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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十七章 炎の冒険者
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二百七十七話 ゲームイズライフ2

 人生スゴロクは進み、学校卒業、そして就職を経た俺達は『結婚イベント』のエリアに入った。


 その前段階として恋人を作るわけだけど、それは純粋に勝利を目指す俺としては喜ぶべき事。


 このゲームにおいて結婚は相当なプラス要素だ。


 結婚式でご祝儀、出産でもご祝儀。嫁の給料や退職金も貰えるし、老後の年金も貰える。家族専用イベントも多数。


 つまり勝ちを考えるなら絶対に結婚すべきなのである。


 が! そこに関しては何が何でもゲームとして捉えてくれない一同は怒りを露わにしていた。



 しかしそんな事とは関係なく、運命のルーレットは俺と彼女をドンドン親密な関係にしていく。


「また『ハートマス』だ。恋人が出来る、既にいる場合は公園デートでハート+1」


「「「・・・・」」」


 3つ貯めた状態でもう一度止まれば結婚できるんだけど、これで俺と彼女の親密度はハート3つ。つまり結婚までリーチと言うわけだ。


 もちろんフィーネ達にはどうする事も出来ず、ただただ俺達の結婚式を待つばかり。


 そしてその瞬間はやって来た。


「うっし、これで俺は結婚して晴れて皆からご祝儀が頂けるぞ。ほらほら銀貨20枚寄こしな」


 と、俺が自分のコマを進めてハートマスに入った瞬間、ついに我慢の限界を迎えたフィーネ達の怒りが爆発する。


「ルーク様が結婚式を挙げると宣言されたので、私はこのカードを使います。

 『マリッジブルー』、結婚について思い悩むあまり式を取りやめてしまう。プレイヤーはキャンセル料として金貨2枚を支払う」


「ちょっと待て!? 何だそのカード!?」


 突然フィーネが制作者の俺も知らないカードを持ち出して来た。


「皆様でプレイする事が決まったので、ゲームを面白くするために様々なカードを追加しております。これはその1枚ですよ」


「ネガティブ! 発想がネガティブ過ぎるんだよ!!

 百歩譲って追加するにしても、もうちょっと明るい話にしろよ!」


 でもルールはルールなので、俺は泣く泣く結婚を中止してキャンセル料を支払う。


「じゃあこれは明るくなるものだよ~。

 『偽りの花嫁』、他のプレイヤーが結婚に失敗した時のみ使用可能。そのプレイヤーの所持金を半分奪い、職業ランクを1つ下げる」


「おいいいいぃぃっ! 明るくねぇよ!? そのカードで明るくなるの、俺と結婚しようとしてた結婚詐欺師だけだよ!?」


「それと結婚に反対してるフィーネちゃん達もね」


「クソがあああぁぁっ!!」


 ドロドロした連撃によって結婚に失敗した俺の所持金は金貨3枚になってしまった。しかも稼ぎまで減ると言うオマケ付き。


 そんなカード・・・・誰が作ったんだよ・・・・。



 しかしこの程度の事で俺の蛮行(かなぁ?)が許されるわけもなく、怒った女性達からの攻撃はまだ続く。


「あ、私も使う。

 『復活の兆し』、職業ランクが下がった他プレイヤーにのみ使用可能。そのプレイヤーは1ターンの間休みになり、元のランクに戻る。それと引き換えに体力5と全ハートをカード使用者に渡す。

 ルーク君、良かったね」


「良くねぇよっ! 弱った心に付け込もうとするんじゃないよ!

 なんだその突然の休日。絶対何かされてんじゃん・・・・」


 ただただ金とステータスを失った俺は、イブとよくわからない1夜を過ごした。


 何故体力とハートなのかは考えないでおこう。


「疲れた体には美味しい料理。

 『ディナーショー』、他プレイヤーのステータスが下がった場合に使用可能。そのプレイヤーとカード使用者の体力が5上がる。ただし効果を受けた他プレイヤーは金貨3枚失う」


「たかるな! 散財してるヤツにこれ以上金を使わせようとするな!!

