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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
五章 アクア編

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五十六話 レッツ決闘

決闘と書いてパーティと呼んでいただければ幸いです

 領主のバカ息子から喧嘩を売られました。


「エルフって長生きっしょ? って事はウェーイっしょ? マジサイコーじゃん? 金もらえて、むしろサンキュー的な?」


 なんだこのDQN語は? なんて言ってるんだ?



『DQN語』

 ド・キュ・ンの頭文字をとった、主に若者に多い言語。

 DQNとは社会に反抗、または非常識な行動をとり他人に迷惑をかける人。そして彼らが独自の文化で発展させた言語を『DQN語』と呼ぶ。

 常用する言葉として挨拶の「ウェーイ」「チョリーッス」、意思表示には全て「やべぇ(ヤベェ)」「マジ」を用いる。

 そのあまりに常識や品位に欠けている行動ぶりから嫌悪されているが、常に自己中心的で他人を顧みないため本人達は全く気付いていない。反社会的行為・違法行為を「格好良い」「当然の行動」と思っており、罪悪感も皆無のため長期間治らない難病である。



 そして領主は教育に失敗したようで、残念ながら次男はDQNに育ってしまったらしい。


「エルフとかマジヤベェっしょ。ヤバすぎっしょ。マブいっしょ」


 通訳が居ないので詳細はわからないけど、コイツはフィーネの身体が目当てで俺に『売れ』と要求しているらしい。


 俺も自信は無いけど、たぶん喧嘩を売ってるんだろうな。


 なるほど。つまり戦争がしたいと?



「露出ナッシングなスードレの上からでもウェイする、あの胸とか尻とかヤベェっしょ! ありえねぇみたいな?」


 フィーネを見て欲情しているらしい。


 俺、我慢しなくてよくない? 怒っていいだろ?


「ってか俺に逆らったら塩工場がウェーイ的な? マジ逆らわない方が良いって。俺が可愛がってやるって。ほらあの胸で●●●●とか●●●とかマジやべぇっしょ」


 はい無理~。もう無理~。



「ざけんなっ! フィーネは家族だ! ブッ飛ばすぞっっ!!!」


 俺は我慢の限界を超えて、全力で売られた喧嘩を買う姿勢を露にする。


 上位貴族がなんぼのもんじゃい! 



「戦いね! 私は誰を倒せばいいのかしら!?」


「わたしにも残しておいて、もぎゅもぎゅ・・・・これ食べ終わったら行く」


「クルーガー侯爵、申し訳ありませんが家族に対する侮辱を黙って見過ごすわけにはいきません」


 俺以外にもオルブライト家全員がブチ切れている!


 いや俺に比べたら結構温度感が低いけど・・・・でも怒ってるのは間違いない!




