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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
三章 ロア商会

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二十五.十七話 精霊を知る

 ソーラーパネルが完成したことでオルブライト家限定の魔力供給システムを構築した俺は、魔道具開発の幅が広がった事もあって家電製作に乗り出した。


 真っ先に最初に思いついたのは『冷蔵庫』。


 食材を冷やすことで保存がきくようになるから食糧難は減るし、料理のレパートリーも増える。


 冷凍なんて出来た日には、もう・・・・っ!


 テレビ・洗濯機と並んで家電三種の神器なんて呼ばれていた代物だ。あればどれだけ便利になるかは計り知れない。


 ちなみに俺個人では『スマホ』『冷蔵庫』『ネット環境』ね。


 ただ問題はソーラーパネルの魔力が必須になる事。


 食糧問題を解決するために前々から冷蔵庫づくりには挑戦していたけど、失敗の連続で未完成だった。


 それが今ならソーラーパネルから魔力を補給して冷蔵することが出来る。


 でもそれはウチだから出来るのであって、「領民が日常的に使えるか?」と聞かれたらNOなのだ。


 それじゃ意味が無い。



「と、いうわけで何かアドバイスしていただけませんか?」


 1人では解決できそうになかったので、先人の知恵を貸していただこうとソーラーパネルでも大活躍だったフィーネとユキに相談することにした。


 特にユキは雪の精霊。冷気に関しては最高の相談相手だろう。


 俺は2人に冷蔵庫の原理を説明して、簡単な実験を行った。


 それは『ソーラーパネルから魔力を流して冷気を強制的に作り出す』というもの。魔道具で氷魔術を使ったと言うべきかな。


「他には魔石に冷気を閉じ込めて放出するってのがあるんだけど、この2つ以外に冷却で使えそうな技術ってある?」


「「・・・・」」


 すると、それを見た2人は同じ反応をして固まった。


 すなわち困った顔。


「私は自然と使ってるから気づきませんでした~。たしかに冷気を得るのは難しいですね~」


「そうですね。魔術を使わないとなると魔法陣しかありませんが、冷却させる方法は私でも思いつきません」


 やっぱり難しいのか・・・・。


 この2人に相談したら解決する、と楽観的に考えていた俺の冷蔵庫づくりは暗礁に乗り上げてしまった。



「魔法陣か・・・・。

 ユキは普段どうやって冷気を出してるんだ?」


 せめて魔法陣や氷魔術について学ぼう思った俺は、何となくで使っていると言うユキに尋ねてみた。


「雪の精霊さんにお願いするか、自分の魔力を変換するかの2択ですね~」


 誰でも使えるようにしたいから精霊術の方は却下するとして、魔力変換は知らない技術だ。


 誰でも使えるんだろうか?


「魔力を変換、つまり魔術ってこと?」


「魔術と似たようなものですけど、私は直接自分の体内で氷を生み出してますね~」


 魔術とは外に出した魔力を変化させたもの。


 条件は様々だ。微精霊が干渉したり、魔法陣が影響したり、生まれ持った属性なんてのもある。


 魔力を流せる範囲でしか使えないので、『突然体内を爆発させる』みたいな使い方は出来ない。やろうとしたら手で触れて体内に魔力を流し込むしかない。


 だから魔術封じの結界というのが存在するらしい。


 ただユキの場合は自分の体内で生成して取り出すので、この結界では封じる事が出来ないと言う。


 他にも体の一部を変化させたり、離れた場所に氷を出したり、転移が出来るのも魔力変換ならではの技術みたいだ。


「それって最強じゃないか? 遠距離から敵の体内に氷を作って即死魔術が可能って事だろ?」


「そうでもないんですよ~。魔獣には耐久性があるので使えない戦法ですし、空間座標の調整が難しいですし」


 魔獣には? つまり人間には出来るの?


 普段通り生活をしていたら突然凍り付いて死ぬ。なにそれ怖い。


「つまり魔力を直接氷に変換する魔法陣があれば良いって事か」


 そこから先は怖くて聞けなかったのでさっさと話題を戻した俺は、これまでの話から新たな可能性を見出していた。


「しかしそれでも魔力は必要になります。加熱鉄板のように一度起動すれば長時間稼働する魔法陣が必要かと」


 冷やし続ける・・・・扇風機? 違うか。わからん。



「じゃあ逆転の発想。熱を無くすには?」


「私でしたら『風で飛ばす』ですね。真空にして一切の熱を存在できないようにします」


 真空はやり過ぎだと思うけど、まぁ扇風機や掃除機の原理だな。


 ただしその方法だと冷たくなるほどでじゃないし、持続させるのは難しいだろう。


「私は熱を冷気に変換しますね~」


「そんなこと出来るのか?」


 え、それってもう冷蔵庫作れるじゃん。冷凍庫すら可能だろ?


