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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
二章 フィーネ無双

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二十五.八話 フィーネ先生になる3

 ガルム討伐任務を達成して拠点へと帰って来たアッシュ達3人とユキ。


 そこではフィーネがいつも通り食事の用意をして待っていた。


「おかえりなさい。合格したようですね」


「「「うん・・・・まぁ・・・・」」」


 これまたいつも通りの出迎えの挨拶に、この試練に未だ納得のいっていないアッシュとマール、一応それに合わせているレインは曖昧な返答をする。


 そんな彼等の内心が伝わったのか、疑問を口にすることなく配膳を始めるフィーネ。


 何はともあれ試練を乗り越えた祝杯をあげなければ。


「結構戦えてましたよ~。例えば・・・・・・」


 食事を取りながらユキが補足説明を入れると、


(武器の扱いを教える時間がなかったのですが、何とかなるものですね。彼らには悪い事をしました。

 ただ・・・・もう1日早くしても良かったかもしれません)


 自分の身勝手(ルークに早く会いたい一心)で訓練期間を短縮したフィーネには負い目があったのだが、話を聞く限り丁度良かったらしい。


 そうなると逆に長すぎたと後悔してしまうフィーネ。


 そして次があればもっと厳しくても良い、と内心で恐ろしい事を考え始めた。

 

「・・・・(ボソっ)おい見たか、フィーネの安堵した表情。あれきっとオレ達を心配してたんだぜ」


「・・・・(ボソボソ)だね。きっと弟子の成長を喜んでくれてるんだろう。良いもんだね、こうして待っててくれる人が居るって言うのは」


「・・・・大丈夫。わたし達は無事」


「は? え、ええ・・・・そうですね。無事で何よりです」


 微妙に噛み合わない4人の隣で全てを理解したユキが爆笑しているが、詳しく説明する気はないようだ。



「ところでオレ達が元々強かったならあの訓練の意味はあるのか?」


 合格祝いも兼ねた普段より豪華な食事中。


 ユキに言われた事を未だに気にしていたらしく、アッシュがこの1週間の生活について質問してきた。


 口には出さないものの、必要性があったのか疑問を持っているレインとマールも自然とそちらに顔を向ける。


「今後もあのメニューをこなしていれば強くなれますよ。短期間では効果が少ないだけです」


「つまり自己鍛錬に励めって事か?」


「はい」


 まぁそれなら・・・・と、納得したアッシュ達は練習メニューを教えてくれたフィーネとユキにお礼を言った。


「どういたしまして~。

 ではでは、今から卒業式をしますよ~。各々へのプレゼントも用意してるんです~」


「いや、『今から』って食事中なんだけど!?」


 完全にズレたこの発言によって、アッシュ達の師匠への感謝の気持ちが流されてしまう。


 だがその分、笑いは生まれた。




 タイミングこそ間違ったものの食後に卒業式はするつもりだったらしく。フィーネとユキはアッシュ達を整列させ、1人1人に最後の挨拶をしていく。


「双剣士マール。あなたは瞬発力と集中力があり、風魔術と組み合わせることで今以上に強くなれるでしょう。

 今後の課題は体力です。常に全力で動けるように努力してください」


 フィーネはアドバイスと共にマールへ緑色の双剣を手渡す。


「柄に取り付けられているのはクラーケンの魔石を加工したものですよ~。それによって切れ味が衰えなくなっていますのでバッサバッサやってくださいね~。

 あと刀身には風の魔法陣を刻んでいるので、マールさんの魔術と相性はバッチリです~」


「・・・・ありがと。大切にします」


 さもユキが製作したように話しているが、全ての加工はフィーネが行っていたりする。


 だが、感動的なこの場面でとやかく言うべきではないだろう。



「弓使いレイン。あなたは沈着冷静で周囲に気を配る性格です。持ち前の洞察力で常に全体を把握するように努力してください。

 今後の課題は先読み技術です。敵の見落としは今後無いようにしてください」


 レインには特製の弓を。


「魔力を込めれば無限に矢が生み出せる魔法陣を刻んでありますので、バスコ~ンいってくださいね~。

 あと相手の特性に合わせて使い分けられるよう、中央部分にクラーケンの魔石を使っているので水の矢も使えます~」


「うわっ、すごい! 矢が出現した!!

