三十八話 ヒカリ覚醒
ヒカリが千里眼を与えられてから3日が経った。
相変わらず面会謝絶状態だ。
フィーネには何度か会ってるからヒカリも元気にやっている事は聞いているけど、やっぱり会えないと心配になる。
風呂やトイレには行っているらしいけど、千里眼の特訓も兼ねて誰にも会わないように隠密行動をしているので俺達は目撃したことがない。
なんだか親と同居している引きこもりみたいだ。俺も前世では近隣住民が庭先に居る時は潜んだものだ。
なんか無職だって知られると周りに気をつかわせるんだよな。別にこっちは気にしてないんだけど、腫物を扱うように接してくるから会わないようにしていた時期もある。
まぁ今はどうでもいいか。
リリもニーナもニャーニャー言って心配している。
いやニーナは「ニャ」とは決して言わないけど、内心では言っていると思っている。
(ツンデレだから俺の前では言わないだけだろ? な?)
昼食が終わって魔術の練習でもしようかと思っていたらフィーネが現れた。
「皆さん揃っていますね」
『出来る限り食事は一緒に』と言うオルブライト家の決まりがあるので、フィーネとヒカリ以外は全員集まっている。
「入ってください」
そう言ってフィーネが扉を開けた。
ガチャ
「イリュ~ジョ~ン」
「「「・・・・・・」」」
さっきまでルークの隣に座っていたユキが登場した。
全員がヒカリが現れると思った。もちろん俺もだ。
「全員ポカーンとしているだろっ! お前、空気読めよ!」
ルークのツッコミは無視して、ユキはまた隣に着席する。とても満足げな表情だ。
(何がしたかったんだよ)
「みんな久しぶりだね!」
その直後、3日ぶりにヒカリが元気な姿を見せてくれた。
「お! 久しぶりだな。もう大丈夫なのか?」
「ニャ~ヒカリ~」
「元気?」
当たり前だけど全員が心配していたから、一斉に取り囲んで揉みくちゃにするがヒカリは嬉しそうに笑っている。
ユキがグダグダにした空気も元に戻って、みんなで快気祝いだ!
「千里眼を扱えるようになったのでお披露目をしようと連れてきました」
「わたし頑張ったんだよ!」
むんっと力むヒカリ。とってもプリティ。
「そう言われたら千里眼って結局どんな能力なのか知らないな」
フィーネ達から色々聞いていたけど、具体的には何も知らなかった。なんか凄い眼力ってことはわかる。
「魔力が見えるのよね!? 戦ったら強そうじゃない!」
「早速見せてもらいましょうか~」
魔力が視覚化される。どんな事が出来るんだろう?
早速ヒカリは皆を連れて訓練場へ移動する。
「じゃあ行くよ」
ヒカリとフィーネが向かい合って準備完了みたいだ。
戦闘狂のアリシア姉とマリクがとてもワクワクしていて、家族であるリリ達は心配そうだ。
「では。風よ『ウィンドカッター』」
ヒカリに向かってフィーネが魔術を発動させる。
直後ヒカリが前後左右に動いた。
(全く見えない。でも地面が抉れてる)
フィーネが不可視の攻撃をしたみたいだ。
そしてヒカリはそれを見切って回避したんだろう。これが千里眼の力か。
「次です。穿て、テンペストアロー」
(ちょっ!)
前にクラーケンを倒したと言う凶悪な魔術を使うみたいだ。
回避に失敗すれば体に穴が開く攻撃をフィーネは平然と放った。今度は俺にも見える魔力の塊が飛んでいく。
ヒカリは回避する様子もなく防御の構えを取っている。
「えいっ!」
掛け声とともに両手を突き出したかと思うと左右に開いた。するとフィーネの魔術が四散した。
(え? 素人から見ても凄い攻撃だったけど、無力化できるものなのか?)
