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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十六章 ヨシュア開拓編
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二百四十七話 ヨシュア改造計画2

 ヨシュア改造計画が立ち上がった直後。


 光速で自分の考えを図面に書き起こした俺は、『新しい街をどんな風にしたいか』という住民達の声を取り入れるべく猫の手食堂へと足を運んだ。


 ここで働く猫さん・犬さんに理想の街について熱く語っていただこうと言うわけである。


「獣人だから、とは言わないんだね」


 その道すがら、ヒカリがため息交じりに指摘してきたので、俺は優しく諭すようにこう言ってやった。


「おいおい、ヨシュア在住の人だから聞きに来たに決まってるじゃないか。そこにたまたま多くの獣人が居るってだけで」


「・・・・もうそれでいいよ」


 そこから食堂の扉を開くまでの間、ヒカリはデュフデュフ笑う俺から少し離れて無言のまま歩いていたけど、これからの生活に夢が膨らんでいる俺は気にする余裕など無かった。




 定休日と言うこともあり、店の掃除や新作料理の品評会に勤しんでいた食堂メンバーを集めて事情を説明すると、


「私はギャンブル場が欲しい!

 パチンコ店とか宝クジも良いけど、王都にあるような闘技場とか大規模なカードゲームの出来るお店があっても良いと思うんだよねっ!」


 真っ先に意見を出したのはギャンブラーユチ。


 おそらく前々から構想を練っていたのだろう。とても今考えたとは思えないほどスラスラと滑らかな口調で事細かに説明された。


 誰も店内の配置まで教えろとは言っていない。


「ん~、たしかに楽しそうだけど、それを作ると本格的に賭け事の街になりそうなんだよな~。

 闘技場に関しても、定期的に王都でイベントが開催されてるからその盛り上がりを奪うような気がしてどうかと思うし・・・・」


「そうだよね。わたしも新しい街に相応しくないと思う」


「そう言うと思ってたよ~。ニュフフフフ~」


 俺やヒカリが渋い顔をしていると、ユチがニマニマしながらこちらに詰め寄って来て、


「パパ~。私、一杯遊びたいニャ~。まだした事ない経験たくさんしたいニャ~。大人な世界を教えて欲しいニャァ~」


「よしよし、オジサンに任せておきなさい。

 その代わり・・・・完成した暁には、ね?」


 俺の座っていた椅子の半分を占領し、猫なで声を出しながらしな垂れかかるユチ。


 そのお尻と頭上に俺のワキワキとイヤらしく動く両手が伸びる。


 ゴスッ!


「いってぇ!?」


 今まさに愛猫をモフモフ可愛がろうとした瞬間、とてつもない衝撃で腹を貫かれた俺は椅子ごと床に倒れ込んでしまった。


 同じ椅子に座っていたユチが身軽に3回転宙返りをしてスタッと着地していたのは流石獣人と言えよう。


「今殴ったの誰だ!」


「「「・・・・」」」


 すぐに起き上がって問いただすも食堂メンバーは誰一人として答えない。


 しかし犯人の検討はついている。


 嫉妬したニーナか、良識あるフェムのどちらかだ。


 そもそも目にも止まらぬ速さで動けるのが彼女達ぐらいのはず。


「まぁいいだろう。この俺の『ケモナーアイ』を以てしても捉えられない尻尾の動きを見せたのに免じて許してやる」


「ルークは単純」


 犯人はお前か、ニーナ・・・・。



 俺が黒猫を睨みつけていると、ユチが笑いながら先ほどの発言を訂正してきた。


 どうやら彼女なりの冗談だったらしい。自分が関われない勝負は求めていないんだとか。


 そしてこうも言う。


「流石に街単位でやるような大きなものじゃなくても、賭け事が出来るお店は欲しいかな。ここでも好評だし、射幸性がある娯楽も必要だと思うよ」


「そうだニャ~。たしかに皆と遊ぶ時もポイントや罰ゲームを入れる事で盛り上がるニャ。真剣勝負は楽しいニャ」


 『罰ゲーム』、その心躍るワードに今度絶対俺も入れてもらおうと思いつつ、そこまで言われたからには小さなギャンブル場を提案してみることにする。


「で、他には? 具体的に思いつかないなら、やってみたい事とかでも良いんだけど」


「そうは言われても・・・・現状で満足してる感はあるんだよね~。

 たぶん私達が考えるような物はルークさんが作るだろうし、専門店を作ってくれるなら確実に今より便利になるし」

 

 全員がユチの言ったことを肯定するように頷き、今すぐには思いつかないと言う。



「泳ぎたいです」



 あまりにも新しい案が出ないので解散しようかと考えていたら、フェムの口からそんな提案が飛び出して来た。


「『泳ぐ』って川とか海でバシャバシャする、あの泳ぐ?」


「はい。ワタクシが以前住んでいた場所の近くには暗黒海・・・・ではなく海があり、よく暇を見つけては食糧確保がてら遠泳していたものです。

 ヨシュアには海洋生物と戦う術を学ぶ場所が無く、泳ぐと言っても水深1mもない小川や魔獣の居ない池のみ。なのでワタクシはそう言った場所を要望します」


「海の魔獣・・・・美味しかった」


「良いニャ、良いニャ~。魚介類のバーベキューだニャ!」


 フェムの話を聞いたニーナが昔旅行したアクアでの事を思い出し、それ以外のメンバーも海鮮料理は知っていたのかスッカリその気になって盛り上がり始めてしまった。


「いや、まてまて。現実的に考えて海は無理だろ、海は」


 だからそんな空気を壊すのは悪いと思いつつも、この計画では使えそうにないので俺はその意見を却下する。


「「「ユキ様なら」」」


「たしかにアイツなら山を海に変えるぐらい一瞬でしそうだけど」


「呼びま「呼んでない、帰れ」・・・・は~い」


 何も無かった。良いね?


