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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
二十六章 エルフ王国編Ⅱ

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四百九十七話 かくし芸1

 例の如く凄まじい酒乱っぷりを見せつけたルナマリア・ヘルガ・クララ。


 酔ってないけど彼女達に負けないぐらい暴れてくれたユキ。


 さらに人間が勝手に決めた法律など通用しない土地ということで、人生初の飲酒を行ったイブ以外の少女達も目をキラキラ輝かせながらそこへ突貫していく。


 ……最後のは酒関係ないかもしれない。


 とにかく恐怖の三重奏によって俺の精神力は一瞬でゼロになるかと思いきや、今回は酒を控えたフィーネのお陰でなんとかなった。


「単純に飲みなれてなくてペースがわからなかったんだと思うわよ」


 ミナマリアさんは我関せずでその様子を観戦しつつ、久しぶりの帰郷にテンション上がってペース配分を間違えたのだと語る。


 それはフィーネだけではなくルナマリア達の惨状への説明なのかもしれない。


 だとしたら伝えておかなければならないことがある。


 俺はたまに飛んでくる火球(たぶんアリシア作)をフィーネに消してもらいながら女王陛下との会話を続ける。


「ここで起きたことは俺の責任じゃないですからね? 止められるのに止めないアナタの責任です」


「わかってるわよ。里の外で初めて出来た友人と遊びたいって娘心は大切にしないとね」


 優しく微笑んだミナマリアさんは女王ではなく母の顔をしていた。


 ふむ、痴態を晒すとわかっていながらルナマリアが自重しないのは、旧友が居ること以外に理由があったようだ。


「……ライバル?」


「こらこら、君まで参戦しようとするんじゃありません。俺だけじゃなくてアリシア姉達も含まれてるから。

 ところで――」


 薄い生地のドレスのどこに仕舞っていたのかわからないけど、ワンパン君デストロイを装着して席を立ちあがったイブをたしなめた俺は戦場の一部を指さす。


「ああいうのって王族のパーティでは普通なのか?」


 そこにあるのは、周囲で巻き起こる魔術合戦に負けず劣らず激しく料理をする宮廷料理人のモツさんの姿。


 包丁を一振りする度に食材は宙を舞い、火は蛇となって踊り、鍋から飛び出した料理は美しく皿に盛りつけられていく。しかも酔っ払い共の魔術まで調理工程の1つとして利用していて、まるで彼女達が料理を手伝っているかのようだ。


 おそらく食事を取っている者が何をしようと無礼にならないよう配慮した結果なのだろうが、それにしたって竜や宇宙が出てきそうな料理アニメさながらのテクニックだ。


 今まさに何かしているのが手塩にかけて育てた娘なわけだが、動揺することなく調理を続けるプロの姿に俺は感動していた。もう流石としか言いようがない。


「あんなに暴れる人の居るパーティには参加したことない」


 そもそもの問題だった。例えその技術があっても使う場面がないんじゃどうしようもない。


 あとはイブの性格に合わなそうだからやらないって理由もあるかも。一般的な貴族や王族はああいった行為を『野蛮』と捉える傾向にあるからな。



 ――と、大層騒がしい宴になってしまったけど、俺達はモツさんによるファンタジーな調理で楽しみながら腹を満たしていった。


 暴れてる連中の分は持って帰ってください。空腹になったら反省すると思うので……え? また呼び出されるのが面倒? 大量に作り置きしておくから今日はもう仕事しない? 火の魔術でボッして温めろ?


 なにレンジでチンみたいに言ってんスか。これからアンタの娘さんがかくし芸をするんだから見ていって……え? 酔いを醒まさずにこのまま寝かせておく?


 またまた~。今から盛り上がるところじゃ……どうせまた飲むから相手をしろ? 俺が引き留めたんだから責任は全部俺?


