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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
四章 スラム

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閑話 クイーンホーネット1

まさかの外伝キャラ主役で二部構成。


一応ユキの過去話なので良いですよね。

 自然界の生存競争に敗北したキラーホーネットが1匹、ボロボロな姿で森の外に居た。


(私は仲間を全て失った・・・・あの忌々しいドラゴンめ! 絶対に復讐してやる。

でも私ももう長くはなさそう。みんなが自らを犠牲にして逃がしてくれたのに・・・・ごめんなさい)


 たった今、名もなき森のキラーホーネットが全滅しようとしていた。



「おやおや~。蜂さんどうしました? ボロボロじゃないですか~。戦いに負けたんですか~?」


 ホーネットが顔を上げると、そこには真っ白な少女が居た。


(私の魔石を取りに来たのね・・・・でも抵抗する力もない)


「魔獣の魂に惹かれるって珍しいんですけどね~。私が助けて上げましょう~。デヤッ」


 そう言って少女はキラーホーネットの口の中に指を入れて魔力を流し込んだ。


(グアッ! 人間め、弱者をいたぶるつもりか! やはり噂通りの悪逆非道な蛮族めっ! クッ、いっそ一思いに殺せ)


 瀕死のホーネットは最後の力で、少女に恨めしそうな目線を向ける。



 次の瞬間、体中が軋み出した。


(か、体が熱い・・・・体内の魔石が砕け散りる・・・・あぐっ・・・・)


 そしてホーネットは意識を失った。




 翌日、目を覚ましたホーネットは体の異変に気付いた。


(なぜ私は生きているの? それに体が軽い)


「起きましたね~。色々と変化してますよ~。あ、自分の姿見ますか~?」


 そう言って少女は氷の姿見を出してくれた。どうやら敵ではない、いやむしろ看病してくれたのだから味方なのかもしれない。


 別の種族が魔獣の味方になることはまず無い。弱肉強食でお互いを潰し合うのが常識のはずなのだが、少女は魔獣を助けた。



 鏡を確認したホーネットは自らの変わりように驚いた。


(これが私? 全身が銀色になって、一回り大きくなってる。全身から魔力が溢れてるし、この針はどんな物でも貫けそう)


 ホーネットは尾っぽの針で地面を刺してみる。



ズドンッ!


 軽く刺しただけなのに地面が割れた。


(勝てる! これならあのドラゴンに勝てるわっ!)


「なるほど~。仲間を殺された復讐ですか~。今からドラゴンを倒しに行くんですね~」


 どうやらこの少女にはホーネット語が通じているらしい。


(ありがとうございます、あなたのお陰です。お名前は?)


 感謝するホーネットは命の恩人である少女に名前を尋ねた。




「初めまして~。ユキと言います~」



(私は・・・・『クイーンホーネット』です。

 キラーホーネット達の女王として蜂の王国を作る女です!)



 これが精霊ユキとクイーンホーネット、通称クーさんとの最初の出会いだった。




 自らの名前をクイーンホーネットと名付けた彼女は、森を支配していたドラゴンと戦うために飛んで行く。ドラゴンは我が物顔でホーネットの住処に居座っていた。


(ドラゴン覚悟しなさい! あなたの蛮行もこれまでです!)


「グルルーーッ!」


(遅い、遅すぎますね! 今まで殺された私の仲間の無念を思い知りなさいっ!)


 昨日までは絶望的な力の差だったが、今は違う。


 ドラゴンのブレスを弾く体、噛みつきを回避できる羽、突進を止められる筋力、そして一撃でドラゴンを仕留められる魔力を纏った針!


(この程度の相手に全滅させられたなんて・・・・これからは私が強くなるように育成しないと)


 意識を取り戻してから数時間で、彼女はドラゴンを凌駕する力を手に入れていた。




 クイーンが将来を考えているとユキがやってきた。


 どうやらドラゴンに挑む彼女を心配で探していた、ということはなさそうだ。のんびり散歩をしていたらたまたま見つけたぐらいの口調で話しかける。


「あ、もう終わったんですか。強くなりましたね~。それでクーさんはこれからどうするんですか~?」


(クーさん!? 私の名前はクイーンホーネットです。略さないでください)


「クーさんの方が可愛いですよ~」


 全く言うことを聞かないユキの説得は諦めて、呼び名は好きにさせる事にしたクイーンは今後の計画を話した。


(私はキラーホーネット達を集めて、ここに蜂の王国を作りたいんです)


