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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
二十六章 エルフ王国編Ⅱ

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四百八十九話 大集合2

 『里の入り口で何者かが暴れている』


 そう言いながら会議に乱入してきた兵士は、どう対処するか女王ミナマリアに意見を仰いだ。


 苦戦しているなら応援を、他種族の暴動ならば鎮静化を、外交が必要なら敵国へ連絡を、同族であるなら女王に出向いてもらう必要があるかもしれない。


「慌てないで! いつからこの里の守衛達は10歳そこらの少女達に負けるほど弱くなったのですか! 大丈夫、彼等はまだ持ちこたえられます!」


 この勇ましい号令を掛けたのがミナマリアさんだったら皆ビシッとなっただろう。


 だが残念ながらそうじゃない。


 そう……お前じゃないんだ、ユキ……っ。


「え、あ、はい……え~っと……(チラッ)」


 見知らぬ客人が我が物顔で仕切っても兵士は戸惑うばかり。『アンタ誰?』という顔をして女王の指示を待つ。


 精霊王という正体こそ知らないものの、力ある客人として扱っていたお偉いさん方も似たような表情を浮かべる。


「魔法を使う金髪ツインテールの子は自身の力ではないので精霊術で乱せば火力半減です。

 高貴な感じのするセミロングさんは近距離特化なので魔術と精霊術で遠くから。

 黒猫さんは計略にハメればイチコロ。

 茶色い猫さんは気合と根性とガッツと精神力で何とかしましょう」


「は? ……あ、いえ、はいっ」


 しかし的確な指示だったからか、ミナマリアさんが頷いたからか、兵士はユキのアドバイスを受け入れてどこか(おそらく守衛達)へ連絡し始めた。


 ――で、アリシア姉達がどうしたって?




 タタタタッ!


 ユキの役立つ助言は置いといて、要するにウチの連中がこの里に迷惑を掛けているということらしいので、俺達6人は少女達が暴れているという入り口へ向かっていた。


 ミナマリアさんは後から行くと言って準備に取り掛かり、他の大臣達は我関せずで動こうとしなかった。


 これ以上迷惑を掛けるのも悪いので構わないんだけど、茶を啜りながら談笑するのは違うし、知り合いが向かったからすぐ片付くと思っているのだとしたら甘い。


 おそらくイブ以外は俺が止めても強敵との戦いを続ける。そういう生き物だ。


 里の最高権力者にして俺をビビらせられるミナマリアさんなら、実力・話術両方の面から止められるだろうけど、問題はその準備。


 武装したり戦術を立てたりではなく、寝間着としか思えないスウェット姿からドレスに着替えるから遅れているのだ。


 アリシア姉達だけならともかく交流のあるセイルーン王国の第4王女まで来てしまったからには客人として迎えないわけにもいかないようで、衣装チェンジしなければ会えないんだとか。


 これがフィーネの教育の賜物なのか、この1000年の間に彼女の中で何かしらの意識改革が起こったのかはわからない。


「ルーク様、振り落とされないようにもう少し強く抱き着いてください。

 ええ、これは私の欲望ではなくルーク様のためを思ってのことです」


 ……以上、フィーネの背中からの現状報告でした。


 少女達の暴れている場所というのが、今、俺達が居る大樹から森1つ隔てているのだから仕方がない。


 俺の足では時間が掛かり過ぎて被害が拡大するか、ミナマリアさんが間に合ってしまって余計な迷惑を掛けてしまう。


 これは俺が片付けなければならない問題なのだ。



「それにしても何でここがわかったんだ? ……さてはユキ、お前帰った時にバラしたな?」


「とんだ心得違いです~っ! 誤審にして誤診、物言いしたら痴漢と同じく99.9%私が勝ちます~。一般的に被害者とされる側の意見は絶対なんです~。

 被害者、つまり日頃ルークさんからバカにされ続けている私!」


 無駄な豆知識入れてんじゃねえよ。


 この世界のどこで痴漢が多発しているのかは知らないけど、日本では弱者の意見を聞こうと頑張るから男が電車に乗れなくなるんだぞ。両手で吊革に掴まることになるんだぞ。


 そしてお前は弱者でもなければ被害者でもない。俺とお前は対等な関係であり、どちらかと言えば被害者は俺なのだから。


 ――って今はそんな話どうでも良いな。


「でも兵士から連絡受けた時、内心で面白そうって思っただろ?」


「その質問にはYESでありNOであると答えさせてもらいましょう!

