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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
二十六章 エルフ王国編Ⅱ

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四百九十六話 宴

 ミナマリアさんはアリシア姉達を歓迎する宴を催すと言っていたけど、実は手配済みだったようで、俺達がのんびりと森を散策している間に準備が整ったとのこと。


 時間も時間な上、散々遊んだ俺達の中に反対する者などいるわけもなく、夕食という名の親睦会&かくし芸大会が始まろうとしていた。


 となると、火の大精霊という強力な助っ人を得た俺も何をするか考えないといけない。


 自慢じゃないが生まれてこの方……いや生まれる前から“かくし芸”なんてものを持ち合わせたことは一度もない。


 子供の頃は歌や劇などでモブに徹することで乗り越えてきたし、社会人になってからは当然のように幹事にされて当然のように盛り上げ役にされたけど『口上一気代行』で乗り切った。


 それが何かって言うと、飲み会の席で挨拶する時に飲めない人の代わりに一気飲みをするというホスト的な役目だ。


 後輩同僚からは感謝されるし幹部連中は確実に盛り上がる。


 別に酒に強いわけじゃないからトイレで吐く羽目になるけど、それはそれで「げ、限界っス……」と泣き言をいえば笑ってもらえる。


 ――とまぁ悪しき風習を利用して盛り上げ役をしていた俺だが、今回与えられた任務は『盛り上げ』ではなく『かくし芸』というのだからそりゃあ悩む。


 言っちゃなんだけど俺の優れた部分なんて前世の知識からの発想力ぐらいなもんだ。


 だから『火を使った何かをやる』までは考えたけどそこから先が全く思いつかない。というか、火は危ないものだから使わない様にしよう、って文化だったんだからそれを自由に使えるからなんだって話なわけですよ。


 オール電化万歳の時代に燃やすことしか出来ない力をどうしろと?



「ねえ、ちょっと。聞いてるの?」


 しかもこの限られた時間の中で必死に考える俺を邪魔する人まで居るってんだから思いつけるわけがない。


 誰かって言うとミナマリアさんだ。


「この魔法剣、本当にフィーネが作ったの? それ凄いことよ?」


 どうも先ほどの『武具作りはフィーネやユキに任せれば良い』という発言からレーヴァテインもフィーネ作であることを察知した彼女は、そこから俺が関わっている事実も導き出してコンコンと説教っぽい説明をしていた。


 やはりフィーネはエルフ族の中でも相当な技術者だったようだ。


 ただその辺のことを詳しく話すと確実にシスコン扱いされるので、適当に誤魔化させていただこう。かくし芸も考えなきゃだしな。


「学校卒業したら冒険者になるっていうアリシア姉のために俺とフィーネとユキで作りました。魔法剣になったのは完全に想定外です。

 ちなみにこの3人は直々に鍛えられたりしてます」


「凄いことよ!?」


 勝手に『フィーネに教えてもらうなら技術より戦闘だ』と希少性を決めてしまったけど、その考えは間違っていなかったらしく、アリシア姉・ヒカリ・ニーナを順番に指さすと、それに応じてミナマリアさんのテンションも高まっていく。


 エルフ達にとって魔法剣を作り出すことがどのぐらい凄いのかは知らないけど、魔法にも劣らない力を手に入れることの方が凄いと思ったんだよ。


 実際アリシア姉とヒカリが戦ったら9割ヒカリが勝つ。


 まぁ種族というか肉体に差があるから必ずしも魔法より凄いってわけじゃないんだろうけど。ヒカリは存在がチート過ぎ。


「あ、いえ……あと3人ほど居ますが……」


 この報告にフィーネは、自分が指導したのはまだ居る、と訂正を入れてきた。


 もちろん俺も忘れていたわけじゃない。

 

 アリシア姉がフィーネから鍛えてもらう前に戦った時、魔法無しで良い勝負をしていたので、1週間程度なら言う必要もないと除外していたのだ。


 ぶっちゃけ彼等が一流冒険者になれるなんて微塵も思っていない。


「でもあれ1週間だろ? そんな変わらなくね?」


「私達の修行は1日でプロが教える修行の1年分なんですけど、幼い内から強大な力を手に入れるとロクなことにならないのは目に見えています。

 そこで15歳になるまで覚醒を先延ばしにしてたんですよ~」


 ユキはもうすぐ覚醒です~と微笑みながら、どこぞの精神と時の部屋みたいな状態にあることを告げる。


 我ながら的確な表現だと思ったけどどうせ誰もわからないので止めておいた。


「だったら体育の授業で教えられた俺達は全員冒険者としてやっていけるじゃん」


「いえ、あれはあくまでも健やかな体作りが目的でしたので。死線を潜り抜けることを前提とした戦闘訓練しているアリシア様達とは違いますよ」


 ……死線とかあるんスか? 弟としては生活に困らないぐらいの強さがあれば十分だと思うんですけど?


「ならまだまだ足りないわね」


「そうだね。わたし達の日常ってルークが巻き起こすトラブルに対処できるだけの力だから、そうなると全然足りないよね」


「その話には2つおかしな点がある。

 1つは俺がトラブルを起こしているという点。何故か毎回巻き込まれているだけで俺は平穏第一のスローライフを求めています。

 そしてもう1つは発生したトラブルに力は必要にないこと。ワイバーン倒せれば十分です」


「「「ないない」」」


 その場に居た全員から真顔で首を振られた……。


 何がないってんだ? 俺の平穏か? だとしたら君達は俺の人生そのものに喧嘩売っているぞ?