 あ、はーい。どうぞ連れて帰ってくださーい。




 エルフ三人衆を欠いた俺達は、女王のために自己紹介を兼ねたかくし芸の披露という、ある意味本当の謁見をスタートさせることとなった。


 ルナマリア達の隠している芸がどのようなものかは気になったけど、日を改めて見せてもらえばいいだろう。


 何にしても前座にしては素晴らし過ぎるモツさんの芸のお陰で俺達がどれだけショボいことをやっても笑える空気にはなっている。


(って俺、何も考えてないじゃん!? どうするよ!?)


 いざ始めるなった時、俺は状況に流されていて自分の出し物を決めていないことを思い出し、慌てて脳内で使えそうな火の道具を検索した。


(バーナー関係しか出て来ねぇえええええええええっ!!!)


 が、案の定そう簡単に思いつくわけもなく、トイレ休憩という名の作戦会議を開くことに。


「へいへい相棒、どうするよ? 火なんて燃やすしか能のない力で驚かせるの無理じゃね?」


『……お前、姉には火で破壊と創造が出来ると言っただろ』


 アリシア姉から没収した魔法剣レーヴァテインに話し掛けると、そこに宿っているサラマンダーさんの声が聞こえてきた。


 トイレに大剣背負っていくって相当邪魔な気がするけど、まぁそこは気にしないでくれ。


「いやまぁそうだけどさ。創造って言っても物質を何かに変化させるだけじゃん? 

 今から魔道具考える時間なんて無いし、ぶっつけ本番で魔法陣を正確に描けるとも思えないんだけど」


『ふざけるな! 簡単に諦めるんじゃない! 俺が大精霊の中で確かな地位を得られるよう協力すると言ったじゃないか!!』


「いや言ってねえよ」


 活躍させてくれた礼がしたいと言うから呼んでやったのに、勝手に今後の活躍まで約束させないで頂きたい。


 そういうのは冒険者のアリシア姉にでも頼め。少なくとも俺はフィーネの炎で間に合ってる。


『そんなこと言うなって。一緒にバーニングしようぜ~』


「ええいっ、寄るな! 暑苦しい!」


 俺は実体化した火の玉を振り払いながら、ミナマリアさんがコイツを召喚しなかった理由を痛いほど理解した。


 このサラマンダー……面倒臭い……。


 それはまさに、初デートや手をつないだ日やキスした日など何でも記念日にしたがる女子のように。


 あるいは2人きりで遊んだだけで付き合っているとか、どこそこを改善したらモテるよと言われた子には告白成功すると勘違いする男子のように。


 はたまた、ゲームで負けそうになったら電源切って不機嫌になる子供のようであり、運転中に横入りされたらパッシングとクラクションと接車で煽り始める短気のようであり、3次元では上手くいないと世捨て人になって家族を困らせるニートのような存在。


 奴等と同じく、間違ったことをしているなんて思ってもいないもんだから、どれだけ言っても改善はされない。


 そう……コイツはユキと同じ迷惑な思考の持ち主なのだ!


「――っ! それだ!!」


『どれだ!?』


「俺はかくし芸でやること決めたぞ! ……いやでも素材が難しいか。この辺は魔獣が居ないから魔石も無いし、ユキに調達してきてもらったらバレる可能性が高い」


 例え話から素晴らしい閃きをした俺は、必要となる物を考えてすぐに絶望した。


『つまり精霊の宿っている物が必要だと?』


「ああ。出来ればお前が全力を出しても壊れないぐらい頑丈な物が良いけど……」


『ふははっ! そのような物はこの世に存在しない!』


「だよなぁ……はぁ、折角思いついたのに……」


 自慢気に笑うサラマンダーは関わると面倒臭いので相手にしないけど、言っていることは間違っていなさそうなので、俺はこのアイディアを諦めるしかないのか溜息を漏らす。


『…………(すっ)』


 すると突然空中に現れたスイちゃんが俺の手のひらサイズの塊を差し出してきた。


 どうやらこれが俺の求めている素材らしい。


 で、これ何よ?


『翠龍の角の欠片だな。たしかにこれなら俺の猛火にも耐えられるだろう。

 何を作るつもりかは知らんが全力で行かせてもらうぞ』


「いやまぁ……はい……あの、ありがとうな」


『…………』


 俺の礼を聞くと、スイちゃんは次元の狭間へ引き返していった。


 なんか知らないけど、凄い素材GETだぜ!




