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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十六章 ヨシュア開拓編
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二百六十五話 後の祭り

 現実世界では絶対しないであろう乱戦に身を投じてみたけど、学園祭のイベントって事で考えれば「楽しかった」の一言に尽きる。


 ただそれよりも嬉しい出来事があった。


 このイベントを通じてイブとニーナが仲良くなったのだ。


 リタイアした後はベーさんと一緒にのんびり観戦してたんだけど、2人はお互い探していた事もあってすぐに出会い、戦いになった。


 『王女 VS 神獣』


 そんなの普通に考えれば勝負になるはずがない。


 しかしイブは秘策『ワンパン君を仕込んだグローブ』を用意していた。


 バトルロイヤルが無ければ俺に自慢するだけだったらしいけど、試し打ちの絶好の機会でもある対ニーナ戦で初お披露目となったわけだ。


 魔力を封じられたニーナは得意のからめ手による接近戦へ持ち込み、同じく接近戦を望んだイブもそのまま殴り合いの激闘を繰り広げる。


 何が凄いってその発動速度。


 使いこなせるように猛特訓したのか、『構えて発動させながら殴る』ではなく『触れたら発動する』なもんだから隙が一切ない上に、カウンターすら許さない。


 しかも絶大な攻撃力の割に消費魔力が少ないのかポイントがほぼ減らないってんだから、一撃アウトのニーナは苦戦を強いられることになる。


「その辺は慣れだな。何なら魔力の流れを感じ取れるようになってるから今のイブは通常打撃にも貫通衝撃破が乗ってるぞ」


「・・・・君んとこの王女様は何になりたい訳?」


「・・・・・・お前の嫁でもあるんだが?」


 そうでしたー。


 まだ辛うじて救いなのは、ヒカリやアリシア姉みたいに戦闘が楽しくて仕方がないって言い出していない事だろうか。



「ニーナさん、強かった。流石神獣」


「イブも凄い。ビックリした」


 そしてお互いの善戦を称え合う2人は今もこうして仲良く会話しているのだ。


 対決の勝者はニーナ。


 ただし『ヒカリ VS みっちゃん』が激戦過ぎてその余波で即敗北してたけど。


 なんとこの2人。ここまで貯めた全ポイントを使ってリタイア覚悟で一撃に全てを込めて激突しやがったのだ。


 一応みっちゃんが勝ったけど、0ポイントになったので勝者も敗者もない。


「いや~、面白かったねっ」


「ああ!」


 まぁぶつかった当人達が楽しそうなので、これはこれで良い決着のつけ方なんだろう。


「ただ・・・・ベルフェゴールともやりたかった・・・・」


 まだ言ってやがる。


 もうイベントは終わったんだ。


 後の祭りなんだよ。




 そうそう。ヒカリ達の激突によって一気に参加者が減ったからダンジョンステージと合わせても50人も残らず、完全に棚ぼた勝利を手に入れた人も居る。


 我が姉、アリシア=オルブライトもその1人だ。


「ちょっと!? 私の雄姿を見てないってどう言うことよ!?」


「仕方ないだろ。アリシア姉達の戦い、地味なんだもん」


「地味!? 10位の私達が地味!?」


 神獣達のぶつかり合い。未知の魔道具での攻防。


 そんな戦いを見た後では、いくらアリシア姉が大剣を振り回そうが地味としか思えなかったのは俺だけじゃないはず。


「も、もう一回よ! 今度は魔法を見せてあげるから!! 一面火の海にして全てを焼き払うから!!」


 他の誰かにも同じような事を言われたのか、慌てた様子のアリシア姉が再試合を申し込むものの、このイベントはもう終わっているのだ。


 これまた後の祭りだな。




「えっ、嘘!? バトルロイヤル終わっちゃったの!?

