四十二話 ルークの神力
なんか気に入られたので能力くれると言う。
元々くれる予定だったけど俺が精神的に未熟なので持ち越されていたらしい。
「ルーク君の能力はこちらで~す!」
アルディア様が「ドルルルゥゥ~・・・・ジャジャーン!」って言いながら空中に現れた赤いカーテンを開いた。
『一年に一度だけの神力』
空中に光の文字でそう書かれていた。
無駄に凝った演出だけど、最近読んだ漫画に登場したマジシャンに憧れて真似したらしい。
暇人か!
「どういう事ですか?」
「誕生日の間だけルーク君の魔力と引き換えに神様の力が使えるんですよ~」
チートだった。
「あ、でも人間だと魔力が低いんで等価交換が精一杯だと思いますけどね~」
俺が強くなれば新しいモノを生み出せるけど、そのレベルは地上最強の生物にならないと無理だと言う。
つまり一年に一度だけにもかかわらず、同等のモノとしか交換が出来ないと。
「微妙じゃないですか?」
俺が強くなる必要があるんだろ? 魔道具で無双する予定だから戦闘はしないんだけど。
「何を言ってるんですかーっ! 欲しかった食材や調味料、苗が手に入るんですよー! 凄いじゃないですかー!」
な、な・・・んだと・・・。
「つまり有り余っているガルムの肉と米の交換が可能だと?」
米ないんだよ。たまに食べたくなる。
「それだけじゃないですよ~。交換せずに魔法陣の強化に使えば完全上位互換の魔道具に!」
くっ! 便利すぎる。諦めていたアレやコレも作り出せるだと!?
駄女神の称号は返上だな。あんた、もう女神様だよ。
「フフフ~。もっと崇めるがいいです~。悪い気はしませんよ~」
アルディア様が調子に乗り出した。
「これも最初から使えたらマズかったんですか?」
「ですね~。未熟者には扱えない能力ですよ~」
どうせ元ニートの未熟者ですよ。
いや能力を授けられたんだから、もう未熟者じゃないって事だ。喜ぶべきだろうか?
同じ理由でアルディアの人々に能力を与えることは無いらしい。
神託と言っても進むべき道を示すか、魔力を強化するぐらいだと言う。当然地上に現れた事も無いし、争う道具の作り方を教えた事もない。
でも確かに神殿には神具があった。レプリカだとしても本物を真似たはずだ。
「神殿にあった神具とかは?」
「あれは私を崇めるのに使いたいって言うんで専用の魔力を与えましたよ~」
一応本物もあるらしいけど、ほとんど偽物みたいだ。レプリカでも人々の願いが集まれば効力を発揮すると言う。
(つまり貴族専用の個室にあるレプリカより、広間の女神像の方が神具に近いってことか。やっぱり神殿ダメダメじゃん)
「ルーク君の周りだとフィーネさん、ユキ、ニーナさん、ヒカリさんなら真偽を見分けられますよ~」
ん? ニーナもいけるのか。獣人だから特に能力無いらしいけどな。ヒカリが特別なだけだ。
「あなたが近くで望み続ければ強くなるんですよ~。クフフ~」
さっきからなんなんだよ。そこまで言われたらニーナが強くなるように願ってみたくなるじゃないか。
今度一緒に風呂入ったり寝たりしてみようかな。願うってそれで合ってるのか?
俺が生まれてから知り合った人が全員チートキャラなんだけど・・・・。
実はマリクは王国最強の騎士で「自分より強い奴に会いに行く」って引退したとか。
エルが満月で覚醒したら実は伝説の魔獣でヨシュア崩壊とか。
父さんか母さんが魔王を倒した冒険者だったりとか。
アリシア姉の前世が魔神だったりとか。
リリがドラゴンスレイヤーだったりとか。
「みんな普通の人ですよ~」
ですよね。
それとアナタはいつになったら人の心を読まないようになるんですか!
