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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
二十六章 エルフ王国編Ⅱ

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四百九十二話 森ボーイ

 整地されているわけでもないのに獣道より広々とした道。


 鬱蒼としている所は動物の侵入を拒むほどビッシリと生えているけど、蜘蛛の巣や植物の枝はそうすることを決められているかのように視界の片隅にヒッソリとあって歩くのを邪魔しない。


 出会う動植物はお互いを尊重し、争うことなく共存している。


 そんな密林でありながら密林とは呼べないような森を進み続ける俺達は、着実にエルフ達が暮らす大樹へ近づいていた。


 となれば俺がこの4日間の間に得た知識が活かされる場面も出てくるわけで――。


「あれは『ブーブーさん』といって、交渉次第で腹の肉をくれる。まぁわかりやすく言えば豚だな。

 エルフ達がほとんど肉を喰わないから狩られる心配がなく、人を恐れず、のうのうと生きてる奴等だ」


 こうして豆知識と共に知っている情報を出すことで少女達は(比較的)大人しくしてくれる。


 それを悟ってからというもの、俺はフィーネやユキと協力して彼女達を感心させることに専念していた。


「だから私達を見下したような目をしてるのね! 腹立つわぁ~。人間様の力を思い知らせてやろうかしら」


「アリシア様、どうか抑えてください。この森で火を使えば全ての生き物から恨まれてしまいます」


「チッ……運が良かったわね」


 御覧の通り、あのアリシア姉ですら魔法剣レーヴァテインを抜こうとして背中に回した手を引っ込める。


 『郷に入っては郷に従え』という基本ルールぐらいは守るつもりがあるらしい。


「あれ? ってことは火を使わなければ戦っても良いの?」


「そうですが……お勧めはしませんよ」


「ああ。メッチャ強いから魔法が使えないアリシア姉なんて瞬殺されるぞ」


 で、数分おきに体を動かさないと禁断症状が出るアリシア姉の矛先を、迷惑かけてもまだ許される生き物へ向けるのも責任者たる俺の役目ってわけ。


 『勝てない』『止めておいた方が』『そ、それは……』


 この辺のことを言っておけば大体挑む。


 逆に無関心を装って適当な説明をして、豆知識も披露しなければ彼女も気にせずスルーしてくれる。なんとも扱いやすい姉だ。


「舐めんじゃないわよ! アンタ達が知ってる私と思ったら大間違いなんだからねっ! 見てなさいよ!!」


 ほらな。


 アリシア姉は自信満々にブーブーさんの群れへ近寄って行き、一番強そうな巨体に殴り掛かった。



「や、やるじゃない……」


「いや良い勝負した風を装ってもアンタの完敗だからな?」


 あっちは分厚い皮膚と魔力防御によってノーダメージ。こっちはその練り上げられた魔力を込めた蹴りでワンパン。


 一方的にもほどがある。


「なんで豚が空中で体捻って回し蹴り放つのよ!? おかしいでしょ!?」


「アリシアちゃん、それより魔獣でもない動物が魔力使えることに突っ込もうよ……なんなのあの動物?」


「ブーブーさん」


「空飛ぶ豚はただの豚じゃないのよ!!」


「いやだってブーブーさんってそういう生き物だし。皆にもわかるように言っただけで豚じゃないし。ブーブーさんだし」


 足元に落ちている果実以外にも遥か上空に実っているものを採ろうと空を飛んだブーブーさんを見て文句を言う2人に、俺は補足説明をしながらその認識が間違っていることを告げてやった。


 彼等は『片方が沈む前にもう片方の足を出せば』という水の上を走る忍者みたいな理屈で空を駆けることが可能な生き物なのだ。



 その後、ヒカリ、ニーナ、エルフさん方の結界を頼った魔法剣ありのアリシア姉、と立て続けに同じブーブーさんに挑んだが、見事に三タテを喰らった。


 全員戦闘態勢に入る前に腹パンで即KO。


「「ううぅぅ……悔しいぃぃぃ~~~っ」」

「わたしはまだやれる。まだ負けてない」


 ニーナよ。それは負けたヤツのセリフだ。


 悔しがるのが恥ずかしいのはわかるけど、そこは素直になった方がカッコ悪くないぞ。


「最初から全力全開で行かないからだって。フィールドに入ったら名乗りとか挨拶とかいらないんだよ」


「「「それはマナー違反(よ)」」」


 お前等はどこの戦隊モノなんだよ……。




 いつかリベンジすることを夢見る少女達は「これも修行だ」と喚き散らし、仕方なくフィーネ先生による正しいブーブーさんの倒し方を学ぶ羽目になってしまった。


「相手が正面から向かってくるなどと甘えた考えを持ってはいけません。彼等は短距離移動術である縮地を使います。これによって直進以外の選択肢があるというわけですね。

 その速度の乗った一撃はドラゴンにも匹敵するので――」


 もちろん先手必勝ではなく、実践とは程遠い口上してからの戦闘だ。


 到底真似できる気がしない俺やイブにとっては無駄な時間を過ごしつつ、俺達は先を急ぐ。


 と、そこで見覚えのある連中を見かけたので紹介することに。


「キツツキだ。あっちがキッ君、後ろのがキーちゃん、んでもってあれがちょっとクールなツッキー」


「……4匹居るけど?」


「あれは天敵だから名前付けてやらん。名無しのキツツキだ。社会的地位が全くない住所不定無職の犯罪者として扱えばいいよ」


 自然の摂理とは言え、率先してレイクたんに噛みついたこと、俺は忘れない。


 他のキツツキ達と見分けがつかないと思って油断したな。我がケモアイ、そしてケモ愛を舐めてもらっては困る。


 貴様の一挙手一投足、匂い、容姿、全てが俺にあの時の犯人だと訴えかけてきているわ!


