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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
三章 ロア商会

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二十八.一話 販売員

 これ以上作っても在庫の置き場がないので、工場を休みにして販売場所を探すためヨシュア中央部へとやってきたフィーネとユキ。


 まだまだ未熟な彼等だけで工場を動かすわけにはいかないのだ。


 歩合制でないにもかかわらず何故か休日を嫌がる者達には、別部門の作業や器材のメンテナンス方法を覚えてもらっている。


「良い場所が見つかるといいですね~」


「はい。ルーク様からは目立つ場所でなくても構わないと言われていますが、人通りの多い場所が望ましいことは間違いありません」


「まぁ宣伝はバッチリなので店を出すだけでお客さん殺到しそうですけどね~」


「その殺到した人々が往来の邪魔にならないという条件も含めて探すのですよ」


「アイアイサ~」


 売れるに越したことはないので辺りを見るフィーネの目は真剣そのものだ。



 歩く事、数十分。


「あそこなんて良いんじゃないですか~? 中央通りが近いですし、人だかりが出来ても問題なさそうですよ」


 ユキが見つけたのは中央広場から少し離れた露天区画。


 辛うじて中央通りからも見えるその場所は4畳ほどの横長で、商品を並べて後ろに在庫を置けば十分商売できるだろう。


「そうですね、ここを借りましょうか」


「ここから始まる商会活動~。目指せ大型店~」


 最初は店舗を購入しようかとも考えた2人だが、商品が石鹸と冷蔵庫だけなので見送っていた。


 もちろん販売が上手くいき、品数が増えれば大型店を建てる予定だ。


 実はそのための資金は既にあったりする。


 ドラゴン討伐から2週間。


 フィーネはメイドと会長の他に、ロア商会アピールのため冒険者として定期的に魔獣討伐を行っていた。


 Dランク維持のため売りはしないが、そこそこの金になる素材や魔石はオルブライト家に保管されていて、ルークの魔道具づくりにも役立っている。


 だが当然これだけでは足りるわけがない。


 主な資金源は、これに触発されたユキが海水を取りに行ったついでに深海の魔獣を持ち帰るから。


 衣食住そして金。その全てにおいて今のオルブライト家は満たされているのだ。




「あ~、はいはい、あそこは空いていますよ。契約されますか?」


「はい、お願いします」


 商会ギルドで確認してもらうと2人が目を付けた場所は空いており、早速手続きをして使わせてもらうことにしたフィーネ。


 手続きを終えてギルドを後にしたフィーネ達は足早に工場へ向かい、従業員を集めて説明を始めた。


「皆さん朗報です。

 明日から石鹸と冷蔵庫の販売が可能になりました」


(((あ、そんな急なんだ・・・・)))


 販売員の選出、商品の積み込み、POPやのれん作りなど大至急で用意しなければならないとあって、彼等の休日は午前中で終わりを告げた。


 元々ほとんどの従業員が休む気もなかったので、一部寝ている連中を叩き起こして作業に取り掛かる。


「販売員はノルンさん、サイさん、ソーマさんの3名です」


 ・・・・その前にフィーネの口から販売員の発表が行われた。


 3人は人当たりの良さから製造よりも接客の方が向いていると選ばれたメンバーである。


「1週間ほどは私とユキも手伝いますが、近い内に貴方達だけで行えるようにしてください」


 販売は応援のフィーネとユキを入れた5人。


「アイツ等なら一通り製造工程も経験してるから詳しい商品説明も出来るはず。

 落ち着いたら3人で回るだろうけど、オープン期間は責任者が立ち会った方がいいよ」


 ルークの提案である。



 突然指名された本人達はと言うと、


「いよいよアタシも店持ちか~」


 紅一点『ノルン』、商売で失敗した24歳の人間の女性。

 ヨシュア領で借金を返しながら野菜売りの手伝いをしていたのだが、仕入れ先が潰れたのでロア商会に応募。

 夢は自分の店舗を持つこと。


「お前の店じゃねぇよ、バカか」


 『サイ』、スラム街で育った20歳の獣人男性。

 口が悪いが、誰であっても怖気る事のない性格と対話能力から選出された。

 従業員の中でもノルンとよく一緒に居ていつも口喧嘩しているが、彼らなりのコミュニケーションと判断されている。


「サイ、店じゃその口調を気をつけたまえよ」


 『ソーマ』、27歳の人間の男性。

 貴族の女性に手を出した挙句二股がバレて遠路はるばるヨシュア領まで逃げてきた。

 落ち着いた口調と話術を評価したが、男性に対しては辛辣な一面を持つ。

 スラム街でサイと知り合って以来いつも2人でつるんでおり、最近はノルンも交じり始めている。


 と、割と余裕があった。



「各々が販売した数は工場内で発表します。

 個別に手売りしていただくので販売員の腕によって売れ行きが変わることでしょう」


「「「!?」」」


 しかし、この発言によって3人の顔から余裕の色が消えた。


「やべぇよ・・・・少なかったらオッサン達に殺される・・・・」


「ネネさんの評価にも影響しそうだねぇ」


「あ、あんたら・・・・でもまぁ気まずくはなるかな」


 ロア商会の初出店、初販売なのだ。


 自分達が作った商品の売れ行きが気にならないわけもなく、今日の夜にでもノルン達は全従業員から発破をかけられることだろう。


 そんな3人を勇気づけようとユキが声を掛ける。


「大丈夫ですよ~。最初は失敗するものです~。

 でも低迷するようなら無能の烙印押されて交代です~」


(((ユキ様って怖い・・・・)))


 本人は励ましているつもりなのだが、3人にとっては容赦ない宣告を突きつけられただけだった。


 だが言っていることは間違っていない。


 販売か製造。大まかに分けてその2つしか仕事がないので、失敗談として笑われるのを覚悟で戻るしかないのだ。


 フレンドリーな職場だけに彼等は遠慮なくからかいに来るだろう。


「ま、まぁアタシ接客業やってたし、余裕っしょ」


「はぁ~? 客はお前の顔見て逃げ帰るっての!」


「ノルンもサイも変わらないだろ。

 その点、僕はイケメンだから問題ないけどね」


 3人の中で一番見た目が良いのは間違いなくソーマだ。伊達に二股かけていない。


「「殴らせろ詐欺師が!」」


「ハッハッハッ。モテない人達のひがみが聞こえるね~」


 自分が売上最下位になることはあり得ないと声高らかに笑うソーマは、容姿で劣る2人に「顔を隠して売り子をしてはどうか」という提案をする始末。


「ユキ様、こいつの出身どこでしたっけ?」


「手配中の貴族の名前も教えろ」


「待て待て待て、落ち着こうじゃないか」


 指名手配されているソーマが慌てて謝罪し始めた。


 誰もツッコまない・・・・もといツッコめないのだが、店の顔である販売員が指名手配犯というのはフィーネ達の人選ミスと言えよう。



「まぁ売上げが悪ければフィーネさんに怒られるでしょうけどね~。そうならないよう皆さん頑張りましょう~」


「「「イエッサー!」」」


 彼女ならば本当に怒るだろう。


 たった数週間だが、工場内での『怒らせてはいけないランキング』1位はフィーネで、2位がユキで満場一致となっていた。


 なにせ怒らせると減俸、住み込み拒否、食事制限などいくらでも罰則をつけられる上、最悪解雇・・・・いや消される可能性すらある。


 フィーネはそれだけこのロア商会に入れ込んでいて、(ルークの)計画を邪魔する敵には容赦しない。


 自分達がその邪魔者になるかもしれないのだ。


 今更ながら責任の重大さに脅える3人だった。

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