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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
二十六章 エルフ王国編Ⅱ

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五百話 かくし芸4

 俺は前々から、魔石がエネルギー源になるならそれに代わる物も必要なんじゃないか、と試行錯誤を繰り返していた。


 実際、神様からは魔石利用を控えるよう言われているし、フィーネ達の話では昔から人工魔石の開発にも力を入れている組織も多いらしい。


 ただ作れてもそこそこ強いBランク魔獣の魔石程度で、依頼してから手元に届くまで1か月は掛かるとのこと。しかもバカ高い。


 そんなの中堅冒険者パーティがダンジョンへ潜れば1日で手に入るんだから誰が欲しがるってんだ。


 これが石油や鉱石のように限られた資源というなら悩む人も多いだろう。エアコンやガソリン車のように環境破壊するのも理由になる。


 しかし魔石は精霊の生み出す魔獣からいくらでも採れるもの。むしろ害獣駆除や食糧確保の面からドンドン討伐していただきたい。


 つまりよほどの理由がなければ人工魔石なんて必要ないわけだ。


 なら何故神様は控えろと言ったのか?


 答えは簡単。世界の仕組みが『人が生み出す魔力を精霊に変化させることで潤うから』である。


 地球が陥っている環境問題の真逆と考えてもらえればわかりやすいと思う。


 魔獣のエネルギーが蓄えられた魔石をどれだけ使おうと意味はなく、求められているのはどれだけ有益なエネルギーを生み出せるかってこと。


 だから魔石を器として使う方法を思いついた時は『キタコレ!』と喜んだものだ。


 新たに蓄える魔力は人力か自然エネルギーなので、どちらも精霊に変換されるからな。


 ただそれでは限界がきてしまった。


 どれだけ魔法陣を改良して魔力の伝導効率を良くしても、強度や出力不足の問題で作りたい魔道具が生み出せないのだ。



「そこで俺が考えたのがこの『精霊石』だ。

 自然エネルギーを魔力に変換して送ることは出来るけど、魔石より便利な器を作れない。ならその出力を無理なく上げることで今の技術力でも新しい物が生み出せるかもって考えたわけ」


 ま、ぶっちゃけブースターだな。


 使い捨て乾電池だった魔石を充電式に変え、さらに超安価なリチウムイオン電池に変えた俺スゲー。


「…………? ルーク君なにか言った?」


「……いえ何でもありません」


 携帯(の解析)に熱中するイブと、携帯(の映像)に熱中するアリシア姉達は誰も俺の話を聞いてくれていなかった。


 結構大切なこと話したと思うんだけどなぁ……。


「私はちゃんと聞いてたわよ。

 つまり精霊石ってのは『神力の魔道具のように精霊を生み出すことは出来ないけど、自然界に存在する精霊の成長を促すことは出来る石のこと』でしょ?」


「そうなんですけど……皆の居る前で神力とか言わないでくれません?」


 それが何か聞かれたらどう答えれば良いんだよ。


「大丈夫よ。誰も聞いてないから」


 聞いて欲しいけど聞かれたくないこの現象を『ルークのジレンマ』と名付けよう……え? ただの駄々っ子? 自己中心的な奴?


 そ、そうですか……スイマセン。生まれて来てスイマセン。ホントスイマセン。



 と、引きこもり街道まっしぐらな俺だけど、皆が発明に興味を示してくれてるんだから落ち込んでなどいられない。


 きっと自分も欲しいと言い出すに違いないのだ。


「如何ですかな? これが我が技術の粋を結集させた新しい通信装置です」


「だからアンタのその口調は何なのよ……」


「すごい。でも私のには出ない」


「ほっほっほ。明日にでも精霊石を取り付けて差し上げますよ。いえ一緒に改造しましょう」


「是非っ」


 俺とイブはハグをしながら魔道具の新たな時代を祝福した。


 今回は試しなので大精霊などという凄い人に手伝ってもらったけど、いずれは魔法陣を刻むような感覚で作り出せるようになるはず。 


 となれば今から製造方法を確立させておくに越したことはない。


「無視してんじゃないわよ!」


「アリシア姉が先に無視したんだろ!」


「訳のわからない話をされたんだから当然でしょ!!」


 アリシア姉が理不尽な怒りで殴り掛かって来たので応戦したけど、案の定負けた。


 相手にしたくないけど相手にはなって欲しい。アリシアのジレンマだ。


 そしてこれまた自己中心的な人物の特徴。


 やったね! オルブライト姉弟は似た者同士だよ!


「は? イブの周りが映るんだからアンタと会話したら映らなくなるじゃない」


 ただ単に、電気屋に置いてあるビデオカメラではしゃぐ子供のように遊んでいるのを邪魔されたから怒っただけだったー。


「当たり前だけど、無視されたことも怒ってるわよ。

 罰として私達にも作りなさいよ。簡単に作れるんでしょ?」


 まさかの両方取りー。


 しかも慰謝料まで要求されたー。


「精霊石は簡単かもしれないけど、通信装置はまだ試作段階だから無理だぞ」


「何のためにエルフの里に居ると思ってるの! ここの連中と協力して帰るまでに作ること! 良いわね!」


「……はい」


 最近俺の立場が弱くなっていってる気がする。


 ……え? 昔から? むしろ強い時あったのか?


 ないね! 断言できる!


 ま、断った事のない俺も悪いんだけどさ。料理でも何でも自分の作ったもので誰かが喜んでくれたら嬉しいじゃん。しかも宣伝効果抜群。


 そう、これはステルスマーケティング。


 俺も彼女達を利用して世界復興をしているのだから、WIN-WINの関係と言って欲しいね!


