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王都脱出編―平穏な日常と終わりの使者⑧

 アルバートの騎士は他領の騎士と結構違う。まず、アルバート家の兵育成設備は他を抜きんでている。兵舎が四つもある場所などここぐらいだ。

 他にも、番犬の仕事に駆り出されたり、(他領ではメイドや執事がやっているような)雑用も多くが騎士が担っている。いや、ホントすいません。何とかしようかと思っていた時期もありました。

 全然問題出てないから、すっかり忘れていたけどね・・・。

 しかし、改めて考えるとアルバートの騎士って勤勉だな~。息抜きとか遊びとかやってるのだろうか・・・

 あまり勤勉すぎると私が遊びにくいのよね。

 「ねえ、軍曹。しっかりと息抜きはさせてるかしら?少し心配なのだけど・・・。」

 こう聞けば問題ない。

 「もちろん適宜取らせております。最近はスーパー・ダイスなる遊びが流行っているそうです。まあ、端的に言ってしまえばダイスの新装版ですね。」

 「そう・・・・。」

 ダイスと言うのは何なんでしょうか・・・。チェスかな、チェスみたいなものかな?


 大体あっている。

 この世界で言う『ダイス』は所謂戦争ゲームの総称で、主に騎士や貴族階級ではやっている。平民には手が出せないほど贅沢品と言う訳では無いが、あまり騎士に良い顔をされないので使うときには注意が必要な一品だ。



 時刻は昼少し前。

 ババローネとスライムのルーちゃん、それにレインハルトと並んで、見学すること二時間ほど。流石にエリザも飽きてきた。どんなに美味しい食べ物も食べ続ければ物足りなくなるのだ・・・。

 「そろそろ昼食の時間かな・・・。」

 「今は10:52分ですので、あと一時間ほどですが・・・。アリアに伝えてきましょうか。」

 アリアはメイドだが、料理もこなす。コックが居ないアルバート家には欠かせない人材だ。

 ちなみに朝食はレインハルト、昼食はメイド勢、夕食は外注している。

 外注とか勿体ないとか思うだろうが、アルバート家は金だけはあるのだ。主に番犬収入で・・・。

 (あ~、違う違う・・・。)

 エリザはズレ出した思考を戻す。横を見上げる。

 既に立ち上がりかけているレインハルト。その袖をクイッと掴むと再び座らせた。

 「お腹が空き過ぎて死にそうってわけでもないし、その必要はないわ。」

 「御意に。」

 レインハルトは座りなおすと、数分談笑を続けた。が、ふと、思い出したように口を止める。そして、入り口とは反対、部屋の一番奥にある巨大な時計柱を見上げた。

 針は10:58を刺していた。

 「ババローネさん、そろそろ特別メニューの時間ですね。」

 「おお、もうそんな時間か。ついうっかりしてたわ。」

 軍曹はゆっくりと立ち上がる。慣れた仕草で号令を上げ。

 「クズども!一一〇〇(ヒトヒトマルマル)第一兵舎第二特別訓練場に集合!特別訓練W.W.Dだ!!―――――復唱!!!」

 「「「一一〇〇第一兵舎第二特別訓練場に集合します!!!」」」


***********************

 特別訓練W.W.T――――――――WATER WALKING TRAININGの略称である。

 意味は読んで字のごとく水上歩行訓練、なのだが・・・。


 「はあ~・・・。」

 見たかった。見たかった。見たかったな・・・。

 馬車にガタガタと揺られながら、エリザベータはまた溜息を吐いた。

 エリザが乗っていたのは四畳半ほどもある大きい馬車。その中には五人の乗員がいる。

 エリザの右隣に座るのは護衛騎士のレインハルト。反対には黒い髪、黒い服、漆黒のマント、黒い目隠しをした少年。年は15歳くらいだ。

 対席には少年と同じ格好をした青年と少女二人。年はそれぞれ20歳と14歳、15歳くらいか・・・。

 三人が三人とも只者ではない研ぎ澄まされた雰囲気を持っている。皆胸元に後宮のシンボルたる金色の薔薇のバッジ・・・。後宮特務――第七騎士団だ。


 (はあ~、どうして役人ってのはこうカタックルシイのかね・・・。)

 肩が凝って仕方がないわ・・・。

 エリザは今日何度目ともなるため息を吐くのだった。

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