「・・・・しそうだけど、これはあくまでも街の開拓なんだ。国単位での話をしてるわけじゃない。

 だから残念だけど、池やプールを作るぐらいが精々だよ」


「「「プール?」」」


 海が造れないと知って残念そうにしながらも、聞いた事のない単語に反応する一同。


 そう言えばこの世界でプールって見たことが無い。風呂すら広まってなかったんだから存在すらしていない可能性もあるな。


「プールってのは・・・・・・」


 その仮説を確かめる意味でも俺は皆にプール施設について説明を始めた。



「ウォータースライダー、良いですニャ~」

「バンジージャンプ、良いですにゃ~」

「泳ぎ疲れた体に染み入る飲食類の数々、良いですね~」

「・・・・え、あ・・・・うん・・・・良いと思う」


 話を聞いた各々の脳内にどんな映像が流れているのかは知らないけど、ニーナ以外の全員が是非体験したいと言い出した。


 コイツは『プール』と言うものを理解せぬまま取り合えず流れに乗っただけっぽい。


 そんな想像力の欠片も無い神獣さんにここで話を振らないのは罪だ。


「さて、ニーナ君。プールを作ろうと思うんだけど、何が必要になるかな?」


「っ!」


 想像も出来ない物を作るために必要なモノ。


 これが答えられるのは応用力があり、話術が巧みなユチやレオ兄と言った連中だけだ。


 そのどちらも皆無なニーナは案の定困り果てて、さんざん悩んだ末に・・・・。


「・・・・魔獣?」


 だいぶ前の話題を掘り返した。


「いやそれは無理って言っただろ。

 プールは泳いだり流されたりするだけの場所なの。それをするためだけに、たっかい料金払って、マッズイ料理を食べて、ぜんっぜん進まない列に並ぶの」


「・・・・それ楽しい?」


 さぁ? 皆やってるから私も、ってのが本心なんじゃねぇの?


 特に日本人は並ぶ事が素晴らしいって勘違いしてるから、まるで自慢話のように待ち時間の長さを上から目線で語って来る。


 ・・・・なんて転生者である事をバラす意見など言えるはずもなく、「やってみればわかるよ」とその場しのぎの返答をした。




 結局『賭け事の店』と『プール』の2つだけを計画に盛り込むことにして、他にも何か思いついたら随時連絡してもらうよう伝えて俺とヒカリは家に帰って来たんだけど。


「・・・・」


 そこでは不機嫌そうな顔をしたアリシア姉が仁王立ちで待っていた。


「ただいま~」


「・・・・」


 うぅ、なんで挨拶返してくれないの?


 なんでそんな睨んでんの?


 なんで腕が軋むような音を立てるほどガッシリと掴んでるの?


「私に・・・・なんで私にそんな楽しそうな話を真っ先に言わないのよっ!」


「ひぃぃっ。だ、だってアリシア姉が帰ってくるの遅いから」


「ソレとコレとは話が別よ!

 食堂に行ってたそうじゃない。まずは私に聞くべきでしょ!?」


 別、かなぁ・・・・?


 どうせトレーニング施設とか、体を動かせる場所って言われるだけだから聞かなくてもいいかなって思たのは秘密だ。


「へぇ・・・・そう・・・・そんな事を思ってたの? ふ~~ん」


「へ? 俺、声出してた?」


「今ね」


 相手の心を読む事、情報を引き出す事において女性はとても怖い存在だと思いました。



 教育的指導によってボコボコにされた俺がフィーネに癒してもらっている間、アリシア姉から出された案は予想通り『ジムを作れ』だった。


「ベルダンで良いだろ。もしくはギルドの地下とかにあるじゃんか」


「ちょっとした時間に近場でパッと済ませたい事もあるでしょ。

 それに知らないようだから言っておくけど、ギルドの修練場は広場があるだけで相手が居ないと面白くないのよ。しかもむさ苦しいオッサンばっかだし」


「そんな軽食を取るみたいに言われても・・・・」


 そこまで言って俺は、ふと思いついた事があった。


 これ、プールと合わせたら良くね?


 元々プールの中を歩いたり砂浜を走るのは効果的なトレーニング方法と言われている。


 ならレジャー施設として運用しながらも、アリシア姉みたいな戦闘バカがストイックに己の肉体を虐め続ける場所として使えると考えたのだ。


「その顔は何か思いついたみたいね」


 本当に顔に出ていたかはわからないけど、素敵な笑顔を浮かべながら俺の肩に腕を回すアリシア姉が耳元でそう囁きかけてきた。


 ・・・・弟は一生姉に勝てないのだと知りました。


 プールを作るのは確定したみたいです。


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