(((凄いけど全然褒めたくない……)))


「ほらよく見ろって、キッ君は穏やかそうに見えて周囲に気を配ってるだろ? 戦隊で言うとグリーンだろ? 実はキーちゃんに気があるけど、皆のアイドルだから気を遣って言えないんだよ。

 んでその気配りは敵の強襲を防ぐためにも使えてな。お互いを尊重してるから争いってほどじゃないんだけど、修行の一環として同族や強敵に挑むことがあって――」


「ふ~ん」


 あんなにも個性的な顔立ちなのに差がわからないという少女達に詳しく語っていると、ヒカリが何か納得したような声をあげた。


「……はっ!」


『クルッッッポォォオオオオオッ!!』


 さらに小さく気合を込め、それと同時にキッ君が鳴く。


「ねぇ……割と本気で放った指弾が弾かれたんだけど、どういうこと? ワイバーンぐらいなら一撃で仕留められるやつ」


「そりゃキツツキだからな。言っておくけど奴等の留まってる直径5mオーバーの木をへし折るぐらいじゃないと通用しないぞ」


 またフィーネ先生による戦闘講座が始まりかねないので、俺は先手を打って戦い方を教えてやった。


 ケモナーとして復讐ではなく教育してやろうと聞いていたのだ。


 当然無理でしたけどね。だから名前を付けない&呼ばないなんていじめっ子のような真似しか出来ないわけですよ。


「…………あの鳴き声、」


「は気にするなよ。この森のキツツキは俺達人間をバカにすることを生き甲斐としてるんだ。

 だから交渉しても肉を分けてくれないし、隙あらば肩とか頭とかに乗って挑発してくる。無害だけど精神的には有害な連中だ」


『アホー、アホー、あらふぉ~~』


「「「……ムカつくわ~(ね~)」」」


 でもご安心を。焼き鳥の文化を広めてやろうと密かに画策中だ。


 貴様等の命……は奪いたくないから、肉を差し出す覚悟をしておくことだな。ハーッハッハッハ!


「お肉取られて大丈夫なの?」


「ああ、治癒術使えるから数分で元通りになる」


「再生可能な食糧、それを魔法陣に活かせば……私この森好き」


「ああ、俺も好きだぞ。人格破綻(?)してる動植物は多いけど、そこを加味しても面白いと思う。

 一緒に調べようぜ」


「ん」


 俺達は森を堪能しながら進み続ける。




 目と鼻の先に大樹が見えてきたということは、今俺達が居るのは最早俺のテリトリーと言っても良いほど馴染み深い森。


 だからこそ俺は遠回りする許可を得て、森で一番接している2人の下を訪れていた。


「――こうして仲良くなったオジギソウの『オーちゃん』と、眠りについたマンドレイクの『レイクたん』だ!」


 里で暮らすってんならこれだけはどうしてもやっておかなきゃダメだろぉ。最重要人物との顔合わせをよぉ~。


 正直俺の中ではミナマリアさんの次に優先度が高い。


 さらに聞くも涙、語るも涙のエピソードまで初披露する心憎い演出付き。これには散々俺をバカにしていたヘルガやクララも納得するしかあるまいて。


「「「…………」」」


「おいおい、感動のあまり言葉も出ないのはわかるけど、その冷めた目は何だい?

 ユキに影響されて冷えることが最高だと勘違いしているのかい?」


「いくら私でもこの話には皆さんが使っている意味での『冷めた目』をするしかありませんよ~。今回ばかりはマイナスイメージを受け入れます~」


「なんでだよ!? どこに冷める要因があるってんだ!? 俺達3人の出会いと、オーちゃんとレイクたんの種族を超えた愛の物語だっただろ!?」


 帰ったらホモ小説家のシュナイダーと協力して書籍化するつもりだ。



「つまりこれ抜いたら良いのね?」


 ……あの、お姉様? 何をどうしたら『つまり』になるのでしょうか? そして何故貴方はレイクたんの花に手を掛けていらっしゃるのでしょうか? 今から何をするつもりなのでしょうか?


 是非とも行動に移す前に教えてください。


「どっせい!」


「レイクたああああああああああーーーんっ!!!」


(グルグルグル!!!)


 呆気なくむしられた紫色の花を見て、俺は絶叫し、オーちゃんは千切れんばかりに首を回し続ける。


「あれ? 根っこから抜けるんじゃないの?」

 

「あ、ああああ、アリシア姉! アンタ何してんだよ!? その花はレイクたんの本体だって言っただろ!? もう復活出来ないじゃんか!!」


 俺は悪びれた様子もないアリシア姉に掴みかかった。


 恋人を奪われたけど掴みかかれないオーちゃんの分も俺がやっているのだから当社比2倍だ。


「弟が世話になったんなら姉としてお礼しなきゃダメでしょ。

 魔力を込めて抜いたら出てくるって言われたらそりゃやるに決まってるじゃない」


 アンタの行動の方がダメだよ! その思考にいく頭も!


「根を生やすために休息中だって言っただろうがっ!」


「魔力があれば数分で復活するって言ったのルークじゃない」


 そ、それはそうだけど……全員そうだとは言ってないじゃん……。


 復活を早めてあげたんだから感謝しなさい、と言わんばかりの口調に俺は呆れて何も言えなくなってしまった。


 いや今は俺のことなんてどうでもいい。


 レイクたんだ。


「どうなるんだ? 植え直してなんとかなるもんなのか?」


 フィーネ達の顔色を窺うと、全員が口を揃えて言った。



「「「……残念だけど(ですが)」」」


 レイクたあああああああああああああああんっっ!!!

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