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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十六章 ヨシュア開拓編
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閑話 中二病ヴァンパイアと遊ぼう

 最近ヨシュアの拡大やイベント準備で何かと忙しかったので、実に1か月ぶりとなるベルダンに向かう道中。


 フィーネ達が下処理した土地で大工さん達がトントンカンカン忙しなく作業をしている中、俺は見覚えのある人物を見つけた。


「・・・・メルディ?」


 それは中二病ヴァンパイアこと『メルディ=ソード=ブラッドレイ』その人。


 ただしその格好は悪目立ちする赤マントじゃなくて地味なTシャツと長ズボンというどこにでも居る町娘風。


 そう言えばこの人、高圧的な口調とは裏腹に社会適合者だった・・・・。


 でも基本的にダンジョンから出て来ない連中なのに、何故こんな場所に居るのか?


 どうしても気になった俺は声を掛けてみる事にした。


「よっス。何してんだ?」


「ふふっ、久しいな同胞よ。

 今日は我が指導してやることになったので、こうして迎えに来たのだ。そのついでに我が力の前にひれ伏す人間共を眺めていたに過ぎん」


 どうやらそれが楽しみ過ぎて街まで下りてきてしまったようだ。


 んで、こうして自分の有能ぶりを実感してニタニタしていた、と。



 開拓作業以降2週間ぶりの再会だし、久しぶりにアレやっとこうかな。


「俺達に時間など関係ない。必ず再び巡り合う運命さだめにあるのだから」


「っ! そ、そうだったな。我としたことが失念していた」


 まぁこういう会話をする間柄です。


 ただ面倒臭いので彼女のテンションは下がるだろうけど俺は普通に話させてもらいますよ。




 農場を抜けて山に向かう道中で近況報告をしていると、いつの間にか足元にベーさんが転がっていたので俺は話題をメルディの事に変更した。


 あそこの連中って変わり映えしない生活送ってるから、話のネタが尽きるんだよな。アリシア姉やヒカリの成果とか聞いても「へぇ~」としか言えないし。


「なぁ、前から疑問だったんだけどメルディって魔獣じゃないよな?

 このダンジョンで生まれた連中って全員魔獣だったはずだけど、なんか理由があるのか?」


「我の血がそうさせたまで。そう、選ばれし者であるこの我の血がな・・・・ふふ」


 彼女の言葉をそこそこ通訳できる気でいたけど、これに関しては全く理解できなかった。


「ベーさん、知ってる?」


「あ~・・・・え~っと・・・・コウモリから進化?」


「端的に言えばそうなる。マスターとユキさんの血を貰ったら人型になれた」


 それは・・・・まぁ・・・・たしかに進化だし、血の成せる技ではあるな。


 じゃあ種族的にはヴァンパイアじゃなくてコウモリじゃんって思ったけど、彼女の将来を左右しそうなのでそのツッコミはグッと堪える事にした。


「んじゃ血はどうしてるんだ? コウモリだろうとヴァンパイアだろうと必要なはずだろ?」


「献血で集めている。我ほどの存在になると血の良し悪しも匂いを嗅いだだけで判別できるので、従業員の健康管理に役立っているのだ」


 ロア商会では半年に一度健康診断をしてて、その時に献血も義務になっているらしい。



「メルちゃん・・・・人間に憧れてましたもんね・・・・」


「っ!」



 ・・・・メルちゃん? メルディだからメルちゃん?