「あれあれ~? 子爵が侯爵に逆らっちゃう? やっちゃうよ? マジ俺サイキョーだし。お前らまとめてゴートゥヘルっちゃうよ?」


 全員から激怒されている事に気付いていないドギュンはさらに暴言を吐いていく。



「ルーク様。これは私、さらにはロア商会に売られた喧嘩です」


 俺がバカ息子に地獄巡りをさせようとしてたらフィーネが止めてきた。


「なんだ、止めるなよ。今からコイツを海に沈めないといけないんだ」


 ゴメン、間違えた。水の都なんだから、地獄じゃなくて真っ暗な深海にちんするべきだよな。



「おっと、海と聞いては黙っているわけにはいきませんね~」


 食事も一段落したユキがフラフラ近寄ってきたかと思えば、いきなり自分に戦わせろと言ってきた。『水』『氷』『海』などは、担当精霊としては見過ごせない単語らしい。


 また余計なやつが・・・・。


「ユキも手を出すなよ。俺の獲物だ」


 なるほど戦闘訓練はこんな風に役に立つのか。みんなが言う訓練の大切さが理解できたよ。


「そうよ、私達の獲物よ! で、私は誰を殴ればいいの? 竜? 竜殴っていいの?」


 アリシア姉も黙ってようか。



「ここはロア商会会長の私が」

「いえいえ~。海代表の私が~」

「いやいやいや。フィーネの主で喧嘩を売られた俺が」

「私は誰でも殴るわよっ!」



「誰でもいいからドギュンバカを叩き潰しなさいっ!」


 母さんに怒られた。


 もしかしたら一番頭に来ていたのは母さんなのかもしれない。パーティでイライラしてただけって可能性もあるし、チャラ男が嫌いって言うのもありそうだ。




 という訳で誰がボコるか、ジャンケンで決める。


「「「ジャンケン、ポンッ! あいこでしょっ!」」」


 なんかもうシリアスな雰囲気ぶち壊しだ。


 怒りなんてほとんど無くなってしまった。まぁ怒りとか関係なく、フィーネを馬鹿にしたドギュンはボコるけどさ。



 あ、ちなみにジャンケン勝者はユキだ。



「やりました~。やっぱり私ですね~」


 たぶん喧嘩の原因すら知らないユキは、とりあえずジャンケンの勝利を喜んでいた。


「私の拳はどこへ向ければいいの?」


「わたしの爪も」


 実践大好きアリシア姉と、食後の運動をしたがっていたニーナは不満そうだ。


「明日魔獣退治すればいいでしょ」


 母さんがストレス解消法を提案する。


「「そうね」」


 それで良いんだ・・・・。


 2人は戦闘できればなんでも良いらしい。




「さぁ~。ロア商会の開発部長、そして海の覇者であるこのユキさんが相手ですよ~」


 ユキは手首をプルプルさせたり、首や足首を回して準備運動をしつつやる気満々なセリフを言う。たぶんストレッチの意味はないけど、ユキなりの威嚇なのかもしれない。


 いつから海の覇者になったんだよ。実は海底で武者修行してたのか? そういえばユキが戦うのを始めて見るな。どんな魔術使うんだろう、楽しみだ。


 完全に興味の対象が変わっているけど、俺としてはドギュンが痛い目にあえばなんだっていい。



「やめてくださいっ! ワシの息子が大変、大っっ変、失礼なことをしましたっ! ほらお前も謝らんかっ!!」


「ユキ様、どうか静まりください。争いは何も生みません」


 そう言って領主様と長男のレビンが土下座をした。


 パーティ会場の中央で主催者達が土下座をして、生贄に捧げられた子供を助ける家族みたいなセリフを言い続けている。



「ウェーイ。じゃあお前ら、アイツをボコればエルフが好き放題みたいな? マジサイコーなんだけど、ヤバすぎなんだけど」


「「ウェーイ」」


 何もわかってないのは次男だけらしく、仲間たちと「ウェイ、ウェイ」言い合って妄想を膨らましている。おそらく貴族仲間とその護衛なのだろう。



 領主と長男は震えながら土下座したままだ。


 水神の件は眉唾だけど、クラーケンを3匹討伐しているのは事実なのだから、どのような惨劇になるか想像もつかないんだろう。少しでもユキに関する情報がある人から見れば力の差は明らかだった。



「じゃヨロシクチャ~ン」


 そう言ってドキュン、いやドギュンは護衛に指示を出す。


「フフフ~。対人戦は久しぶりですね~」


「もぉーし訳ありませんっっ!! 何卒! 何卒ご勘弁を!! お慈悲をっっ!!!」


 ひたすら謝罪する領主様。


「手加減失敗したらごめんなさい~」


「に、二っっっ度と! 二度と逆らわないと神に誓いますのでお許しをーーーーーっ!!!!」


 もうなんか領主様が可哀想になるぐらい叫んでいる。


(若くないんだから喉は大切にしてくださいよ。どれだけ謝罪されても許すわけないから)



