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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
三章 ロア商会

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二十五.十五話 ソーラーパネル2

 ユキの生態を考えていた俺は、そこから新しい蛍光灯を思いついた。


 いや蛍光灯じゃない。その供給システム、つまりエネルギーの源だ。


 エネルギーを使わない蛍光灯なんて最初から無理なんだよ。だったら魔力以外で代用すれば良いだけの話じゃないか!


「そーらーぱねる? また新しい魔道具ですか~?」


「ああ、そうだ! ユキありがとう!」


「? どういたしまして~」


 趣味で色々な事を経験していた俺でも流石にソーラーパネルの構造は知らなかったけど、太陽熱発電ならわかる。


 どうせ天熱としか言われないんだし、太陽の熱を使った魔力変換システムを『ソーラーパネル』と名付けよう。


 俺はこの世紀の大発明の切っ掛けを作った精霊さんにお礼を言って、自室へと走り出した。


 ・・・・地面に下ろしてもらってからな。高すぎるわ!


 もしかしたらユキもついて来るかなぁ、と思ったらまだグータラし足りないのか再び枝に座り込んで溶け始めた。


 どうやらトイレの時みたいに完成品を見て驚く方向らしい。



 部屋に戻って来た俺は、これまでの遅れを取り戻すように迅速かつスピーディ、息もつかせぬ怒涛の追い上げを見せた。


 え? 何と勝負してるのかって? そんなの自分自身に決まってるじゃないか。


 正直な話、転生者ってだけで優雅なスローライフが約束されてるもんだとばかり・・・・だから実は結構焦ってたんだよ。


 「これ作りたい!」って考えた次の場面では「そ、そうか! ここは〇〇を応用すれば」みたいな展開になると勝手に思ってた。


 まぁ現実はそんなに甘くないって事だな。


 さて、現実と向き合ったところで早速ソーラーパネルづくりに入りましょうかね。


 ・・・・ああ今から作業に入るんですよ? 何一つスピーディに進んでませんけど何か?


 病は気から、製作も気持ちから!


「地球では反射鏡で光を集めて、その熱で発電していた。だけどこっちなら同じことが魔石で出来るはず・・・・」


 前にトイレを作った時、魔石は不純物を吸収すると劣化するが微生物や精霊を吸収すると強化されるのを確認している。


 たぶん太陽光にも精霊が含まれているはずなので耐熱性・耐久性は十分だろう。


 そう仮定した俺は使えそうな魔石を探すため、部屋の片隅にある魔石棚へ向かおうとして・・・・固まった。


「お察しの通り、天熱の光によって精霊は活性化していますよ」


「・・・・あ、ありがとうフィーネ」


「どういたしまして」


 私フィーネ、今あなたの後ろに居るの。


 彼女みたいな存在がどのぐらいの割合で居るのかはわからないけど、この世界でメリーさんを流行らせるのは無理そうだ。



 さらにフィーネが言うには、いま俺が持っている魔石では家一軒を補うのは絶対に無理らしいので、これは後回しになった。


 と、いう訳でまずは反射鏡の確保から始めよう。


「それでしたら魔獣の鱗が使えますよ」


「ですね~。私ならアッと言う間に入手可能です~」


 ほらな、少なくともウチに2人居るんだもん。


 ホラーとは起こり得ない現象が恐怖感を煽るのであって、日常生活で起きる事が怖いわけないじゃないか。


 つまり何が言いたいかというと、誰に相談しようか悩む間もなく現れた2人が何故か全てを把握していてソーラーパネルに最適な素材があると言い始めたって事。


 その素材は上手に切断すると反射鏡になるとの事なので、光を集めるために鏡のような物を大量に作る必要はないらしい。


 問題は入手方法。


 今回はウチだけの話だけど、後々は世界中に広めるつもりなので、発電施設を作るにしてもそれなりの数が必要になる。


 つまり素材は簡単に手に入らないとダメなのだ。


 その辺どうなん?


「転移出来る人なら簡単でしょうね~。魔界の深層に居る魔獣なんですけど、ちょっと遠いのでフィーネさんとかは時間掛かりますよ~」


「否定はしませんが、その露骨に『私の方が上』という言い方には同意しかねます。

 たしかに私なら半年は掛かるでしょうが・・・・」


 魔界! 深層の魔獣!!


 珍しく不服そうなフィーネや未知の大冒険も気になったけど、今はソーラーパネルだ。


 そしてこれが完成したら絶対に話してもらおうと心に決めた。


 たぶん最高難易度のダンジョンの奥に居るダンジョンガーディアンとか、そういうボスドロップのアイテムなんだろう。


 量産は無理そうだけど取り合えずの試作品って事で良いかな。他の素材でも組み合わせればそれ以上の反射鏡が作れるかもしれないしさ。


「んじゃ頼んで良いか?」


「任せてください~」


 と、転移していったユキは数時間後に大きな鱗のような物を持って帰って来た。


 50cmの鱗って本体はどれだけ巨大なんだ? 凄く気になる。


「あと使えそうな素材を適当に見繕ってきましたよ~」


 ユキが虚空に手を突っ込むと、おそらく売ったら一生生活に困らないであろう超高級素材がゴロゴロ転がり出てくる。


 道理で遅かったわけだ。


 まぁ使い道が思いつかないので鱗以外は片付けてもらいましたけどね。



 チュィイイイイイイイっ・・・・イイィィ・・・・ぃ・・・・。


「ですよね~」


 駄目元で鱗加工に挑戦してみたけど、やっぱり鉄を削るルーター程度じゃ歯が立たなかった。


「いくら魔力が通っていないとは言え、それなりに強い魔獣ですからね~。伝説級の武器でも難しいんじゃないですか~?」


 それ、魔力で強化されたら勇者の剣とかでも弾かれるって事ですやん。


 そういう情報はルーターの刃が壊れる前に欲しかったな。


「そうですね。ここまで来ると武器性能ではなく如何に魔力と魔術で強化出来るかの問題でしょうね」


 そしてそんな素材を楽々薄切りにしていくフィーネさんスゲェ!


