言ってんじゃん。にぃちゃんの持ってるその包みん中の物貸してって」
頂戴、と手の平を差し出され、一瞬困惑するが、男は思いっきりはたき落した。
「はあ!?バカなのかお前は!なんでガキにおいらがこれを?はあ!?」
「だから、にぃちゃんうるさいってば。そんな大声出したらーーー」
「出したら何だってんだよ!?お前があの魔獣を何とかするってのか?お前、これ、なんだか、分かってんの?武・器!ブ・キ・な・の、これは!」
「あーもー分かってる分かってる、知ってるから!あーーほらっ!ほらあー!!!早く何でもいいから貸してよ!!わあああっ!」
両手を前にバタバタとして焦りを見せる少年に、男は毅然とした大人の態度を見せる為に立ち上がると、胸を張って更なる説教をしてやることにした。
「お前こそ大声だしてんじゃねぇか!ちっとは黙りやがれってんだ!ったく、本当においらの代物が分かってんのか?いいか、もし分かってたとしてもだな、おいらの自慢の商品をおいそれと貸すことなんざできる訳ねぇだろ。ましてや、どこぞの馬の骨とも知れねぇガキによ、テメェの魂叩き込んだこいつらをーーーー」
ふふ、こいつびびってやがる。血相抱えた面でジタバタしてらあ。ったく、不躾なこと言うからだ。さて、ここで締めの言葉をビシッと言ってバシッと決めてやらあ!
とそこへ。
『グゥウオオオオオオオオオオオ!!!!』
「ぁあ、うっせえな!!今取り込み中だ、黙っ、、て、、いや、、が……。ハヒャヤーーーーーー!!!!!」
メンチを切りながら振り返った途端、その正体に男は恥も外聞も捨て悲鳴を上げた。
男は突如現れた少年に魔獣の存在を忘れていたことを今になって気が付く。
既にドラゴンは四肢を地に突き立て全力で突進してきていた。
それは男の瞬きのうちに眼前へと迫り、ドラゴンの鋭い頭先が男の腹部を突き破ろうとしていた。
瞬間、耳をつん裂かんばかりの音が響き渡る。
「ーーーッ!!フンッ!!」
その音に身を庇うように腕を出していた男は、ゆっくりと瞼を開けるとそこに信じられない光景があった。
音の主は剣を構えて男と魔獣の間に入り込み、その直撃を防いでいた。そして、力を込め刀身を斜めにズラすと、バランスを崩したドラゴンの顔面に蹴りを放ち、退かせた。
「いっててて。ーーーんんんんんん。やっぱ体術じゃ鋼にはかなわないかぁ」
「…………ぁ」
目に入り込んでくる光景に何度も目を瞬かせている男に対して、少年は蹴った反動で痺れる足を抱えながらへらへら笑っていた。
こわばりながら腹に穴が開いていないことを確認する。助かったのか。
いつの間にか、遠くで響き渡っていた喧騒が静まり返っていた。まあ単に、避難が完了して誰もいなくなっただけなんだろうが。
「おい!おいってば、にぃちゃんよ!危ないから下がっててくんないかな?ふんっリャッ!!」
「お、おうっ」
振り返りながらドラゴンの爪牙を剣で弾き返す。男は咄嗟の生返事をして、バタバタと後ろに引き下がった。
「さーあて!僕にあった武器であることを願いつつ、いっちょやりますかっ!」
「じゃなかった!おいガキっ、死ぬぞ、やめとけえ!!」
男がハッとして少年を呼び止めるが、ドラゴンの足音でかき消されたのか少年は答えなかった。
つま先で軽く跳ねる少年は、身体の大きさに見合わない剣を容易く振り回して構えると、身軽にドラゴンへと駆け出す。それに応えるようにドラゴンもまた咆哮を上げて少年に切迫していく。
ドラゴンから繰り出される横薙ぎの爪撃、頭上1メートルより繰り出される高温のブレス、鋼の鈍い光を反射させながら鋭く迫るドラゴンテール。その全てが掠めただけでも致命傷、或いは即死に至るほどの威力だ。
「………な、にが、起こってやがる」
男はドラゴンと少年が繰り広げる戦闘に思わず疑問を零す。
竜の咆哮。少年の笑い声。重なる剣撃と鋼の削れる絶叫。
あの剣。男が鍛えた剣は、少年の身体に見合わない大きさの通り、重さも半端ではない。だが、それをもろともしない動きで少年は戦いを繰り広げていた。
「あははは!すごいすごーい!久々に楽しーなー!」
『グァアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
少年はその全てを軽々と弾き、躱し、鋼の体躯に傷を与えていく。その乱舞にドラゴンは一層強く咆哮を放ち、攻撃を激しくさせていった。
鋼のドラゴンとなると普通は聖騎士4〜5名、もしくは兵士一個中隊で仕留める最高危険度に定められている魔獣だ。
普通なら有り得ない。絶対に対峙したって釣り合わない。
しかし。
それが成り立っている。
少年1人で、いやおいらの作り上げた剣があのドラゴンにダメージを与えている!