 決して女性陣に頭が上がらないとか、暴力に屈しているとか、魔道具製作や調理を強要されているとか、そんなことはないのだ。



 いい機会だし全員分作ることにしよう。


 ポジティブに考えることにした俺は、エルフの皆様に旧携帯づくりをお願いするべくミナマリアさんの方を向いた。


 いやそもそもネガティブなことなんて一切無いよ? 言葉の綾っていうか、いずれはアリシア姉達にも渡そうと思ってたからナイスな提案してもらってラッキーみたいなさ。


「協力することと頼ることは別よ。風精霊を使った伝達に詳しい者を何人か知ってるけど、一方的に作ってくれというつもりなら紹介出来ないわね」


「ミナマリアさぁ~ん、お願いしますよぉ~。作らないと僕が叱られちゃうんですよぉ~~」


 しかし俺が何か言う前に会話を聞いていたミナマリアさんからNOを出されてしまった。


 だが俺もそう簡単に引き下がるわけにはいかない。


 アリシア姉が怖いからじゃないぞ。ステルスマーケティングをするためにだ! これからの世界には携帯は必要不可欠だからな!


「知らないわよ。勝手に約束した貴方が悪いんでしょ」


「そう言われましても、そもそも前提が間違ってるんですよ~。

 技術指導してもらうことを頼るなんて言っちゃダメですって。ちゃんと自分達で作り出せるよう努力しますし、エルフさん方も精霊石使ってもらって良いですから~」


「別に私達は便利な生活を求めてないのよ。むしろ自然と接する機会が減るのを恐れているわ」


「自然と触れ合える魔道具も作りますって~。仲良くしていきましょうよ~。

 あ、靴とか舐めましょうか?」


「…………」


 ひたすら低姿勢で説得する俺をミナマリアさんがどう思ったのかはわからない。


 ただ屈したのは確かだ。


 エルフの女王様の靴を舐められなかったことを残念に思ってしまった俺は結構Mなのかもしれない。


「ありがとうござい(スッ)……あ」


 握手を求めに行ったら無言で距離を置かれた。


 理由はわからない。



「お二人の携帯を作ったの私達なのに全く頼られる気配がない~」


 一連の流れを見ていたユキは、何故自分達に教えを請わないのか不思議そうに首を傾げる。


 そんなの言うまでもなく俺達が真似できない方法で作ったからだ。


 で、そうなると当然フィーネも拗ねていると思ったんだけど――。


「嘆くことはありませんよ、ユキ。私達以上の技術者が居るというなら是非とも紹介していただこうではありませんか」


 そんなこともなく、むしろ向上心を持って自分を高めようとしている。素晴らしい心掛けだ。


「え~~? そんな人居ませんよ~?」


「ええ、もちろんわかっています。その技術者の間違いを優しくネチネチと指摘すれば謝罪と共にその役目を交代してもらえますよ」


「でもその人が間違わなかったら……はっ! なるほどなるほど~。人間誰でも間違いはありますもんね~」


「そうですよ。間違いは誰にでもあります」


「フッフッフ~。技術力だけでも勝てるのに、あえてそれ以上の得意分野で勝負するなんて、お主も悪よのぉ~」


「うふふっ、そういう貴方もやろうとしていたのではありませんか? 確実に指摘出来る方法を」


「「フフフフフフフ……」」


 誰かこの2人を監禁する方法知ってる方はいらっしゃいませんか~?


 職人さんの命が危ないんです~。



「で、かくし芸は?」


「……ほ?」


 フィーネ達を抑えるのは無理そうだったので、なんとかあの恐ろしい計画を止めさせる手段はないか思案していると、ミナマリアさんが痺れを切らしたように言った。


 出番は終わったものだとばかり思っていた俺は変な声を出してしまう。完全に彼女の登壇待ちだったのだ。


「凄い石を生み出して魔道具の可能性を尋常じゃないほど広げたんですが……」


「それとこれとは話が別よ。イブだってあの後、魔道ゴマ大会開いて準優勝したでしょ。引きこもりの王女が凄腕スピナー。これは立派なかくし芸よ。

 ま、1000年以上やり込んで来た私には勝てなかったけどね」


 コマ回しが上手な人を『スピナー』と呼ぶことを初めて知ったけど、これ以上何かしろと言われても出来ないので、今はこの場を逃れることを優先しよう。


 お年寄りが自慢しておられるので褒めてみることに。


「あ゛?」


 ……誤魔化せなかった。というか怒られた。


 もしかして「熟練者ですね!」を熟成された年齢とでも受け取ったのだろうか? 気にしてないようなフリして実はメチャクチャ敏感なのかもしれない。



 仕方がないのでメルディとやっている中二病ごっこ(アニメの再現)をフィーネやユキの協力を仰ぎ、披露。


「力が欲しい……!! あいつとは全く違う力を、あたしは死んでもいい。

 せめてあいつの目をさますことができるだけの力を……!!」


 カッ。


 フィーネが全身全霊で放った精霊丸が、ユキの左胸に直撃した。


「――っ」


 俺が到着した時には、血みどろの中で倒れるフィーネと、彼女の命を懸けた一撃を受けても何事もなかったかのように立つユキの姿が。


 こちらに気付いたユキはゆっくりと語りかけるように口を開いた。


「遅かったですね……。

 月日とは無情なものです」



「あ、ここから先、私知らない。新作だわ」


「ふふっ、やるじゃない。この私を熱くさせるなんて……」


 割とウケた。


 実写化のやつみたくならなくて良かったぁぁ~~。ああいうのってネタでしか使われないじゃん。


 あとお姉様。俺はあくまでもメルディに付き合っているだけで望んでいるわけではないので、そこんとこ勘違いしないように。

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