 ベーさんの放った一言にメルディは何故か慌てているけど、それより俺は初めて聞く『ちゃん』呼びの方が気になった。


「ベーさんにしては珍しくないか? 今まで聞いた人は全部『さん』だったけど」


「え・・・・? メルちゃんは、生まれた時からメルちゃんですが?」


 イマイチ会話が噛み合わない。


「ふ、ふふ・・・・ま、まぁその話はこの辺にしておこうではないか」


「そうだな。ホネカワ達に聞いた方が早いか」


「っ! ・・・・・・・・実は・・・・我が名はメルなのだ」


 明らかに話を逸らそうとしたので気になった俺がそんな事を言うと、観念したように自らの口で語り始めた。


 人に殺されるぐらいなら自害する。その心意気アッパレなり。



 コウモリ時代にベーさんから『メル』と名付けられた彼女は、その数日後に吸血によって今の姿になったらしい。


 そして当然の流れで中二病に目覚めたんだけど、流石にメルちゃんと言う名前は可愛すぎるので改名する事にした。


 ただ彼女は権力に弱いヴァンパイア。


 フィーネやベーさんなど上司には中々言い出せず、頑張って伝えた頃には完全に手遅れで、物覚えの悪いベーさんが「メルちゃん」としか呼ばなくなっていたんだとか。


「なんだその仕事のミスを言い出せずに負の連鎖に陥る新人みたいなのは・・・・」


「ふっ、若かりし頃の過ちよ」


「いやお前、俺よりだいぶ年下だからな? 何なら俺もメルちゃんって呼んでやろうか?」


「泣くぞ!? 良いのか? 一度泣いたら私は中々泣き止まないから! ルークに虐められたって皆に言ってやるんだからっ!!」


 メルちゃん、素が出てるから・・・・キャラ守って、キャラを。




 本当に泣き出しそうだったので話題を逸らしてあげると、この物凄く打たれ弱いメルちゃん、実はアリシア姉の指導係をしている事が判明。


 俺の場合はジョセフィーヌさんとホネカワで、アリシア姉はメルディとアラクネさんと言う蜘蛛なんだとか。


 たしかに彼女の魔術を見た瞬間思ったけど、炎と闇の2属性使える上にヴァンパイアとして尋常じゃない魔力と身体能力を持ってるんだから、アリシア姉の上位互換と呼べる存在である。


 指導者にはうってつけだろう。


「アリシア・・・・我が友よ。

 ヤツの魔剣から放たれる魔法は眩いばかりの閃光を放ち、その恐れを知らない戦い方は我に通じるものがある」


「実はあの魔剣つくったの俺なんだけどね」


「・・・・ふ~ん」


 むっ? 驚くかと思ったら案外リアクション薄いな。


 いや・・・・ここはこう言うべきか。


「我がサーバントであるフィーネ・ユキの力を借りて、神にも等しき力を宿した魔剣!

 全てを焼き払う聖なる炎を扱うにはまだ未熟だが、アレを使いこなせないようならば、この俺の姉と名乗る資格はない。

 だがいつの日か必ず頂へとたどり着くであろう。彼女もまた選ばれし者なのだから・・・・」


「っ!」


 あ、これで良いみたいです。


「お二人は・・・・気が合いますねぇ・・・・。

 私はどうも若い人達のノリについていけなくて・・・・年ですかね?」


「まぁベーさんはそのままで良いと思うよ。怠惰を貫けば」


 ちょっと中二病になったベーさんを見て見たいと思ったのは秘密だ。


 この人、普通に世界征服とか始めそうだし。




 さて、メルディの支配するフロアにやってきたわけだけど、肝心の修行内容は『無』だった。


 なんかカッコいい感じかと思いきや、何もせずに中二トークで盛り上がっただけ。


「そこで俺は思ったね。今、地震が起きたら時間を止めて皆を助けてやるのにって!」


「わかるぅ~。時間停止と未来予知は憧れるよね~」


 お~い、メルちゃん出てきてるぞ~。キャラを守れって言ってるだろ。


「時間を止めたら・・・・世界が滅びますが?」


「「っ! 出来るの!?」」


 それを聞いていたベーさんが凄い事を言い出した。


 ま、まさかこんな身近に憧れの能力を持ったヤツが居たなんて・・・・っ!


 ワナワナと震える俺とメルディは、今すぐにでも討論したい気持ちを抑え込んで話の続きを待つ。


 もうちょっと詳しい話が聞けるはずなのだ。


「? ・・・・精霊の活動がなくなるので・・・・動き出した瞬間に凝縮されたエネルギーがビッグバンを起こすんじゃないですか?」


「リ、リアルだな・・・・なんかその辺は超魔術で何とかなるんだよ」


「その通りだマスター。現実的に考えるのは掟に反する」


 危うく論破されそうになった俺とメルディが何とか自我を保とうとした次の瞬間!


「「っ・・・・いや! ビッグバンもカッコいい!?」」


 ベーさんの言葉に秘められた中二力を見つけ出した俺達は、ビッグバンについて熱い議論を開始した。



「やっぱり・・・・よくわかりませんねぇ・・・・」


 話について来れないベーさんがウトウトし始めたけど、俺達の無意味に盛り上がる話し合いはいつまでも、いつまでも続いた。


 だって俺が帰ろうとした時に『ベーさんは時間停止が出来るか出来ないか』って話でさらに盛り上がっちゃったんだもの!


 戦闘力とか考え始めちゃったんだもの!!


 遅くなり過ぎたのでメルディに家まで運んでもらっちゃった。


 ヴァンパイアに抱かれて空中を移動・・・・これぞファンタジー!

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