「おいおい、本当か、これ!おいらの武器が、奴に通じてやがるっ!!はは、は、あはははっいやっほおおおおおおーー!!!」
その子供は実に楽しそうに剣を振るっていた。
手応えの有る敵と程良い重さの武器、ああ僕は今幸せだぁあ。
右に左に、後ろ、前とバトンを振り回すように大剣を扱う。身長の1.5倍ほどあるその剣は、地面を無駄に切り裂き、舞い散る瓦礫が否応なくドラゴンへと飛散していく。別段、計算して飛ばしているわけではないが、竜の甲殻に当ててカンカン鳴らすのが何故か気に入ってしまった。
「楽し〜なあ〜。けど、そろそろ留めを刺さないとこの街にも迷惑だよね」
残念だけど仕方ない、と小さく声を漏らすとドラゴンから距離を取った。振り回していた大剣は上段に構えられ、その刃の先端は鋭く標的へと向けられる。
この剣もなかなか良かったなあ、あとでもらえないかにぃちゃんに聞いてみよっかな。
そして、短く息を吐くとそれまでの嬉々とした表情は消えた。敵を両断する事のみに意識が集中していき、歳に似合わず眼光に鋭さが増す。
そして、
「はは、は、あはははっいやっほおおおおおおーー!!!」
必殺を見舞うために踏み込もうとしていた剣士の耳に、場違いな笑いと歓喜の声が入ってくるのであった。
「おいらはやっぱり間違っちゃいなかった!あの竜種の肉に届く刃を作って見せたんだ!くぅううう、今日はいい酒が飲めるぞー!!」
両腕でガッツポーズを決めながら男は盛大に喜びを口にしていた。
戦う少年の強さに圧倒されるのも束の間。自分で鍛えた武器の有能性に声を上げていたのだった。
「おいガキっ!さっさと俺の武器でそいつをぶった切って見せろーぉ、お、お?おお、おおおお、おおおおおわあああああああああ!!!」
と、男は拳をシュッシュッと振り、凄まじい乱舞を見舞っていた少年に激励を飛ばしたのだが、男の視線の先には既に少年はいなかった。距離を取って構えを取る少年に対して、大翼を広げて舞う竜は、そこから大声を出していた男に標的を変え、今まさに滑空していたのだった。
「ぎゃーあああああ!たすけ、助けてっ!喰われるっ!!!!」
なりふり構わず絶叫しながら男はドラゴンを背にして全力で逃げる。やっちまったーーーー!!
少年へ助けの眼差しを向けると、彼は何とも言えない顔でこちらを眺めていた。
『キシャアアアアッ』
「ぐわああっ!おおっ、と、と」
『ガアアアアアアアアッ!!』
「ヒエェェエエエっ!わ、も、ちょ!!あぶっ!無理って、ば!邪魔して悪かったって、もう無理、むりむりむりむ無理ぃいいい」
ギリギリのところで避けて、転げてなんとか追撃を交わしていたが、男は足がもつれて、というか息が続かなくなり、地面にみっともなく這いつくばる。
そこへ留めとばかりに獲物を狩る獰猛な顎が男の背に迫り来る。
「もおーー!なんで大人しくしてないかなぁ。もおもおもおっ、仕方ない、なあっ!」
『!グァアアッ、アアアッ、、、』
情けない男を見兼ねて少年は地団駄を踏むと、持っていた大剣を片手で振りかぶり投擲を試みる。
瞬間、轟音と共に金属特有の甲高い音が響くと、男に襲いかかろうとしていたドラゴンは悲鳴を上げながら軌道を逸らして地に落ちた。
その光景に男は目を丸くして眺めていたが、ドラゴンの落ちた方から動く影に肩をビクつかせる。しかし、身を硬ばらせるのも束の間、気の抜けた声が砂塵舞う方向から届いてきた。
「終わったよー!もうほんとさぁあ、せっかくの肩慣らしに変な声を上げないでよねぇー。細切れにしようと思ったのに」
「………はぁ、ビビらせんなよ」
ブツクサ言いながら少年は黒髪を揺らしながら男の元へと戻ってくる。その様子に男はようやく呼吸を思い出したように息を吐くと、少年に向けてなんとなしに返事をする。一体いつドラゴンの方へ移動してたんだか。
「いやあ、おいらがヘマをしたせいで面倒かけたな」
「ほんとだよ、もうっ!にぃちゃんに自殺願望があるのかと思ったよ。もう、まったくもう」
もうもううるさいなこのガキ。まったくもう。
「なぁガキ、助けてもらった手前悪いんだかよ、おいらの傑作はどうした?」
「ああぁ、あの剣の、こと?うんうん、こっちこそありがとね、すっごく使いやすかったよ!あは、……あははは」
「で、どこにやった?」
その質問を最後に少年はムスッと顔を逸らしてだんまりを決め込んだ。両手が不自然に後ろ手に隠されていたが、見覚えのあるものがちらちら見え隠れしている。
「なぁ、お前の背中のそれ何だ?」
「………、な、なんのことですかー?」
「何か持ってるよな?というか、それ」
「い、いやぁ、…………何にも?そそ、それより、お腹、お腹すいたなー。ご飯食べに行、グェッ!」
「逃すかコラァっ!て、お前、マジか!!この野郎ぉおおお」
男は踵を返して立ち去ろうとする少年の首根っこを掴み、手に掴むそれを奪うことに成功する。
半分。いや半分以下!
