それはきっと世界のせい。
私には好きな人がいる。
自由恋愛の終わったこの世界に、まだ『好き』という気持ちが存在していたことに、私自身も驚いた。
遺伝子の相性で全てが決まるこの世界では、不要な気持ちでもあるから、男性と女性は区別されて育つものなのに、しかし私は彼を知ってしまった。
あの日から、彼が愛しい。彼だけが愛しい。明日には私も嫁になるというのに。
今まで彼以外の男を見たことはなかった。だからだろうか。顔もなにも知らない人に会うのが怖い。
ああ、この気持ちはなんだっただろう。『失恋』というのだった気がする。
さようなら、最後の初恋。無理やりに人と結婚される制度が終わった世界で、どうかまた会いたい。
こんな世界が壊れる事を、願い、ここに記す。
3040年13月38日