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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十七章 炎の冒険者
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二百七十五話 皆でクリパ

 アリシア姉とヒカリは、激闘でタップリかいた汗を流すため再び入浴し、風呂上がりの牛乳片手に7並べをやっていると、今度は農場での忘年会を終えたのん兵衛達が帰って来た。


 中でも酷かったのはフィーネだ。


 ユキもみっちゃんもそれなりにテンション高めではあったけど、彼女ほどじゃない。


「らからルークしゃまは・・・・もっと・・・・もっとわらひに甘えるべきなのれす!」


「はいはい、そうだね。ほら水飲んで」


 この6時間ばかりの間にどれだけ飲んだのかは知らないけど、ベロンベロンになって今もこうして俺にしな垂れかかって喋り続けている。


 まるで今までの憂さを晴らすように、ほぼ聞き取れない言葉で。


 そんな酔っ払いの対応なんて大体こんなもんだろ?


 相手にするだけ損であり、どうせ忘れるんだから意味は無い。


「聞いてましゅか!?」


「聞いてる聞いてる。だから水飲んで、なんなら早く体内のアルコール浄化して」


「わらひが・・・・こんなにも尽くしているのに・・・・うぅぅ~」


 ユキ達ならこの状態を解除する事は可能なんだけど、それをすると怒るので自主的に行うまで待っていたらしい。


 で、いくら待ってもやらないもんだから諦めてそのまま連れて帰って来たと。



 もちろんフィーネが話したい、愚痴を言いたい相手は俺なので、他の連中に絡むことは無い。


 無いんだけど・・・・。


「フィーネさんは酔うとこうなるんだ。初めて知った」


「イブちゃん、わたし達も見た事ないのにラッキーだね!」


「酔っ払ってる今ならフィーネと全力で戦えるんじゃない!?」


 そこっ。我関せずで寛いでないで何とかしなさい!


 何がラッキーだ! アンラッキーな俺をさっさと助けろよ!


「・・・・」


 ニーナも! 関心無さそうにボーっとしてんじゃないよ!!


「・・・・ハッ・・・・い、いらっしゃいませ」


 まさか眠いのか!? むしろ寝てたのか!?


「チューれすよ!? チューしてる人が多かったのれす!!」


「ですね~。街が暗くなった事で光り輝く精霊達がより鮮明に見え、まるで恋人達を祝福するようにとてもムーディな雰囲気を醸し出していましたよ~」


「ああ。私達は気を使って避けてきたが、それでも数組は見かけたな。

 そもそも女同士で居る事が恥ずかしくなるような空気、あれは一体何なんだ?」


 それは俺も同感。


 ってかなんだこの状況。




 流石に収拾がつかなくなってきたので、嫌がるだろうけどフィーネの酔いを無理矢理醒ます強硬手段に出ようとすると、


「クリスマスにキスするのって普通なの?」


 アリシア姉が珍しく思春期の少女のような話題を持ち出してきた。


 酔いどれエルフさんのセリフをちゃっかり聞いていたらしく、俺達(特にユキとみっちゃん)の方を向いて「どうなの? どうなの?」と興味津々に尋ねている。


 それに誰よりも早く答えたのは、いや答えてしまったのは・・・・ユキ。


「ユキさん調べによりますと、この日を共に過ごした男女でする確率は43%ですね~。仕事仲間や親族、付き合い始めた人達って事を除くと80%にまで跳ね上がります~」


 この際「どうやって調べたんだよ!」ってツッコミは置いといて、具体的な数値を提示されたアリシア姉はさらに興味を持ったようだ。


 いや・・・・興味ってか・・・・。


「私がルークとしたら、止めに入る人達とバトルロイヤル出来るんじゃない?

 成功したら怒って本気出してくれるかも!」


 宣戦布告?




 思い立ったが吉日。


 とても行動力のある姉は、弟の唇を奪おうとこちらへ迫ってくる。


 理由は争いの種を撒きたいから。


「わらひに勝てると言うんれすか! ルークしゃまの唇はわらひのももれすろ!?」


「アリシアちゃん、それはダメだよ~。姉弟でも、ううん姉弟だからこそするべきじゃないんじゃない?」


「アリシア・・・・覚悟はいい?」


「折角仲良くなれたのに。アリシアさん、さようなら」


 そんな事を言われて黙っている連中などこの場には居らず、当然のように事態はアリシア姉の望む方向へと進んでいく。


 つーか、何でもいいから早くこの超至近距離にある顔を誰か退けてくれません!?


 俺の手が限界を迎えた瞬間に背徳的な事態になっちゃいますよ!?


「お、落ち着け・・・・っ! アリシア姉、ちょっと落ち着け!!

