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悪役令嬢ーーーー焼き討ちから始まる異世界ライフーーーーー 作者:妖精の箱庭
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主人公

 ミカエル・グレンフォード。
 年は40歳くらいだろうか?
 短い白髪に厳格そうな顔立ちで、白い騎士服を着ている。騎士服の肩には金色の装飾があり、胸元には白銀で出来た四翼のエンブレム。

 ――――両翼複腕章――――

 一人でSSS級モンスターを討伐できる力を持っていると言う証である。

 体格は筋骨隆々と言う訳では無いが、肩幅は広く、力強さを感じる体型。健康的な肌色をしており、空色の双眸は絶対的な自負に満ちていた。

 これが、アースラーン王国最強の剣士。王国1000年の歴史の中でも5指に入ると言われている、剣の天才だ。
 本当にどうしてこんなところに居るのやら。
 エリザベータは内心ため息を吐きながらも、努めて笑顔で応対した。

 「初めまして。私はアルバート・A・エリザベータと申します。ところで、今回はどのようなご用件なのでしょうか?」

エリザベータはミカエルの対面に腰を掛けると話を切り出す。

 「なに、用事は特にないのだが・・・・、偶々この近くを通ったらアルバート家が燃えているのが見えてな、目を疑ったぞ。」

国王の護衛が偶々こんな所を通る訳がない。流石のエリザベータでも気づくことだ。
もしかして私は馬鹿にされてるのか?
そんな捻くれた考えが浮かぶが、ミカエルの表情からは下趣味な感じは伺えない。寧ろ本気で心配しているようである。

 (毒気を抜かれてしまいますね~。)

 先程まで、早く帰ってくれとか思ってたんだが、何だか申し訳なくなってしまう。もっとも、早く帰ってほしいと思ってるのは今もなんだが・・・。
 そんな気持ちが顔に出ていたのか、ミカエルは申し訳なさそうに眉を下げた。

 「すまない。迷惑だったか?」
 「め、滅相もありません!」
 「そうか、そう言ってもらえると助かるよ。お詫びという訳では無いが、屋敷の近くをうろついていた不審人物どもを始末しておいた。」
 「えっ!」

 今なんて?

 「なに心配するな。三人ほど生かしてある。」

 いや、そんな心配をしてたわけじゃないんだよ。
 ミカエルは「偉そうにしていたから恐らく指揮官だと思うぞ。」とか言ってるが、エリザベータは事態に全くついていけていない。

 待て!落ち着いて考えよう!
 グレンダルの話によれば、今回は三部隊構成だったらしい。一つがグレンダルのいた突撃部隊。もう一つが、対「影」用の特殊部隊。最後の一つが、後続にいた予備部隊だ。
 それを踏まえて考えると、多分こうだ。

 元執事長―――デイルさん辺りが魔術結界を再起動させ、中に入れなくなった第三部隊が右往左往している時に、ミカエルさんが来て、戦闘になり、殺されたと。
 何という三下ぶりだ。
 いや、そんなことはどうでもいい。
 問題は、私の予想が正しければ、今アルバート邸の前に死体が転がってるってことだろ!
 勘弁しろし。

 「それは御助力ありがとうございます。ところで、何人ほどいましたか?」

 まあ、二三人なら問題ないかもしれない。
 数十人単位で死体があれば流石にちょっと不味いレベルの話では無くなる。
 そう思って聞いてみると、ミカエルは穏やかな顔で、―――しかし、絶対的な自負を伺わせる笑みで―――笑った。

 「何、大した数じゃなかったよ。そんな事より、私に手伝えることがあれば、手伝わせてくれないか?」
 「い、いえ!とんでもありません!ミカエル様の手を煩わせることでは!」
 「そうか・・・。それは残念だな。・・・・それでは私はここらへんで退室しておこう。邪魔をしても悪いからね。ああ、そうだ。その前にアルバート伯爵にも会っておきたい。案内してくれないか?」
 「・・・・」

 悪気は無いと思うんだけど、これは話していいのか?
 貴族のあれこれとかエリザベータには分からない。話すのが正解なのか、ごまかすのが正解なのか・・・。
 どっちにしろ、長くは隠せないのは確かだが。
 いや、そうだ。どうせ分かんないのなら、最後まで正直に生きよう。

 「・・・・お父様は、残念ですが、今回の騒動で亡くなられました。」
 「!・・・・伯爵が・・・・」

 ミカエルは眉を寄せ、悲し気に謝罪を述べる。
 気遣いと、後悔、二つが同居したような顔だ。
 その後、ゆっくりと何かを思案した後、真剣な面もちでエリザベータを見据えた。

 「エリザベータ君。こんな状況で言うのは憚られるが、心して聞いてほしい。」
 「はい。」
 「私はこの事について国王に報告しなければならない。その義務がある。そして、そうなれば君は近い未来選択を迫られるだろう。」
 「選択?」
 「ああ、アルバート家を継ぐのか、継がないのか。そして、君の父上はそれを望んでいなかった。」
 「・・・・」
 「無論私も出来る限りのことはする。君が望むのなら我がグレンフォード家の養女として迎え入れよう。」

 悪い話ではない。グレンフォード家は侯爵家だ。安住が約束された地位にいる。それにアルバート家のような後ろ暗い物を持ってる訳でもないし、イケメンぞろいだと聞いている。
 あれ、これいいんじゃねえの?

