表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十五章 黒猫の刻
342/1657

二百三十四話 女子力2

 食事マナーを指摘されたアリシア姉が「普通でしょ」と、悪びれた様子もなく食べ終えた後の事。


 もしかしたら俺が作った米のせいかもしれないけど、よくよく考えると彼女の将来が不安になってきた俺達はその指導役をフィーネにお願いした。


 するとユキとヒカリが対抗馬として名乗りを上げてしまい、何故かアリシア姉まで対抗意識を燃やしているので事態はややこしい方へと進んでいく。


「大人な女性と言えば、わたし」


「いらっしゃい、ニーナ。さらに話をややこしくしてくれてどうもありがとう」


「? ・・・・どういたしまして」


 その勝負が始まる直前、たまたまウチに遊びに来たニーナまで参戦する展開になったのだから面倒臭い事この上ない。


 たしかに彼女は4人の中で唯一接客業をしているので礼儀作法や食事マナーには詳しいだろうけど、それが出来るかどうかは別問題。


 いやリリから厳しく躾けられているとしたらワンチャンあるか?


「・・・・チャンスどころか大本命」


「お姉ちゃん、ルークにパンツ見られても微動だにしなかったよね? それって乙女としてどうなのかな?」


 俺の訝しそうな表情を読み取ったニーナは、こちらを向いて安心しろと言ってくるが・・・・。


 ダメだ。冒険者を始めたアリシア姉がギルドのテーブルに両足を投げ出して盛大にパンチラしている姿がありありと想像できてしまった。


「・・・・ヒカリもフリスビーを追いかける時は丸出し」


「あれは真剣勝負だから仕方ないよ!」


 こっちもダメだ。喧嘩を売られたアリシア姉が周囲を気にせず開脚してかかと落としする姿が鮮明に思い浮かんでしまった。


「「むむむ・・・・っ」」


 お互いの潰しあって俺達からの評価を落としながら睨み合う2人。


 もう勝負の前から論外じゃんか・・・・。



「フッフッフ~。所詮100年も生きていないお子ちゃまに女性の何たるかを語るなんて不可能なのですよ~」


「へぇ~、ユキは随分と自信あり気だな」


 まぁ普通に考えるとギャグ要素を除けばフィーネとタメを張れる有能なユキが妥当だろうな。


 分野によってはフィーネすら超える可能性を秘めている。


 実はユキもこの話に深く関わっていて、出来るならフィーネと共にアリシア姉を教育してもらいたかったりする。



 米を作った時に俺が言った『ひと粒ひと粒にアルディア様が宿っている』という名言を覚えているだろうか?


 あの後、ルナマリア達が「だったら米だけじゃなくて作物全部に宿っている」と言い出して、事態は結構大きくなっていたのだ。


 この話が広まるにつれて「じゃあ栄養をくれる土精霊も偉い」とか「花粉を運ぶ風精霊も偉い」と論争になり、最終的に『神様の次に精霊が凄い』と言うことで一応の落ち着きを見せた。


 ただしそうなると今度はクリスマスにやった大精霊祭りの影響が出始めてしまう。


 普通の人は『今年のクリスマスにはもっと精霊に感謝しよう』と思うだけなんだけど、精霊の偉大さを改めて痛感した熱心な信者は、


「神様や精霊様の宿っているパン粉ひと粒、米ひと粒でも無駄にしたら許さない!」


 と、暴徒化したのである。



 そこへ来てこのアリシア姉の食事マナーの悪さだ。


 落としても拾って食べるので無駄にこそしてないものの、怒り狂った信者相手に果たしてそんな言い訳が通用するかどうか怪しいもんだろ?


 だからこそパンと比べて食べにくい米を生み出してしまった俺としても、ユキに責任を擦り付ける・・・・いやいやキチンと指導してもらいたいわけですよ。


 が、やっぱり本命はフィーネなので彼女には頑張ってもらいたい。


 それは父さんも同じだったようで、俺と一緒にフィーネへ熱い視線を送っている。


「よしフィーネ。アリシアを一流の子女に教育してくれたらルークをあげよう」


「~~っ!!」


「ちょっと待て。あげるってなんだ? 俺は物じゃないぞ!

 大体こんな勝負で俺の将来をそう簡単に決められ「お任せくださいっ!!」・・・・あああぁぁ、信じちゃったし」


 娘のためなら手段を選ばない父親の暴挙によって、可愛い次男は供物となったのだ。


 ええ、俺の事ですよ。


「ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様ルーク様」


 さて・・・・かつてない狂喜、いや本気モードに入ったフィーネに勝てるヤツは現れるのだろうか。


 フィーネはフィーネでメンバーを見渡して勝利を確信したのか小躍りを始めている。本当に嬉しいんだな。


 そしてこの姿は超貴重だと思う。写真に撮ったらルナマリアに金貨100枚でも売れそうだ。




 いよいよ勝負に入るわけだが、そうなったからには公平なジャッジをしてくれる審判が必要になるわけで・・・・。


「え? 本当に俺がやるの?」


 何故かそこに選ばれてしまった不幸な少年が。


 俺ことルーク=オルブライトである。


「アリシアの事を一番近くで見てきたでしょ」

「ルークならもしもの事があってもユキが守ってくれるさ」


 母さん達はそれっぽい理由をつけて拒否し、


「私達は雇われの身。どうしても長年苦楽を共にしてきたフィーネさんや、雇い主の娘であるアリシア様を贔屓してしまいます」

「犠牲は少ない方が良い」


 エルとマリクも審判なんて責任重大な役目は出来ないと拒否。


 ってかマリク。お前、今、俺を犠牲にしようとしてたな? 問題が起きる事を示唆してたな? 確信したな?