少年の小柄な体型を優に超えるほどの刀身があった大剣は、長い柄と少しの刃先しか残っていなかった。
「お前このクソガキッ!借りたもんはしっかり返すのが道理だろうが畜生っ!」
「やめて、怒らないで!守ってあげたのにぃ!しょうがないじゃんっ、折れちゃったんだもん」
「折れた、だあ?お前が折ったんだろうが!こっから先の残りはどこにやった!」
「ごめんなさいごめんなさい、力加減間違えちゃったの!あっち、あっちにあるから、だからごめんなさいってば!近い近い近い近いってば、ーーーぐぺ」
刀身の残りの場所を尋問、もとい聴取するなり男は掴んでいた少年を捨て、指差されたドラゴンの亡骸へと走り出す。
あれが折れるなんてありえねぇ。いったいいくらかけたと思ってんだ。時間も金も、全てをつぎ込んで作った傑作だったってのに!
「そこの男、止まれっ!子供を捨て置き、どこへ行こうとしている!」
「はあ!?今それどころじゃ」
「止まらんと言うのなら力尽くで取り押さえる。お前ら奴を取り囲み速やかに拘束しろ!」
「「イェッサー!」」
戸惑いを見せる男は青い軍服を纏う集団に呆気なく取り押さえられる。
そうしてドラゴンから逃げ、武器を壊され、挙句捕らえられた男は、歓喜を挙げながら祝杯をあげる夢をお預けとするのであった。
「やっほおー!シャロンだよお!プロローグ、シャロン・クリフター見参を読んでくれてありがとね!」
「...」
「いやあ楽しかったぁー!久し振りに手応えのある相手で、すごくどきどきした!もう一匹、来ないかなぁ」
「....ぁー、ん?」
「あー、そういえば、剣を貸してくれたにぃちゃん捕まっちゃったね、大丈夫かなぁ?それににぃちゃん、剣が壊れた事にすごい怒ってたなー。でもちゃんと僕ちゃんと謝ったもんっ!もう悪くないもんねっ!」
「.......どっかで、うーん?」
「あっ、そうだ!折れちゃった剣先持って帰ろーっと!あれだけ丈夫な武器も久々だったし、今日は良い日だなぁーあ?あ、あのちょっと、どうして僕の腕を?」
「思い出したぞ、小僧。お前昼間に不法入国したガキだろう。その特徴的な黒髪、既に手配書にしっかりと記載されてるぞ」
「えっ?えと、そそ、それは、人違いじゃないかな?僕、こう見えて女の子だし小僧じゃないし、ね?違うよね?」
「ふっ、小僧くらいの年の少女であるのなら、もう少し出るとこ出てるんじゃないか?見苦しい嘘はやめて、一緒に来い!」
「ぁ、ぁあ、あ゛あああああ!!!セクハラだっ!セクハラっ!女の子にっ、それも僕に言っちゃいけない事言ったあ!!変態!スケベ!ロリコン!痴漢っ!!」
「んなっ、暴れるな小僧!変態ではないっ、私はロゼム共和国騎士団団長シュトルツ・ディルトだ!おい、お前ら手を貸せ。こいつも一緒に連行する。言い訳は尋問官にするんだな。よし、連れていけ」
「もうもうもうもーお!なんでよぉおお!!!ドラゴン倒したのになんでよぉおお!!!!!ぐすん」