 ねえ、誰か答えようよ。ハッキリ言わないと伝わらないこともあるんだよ? ねえ?




 そこから浴室で体を清め、パーティ用の衣装に着替え、人数分のサイズのテーブルに着席するまで一同は俺をシカトし続けた。


 着替え終わるまで1人だったからすごく寂しかった。


「なあ、これってやっぱり今作ったわけ?」


「ええ。大樹に命じれば簡単に作れるからこういう時は便利なのよ」


 これ以上無視されるのは耐えられないと無難な話題を振ると、トイレに常備されているようなドレスとは比べ物にならないパーティドレスに身を包んだルナマリアが、優美な佇まいで見るもの全てを魅了する見事なプリンセスとして答えてくれた。


「……ら良かったのにな~。お前ぜんっっぜん変わんねえのな」


「うるさいわよ」


 情熱の赤いドレスで着飾った彼女は、同じ赤だけど動きやすさ重視のセクシー系であるアリシア姉とドッコイなレベルだ。


 これならフィーネの方がよっぽど王女様している。


「お褒め頂き光栄です」


 いえいえ、どういたしまして。


 それより胸の谷間が見えるのはスレンダーなエルフさん方に喧嘩を売ってるのかな? 出来るもんならやってみろよって挑発してるのかな?


 クララなんか気を遣って胸も背も小さいヘルガの両目抑えちゃってるじゃん。


「わたしは?」


「初めてのパーティ会場でテンパってる黒猫」


 尋ねようと思ったけど、頷かれたら無駄な争いを生んでしまいそうなのでことなかれ主義の俺は黙っておくことに。


 ニーナが感想を求めてきたので言えなかったってのもある。


「私は?」


「普通の王女様」


「「…………ふっ、わたし(私)の勝ち」」


 いつの間にか勝負していた2人は、お互い無表情キャラの割には勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


 ただ言わせてくれ。


 どう考えてもイブの勝ちだろ!


 ニーナのロリボディに肩と背中を露出させた黒ドレスは似合わないんだよ。ならイブの露出の少ない白ドレスの方が万倍マシだ。



「あまり知らない連中が居ても楽しめないでしょうから最低限にしてみたわ。

 アールヴの里、セイルーン王国、そしてロア商会の繁栄を願って、乾杯!」


 馬子にも衣裳状態でキャッキャ遊ぶ俺達が落ち着くまで待っていたミナマリアさんは、おそらく自分も含めての意見を述べ、質素とまでは行かないまでも煌びやかとは程遠い宴の開幕を宣言した。


 俺達以外にこの場に居るのは給仕係(まんぷく亭に居たウェイトレスさん)と、俺達の目の前で料理してくれるモツさんだけ。


 あとは厨房で数人の宮廷料理人がエルフの里ならではの料理を作ってくれているらしい。


「今回は飲み過ぎるなよ。ってか飲むなよ」


「わ、わかってるわよ……」


 だから秘密にしろと言っているような口調だけど、残念ながら笑い話として食卓を彩らせてもらうつもりだ。


 (割と)しっかりしている普段からは考えられないフィーネやルナマリアの痴態は、さぞ少女達のハートを震わせることだろう。


 飲ませたら戦えるっていう危険な思想に至らないことを祈るばかりですけどね。


 …………止めとこうかな。


 そっちの方が無難だよな。これじゃあまるで俺がトラブル起こそうとしてるみたいだし。


「この里には美味しいお酒を作る秘術がありましてですね~」


 おい止めろ。酔ってもいないクセにフィーネ達とドンチキ騒ぎをして楽しいのはお前だけなんだぞ。ってコイツは自分が楽しければそれで良いのか。


 改めて思うけどなんて迷惑なヤツなんだ……。


「食事会は楽しんでナンボですよ~。

 大人の皆さんはお酒飲めて楽しい。私は騒げて楽しい。アリシアさん達は願いが叶って嬉しい。ルークさんは被害者面できて楽しい。

 ほら良い事づくめ~」


「俺をオチに使った上に間違ったこと言ってんじゃねえよ! 被害者面してないし楽しくもねえっ!」


「私達が楽しいことって何かしら? 酒の話と関係あるの?」


 ああぁぁ……有耶無耶に出来たと思ったけど聞かれてたぁぁぁ……もうダメだぁぁ……。



 そこから先は語りたくない。


 いつかは楽しい思い出として話せる日も来るかもしれないし、永遠に来ないかもしれない。


 取り合えず言えるのは楽しんだ人間が多かったってこと。


 こういうことがあるから飲み会をしたい人間とそうじゃない人間が居るんだろう。


 ただ飲みたくないからって親睦会に参加すらしないのは違う。


 きっと俺の盛り上げ方を批難する人も多いはず。


 でも転勤だの部署移動だのはあるけど家族より長く生活することになる仲間だぞ? 仲良くならないでどうするってんだ。


 だったら無理してでも盛り上げる方法を絞り出して楽しんだ方が絶対良いと思うんだよ。「自分無理っス」とか「は? 嫌ですけど?」って反応は絶対にしちゃいけない。


「……止めなくて良いの?」


「うん無理、あの中に飛び込むのは断固拒否する」


 ……ま、普通の飲み会ではね。

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