「とっととやっちまえよ。保身に走ってる親父なんて気にすんな」


 ここまでしても止まらないバカ息子も相当だな。勝利を確信してるのかずっとニヤニヤしてるし。


 来客たちは完全に傍観者になることにしたらしく、スペースを空けて見守っている。




 結局3対1の勝負になった。


「あぁ・・・・おしまいだ・・・・アクアが、頑張って育てたアクアが無くなる・・・・」


「父上、それほどまでなのですか? 普通の少女に見えます。クラーケンを倒したと言っても、彼らもクラーケンを瀕死まで追い込んだ強者ですよ?」


 領主は絶望、長男は若干の期待を残しつつ行く末を見守る。


 対戦相手も一応クラーケン討伐に参加していたメンバーらしいので、彼は負けるとしても善戦ぐらい出来ると思ってるみたいだ。



「いや、アクアは無くならないでしょうよ」


 悲観的な領主に俺はフォローを入れる。


 すると領主が土下座の姿勢からクラウチングスタートを決めて、俺に縋り付いてきた。なかなか良い瞬発力だ。


「ほ、本当かね!? ユキ様が手加減を失敗しても大丈夫かっ!?」


「あ、ごめんなさい。約束は出来ません」


 だってユキの戦闘始めて見るし、なんとなく「手加減失敗しました~」とか言って水没するアクアが目に浮かんだので下手な約束はしない。


「あぁあああぁぁああーーーーーっ!! やっぱり駄目なんだーーーーーっ!!!」


 余計絶望に追い込んだようで、なんかスイマセン。




 とか言ってたら始まるみたいだ。


「「「水よ! スプラッシュ!」」」


 護衛3人が一斉に水属性の魔術を使う。


「おぉ! さすがアクアだ。強力な水属性の魔術が・・・・魔術が」


 出なかった。



 魔術を使った相手の方が全員倒れている。


「あ~。なんで水属性の魔術使うんですか~」


 ユキも何もしてないらしい。


 てっきり魔力を暴走させたか、体内に氷を生み出しての倒したのかと思ったけど違うようだ。



「ユキへの攻撃を嫌がった精霊が魔力をせき止めたのですよ」


 俺が訳の分からないという顔で悩んでいると、フィーネが説明してくれた。


 なるほど仲間、もしくは主への攻撃は許さないってことか。


 属性を持った魔術発動の条件は、魔力を微精霊で変換することなので、ホースで水をやろうと思ったら出なくて破裂したんだな。



「マジで~。なんだよそれ。お前ら弱すぎっしょ。あり得ないっしょ」


 呆気ない幕切れだった。自爆って・・・・不完全燃焼にもほどがある。




「よしっ! よっっっしっ!!! ドギュンの負けで万事解決だ!」


 領主は息子の敗北を心から喜んでいた。


 たしかに被害ゼロでこの場を収められたので、領主としては正しいんだろうけど親としてはどうなんだ?




「起きてくださいよ~。ルークさんを見返すチャンスなんですよ~」


 ユキが倒れた護衛達を起こそうとペチペチ叩いたり、水を生み出してぶっ掛ける等の努力をしてるけど一向に目覚める気配がない。


(フフフ、俺を見返す? 無理だな! お前は一生バカ精霊なんだよっ!)




「ところで私に欲情していた彼はどうしましょう?」


 無駄な努力をするユキは放っておいて、今必要なのは喧嘩の原因となったドギュンの処罰だ。


 もちろんバカ息子が無事というのが納得できないので、俺達全員が不満を露にして抗議する。


「主犯が何の罰も無いってどうかしら?」


「とりあえず二度と同じ真似が出来ないようにしておこうか」


 母さんと俺は特に怒っていたので具体的な制裁を相談する。


「海に沈めますか~?」


 対戦相手を起こすのは諦めたユキが中々いい案を言ってくれた。やっぱり海での制裁ってそれだよな。



「ひぃぃぃっ!! 私が責任を持って教育しますのでっ! この場はこれでお開きにっっ!!」


 息子の敗北を喜んでいた領主が再び必死の土下座を再開したので、流石に気の毒になった俺達はバカ息子の再教育を任せることにした。


 けど釘は刺しておく。


「何かあったらユキを暴れさせますからね」


 領主と長男は首を縦に振るだけでもう何も言わなかった。




 結局その後、パーティ自体が終了した。


 たぶん主催者側の精神が持たなくなったんだろう。


「ふむ、ロア商会か・・・・」

「あの実力でトップではないと。お前たちは勝てるか?」

「やってみなければわかりません」

「何故魔術が発動しなかったのでしょうか?」


 一部の貴族達はロア商会を要注意の商会に認定した。



「彼らは何を言っているんだ? 魔術の制御に失敗しただけであろう」

「相手が未熟だっただけですな」

「マジ護衛弱すぎ~」

「ドギュンも弱い護衛雇ってんなよ~」


 ほとんどの貴族は状況が理解できなかったらしい。



 こうして良くも悪くもロア商会は有名になっていく。

DQN語に詳しくないもので、翻訳に時間がかかりました。

専門家の方がいらっしゃいましたら改定文を教えてください。

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