 昨日のイベント時間に間に合うように急いできたのに・・・・」


 ニーナから絶好の賭けイベントと聞いて満面の笑みでやって来たユチも後悔している側の人間だ。


 着替える時間すらも惜しんだのか、ウェイトレス姿での来場である。


 きっとありとあらゆるレートを考えて来たんだろうけど、時すでに遅し。


「えぇ~~~。私はまだ良いけど、参加したかった人からはクレーム来るよ~?」


「それは俺じゃなくてフィーネ達に言ってくれ。

 あと多分だけど文句言う人は居ないと思うぞ。本来は予定されてないイベントなんだから」


 こういうサプライズがあるから祭りやイベントは盛り上がるのである。


「あぁ~あ・・・・賭け試合、やりたかったなぁ・・・・」


「そんなに悔しいんなら今度ロア商会に持ち掛けてイベント主催すればいいじゃないか」


「私は今やりたかったんだよぉぉ・・・・ナウ!」


 と、不満タラタラな少女も折角来たんだから最後まで学園祭を堪能するつもりらしいし、その内普段のテンションに戻るだろう。


 はいはい、後の祭り、後の祭り。




「なんか全員集合しちゃったし、皆で学園祭を楽しもうか!」


 仕事を終えたフィーネとユキ、さらにはルナマリアまで来たもんだから、なんと総勢10名という大所帯で俺達は祭りに乗り出した。


 ベーさんが人混みは嫌だと言って岩の中に引きこもり、ここまで来て楽しめないのも嫌だと言ってルナマリアに背負わせてるけど、まぁこの辺はいつも通りなので無視しよう。


「ルークはそうだとしても、他の皆も手伝わないってどう言うことよ・・・・」


「「「2人の邪魔をしたら悪いかなって」」」


 ルナベーコンビは永久に不滅です!


「もう良いわよっ!」


 全員にからかわれたルナマリアが怒りながらもシッカリ岩を担いで先に行ってしまった。


「あんな恰好見せられて笑わないわけないじゃん。本当にツンデレなんだから」


「「「ねぇ~?」」」


 俺達が爆笑する中、ユチだけはテンション低く本当に残念そうにしている。余程楽しみだったんだろう。


 ま、気にしても仕方ない。


 それより美味しい食べ物はどこかな~。


 今の俺は腹ペコルークさんなのだ。



「ルーク君の好きな獣人の女の子・・・・仲良さそう」


 その会話を聞いていたイブが盛り上がっているのに嫉妬したのか、ユチをジロリと睨みつける。


「・・・・(ボソッ)ねぇヒカリちゃん。なんで私イブちゃんに睨まれてるの?」


「話すと長くなるから端的に言うと、ルークを誘惑する女の子って認識されてるみたいだよ」


「っ! や、やっぱり・・・・ユチも・・・・」


「ニーナまでそっち側!? いやいやいや、その話、大分前に終わったじゃん!」


 うむうむ。少女達に取り合ってもらえる俺、モテモテだね!


 悪い気はしない。


「そこっ! 否定してくれないとハーレム要員に私も入れられちゃうから! 流血とか胃液とか物理的に女同士のドロドロした争い始まっちゃうから!!

 しかも私一方的にボコられるっ!」


「アリスとシィって言う女友達も居るんだけど、呼んでこようか?」


「止~め~ろ~よ~。これ以上私のツッコミ技術を磨こうとしないで!!」


 求む! 次世代のツッコミ要員!!




 ドゴオオオオオオーーーーーンっっ!!!