 ドラゴンが居た事以外はなかなかの立地条件だと思っていたし、ホーネットが安心して暮らすためには自ら領地を作るしかないと考えたクイーン。


「ならまずは東に行きましょうか~」


 一緒に探すと言って譲らないユキとクイーンの仲間探しの旅が始まった。




 3日間で5つの森を探したが一向に見つからない。


(やっぱりキラーホーネットは減少しているんですね・・・・)


 どちらかと言えば集団戦向きなキラーホーネットは魔界の生存競争の中では弱い立場なのだ。彼らに安息の地など存在しない。


 だからこそクイーンによる王国が必要なのだが、思っていた以上に切迫した状況のようだ。


「クーさん、落ち込まないでください~。大切なのは情報収集ですよ。魔族の街があるので聞き込みをしてみましょう~」


(街に私が行ったら大騒ぎになりますよ。迷惑をかけるつもりはありません)


 仲間の情報は欲しいが騒ぎになるのは御免なので断るクイーン。だがユキに強引に連れていかれてしまう。




「なんだあのキラーホーネット」

「亜種じゃねぇのか、初めて見るな」

「魔力が桁違いだぞ! 注意しろ!」

「魔獣だ! 魔獣が攻めてきたぞ!」


 予想通りに騒ぎになってしまった。


(ほら、私は離れていますからユキさんだけで情報集めてきてくださいよ)


 魔族たちに攻撃されているが全く気にした様子はないユキとクイーン。ドラゴンの猛攻ですら無傷だったクイーンには無意味だが、これ以上騒ぎを大きくしたくなかったので離れることにした。



「キラーホーネットの居場所を知ってる人は居ませんか~?」


 そんな状況でもユキはいつも通りに尋ねる。


「アイツも魔獣の仲間だぞ!」

「くそっ。なんで効かないんだ!」

「もっと魔石持ってこい!」

「誰が教えるかバーカ!」


 当然誰も教えてくれない上に罵倒すらあった。



「む~。バカって言う方がバカなんですーっ」


 詠唱? をした瞬間、街の半分が凍りついた。


「「「・・・・・・」」」


 そして空気も凍り付いた。


「キラーホーネットさんの居場所を知ってる人は誰ですか~?」


「「「・・・・西の森に居ます。ごめんなさい。氷を溶かしてください」」」


 恐ろしい形相で攻撃を続けていた魔族たちが声をそろえて教えてくれた。


(すごい魔術です。今の私でも耐えられないかもしれません)


 全員に恐れられているとは全く考えないユキは一瞬で氷を溶かす。そしてその魔術がさらに恐怖を与えていた。


「情報提供ありがとうございます~。もっと魔獣とも仲良くした方がいいですよ~。悪い魔獣ばかりじゃないんです~」


ペコッ(ご迷惑おかけしました)


「(ぼそっ)チッ、魔獣なんかと仲良くするわけないだろ」

「ああ、あり得ないっての」


 生意気そうな一部魔族がボソボソ何か話している。


「何か言いました~?」


「「なんでもありません!」」


 襲撃された街では『白と銀の悪魔』と言う伝説が広まったとか・・・・。




 こうして2人はキラーホーネットの巣を発見することが出来たが、そこも絶滅寸前の森だった。


「うわ~。クーさんが居た森の方が絶対住みやすいですよね~」


(そうですね。おそらく安全な地を求めて敵の少ない土地を選んだのでしょう)


 敵が少ない=食料が少ないという事なので、自然に絶滅しかかっていた。


 その後、キラーホーネット達を従えたクイーンは移住するように指示してドラゴンの居た森へ戻ってきた。


 あの住みにくい森で暮らすよりは、ドラゴンによって巣が全滅した森で一から住処を作った方がよかったからだ。




「おかえりなさ~い。早かったですね~」


 そこには西の森で用事があると言って別れたユキが居て、連れてきたキラーホーネット達の巣があった。


(こ、これは?)


 なぜ遠く離れた場所に巣が移転されているのか、なぜこんなにも住み心地の良い森に変化しているのかクイーンには全く理解できなかった。


「長年暮らしていた巣とお別れするのが悲しそうだったので土地ごと転移したんです~。水場と果樹園はあっちに作りましたよ~」


 言われた通り行ってみると立派な川と池、そして豊富な果実があった。さらに元々あった木々には魔力が溢れて活性化している。


 もちろんホーネット達は大喜びで飛び回り、全員がユキにお礼を言っていた。


(ユキさん、心から感謝します。あなたは我々ホーネットの救いの神です)


「素晴らしい王国を作ってくださいね~。美味しいハチミツもらいに来ますから~」


(もちろんです。世界一のハチミツを差し上げますよ)



 その日、ホーネットの楽園が誕生した。

蜂の『くっころ』は誰得なんでしょう?

クイーン擬人化の予定はありません。

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