 何故ならたしかに皆さんが集まったら面白そうだと思いました、考えました、お料理してる時に言いたくて仕方がありませんでした。

 しかし私は里について一切喋っていません。

 そしてルークさんは『兵士から連絡を受けた時』と言いましたけど、私達がアリシアさん達の接近に気付いたのはもっと前。具体的には今日の昼頃から一直線に向かっているのを感知していました!」


「ダウト! お前は感知魔術を使わない人生を送っているはずだろ!」


「風の精霊がフィーネさんに知らせるついでに私にまで伝えやがったんです~。外出中にどこからともなく聞こえてきた雑談で推理小説のネタバレ喰らった気分です~」


 そ、そうか……どうしようもないこととは言えイラっとはするよな。


 たぶんだけど精霊さん達は個別に伝える術を持っているから気を利かせただけだと思うぞ。悪い連中じゃないし。


「そうやって私を犯人に仕立て上げようとするルークさんが知らせたんじゃないんですか~? 真犯人はそうやって他の人をミスリードに使うんです~」


 犯人扱いされたことで逆に俺が怪しいと考えたユキは、最近ハマっている推理モノで王道パターンだと言い始めた。


「入り方を知っているかのような行動だったので私もてっきりルーク様が招いたものだとばかり……」


 さらにフィーネもこの騒ぎは俺のせいだと思っているらしい。


 いや違うな。騒ぎは暴れん坊少女のせいだけど、それを手引きしたのが俺だと思っている、か。


 だが俺は本当に伝えていない。


「違う。俺じゃない。そもそも俺がヨシュアに連絡取る手段なんてユキだけだろ? つまり俺が犯人だとすればお前も共犯者だ」


「またまた~。スイちゃんが居るじゃないですか~」


「俺が聖なる獣様を呼べるわけないだろ。呼べるとしたら朝昼晩必ず交流してるっての」


『…………?』


 出た! ウワォ!!


 ……別に移動する気はないので今はお帰り下さい。こんな感じで呼び出してゴメンね。次呼ぶ時はもっと時間と心に余裕がある時にするから。



 帰れと言われて心なしかシュンとしたスイちゃんが消え、罪悪感と共にホッとしたのも束の間。


「「「…………」」」


 ルナマリア・ヘルガ・クララの3人が俺の反応を不思議そうな顔で見ていた。


 ヘルガとクララに至っては、俺がオジギソウと喋っていた時の精神的に病んでいる患者を診るような目だ。


「お前等、いくら送ってもらったことで親睦を深めたからってエルフ憧れの聖獣様が現れたんだぞ? もっと驚こうぜ」


「……は? スイちゃん居たの? アタシ達は見てないわよ。ねぇ?」


((コクコク))


 3人とも嘘を言っている様子はない。


 どういうことだ? フィーネとユキは間違いなく目撃していた。スイちゃんには見える人を選べる能力でもあるのだろうか。


「中々の観察能力、そして推理力ですね、ルトソン君。

 あの時はフィーネさん達が暴れたので結界が歪みましたけど、スイちゃんは特定の人物にのみ認識できる結界が作れるんですよ~」


 誰がルトソンじゃ。お前はユームズとでも言うつもりか? 精霊達に動機から証拠まで教えてもらうクセに名探偵気取ってんじゃねえよ。


 結界に関してはそもそも知っていたという推理もクソもない結末だし。


 しかしヨシュアの上空に巨大な結界が生まれたのに強者達が気付かなかったのはそういうわけか……。


「あれは8割方ユキの責任ですよ?」


「こちら側に顔を出しているように見えて精霊界との狭間に居るので、それこそ時空を歪める攻撃じゃないとバレませんよ~」


「無視しないでください。あれはエルフの尊厳を守るための戦いでした。争いに正義など無いことは百も承知ですが、貴方の言動は悪だと断言できます」


 あ~はいはい。喧嘩しないで。


 まだ聞きたいことあるんだから。



 結局誰もこの里のことをアリシア姉達に教えていないということで、本人達に聞くという最終手段を使うことにした俺は、もう1つ気になっていたことを尋ねた。


「ミナマリアさん着替えたら来るとか言ってたけど、仮にも里、ってか国のトップがそんなホイホイ騒ぎの解決に名乗り出て良いのか?

 今回も格好が格好だったから着替えが必要だったけど、あれがドレスなら誰よりも先に向ってたんだろ?」


 それは『襲撃者の対応は女王がする』という国を揺るがしかねない解決策について。


 万が一、強敵やスナイパー的なヤツが居たら危ないんじゃないかと思うわけですよ。


「人の基準ではそうかもしれませんね。

 しかし絶対的な存在であるミナマリアさんが出ることで全て片付くのです。襲撃者が国で、戦争を仕掛けてきた場合であっても、エルフ族に不当な扱いを受けた王族であっても、彼女が一言『黙れ』というだけで終わります。

 ルーク様が私やユキに抱いておられる信頼と同じようなものを里の者達も持っているのですよ」


 あ、は~い。納得しました。全責任を負うだけの覚悟と力があるってことね。


 俺なら2人が負けた時点で全面降伏する。


「とか言って、あの手この手で何とかしようと頑張るんでしょ~?」


「…………ヘルガ達はいつケモナー生活送ってくれるんだ?」


 内心を暴露されて何故か恥ずかしくなった俺は、隣を走る幼女と普通さんに話を振った。


 ユキからは「ぐふふ~」と笑われ、2人からは「もうやった! 二度とやらない!」と怒られたけど。


 完全に話の振り方を間違えた。



(さてさて、そんなことより今はアリシア姉達だな。

 どうか俺が頭を下げて解決する程度の騒動でありますように……)


 心の中でそう願わずにはいられない俺であった。

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