 残り時間僅かとなった学園祭を精一杯楽しいでいると、物凄い轟音が校内に響いた。


「なんだこの音。イベントにしてもちょっと迷惑なレベルだぞ。

 どうして禁止されなかった? そして一切揺れないのは何故?」


「予定されていたものではありませんね。地響きは周辺地域の迷惑になりそうなので結界で止めました」


 何かしらのハプニングなんだろうけど、フィーネ達が慌ててないって事は緊急じゃないな。


「ん、ならよし。そのリンゴ飴ちょっと頂戴」


「ルーク様と間接キス!? どどどど、どうぞっ!!」


「その次、私」


「御冗談を。まず私が食べてからです」


 そして俺とフィーネとイブの間でリンゴ飴争奪戦が始まろうとしていた。


「・・・・・・・・まぁそうだよね~。フィーネ様達が居るんだから無視するよねぇ~」


 ちっ、ユチのツッコミもまだまだ素人だな。


 ここは「原因探ろうよ!? 明らかに異常事態でしょ!?」が正しいツッコミだ。


 決して呆れたり、納得してはいけない。


 ただ冷静過ぎる俺達以外は完全に2極化した。


 『ロア商会の連中居るし問題ないだろ』って学園祭を楽しむ組と。


 『逃げなきゃ! ここから離れなきゃ!』って怖がる組である。



「復讐だっ!!!」


 バキィィ! ドゴゴッ!



 おそらく先ほどの轟音の原因が、「復讐だ! 復讐だあああっ!」と叫びながら学校を壊し始めたもんだから、楽観的な連中ですら慌てる事態へと発展してしまった。


 何かのイベントだと思ってスルーしてたけど、流石にこれは俺達も無視してる場合じゃないかな。


 念のため校庭に避難して音の発生源を探すと、すぐに見つかった。


 ・・・・ってか屋上に巨大戦艦が突き刺さっていて、その隣でジョセフィーヌさんほどで無いにしろ、そこそこ強面の浅黒い肌をした巨漢が暴れまわっている。


 間違いなくアレだ。


「お前等の知り合いか?」


 取り合えずああいうヤツはフィーネかユキの関係者だと決めつけている俺は、身元確認から始めた。


「さぁ~?」


「いえ、確か・・・・以前どこかで・・・・っ、思い出しました。ルーク様が遠足に行かれた際、襲撃者の中に居たはずです」


「あ~、そう言えば居たような~? 居なかったような~?」


 つまりアイツの言う『復讐』とは、フィーネ達に対する宣戦布告って事なんだろう。


 どうやら雑魚の様だしさっさと片付けてもらうとしましょう、か・・・・ね?



「キ、キタキタキタアアアアアアアーーーーっ!!!

 特大ギャンブルの機会、キタァァァーーーっ!!」



 屋上を見上げてからずっと黙っていたユチが、何をやっても沈んだ様子だったユチが、賭け事大好きなユチが、とても生き生きとした歓喜の雄叫び上げた。


「ど、どうしたのユチ?」


 それに驚いたのは、ニーナを始めとした一部の女性達。


 おいおい、なんで一番付き合いの長いお前がわからないんだよ。


 この異常事態も彼女にとっては絶好の、待ちに待った、感涙するほどの賭け試合の機会だったってだけだろ。


「どうした? これが黙っていられますかってんだいっ!

 ユキ様! バトルロイヤルの腕輪ってあの空間じゃなくても使えます?」


「転移は無理ですけど、ポイントのやり取りだけなら~」


 ほらな。


 説明する僅かな時間すら惜しいのか、ユチは頭の中だけで全ての予定を組み立てていく。


 ついて来れない人は置いてけぼりである。


「フィーネ様! 結界内なら敵を倒した数って把握することは可能ですか? そして腕輪に反映したり出来ます!?」


 あぁ~なるほど、ボスの周りを飛んでる雑魚敵の討伐数を競う感じね。


「・・・・はい、大丈夫ですよ」


「大地は、私の領域・・・・」


 フィーネがこのイベントの合否を俺に委ねるようにこちらをチラリと確認したので、俺は大きく頷いてあげた。


 折角ユチが面白そうな方向に話を持っていこうとしてるんだから、最後まで楽しむべきだと思ったのだ。


 あと何故かベーさんも協力してくれるらしい。


「なら腕輪を配布・・・・いや最低限の戦力は欲しいから有料にして・・・・あっ、その前に告知しなきゃ告知!

 くぅぅ~っ! テンション上がって来たぁぁ~~~!!」



 祭りの後には次なる祭りが待っているようです。


 俺達の学園祭は最後までイベント尽くしになりそうだ。

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