 とは言え、弟として姉の将来のために厳正な審査の元で指導者を選びたかったので引き受ける事にした。


 そうしないと話も進まないしな。


「俺が審判をやるのは良いとして、問題は勝負内容だ。

 『女子力』なんて一言で言っても、何を基準とするのか、どうすれば優れていると言えるのかは人それぞれだろ」


「そうねぇ~・・・・取り合えず男性陣が求める恋人または奥さんの条件でいいんじゃないかしら?

 ほらフィーネ達にとってはルークの好みを知れる絶好の機会なわけだし、アリシアにとっても異性が求める女性像を想像しやすいと思うの」


「「「っ!」」」


 この言葉に一同が騒然とする。


 こ、これは・・・・言ってみれば男の度量が試される難問!


 おそらく直球で好きな女性を答えれば、父さんは胸、マリクは尻が素敵な女と答えるだろうが、今回の勝負はあくまで『女子力』と言う形のないもの。


 となれば求められる回答は如何に普段から女性の内面を見ているか、と言うことに他ならない。


 下手なことを言えば・・・・殺されるっ!


 と、男の立場から話したけど、実は女性陣にとっても辛い話だったりする。


 料理や運動神経など鍛えれば何とかなるものなら良いが、性格面はどうしようもないし、非力な方が良いなど言われたら今の自分を捨てなければ叶わないのだ。


 しかも自分の知らない部分を評価されるのだから、その不安は計り知れない。



「なんでそんなざわついてるのよ?

 じゃあルーク、アラン、マリクが1人1つ課題を出して頂戴。それで足りないようなら追加してもらうから」


 皆が動揺している理由を察することなく母さんはドンドン進行していく。


 何故だ、何故ここまで恐ろしい事を言っておきながら不安にならない・・・・っ!


「おそらくエリーナ様はご自分の生きたいように生きておられるので、他人の評価を気にしていないのではないでしょうか。

 例え貶されようと、治せと言われようと『これが私よ!』と言い続けていたのでは?」


 戦慄する俺にフィーネがコッソリ耳打ちをして事の真相を教えてくれる。


 たしかに納得の理由だ。そして恐ろしくもあった。


 もしアリシア姉がこうなったら・・・・くっ、もはや一刻の猶予もない! 何としてでも女子力をアップさせなければ!




「それじゃあ被らないように事前に言っておこうか。僕が女性に必要と思うのは『お淑やかさ』だね。

 食べこぼしや下着を見せるのは論外。

 暴力を振るったり「ギクッ」

 目上の人にタメ口をきいたり「ギクギクッ」

 脱いだ服をほっぽり出したり「ギクギクギクッ」

 気に入らない事があったらすぐ舌打ちするような女性は駄目だと思うな」


 父さんが具体的に指摘する度、母さんが弱っていった。


 これ、アリシア姉を教育する前に母さんを何とかした方が良いだろ。完全に親の背中見て育ってますよ~。


「んじゃ俺も。

 そうだなぁ~。やっぱり恋人や夫婦ってなると不可欠になるのが夜の情事、つまりはセックs」


 ドゴッ! ザシュッ! ダダダダダ! メリメリ!! ギャギャギャギャッ!!! キュィィイイイイーーっ!!


 ド下ネタ発言&提案をしようとしたマリクを全方位から攻撃し、見事な連携によって悲鳴を上げる暇すら与えず一瞬で沈黙させた俺達オルブライト家一同withニーナ。


 ・・・・ん? キュィィイイ?


「って誰かそのバカを止めろ! 何する気だお前!?」


「え~? ノリ的にビーム撃っても大丈夫かな~と」


 意識を刈り取られて死体のように力なく床に転がったマリクへ、最後のトドメとばかりにユキが光り輝いて凄まじい魔力を解放しようとしていた。


「「「何それ。見たい」」」


 殺意を持って怒涛の連撃を行ったはずの少女達もすぐに気持ちを切り替えて、見たこともない魔術(?)に目をキラキラと輝かせ始める。


「ダメです」


 ドリルと並んで男の夢であるビームは俺も見たいけど、絶対大惨事になるから泣く泣く止めさせたよ。


 あとマリク。それはたしかに大事かもしれないけど、離婚原因のトップ3に入るだろうけど、何なら男にとっては最重要項目だけど! 10歳の少女に言うことではないぞ。



「じゃあマリ・・・・ゴミは放っておいてアランの言った『お淑やかさ勝負』と行きましょうか」


 そう言いながら横たわるマリクにゲシッと蹴りを入れて移動を開始した母さんは、少なくともお淑やかさとは無縁の存在だ。


 幼馴染で、友達で、雇い主で、自分の娘を汚されそうになった親ならこんなもんか?


 まぁレオ兄が何かの拍子にイブやニーナにエロ知識を伝授しようとしたら俺も同じことをするけどさ。


 ああ言う真面目な人に限って酒を飲んだらエロい人格が出てきたりするかもね。


 ってか半殺しって生ぬるいよね? 普通は沈だろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