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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五章 アクア編

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五十七話 未来予想

 その後はこれと言ったイベントも無くヨシュアへ帰る日になった。


 面接で不採用になった応募者が不満をぶちまけてフィーネに叩きのめされ。

 神力パイプを取り付ける時にユキが加減を間違えて深海まで貫き、海岸の地盤が崩れ。

 パーティ前の最強話を変に解釈したアリシア姉が竜のクロを討伐しようとし。

 ニーナが購入した魚の鮮度が悪いと言って店員に怒られた。


 うん、なんの問題もない平和な日常風景だ。


 俺は、俺だけは平穏に帰宅するんだ。



「アクアか・・・・色々あったけど楽しかったな」


 やっぱり旅行って楽しい。来て良かった。


「ルーク様に喜んでいただけて何よりです」


「また皆で遊びに来るわよ! 今度はもっと深い場所に居る魔獣を倒すの!」


 それは遠慮する。


 今度は少人数で静かに温泉巡りとかを楽しみたい、とか言ったらまた年寄り扱いされるんだろうな・・・・。



 こうして俺達の『ロア商会アクア支店 塩工場』を新設する旅は2週間で終わりを告げた。



 帰りの竜車内で俺達はそれぞれの思い出を語っていた。


 母さんは温泉、アリシア姉は戦闘、ニーナは食事のことばっかりだったけどな。


「そう言えばフィーネ達が会いたがってた『クレア様』には会えなかったな」


 ロア商会の発展に必要だって言うからゼクト商会まで会いに行ったんだけど、クレア様は護衛の人と一緒に別の貿易先に旅立った後らしくて会えなかったんだ。


 まぁ同じ商人なんだし、その内に出会う事もあるだろう。


「まさかゼクト商会の人と知り合いになってたなんてね~。大商会よ。もちろんオルブライト家もお世話になってるわ」


 フィーネから聞いた商人を助けた時の話には『ゼクト商会』なんて単語は出なかったからな。


「特に必要な情報ではありませんでしたからね」


「「いや重要な情報でしょ」」


 俺と母さんが同時にツッコむ。


 だって世界一の企業の令嬢と知り合いって凄い事だろ?


 でもフィーネ基準では権力者との出会いはどうでもいい事らしい。ユキもそうだけど、長生きしてると人脈とか金には無関心になるみたいだ。


 そう考えると自由な人生って感じがしていいな。



「クレア・・・・私と変わらない年で将来を決めて突き進んでいるのね。負けてられないわ!」


「特訓する?」


「もちろんよ!」


 見ず知らずの商人を勝手にライバル視してアリシア姉とニーナが竜車から飛び出して走り始めた。


 結局2人は旅の間ずっと戦力強化に努めてたけど、充実した旅行になったなら良いか。小遣い貯めて挑戦したい店があるとか言ってたけど、なんの事だ? どうせロクでもない事なんだろう。



 クロと並走するアリシア姉達を見て、何か思ったようでフィーネが俺の方を振り向いた。ちなみにフィーネは帰りも御者として手綱を握って前方に座っている。


「ルーク様は走らないのですか?」


 なんの話かと思ったら「一緒に訓練すれば?」って提案だったけど運動能力を上げるとか無理。なんでみんな俺の事を5歳児として扱ってくれないんだろ。


「俺に出来るのは安全な場所からチクチク攻撃するだけです」


 普通の5歳児は全力で駆け回るものだってのか! 俺が変だって言うのか!!


 ・・・・・・倒れるまで動き回るな。



 まぁ運動の話は置いておこうか。


「でも戦いの重要性はわかったよ。つまりパーティで気に入らない奴をブッ飛ばすために強くなれってことだろ?」


 アリシア姉じゃないけど、拳で黙らせるためには強くならないとな。


「違います。今回はたまたま穏便に片付いたけど、オルブライト家に迷惑の掛かる行為は絶対しないように」


 母さんから注意されたけど、パーティでは焚きつけてたよね? 誰が叩きのめすか決めろって言ってなかった?