 説明しながら次々と反射鏡を生み出していくぅ~。


「ってかユキ。ガッツリ絡んでるけど完成品を見るんじゃなかったのか?」


「え? ・・・・あぁ~、協力しないと出番無いな~と思いまして。ぶっちゃけ暇つぶしです」


 大人達は仕事してるし、レオ兄達は学校、オルブライト家以外の知り合いも居ないユキが暇になるのは当然だった。


「でもでも、私が居るお陰でルークさんも大助かりですよー!

 ほ~ら、フィーネさんが薄切りした鱗に魔法陣を刻んで微精霊を吸収するようにしてあげましたよ~」


「マジでか! フィーネに負けず劣らずユキさんもマジパネェっす」


「でしょでしょ~。フッフッフ~、何せ私、有能な精霊ですからね~」


 元々鱗は表面の被膜が劣化を防ぎ、内部に力を貯め込む性質を持っていたらしい。


 魔獣が死んだことでその機能は失われてしまったのだが、ユキが周囲の微精霊を吸収するようにした事で魔力供給が可能となり復活。


 さらに装備した魔石を強化するという凄まじい万能素材へと進化していた。



「ルーク様、ルーク様。私は細胞を傷つける事無く切っていますよ」


 ユキばかり褒められているのが気になったのか、フィーネも自身の活躍をアピールしてくる。


 ただ俺には言ってる意味が全く理解できなかった。


 これが食材とかならわかるんだけど、反射鏡なんだからツルツルした面さえ出来ればそれで良くないか?


「・・・・それ意味あんの?」


 だからそう尋ねずにはいられなかった。


 すると嬉々として説明を始めたフィーネ。


「もちろんです! この魔獣は魔力を使う際、効率的に使うために鱗で乱反射させて火力を上げています。

 その被膜は劣化を防ぐ被膜の下にあるのですが、この2つの間にはもう1つ天熱の吸収を邪魔する被膜があるのです。

 そこを魔術で切り取り、細胞を壊さないカッティングによって貼り付けることが可能に! つまり反射鏡として使うためには私の超絶テクニックが必要不可欠なのです!」


「ほぅっ! それはそれは・・・・」


 反対側が透けて見える薄皮にはそんな秘密が隠されていたのか。


 つまり2人とも凄いと。これは褒めなければなるまい。


「フィーネが居てくれて助かったよ! もちろんユキもだ!」


「うふふふふふふふっ」

「フッフッフッフッフ~」


 気を良くした2人はそれからも凄まじい勢いで究極の反射鏡を生み出し続けた。




「・・・・うっし、もう十分集まっただろ。次は核となる魔石だな!

 先生方、いかがでしょうか?」


 フィーネ達が作業している間、俺はただボーっとしていたわけじゃない。


 使えそうな魔石が俺の手元になかっただけで、ユキが鱗と一緒に持ち帰った魔石なら余裕だと言うのでそちらを加工していたのだ。


「魔力変換率と伝導率が桁違いですからね~。強い魔獣からは凄い魔石が採れるんですよ~」


 鍛えた分だけ強くなる・・・・筋肉みたいなもんか?


 そんな雑念を入れつつ加工した魔石を2人に見てもらうと「上出来です」とのお言葉を頂いたので使ってみたら、まぁ今まで使っていた安物の魔石とは比にならないほど魔力を蓄える事、蓄える事。


 後は反射鏡を組み合わせたソーラーパネルに、これを取り付けて完成だ。


「・・・・あれ? 窪みが無い?」


 ただ表面をどれだけ探そうが窪みを見つけられず、俺はその場で固まった。


 中央に取り付ける予定だったんだけどそれが無い。無いったら無い。


 どうすんだこれ?


「ルーク様、魔石は裏側から取り付けるのですよ。

 この反射鏡は取り込んだ熱を内部反射して増幅させるので、魔力が最も集まる内部に置くのです」


「オープン・ザ・裏蓋~」


 謎の掛け声と共にユキがパネル裏を開くと、そこには2人が言う通り台座のような物があった。


 俺の知ってるソーラーパネルは反射させた光を一点に集中させて熱を得るんだけど、今回はどうやらこっちの方が効率良いらしい。


「だからちょっと球体だったのか・・・・」


「見た目は少々不格好ですが最大5つ同時に魔力を流せるようになっていますので、ルーク様の求めておられるエネルギー源としては大変優秀かと」


 そう、俺の目的はソーラーパネルに溜まったエネルギーを安価な魔石に流して蛍光灯などに使えるようにする事。


 スタイリッシュな見た目など求めてはいないのだ。


「2人ともありがとう。これで蛍光灯問題が解決するよ」


 こうしてオルブライト家に、スイッチを入れるとセットした魔石に魔力が溜まるソーラーパネルが生まれた。


 実質、魔力が無限に手に入るようになったわけだ。


 蓄電しないといけないし、使う魔石は今までと変わらないから出力にも限界あるけど、十分画期的な発明と言えるだろう。



 後から知ったんだけど、この技術ってゼクト商会のクレアさんが持っていた爆炎魔石の応用だったらしい。


 しかもあっちは魔石のエネルギーを集中させて暴発させるだけなのに対し、これは溜め続けられて再利用も可能。


 世界最大級の商会が持つ技術の改良版を自ら考え出したこの魔法陣は、すでに世界トップレベルだったわけだ。


 俺スゲェ! ドヤァァ~。

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