 でも、一つだけ確かめなければならないことがある。

 「もし、私が養女になることを選んだら、アルバート家はどうなるんですか?」
 「取り潰される。・・・そのあと後任に国王の選んだものが来るだろう。」
 「そう言うことならばお断りします。」

 ここはエリザベータが家族と過ごした思い出の場所。誰にも譲る気は無い。と、頭の中の誰かが言っている。
 感情的な選択だ。
 そうは思うものの、家族と引き離される苦しみはエリザベータにもよく理解できた。
 それ故、この感情を“馬鹿が”と、切り捨てることが出来なかったのだ。

 その内心を知ってか、知らずか、ミカエルの瞳に初めて気遣い以外の――――観察するような、値踏みするような――――感情が浮かぶ。
 それは、よくよく見ても気づかれないような、僅かなもので、一瞬のうちに隠されたが。

 「アルバート家を継ぐことが如何言うことか理解しているのか?」
 「もちろんです。」
 「・・・・そうか。・・・・気が変わったら、いつでも言いなさい。」

 優し気な笑みを浮かべ、グレンフォードは話を切り、立ち上がった。

 「最後に一つだけ・・・。アルバート伯爵の友人として、助言をしておこう。―――――。」

 ゆっくりと扉に手をかけ、言葉を続ける。

「―――――――ノルワルゼ商会の者には気を許すな。」
 「ど、どういう意味ですか?!」
 「・・・・悪いがこれ以上は守秘義務がある。君が本当に番犬の首輪をつけるなら・
・・・、その時は全てを話そう。」

 そう言い、ミカエルはそれ以上何も言うことなく、屋敷を出ていった。



 (SIDE:アルフォンス)

 平民街。とある一画。
 太陽が丁度真上に差し掛かり、正午を知らせる鐘が何時も同様に鳴り響いている。
 そこは露店や個店が立ち並び、多くの人影で行きかっていた。三歩歩けば人にぶつかる程の混みようで、獣人、エルフ、只人、冒険者から商人、甲冑を着た騎士まで、種々折々の人がおり、その各々が慣れた足取りで人込みを気にした風も無く歩いていた。

 だからだろうか?

 その男は酷く目に留まった。
 着ている服は何の変哲もない、平民代表のような赤い服。
 腰には少しばかり値が付きそうな、長剣を下げ、漆黒の髪は短くそろえ、清潔感を感じる様相だ。
 顔はかなり整っており、日本人モデルと言えば納得できるハイレベルである。
 しかし、いや逆にそれ故に、さらに男は悪目立ちしていた。

 一言で言ってしまえば、「田舎者」。
 きょろきょろと落ち着かない様子で辺りを見回し、初めて都会に来た田舎者のように、その人混みに面食らっている。どこか目的地があるのだろうが、そこがどこだか分からないといった感じだ。

 男の名前はアルフォンス。彼自身は知らない話だが、ガンガンソードのゲームの主人公である。
 男は自身の状況を分析して、やれやれと頭を掻く。

 「参ったな~。これは迷子ってやつか?なあ、オッサン。」

 「いきなりオッサン呼ばわりとは失礼な奴だな。あと、急に。なあ、とか言われても知らんよ。」

 答えたのは40後半ぐらいの露店商人。
 彼は平民服を着て、迷惑そうにアルフォンスを見上げている。
 しかし、オッサンにはオッサンの言い分がある。

 「店前で、そんな辛気臭い顔されたら客が寄って来なくなるよ。買う気がないならとっとと失せな。」
 「辛気臭いのはお互い様だろ?特に頭。」
 「本当に何なのキミ。失礼極まりないよ。」

 アルフォンスは、都会はシビアだなぁと内心溜め息。

 「そんな事はどうでもいいが、ルルカナってとこ行きたいんだ。どう行けばいいか分かるか?」

 「はっ?」

 こいつは何を言ってるんだと言う風に、オッサンは顔を固まらせた。
 アルフォンスはそれに不思議そうに頭をかしげる。

 「どうかしたのか?」
 「どうかしてるのはお前の頭だ。ルルカナってのが、どこか分かって言ってるのか?」
 「もちろんだ。『犯罪都市ルルカナ』―――この世で最も治安が悪い場所、だろ?」
 「そうだ。あそこは警察すら手が出せない無法地帯。そこまで分かってて、・・・自殺志願者か?」

 「そんな風に見えるのか?」と、アルフォンスは肩を竦めて見せる。そして。真剣な、懇願するような面持ちで、オッサンを見据え、

 「頼む。金が必要なんだ。行き方を教えてくれ。」
 「いやだな。これでお前さんが死んだら俺のせいみたいじゃねえか。あそこは命が紙ぺら一枚の価値も無い場所だ。金欲しさに行くような場所じゃね。」
 「あんたが教えないなら、俺は他の奴に聞くだけだ。」

 強く言い切るアルフォンスに、露天商は、はあ、と溜め息。
 別にこのまま無視してやってもいいのだが、生来の人の好さが、それを咎める。
 どうしたものかと天を仰ぐと、ふと、ある会話を思い出した。

 「そう言えば、兄ちゃん。アルバート家が大幅な人員募集をやるみたいだ。金が欲しいなら行ってみたらどうだ?」
 「人員募集?下働きかなんかか?」

 何の身元の証明も出来ない者の未来みちは商人か、農民か、よくて貴族の下働きになるかだ。
 しかし、それでは足りないからアルフォンスはルルカナに行こうとしていたのだ。
 下働きで満足できるはずがない。

 「いや、俺が聞いた話じゃあ、騎士団員の募集みたいだぞ。腕に自信がある奴なら、出自は問わ無いらしい」
 「聞き間違えか?出自は問わないと聞こえたが。」
 「そう言ったんだよ。種族も出自も問わないらしい。」
 「・・・・それが本当ならば願ったりかなったりだが、・・・いや、ありがとう。いい話を聞けた。」

 アルフォンスは軽く会釈をし、ルルカナ改め、領都へ向かうことにした。

 「おい兄ちゃん!領都は、そっちじゃねえ!反対だ!」
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