「出来ますよ~。熱の精霊って居ないんです。土や風の精霊が温まったり冷たくなったりしてるだけですから~」


 なるほど。精霊基準で考えれば存在しない熱精霊より、存在する氷精霊に変えるほうが簡単だと。


「・・・・ん? 真逆の現象に変換するのって無理だろ?」


 エネルギーの法則で最難関な課題だったはずだ。ブラックホールからホワイトホールは作り出せない。


「いいえ? この世界は精霊が全てなので存在する精霊への変換は簡単ですよ」


「でもさっきは冷気を得るのは難しいって」


「申し訳ございません、誤解させてしまいましたね。

 魔力を使用せずに冷却のみを得るのは難しい、という意味です」


 フィーネが改めて冷蔵庫に関する情報を整理してくれた。


 つまるところ無から冷気を得るのは不可能で、熱から冷気に変換するのは簡単だと。


「熱気を冷気に変える魔法陣なら作れそう?」


「逆は無理ですが、そういった魔法陣は存在しますね。

 アクアの宿屋では温泉の熱を冷却していて室内は快適でしたよ」


 なんてことだ、冷房が既に存在していたらしい。


 しかも結構一般的な技術のようで、伝え忘れていたと謝られてしまった。


 ちなみに温泉は火属性と土属性の精霊が活発なので地熱が存在すると言う。



「ルークさんは別世界の常識で考えてたんですね~」


「だな・・・・まさか前世の知識が邪魔になる日が来ようとは・・・・。

 固定概念があったから法則を無視するという考え方が無くなってたぜぃ」


 冷蔵庫、作れそうです。



「フッフッフ~。精霊についても誤解がありそうですから私が詳しく教えてあげましょう~」


 俺としては今すぐにでも冷却魔法陣と魔道具づくりに取り掛かりたいところだけど、そっちはそっちで気になるので黙って聞くことにした。


 今後のためにも異世界の常識に慣れておかなければなるまい。


『微精霊』

 世界中どこでも存在する意思のない微生物のような存在。

 魔力を引き換えに魔術を生み出せるのもこの微精霊が居るから。

 万物には微精霊が宿っていて、光の治癒術ではこの微精霊を活性化させて治療を、闇魔術では微精霊を乱して呪いをかける。


『大精霊』

 意志を持った精霊、一般的に精霊と言えばこちらを指す。

 願いで力を貸したりする強大な力が使える気分屋な精霊。エネルギーの法則は大精霊が存在するかどうかで決まる。



 存在する精霊への変換は簡単に出来るが、存在しない精霊のエネルギーを生み出すのは不可能に近い。


 熱を得るには火属性や光属性の微精霊の力を借りるしかなく、精霊に関係が少ない空気や物質を温めて間接的に熱を得るのが常識、と・・・・。


「だからアリシア姉が加熱鉄板に驚いてたんだ。回転で熱を持たせるなんて存在しない技術だったから」


 回転から熱が発生するなんて日常からあったはずだけど、広まっていない事から察するに微精霊が何かしているぐらいに考えていたんだろうな。


 もしくは労力の問題で魔術を使った方が楽だったとか。


 あれにしたって『魔法陣で魔力をこすり合わせて熱エネルギーにする』までやらないといけないわけだし。


「そうですよ~。貯水ボックスも水精霊が的確に分別されていてビックリしました~」


 水の中に存在する水分と不純物、つまり真水にいる精霊とその他の微精霊で分けられていたと言う。


 地球の物理法則もエネルギー法則も関係ない。


 微精霊まで干渉出来れば魔法陣には無限の可能性があると分かったのは俺の魔道具ライフが一歩前進したと言っても良いぐらい革命的な情報だ。




「よし、じゃあ熱を冷気に変換する方向で魔法陣を考えてみよう」


「でも反転させるには熱が必要になりますよ~? 冷やすなら温泉より熱くないと~」


 たしかに地熱を変換して部屋が快適ってんなら、冷蔵庫は当然それより高温が必要になる。


 ユキは心配していたけど問題ない。


 加熱鉄板を使えばいいのだ。


 あれならヤケドする温度まで上げる事が可能だから、加熱鉄板の箱を作って変換すれば冷凍庫になる・・・・かもしれない。


 出来なくても変換魔術を応用した魔法陣を作れば解決!


 今の俺ならきっと出来る!


 なんかそんな気がする!


(変換効率はどのくらいなんだろう? 熱ければ熱いほど際限無く冷却されるようになる? 魔力の消費量で変わる?)


 色々試したい、早く試してみたい!


 まずは鉄板の手配だぁあああああああああっ!!!

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