神様に心を読まれないためにはどうするべきか考えたけど、一生無理そうなので諦めて世界の事を聞くことにした。
前は自分で調べろって言われたけど、絶対にわからない事もある。
「ところで俺が転生してから衰退はどうなりました? 魔力溜まってます?」
世界規模での変化はいくら調べても人ではわからなかった。ユキ辺りならわかるのかもしれないけど、アルディア様に確認したほうが確実だ。
俺のせいで余計に衰退してたら嫌だな。
「変化はないですね~。今後に期待です~」
仕方ないな。幼少期じゃ出来る事が限られてたからな。
「世界に魔力が増えれば、食材も増えてみんなハッピー?」
前にサトウキビを作った時に精霊が手伝ってくれて早く育った時に思ったんだけど、実際はどうなんだろう?
「正解です~。その代わり闇の精霊も増えて魔獣もわんさかですよ~」
思った通り魔獣は精霊から生まれてるらしい。
魔力の溜まった魔石が自然に発生して意思を持つとは考えづらかったから、そうじゃないかとは思っていたんだ。
闇の精霊が多く集まって出来たダンジョンや自然豊かな場所から生まれるので、山奥や海底なんかが絶好のスポットだと言う。
「衰退している主な原因はそこですね~」
パワーバランスが魔獣側に傾いてしまっているので、魔石の生産に魔力を奪われていると言う。
「ならダンジョンを潰して自然も破壊をしろと?」
「そこまでは言いませんけど、ダンジョンは減らした方が良いですね~。
あと魔石を使わないようにすることです~」
精霊を使って生み出される魔石は消費すると魔力に変換されずに消えるため、世界にとっては単純にマイナスになる。
でも人が生み出す魔力なら使えば使うほど精霊に変化するので、結果として世界に精霊が増えて衰退しなくなる。
かと言ってダンジョンとか魔獣が発生する原因を全滅させると闇の精霊が行き場所を失って世界崩壊するらしい。
大事なのはバランスだと言う。
魔石に頼らず、魔力を使う生活か。
「無理じゃないですか? 生活には必要なものですよ」
「そこを改善するのがルーク君の役目ですよ~。魔道具で頑張ってくださいね~」
魔石を使うなとは言わないけど、使う量を減らせってことか。もしくはリサイクルが出来る使い方をしろと。
なんか地球の二酸化炭素問題みたいだな・・・・。
つまり今後の課題としては。
『魔石を使わない』
『戦力強化で魔獣退治』
『人の数を増やして魔力増加』
この3つが出来れば任務達成だ。
人を増やすって要するに貧困を無くして豊かにするってことだろ。それは既にやっている。
魔石を使わないのもアルディア様に言われたように魔道具で頑張る。
問題は戦力。
「武器や防具を作るのか~。嫌だな~」
強い武器や防具を作ったとして、それを魔獣だけに使用してくれるとは思えなかった。人殺しの道具を作るのは嫌だ。
みんな笑顔っていう信念から外れる。
「そこで私の出番ですよ~。お任せあ~れ~」
アルディア様が言うには、豊かになれば精神的に余裕が出てくるし人口も増える、つまり神様の御眼鏡にかなう人が増えるって事だ。
それなら神託による特殊能力を持った人材が増えて戦力強化になる。
「ってことは俺は武器を作らなくてもいい?」
「イエ~ス」
いい笑顔でサムズアップしてくる。ばっちこーんってウインクも一緒に。
イラっとした。
「ルーク君にはスローライフを楽しんでもらいたいんですよ~」
「あなたは神か!?」
「神ですよ~」
そうでした。
俺の目標が『楽しい魔道具ライフ』になった。
「じゃあ俺そろそろ帰ります」
長居(?)しすぎてしまった。
色々聞けて勉強になったし、なにより楽しかったな。
「ではお元気で~。神殿の広間にある女神像はここに繋がっているので、ルーク君なら祈ればまた会えますよ~」
広間の女神像で良いんだ。むしろ広間じゃないと繋がってないんだ・・・・。
つまり俺のために払ったあの大金は貴族と神殿へのアピールにしかならなかったと。
そう言われればフィーネ達が女神像の近くだけ精霊が集まってるとか言ってたな。
「はい。アニメの話をするためにまた来ます」
「それは楽しみです~。たくさん話しましょう~。
今度はゲームとかも用意しておきますね~」
新作ハードのPii-SUとかやってみたかったんだよな。俺のアルディア様の2人プレイしか出来ないけど絶対楽しい。
完全に友達と会うノリだ。
異世界2人目の友達はアニメ話で盛り上がれる神様だった。




