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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
四章 スラム

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三十四話 運命の出会い2

 フィーネが3人を抱えて帰宅した時には暗くなっていたのでオルブライト家の門は閉まっていた。


 仕方なく乗り越えようとするフィーネに詰所から出てきたマリクが声をかけてきた。


「おいっ! どうしたんだよ!?」


 訪問客だと思ったら、血塗れのフィーネが居たのだ。驚いて当然だろう。


 しかし今は説明している時間も惜しいので、フィーネは最低限の説明だけすることにした。


「マリクさん、彼女たちを治療します。治療後に休めるようにしておいてください」


「わかった、アラン達には説明しておく。部屋は1階の客間を使え」


 それだけ言うとマリクは屋敷へ走っていった。


 さすがは兵隊長、オルブライト家がどういう場所か理解している。この状況で助けないような人材はオルブライト家に必要ない。マリクはこの状況での最適な行動を心得ていた。


(察しが良くて助かります。やはり彼にはリーダーとしての才覚がありますね)





 治療には広い場所が必要なので訓練場まで運ぶ。


「『ユキ』

 彼女達を助けますよ」


「はいは~い。重症ですね~。ギリギリですね~」


 フィーネは当然のように言うと、何もない空間からユキが現れた。


 まるで呼び出されるのを待っていたかのようだ。

 

 ユキはいつも通りのんびりとした口調で話しかけてくる。とても緊急の状況とは思えない。




「じゃあ頑張りましょうか~。とあーーっ!」


 全くやる気を感じさせない掛け声だが、一瞬で巨大な氷のドームに囲まれる。


 冷蔵庫工場になっている建物と同じ大きさだが質量と性質がまるで違う。


 内部は精霊がひしめき合い、ユキ特製の無菌室になった。邪魔の入らない隔離空間で治療に必要な魔力と精霊、室温管理も出来ている。ユキは完璧な仕事をしていた。


 中に居るのはフィーネとユキ、治療対象の3人。



「ユキは怪我の治療をお願いします。私は石化病を治します」

「了解です~」


 邪魔な衣服を取り去って、治療を始める2人。




 フィーネは母親の石化の原因になっている魔力が放出している穴を埋めていく。


 物理的な穴ではなく、微精霊が留まれないようになっている部分を魔力で塞ぐ。全身にある無数の穴を埋めないと石化は治らない。もしも1つでも見逃しがあればそこから無数に増殖してしまう。


 そんな厄介な治療を行わなければならなかった。


 フィーネの魔力で穴を埋める、母親の魔力が流れるように体の細胞を修復する、自己治癒力を高めて魔力自体を補充する、その魔力でさらに頑丈に穴を塞ぐ。


 あり得ないほど繊細な作業をしていた。




 ユキは幼女と少女の治療だ。

 

「ちょっと眠ってもらいますね~」


 そう言ってユキは少女に魔力を流し込んで気絶させた。意識があると治療に影響するからだ。


 少しの傷なら治癒魔術や魔力で活性化すれば治せるが、重症の場合は使えない。


 ユキは骨や内臓、血液、筋肉その全てを精霊術と魔力で作り出していく。使える細胞は分裂させ、死んでいる細胞は消滅させる。

 代用できない部分は体に適応して機能できるように破壊と再生を繰り返しながら人の体を作り変えていく。


 以前フィーネが不可能だと言っていた、無から有を生み出す『神』と呼ばれる行為だった。





「これで大丈夫でしょう」

「こっちも終わりました~」


 治療に集中していて気が付かなかったが、夜が明けていた。


 2人して10時間以上魔力を放出しながら繊細な治療していた。あり得ない魔力量と集中力だ。


 患者はそれほど危険な状態で、いつ命を落としてもおかしくなかった。フィーネとユキという最高の魔術師だからこそ助けられた命だ。


 


 ユキが氷の結界を溶かすとオルブライト家全員集合していた。


 徹夜で見守っていてくれたらしいが、子供たちは今起きたのようで寝ぼけた顔をしている。


「もう大丈夫なのかい?」


 全員の気持ちを代表して家長のアランが尋ねながら清潔な布も渡してくれた。寝ているとは言え、患者たちがいつまでも全裸では気の毒だ。


「はい。後は彼女達次第ですが、しばらくすれば目を覚ますでしょう」


 体は治療出来たので、後は心の問題だ。


 生きようと思わなければ回復しない。万が一誰か1人が助からなければ残る2人も生きようとはしないだろう。重要なのは3人とも回復することだった。


「早く部屋に運びましょうよ~。風邪ひきますよ~」


 さすがのユキも疲れた声だったが、3人の体力も心配だったので客室まで運ぶ。




 3人を寝かせて、フィーネは事情を説明した。魂の輝きの事、スラム街の事、怪我の事。


「「「・・・・・・」」」


 全員が黙ってしまった。


 特にスラム街の管轄でもあるアラン、エリーナ、そして将来背負うことになるレオポルドは泣きそうになっている。


 いや何もできなかった自分自身に苛立っているのかもしれない。


 

 彼女達が起きるまでは詳しい話も聞けないので解散になった。



 部屋を出るとすぐにルークが話しかける。


「フィーネ、彼女達を助けてくれてありがとう。この世界はそこまで困窮してたんだな」


「いえ、私も初めて知りました。散々各地を旅してきたはずなんですが」


 不幸な子供達は大勢見てきた。しかし生まれてから死ぬまで絶望しか知らない子供は見たことがなかった。



「孤児院を作ろう。大きな寝泊りが出来る学校だ」


「それは素晴らしいですね。これまで以上にお金が必要になりますね」


「もっと魔獣狩りますよ~。世界をこの手にー!」


「それは何か違う」


 でもこういう時のユキは頼もしかったし、ありがたかった。


 ユキはいつでも笑っている。



(のんびり魔道具作れば幸せになると思ってた。でも覚悟が足りなかったんだな)


 食糧難や仕事不足は他人事のように思っていたルークだった。しかし実際の惨状を目の当たりにしてしまうと嫌でも理解できてしまう。


 スラム街の問題を解決するために彼らは動き出す。




 治療が終わった日の夕方、配給をもらいに来た少女が起きた。


 3人の中では一番の軽症だったので目覚めが早かったのだろう。客室で話を聞くのはアラン、エリーナ、フィーネ、ユキ、ルークの5人だ。


 「子供達に深刻な話を聞かせる訳にはいかない」とアランは拒否するつもりだったが、寝不足だったらしく部屋で寝ていた。


 ルークはスラム街を改善するための魔道具に必要な事だと押し切った。

 

 エルは栄養のある物を作っている。


 マリクにはスラムの見回りをお願いした。今すぐにでも孤児院の予定地を決める必要があったからだ。



「さて、君達の事を教えてくれるかい?」

終わった・・・・シリアスはもう嫌だ!

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― 新着の感想 ―
[一言] スラム街とか浮浪者無くすのは知識、技能を習得する場、衣食住と仕事が最低限ないと無理でしょ。
2019/11/19 15:45 退会済み
管理
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