 ってか所持金0じゃねぇか!?」


「む? じゃあこれもいけるな。

 『希望への架け橋』、所持金の無くなったプレイヤーに使用可能。このターンで失った所持金を取り戻せる代わりに全ステータスを5ずつ下げる。

 ほら、これで大丈夫だ」


「だいじょばないよ!? ステータス下げられてるからね!? 金と引き換えに全てを失ってるからねっ、俺!!」


 なんだこのデスコンボ・・・・。


 お前等、完全にこのためだけにカード温存してただろ。


 怒涛のネガティブラッシュによって所持金以外を学生の頃まで下げられた俺は、嫁(詐欺師)も失い、そのまま独身生活を貫くことになってしまった。



「あ~、みっちゃんが使わなければ私が『これ』使えたんですけどね~」


 散々な目にあった俺がうな垂れていると、ユキが何かをやりたかったと言い出した。


「なんだ・・・・? まだあったのか? これ以上俺から何を奪うつもりだったんだ?」


「え~、良いカードなんですよ~?」


 そう言ってユキが見せてきたカードは『幸福の使者』。


「何々・・・・『所持金が無くなったプレイヤーに使用可能。職業ランクが最大になり、家を手に入れ、無条件で恋人と結婚出来る』だと!?」


「しかもそれ、私にも効果があるんですよ~」


「何で使わなかった!? お前の方が手番先だろ!!」


 まぁ偽りの花嫁って時点で現実だったら幸福じゃないんだろうけど、これはあくまでもゲーム。


 どんな相手だろうと結婚出来るに越したことはないのだ。


「いえ、その方が面白いかな~と。

 絶望から救済してあげたらルークさん大喜び! やったね!」


「やってねぇよ・・・・。失敗してるから怒ってんだよ」


 まぁコイツはこういう奴だな。


 うん、期待した俺がバカだった。




 結婚イベントから始まった俺の転落人生だけど、終わってみれば4位とまあまあの結果だった。


 と言うのも、俺以上の転落人生を歩んだニーナ、料理店を潰してしまったヒカリ、公務員で地味ぃな人生を送ったみっちゃん。そして俺を助け、俺を邪魔する事に全能力を使った貴族メイドをしていたフィーネが下に居るから。


 順位もそのまんま。


 俺の上だと、3位に研究者のイブ、2位に魔王ユキ、1位がまさかの冒険者として大成功したアリシア姉。


 あの後、油田を掘り当てたニーナが独走していたユキに迫ったんだけど、ものの見事に油田を枯らして借金生活へ突入した。


 そんな彼女を助けるために『幸福の使者』を使ったユキが、フリーターの最上位ランク『魔王』へと昇格したことで、さらに2位以下を大きく突き放してトップでゴール。


 なんかそのカードと、誰もなりたがらないフリーターのコンボでのみなれる特殊職業らしく、突然職業カードが輝いて塗り替えられてた。


 ただアリシア姉は中盤で手に入れた『ベストパートナー』と『伝説の武具』によって国を脅かしていたドラゴンを討伐し、最強の冒険者として物凄い追い上げを見せたのだ。


「やっぱりクロとレーヴァテインがあれば成功するのよ!」


 どうやらここでの出来事を今の自分に当てはめてしまったらしく、夢物語とも言うべき楽観的な将来への希望を抱いていた。


 ちなみに救済されたニーナは油田を失っていたのですぐに落ちていったよ。



「ちょっと待て」



 と、ゲーム終了時、終始見せ場の無かったみっちゃんから待ったが掛かった。


 なんだかんだでバランス良かったし盛り上がったので、彼女以外は誰も不満を持って無さそうだけど・・・・何だろう?


「私、いや私とニーナは神獣だ。

 そんな我々がルークと同じ寿命なのは変じゃないか?」


 人生スゴロクなら自分用の長い人生も用意してくれないと公平じゃないと言い出したのだ。


 って建前で、盛り上がりに欠ける人生をやり直したいって我がままなんだけどね。


「たしかに! 私がルーク様のお傍に居られない人生などあり得ません!

 つまりこれは前世。私がメイドとして赤子の頃からルーク様のお世話をする2周目ボードをすぐに用意します」


「大人バージョンのわたしも出して。

 100年後だからイブは退場で」


「・・・・実は前世で知り合って、今がその2周目だから問題ない」


 まぁそれに共感する連中しかこの場には居ないわけで・・・・。


 さり気なくイブを除外しようとするニーナとまた喧嘩を始めるかと思ったけど、全員一致でこれは『前世ボード』って事になったから騒ぎは起きなかった。


「ちょっとイブ! それ私も言おうと思ってたのよ!?

 姉として生まれ変わった私は、ルークの良き理解者として人生の先輩として見本になるの!」


 いやアリシア姉、それは無い。


 まさか今もそうなってるとか宣うんじゃないだろうな?


 ほざけ。



 本気で2周目を始めそうな勢いだったけど、ヒカリの出勤時間が来たという事もあって人生スゴロクはここまでとなった。


「何かゴメンね。わたしが中断させちゃったみたいで」


「いやタイミング完璧だったぞ。それにアイツ等の寿命に合わせてたらあと10周はしないといけなくなってたからな。

 気に入ったんならまたやればいいさ」


「だね~。でも最後はちょっと切なかったからもう良いかな・・・・」


 楽しいゲームだったはずなのに何故か寂しそうな顔をするヒカリは、トボトボと食堂へ向かっていった。


 切ないってどういう事なんだろう?


 彼女の放った言葉の意味を考えていた俺にユキが話し掛けて来た。


「あのゲームで種族の違いを思い知らされたんでしょうね~。

 ルークさん、アリシアさん、イブさんだけが100年、ヒカリさん達は数百年。同じ人生を歩んでいても、ゲーム終了時に居なくなるのは3人だけなんですよ~」


「近・・・・くはないけど、将来必ずやってくる別れが悲しいってか?」


「それと『そこから続く人生について』ですかね~」


「はぁ~、そんな事考えたことも無かったよ。そう思うとあのゲーム、案外深い内容だな」


「悩め若人よ! その悩みが未来を切り開くのだ!」


 うん、良いこと言ってんだけど、そのキメ顔止めな。



 その日から、俺は人生スゴロクの説明書の最後にこう書くように指示を出した。


 『このゲームを通じて将来の事を考えてみてください』と。


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