 ありがとうございます!」


 こちらはユキが主に作った物なので、この製作者然とした雰囲気は間違ってはいない。



「守護者アッシュ。あなたは誰よりも仲間を大切にしていて守護者に重要な精神を持っています。防御力と体力を身につけてマールとレインを守りなさい。

 今後の課題はコレを自由に扱えることです」


 最後にフィーネが取り出したのは、アッシュの身長ほどもある巨大な盾。


 彼等のリーダーとして仲間を守るための武器である防具だ。


「思い出ついでに皆さんがツルハシで掘った山の土を圧縮した盾ですよ~。それにクラーケンの魔石と強化の魔法陣と組み合わせてます。

 魔力を込める事で無限に固くなりますけど同時に重くなるので、上手に扱えるようになるまで時間は掛かりますね~。あ、もちろん武器にも防具にも出来ますよ~。ドッカーンと体当たりで攻防一体!」


「重ッ!? なんだよこれ、動けないぞ!?」


 皆と同じく早速使ってみたアッシュは、盾の重さに耐えきれず圧し潰されてしまった。


「アッシュは体力の前に筋力が必要かな」

「うん」


「こんなクソ面倒くさい盾をありがとうございますっ!

 ちくしょう! 使いこなしてやるよ!」


 なんとも彼らしいお礼だった。


 実は上級冒険者が使うような装備品だという事を3人はまだ知らない。



「最後にこちらも差し上げます」


 そう言ってフィーネは金貨50枚、今の全財産を渡した。


「こんな大金受け取れねぇよ!」

「何故お金をくれるんですか?」

「狩りは出来る」


 今のままでも十分生きてはいけると不満気な3人。


 もしかしたら食料や防具を買えと言う事なのかもしれないが、それだって自分達なら自力で稼げる。


 と、誰かが言う前にユキが理由を話し始めた。


「皆さんの好きなように使ってくれたらいいですよ~。

 街で豪遊してもいいですし、防具を揃えてもいいでしょう~。生活用品を買ってもいい、生活に困っている子供達を助けてもいいです~。任せます」


「わかった! すぐに10倍にして返すからな!」

「たしかに僕達には必要な物ですね。ありがたく受け取ります」

「助ける以外の選択肢はない」


 即答した3人に思わず笑みが零れるフィーネとユキ。


 物わかりの良い弟子たちだ。



「では皆さんさようなら~」

「大事なのはこれからです、頑張ってください」


「「「先生ありがとうございました!!」」」


 こうしてフィーネとユキの1週間限定の指導者は終わりを告げた。




 山を下りた2人は、この1週間の生活を振り返っていた。


「良い子達でしたね~。また会えそうな気がします~」


「だと良いですね。彼等の成長に期待しましょう」


 今後3人がどれだけの功績を残し、どれだけの人を救うのか。


 それはフィーネ達の長い人生にまた1つ楽しみが増える事を意味している。


 そこから話は盛り上がり続け、アッシュがマールの入浴を覗いてしまった事、マールが笑いキノコを食べて転げまわった事、レインが将来学者になりたかった事、などなど思い出話に花を咲かせ、いつしか話題はあの場所の事になっていた。


「近くに居た強敵は全て排除したのでしばらくは安全でしょうし、洞窟には我々の魔力を浸透させたので近づいても来ませんが・・・・」


「まぁそうなると脅威になるのは人間でしょうね~。

 でも来ますかね? あんな辺境の奥地に」


「どうでしょうね。念のために逃げに特化した訓練を施しましたが、そこは彼等より強い者が居ない事を祈るしかありません」


「一応近くに居た精霊さんにはお願いしておきましたけど~」


「・・・・それは初耳ですが?」


「初めて言いましたからね~」


「「・・・・・・・・完璧ですね」」


 実はこの2人によって街の中より安全な訓練所が作り出されていたのだが、アッシュ達がそれを知るのはまだ先の話である。


 そして数年の後。


 この事に気付いた彼等はフィーネ達に永遠の忠誠を誓うのだった。


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