 その行為を完遂してしまうと困るのはアンタだぞ!」


「なんでよ?」


 倫理とか貞操観念とか色々ギリギリな攻防を繰り広げる中、俺は得意の話術で解決を試みると一応話を聞く気になったのか、アリシア姉も攻撃の手を緩めてくれた。


「そりゃ激怒するヤツも居るだろう。でも考えてもみろ。その光景を見た連中はどう思う? 『姉が良いんなら自分も』って事になるんじゃないのか?

 そうなったら放置されるのはアリシア姉、アンタだ!」


「たっ、たしかに! なんて綺麗な正論なの!? 反論できないわ・・・・」


 バカで良かった。


「だからここで必要なのは、迫る事。決して実行に移してはいけません」


「そうね! じゃあ・・・・んんーっ」


 ・・・・あれ? また俺の腕が悲鳴を上げ始めましたけど? なんで?


「隙を見せて後ろから襲われるようにしてるだけよ!」


 違うよ、俺が言いたいのはそういう事じゃないんだよ・・・・。



 ってな感じで俺達の攻防が再開された横では、


「みっちゃんは家に影響でない様に注意してください~。私は結界を維持します~」 


「了解だ。いざとなったらフィーネの酔いを醒まさせてやる」


 有難いやら、迷惑やら。酔っ払っていないユキとみっちゃんが手早く戦える環境を整えていた。


 この2人、酔ってないけどテンションは高いので止める気はないようだ。


 いや、普段からこうか。




 ヒカリの容赦ない背後からの一撃によって開戦の火ぶたが切って落とされたわけだけど、この空気を良しとしない俺は事態を沈静化すべく新たな勢力を呼び出した。


 そう・・・・ツンデレエルフを!


「ルナマリア~、ルナマリア~~。ちょっとフィーネの看病手伝って~」


「気安く呼びつけるなって言ってるでしょ!」


 と言うテンプレなセリフを吐きながら窓を開けて入って来たルナマリアは、グチグチ言いながらも「勝手に治したらあの子、怒るわよ?」とやる気を見せてくれる。


 俺はそんな彼女をフィーネの傍に連れて行き・・・・、


「そいやっ!」


「ん~~っ!?」


 2人の唇をくっ付けた。



「まぁ奥様、見ました? 女の子同士ですわよ~」


「ん? あ、ああ・・・・そうだな。いや、そうですわね・・・・?」


 凍りついたリビングで俺以外に動ける人間は、やはり長生きしているだけはあるユキとみっちゃん。


 逆にこういうことに耐性の無い他の連中は当分動けそうにない。


 なんだかんだ言いながらも俺とのマウストゥマウスを実行に移せていないアリシア姉も固まっている。


 所詮はお子ちゃま。現物を目の前にすればこんなもんよ。


「なっ、何すんのよ!?」


 んで次に正気に戻ったのは口づけさせられたルナマリア。


 もちろん怒りながら俺に掴みかかって来るけど、その言動とは裏腹に満面の笑みを浮かべている。


 大体、どれだけ油断していようとも俺に頭を掴まれるなんて失態はしないはず。ましてや誰かと口をくっ付けるなんてフィーネ以外では100%成功しない。と言うか途中から近づいて行ってた。


 やはり君は・・・・。


 ちなみにフィーネは「まああああぁぁぁぁーーーー」とよくわからない擬音を発しながら呆然としている。


 っと、そんな事より伝えないといけない事があったんだ。


「これが俺からのクリスマスプレゼントだ。それと今のうちにフィーネを正気に戻してくれると嬉しい」


「任せなさい!」


 ルナマリアは凄く良い返事で両手を光輝かせると、パパっと一瞬でフィーネの酔いを醒まし、そそくさと家を出ていった。


 用事があるとかそんなんじゃなくて、走り出したい気分になったんだろう。


 ・・・・どこの純情ボーイだよ。



 んで正気に戻ったフィーネに俺が、


「昔馴染みとキスするって言う微妙な感情を主にも味あわせたいのか? なんなら俺は姉弟だぞ?」


 と言ったところ、スンナリと納得してアリシア姉の計画をぶち壊してくれた。


「こういうことは愛する人とすべきです。いえ姉弟愛もあるでしょうが、口と口は違う意味になってしまいますので」


「残念ね~。面白そうだったのに・・・・」


 よく言うよ。どうせ俺から迫ったら逃げるくせに。


ドスッ!

「おふっ!?」


「虫が居たのよ、虫が」


 ついに幻覚まで見始めてしまったようだ。


ゴスッ!!

「アウチっ!」


「こっちは姉を敬わない弟への教育的指導ね」


 口に出していないはずなのにクリスマスパーティ中に2度も殴られる可哀そうな俺。


 誰か同情プリーズ。


「「「それは自業自得」」」

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