「第一回! アールヴさんちとオルブライトさんちとセイルーンさんちの親睦を深めるためのかくし芸大会~~っ!!」


「「「わーー」」」


 全員ユキのタイトルセンスに不服があるのか若干棒読みの歓声をあげ、俺達の親睦会は二次会へと突入した。


「ではまず手始めに司会進行の私から行きましょうか~」


 ヒュゥ~、ハードル上げていくぅ~。『手始め』なんて後に続く者達はさらに凄いことをしなければならないという脅迫でしかない~。


 そんな言葉を残し、即席で用意された壇上に登った精霊王様は――。


「ここに先ほどモツさんに作って頂いた10種類のマヨネーズがあります!

 実は私、味覚には自信がありまして、なんと目隠しして全ての食材と調理工程を言い当てることが出来るんですよ! もちろん調理するところは見ていません!」


 全く隠していない芸を披露した。


 当たり前だけど全問正解をやってのけた。


 ……盛り上がらなかった。


 少しでも盛り上げようと既に食したマヨネーズを混ぜてみたけど、俺が混ぜたことまで当てられてしまい、やっぱり盛り上がらなかった。


「フッフッフ~。私ってばハードル上げすぎちゃいましたかね~。すいませんね~」


 本気で悪びれている風だったので無視しておいた。



「で、では……次は私が」


 そんな冷えきった空気の中で俺達や女王様に芸をさせるわけにはいかないと名乗りを上げたフィーネは、エルフ族に伝わるという歌を披露。


 澄んだ歌声と風精霊達の伴奏で俺達に感動を与えてくれた。


「よく覚えておけ。こういうのがハードルを上げるって言うんだ」


「……え? あ、もしかして私に言ってます?

 たしかに上手でしたけどルークさんやアリシアさんなんか子守歌として聞いてるかもしれないですし、ミナマリアさんは知ってて当然。

 ここはあえて下手な方が驚きありましたね~」


 …………うん。もういいや。君が満足してるならそれで。



「じゃあ私が行くわ! クロ!」


「グル!」


 続いて自信満々に前へ出たアリシア姉とクロは、演武というか連携技を次々に繰り出していく。


 俺にはわからないけど戦闘のプロの皆様が唸っておられたので人間の少女にしては中々のものなのだろう。


「大丈夫。私もわからない」


「だ、だよな?」


「でも綺麗だと思う」


「……まぁな」


 クロも引き立て役として素晴らしい動きをしていたし、真っ赤なドレスで踊る美少女が華麗に舞っていたらそりゃシスコンじゃなくても美しいとは思う。


 町で見かけたら足を止めて見入るぐらいの魅力はあった。両手に持った短剣が神聖な儀式みたいでとてもグッド。


 ちなみにこれ。レーヴァテインが使えない状態での戦闘訓練中に身につけた技で、彼女の魔力操作では大剣を作り出せないので仕方なく短剣になり、魅せ方はメルディの中二的センスによるもの。


 演武後、その事実を知って美しいと思ってしまった自分が悲しくなった。



「そこで彼女は言ったんだよ。

 『私のじゃないですけど……』ってね!」


 続いてヒカリが披露したのは、漫談。


 喋りが得意な彼女に相応しい演目だ。喜怒哀楽の感情を込めた語りに俺達は腹を抱えて笑った。


 アリシア姉やミナマリアさんは涙を浮かべて笑い、恥じらい皆無のユキなんかはチンパンジーのように両手両足で拍手して大歓喜。


「ふっ……ふふふ……っ」

「ぷふーっ」


 普段から笑うことが少なく、笑ってもせいぜい微笑のイブやニーナですら肩を震わせたり吹き出したりの爆笑っぷりだ。


 ただフィーネだけは苦笑というか憐れみの籠った笑みを浮かべている。


 まぁ理由はわかる。


 だって……全部俺の体験談だから……。


 ははっ、笑うがいいさ。俺の面白い人生をなっ!

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