周囲を確認するとユキ以外が驚愕していた。やっぱり凄い事をしたみたいだ。
「最後に、ユキ屋敷に隠れてください」
「了解です~」
そう言ってユキが消えた。たぶん屋敷の中に転移したんだろう。
ヒカリがキョロキョロしてユキを探している。
「ん~。食堂!」
ヒカリに言われるがまま全員で食堂に移動するけどユキはどこにも居ない。
(あれ? 千里眼って言うぐらいだから隠れた場所がわかるんじゃないのか?)
俺が疑問に思っているとヒカリが冷蔵庫を開けた。
その中にユキが居た。
「やりますね~。見つからないって諦めた誰かが冷蔵庫を開けるまでずっと隠れようと思ったんですけど~。やっぱり千里眼はズルいです~」
悔しそうにユキがブツブツ言っている。
「お前、それは前にフィーネが注意して禁止になったはずだろ。
いや、それよりもこれが千里眼の力か」
ユキへの注意もほどほどに、肝心なのは千里眼の方。色々便利そうだった。
「千里眼って凄いんだな。何が起こってるのかわからなかった」
「現状扱えるのは『魔術の視覚化』『魔術分析』『魔力探知』の3つですね」
「なんでも見えるよ! あ、誰か来たみたい門の前に人が居る」
本当に便利だな。魔力探知は人の中に存在する魔力が見えるので突然の来客もわかるらしい。マリクが確認に行ったら手紙の配達だったよ。
魔獣も魔石で判別できるのかな?
「すごいニャ! ヒカリ頑張ったニャ!」
「ヒカリ、良い子」
「みんなでルークの役に立とうね!」
猫たちは微笑ましいけど、離れた場所で不穏な空気を感じた。
「マリク、ヒカリに勝てる?」
「今は何とか。でも回避に専念されたら・・・いやでも・・・・」
「遠距離攻撃は無効、近距離は魔力の流れから攻撃がバレる。隠れてからの不意打ちも無理ね」
「ああ。まだ攻撃手段が無いから腕力で攻め続ければ勝てるだろうが。アリシア様はどうだ?」
「回避できない神速の一撃ならいけるかしら?」
お前ら、なんで身内を倒す計画を立ててるんだよ。
ヒカリを攻撃するならフィーネ&ユキのタッグと実践演習させるからな。
いや、それはそれでこの戦闘狂どもは喜びそうだから止めておこう。訓練を1日禁止させるとかが効果的か?
ルークが2人への罰則を考えていると、ふとした疑問が浮かんだ。
「強くなるのは良いと思うけど必要か?」
ヒカリが将来は冒険者として生活するつもりなら役立つだろうが、一般生活においては必要ないスキルばかりだった。
「今後はヒカリにも魔獣素材の調達をお願いするつもりですが?」
「うん。ルークは素材たくさんいるんだよね?」
会話が嚙み合っていない。
つまりヒカリは戦闘特化でメイド業を頑張るってことらしい。
「あれ? ずっと俺と一緒に居るつもりなのか?」
「えっ!? ダメなの!?」
ヒカリが凄い衝撃を受けている。
「ルーク様の覇道には必要だと思い、教育したのですが」
「い、いやダメじゃないよ。嬉しいよ・・・・覇道?」
リリやニーナはわからないけど、ヒカリは俺の護衛で確定みたいだ。従業員とかじゃなくて近衛兵って感じだな。
ヒカリの人生設計は5歳にして決まったようだ。
(俺としては自由に生きてもらいんだけど、まぁ本人が俺と一緒が良いって言うなら構わないけどさ)
『エルフのフィーネ』『精霊のユキ』『元王国軍所属のマリク』『学年トップクラスのアリシア』『千里眼のヒカリ』
何故か戦力が揃いつつある。別に世界征服して国王になるつもりとかないんだけど・・・・・・。
現状の戦力でもヨシュア領ぐらいなら制圧できる気がする。
もちろんフィーネとユキは手加減してだ。