 もちろんそんなこと言わないけど、帰ったら強化の魔術ぐらい覚えようかな。もちろん相手を黙らす方向で使うために。





「見つけましたよ~」


「「うわっ!」」


 竜車に揺られつつ隣を走るニーナの尻尾をボーっと眺めていたら、ユキが突然現れた。


 俺の隣で、温泉効果でスベスベになった自分の肌にウットリしていた母さんも驚いている。


 一緒に暮らして結構経つから転移には慣れたけど、ユキの奇行には慣れないんだよな。今回は竜車にでもしがみ付いているのか、窓の外からゆっくりと這い寄ってきた。


「早かったですね。もう指導は終わったのですか?」


 フィーネだけは動じることなく塩作りの進行状況を確認する。


 実はユキだけはアクアに残って塩の作り方を教えていた。いくら塩作りのプロと言っても神力パイプで全く新しい製法になり、専門の技術指導が必要だったので転移が使えるユキを残して俺達は帰路についていたのだ。


 そしてその指導をしていたはずのユキがここに居るという事は、もはや教えることが無くなったという事なのだろう。


「たまに様子を見に行きますけど、大丈夫だと思いますよ~」


 つまり今後は塩工場から安定して供給されるようになるのだ。




「これで父さんが造ってる食堂と孤児院も形になったな」



 元々塩の確保はヨシュア改造計画に必要な工程の一部に過ぎない。


 食堂はリリとニーナを中心に切り盛りしてもらい、孤児院は新しい人を雇う予定だ。


 つまりニーナがウェイトレスとして働くのである。当人はさっきまで爆走してたから、まだ倒れて・・・・あ、復活した。


 そしてアリシア姉と一緒に起き上がって会話に入ってくる。


「ニーナ頑張るのよ!」


「もちろん」


 アリシア姉のお陰(?)で活発になり、会話や計算などの接客に必要なコミュニケーション能力と一般常識が身についてきたので、母親と同じ職場で働かせてみようと決断したって訳だ。


 誘いを断って冒険者にでもなるのかと思ったけど、俺達が驚くほどのやる気を見せていた。



 ヒカリがコッソリ教えてくれたけど、誕生日プレゼントでケーキを作って皆を喜ばせた事により奉仕の魅力に気づいたらしく、将来は俺に尽くしたいから一生懸命なんだとさ。


 このツンデレさんめ。


 その話を聞いた時、嬉しくなってニーナの尻尾をコネコネしてやったら殴られたけど、きっと照れ隠しだろう。



 接客業をしてた俺からすると完全アウトなレベルだけど、周りがフォローすれば大丈夫だろう。


 食堂は住み込みで働くことになるので、一緒に暮らしていた人が居なくなるのはやっぱり寂しい。


「たまには帰ってきていいんだからな」


「ん。オルブライトもわたしの家だから」


 第二の故郷・・・・泣きそうになるじゃないか。娘を嫁に出す父親の気分だよ。



 そんな悲しそうな俺を気遣ってか、フィーネが励ましてくれた。


「まだ建物が出来ていないのに気が早いですよ。

 完成までの半年間で教えることも多いので、帰ったらそのような考えが出来なくなるほど忙しくなりますよ」


 まだまだ料理人としてもウェイトレスとしても未熟なニーナは、メイド業にも通じるということでフィーネから指導を受けている。


 俺も料理をたくさん教えないといけないな。ヨシュアで料理革命を起こすんだ。


「全部がんばる」


 ニーナは尻尾を立ててやる気満々だ。 



「ウェイトレスはセクハラ被害が多いらしいわよ」


 折角ニーナがやる気に満ち溢れてるのに、アリシア姉が水を差すようなことを言う。


 それは酔っ払いの多い居酒屋での話だろ? どこで聞いたんだよ。食堂は平和な家族連れで賑わう印象なんだけどな。


 しかし俺の予想とは裏腹に母さんがとどめの一言を発した。


「たしかに貴族が権力に任せて色々してるって噂は聞くわね」


 なん・・・・だと? 


 尻や胸、ましてやピクピク動いて噛みつきたくなるような猫耳や、フワフワで実は芯があるから手触り抜群の尻尾を触って「俺は子爵だから逆らうな」と言うのか!


 まさかそこまで腐った貴族が存在するなんて・・・・。


「ニーナ。何かされたら言うんだぞ。顔も覚えておけよ。物理的に没落してもらうから」


「ルークさん親バカですね~」


 うるさい、何かあったらお前とフィーネが潰すやるんだぞ。手加減なんていらない、全力で殲滅だ!



「わたしが先に片付ける」


 俺が手を出す前にニーナが自ら処刑すると言う。


「それなら良いんだ。でも一応教えろよ」


 ヨシュアでロア商会に喧嘩を売る人は居ないだろうけど、念には念の入れてフィーネと話し合っておくべきだな。


 食堂内で戦闘行為が出来るように、従業員の教育が必要になるか?


 こいつは益々忙しくなってきやがったぜ!

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