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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十五章 黒猫の刻
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二百三十話 スタンプラリー1

 翌朝。


 ダアト2日目となる今日は、出来たばかりの温泉街ではなく昔からある町の方を調べる予定・・・・だったんだけど。


「それは困りますな!」


 朝早くから宿にやってきた町長が俺達を引き留めているので出来そうにない。


 別に見られて困る場所があるとか、工事中で立ち入り禁止だとか言う理由じゃなくて、昨日話したスタンプラリーのお試しがしたいんだとか。


「聞いただけ真似するなんて器用な事、我々に出来るはずないのですな。必ず不備が出てくるのですな」


 よくそれで町長やってこれたな・・・・。


「朝っぱらからそんな情けないこと自慢しないでもらえます? せめて1回ぐらい挑戦してからアドバイス貰いに来るべきでしょうよ」


「だから寂れてたんじゃない? この町」


 話を聞いていたアリシア姉が厳しい意見を言うけど、たぶん事実だ。


 どこも生きるので精一杯で経営・運営の方まで気が回らなかったんだろう。


「面目ない・・・・で、ですが! 私とて責任は感じているのですな。だからこそ、この絶好のチャンスを逃すわけにはいかないのですな!」


 町長なりに何とかしようとする心は買うけど、結局は他力本願なのがなぁ・・・・。



「スタンプラリーをしながら香辛料探し。面白そう」


「お店や観光名所に話を通しに行くんだね! ダアトを隅々まで知るいい機会かも」


「湧き水の一部をマヨネーズに変えたら観光名所になりますよね~?」


 でもニーナとヒカリが乗り気なので俺も協力することになってしまった。


 ユキは無視するに限る。


「へいへーい。世にも珍しい池を一緒に作ろうぜー。マヨネーズ革命起こそうぜー」


「・・・・」


「この日のために溜めたマイマヨネーズを開放する時が来たぜー。水精霊をマヨ精霊に変化させてみせるぜー」


「・・・・・・」


「そして世界はマヨに包まれた・・・・。

 人々は至高のマヨを求めてマヨネーズの海に乗り出した。世はまさに大マヨネーズ時代!」


「止めんか!!」


 もう無理。このバカにツッコまないなんて出来るわけが無かった。


 しかも俺がいつまで経ってもマヨネーズ製造機を作らないもんだから、最近は本気で微生物ならぬ微精霊を変化させて生み出しかねない雰囲気だったし、妄想が捗ったのか1人で興奮し始めていた。


 あのまま放置していたらダアトをマヨの海に沈めていたかもしれない。


「面白そうなのでありですな」


「良いんだ!?」


 町長は町長で『話題になるかも』って乗り気だし、フィーネも『それぐらいなら』と止める気はないっぽい。


「もちろん観光地として成り立たなくなるのは困りますな。例えば『マヨネーズの石』なる物が納められた建築物を作り、流れるマヨネーズを専用の器に入れるイベントを開催するのは良いと思いますな」


「では外気に触れないような設備が必要になりますね。今すぐこちらで用意出来るものは・・・・・・」


「まぁダアトの人達が良いなら俺は何も言わないけど」


 名産物が出る蛇口とかあるぐらいだからそれなりの集客効果はあるんだろうし。


 俺はフィーネ達が真剣な話し合いをする傍らでニヤけるユキの頬っぺたを引っ張るぐらいしかすることが無かった。


 ・・・・相変わらず伸びるな。


「何それ!? 凄い! やらせて!!」

「わたしも」

「わたしも~」


「どうぞ、どうぞ~」


 子供達に頬っぺたを縦横無尽に引っ張られるユキは、嬉しそうにしながら変顔を連発した。



 ってわけでスタンプラリー1か所目は『マヨネーズの池』に決定。


 そんなこと出来るなら自家製すれば良いじゃん、とユキに言ったら手作りじゃないと味が落ちるらしく、『精霊が関与した珍しい現象』って付加価値のためだけに作った物なんだとか。


 試しに舐めてみたけど、ほとんど変わらないと思ったのは俺の舌がおかしいわけじゃない。




「おやおや、面白そうな儲け話をしていますね」


「金の匂いを嗅ぎつけてやってきました宿屋のアイドル、ツグミさんですよー」


 ・・・・まぁ来るよね。うん、わかってた。


 もちろんこの宿も条件付きで参加してもらうつもりではあった。


「カッコいいポーズを決めてる所悪いんだけど、ここは客を集める手段を探してる最中だろ。それが見つかってから参加してくれる?」


「「そのための香辛料!」」


「いや見つかってないから無理」


 集客手段を見つけてからだって言ってるのに、いつ見つかるともわからない物を持ち出されても困る。


「・・・・『卵が先か、鶏が先か』になってる」


「そだね。でも現状で考えると『お客さんを集められない』が正解かな」


 ヒカリ達の方がよっぽど客観的な意見を出せているじゃないか。



 しかし2人がこれで引くと思ったら大間違い。


 守銭奴が儲け話をそう簡単に諦めるわけがなかった。


「そこの猫さん、それは違いますよ。町一番の温泉旅館というだけで立派な事なのです!」


「そう! しかもこんなに可愛いツグミさんが女将をしている(予定)なんだから、文句なくスタンプラリー加盟店ですよね!」


 彼女がそこまで美人だとは思わないけど、ダアトの宿屋で一番可愛いと言われれば納得できるぐらいではあるので、宣言通り将来的には名物女将にはなりそうだ。


 でもインパクトが弱いんだよなぁ。


 もっと特徴のあるキャラクターにならないと・・・・・・おっと、丁度いい物があるじゃないか。いやー、偶然ってあるもんだなー。


「そんなツグミさんに朗報です! なんと、なななんと! この狐耳カチューシャをつけるだけでメインキャラクターに昇格出来るのです!!」


 サササッ。


 流石に旅行先にまで獣人なりきりセットは持ってきてないけど、空気を読んだユキがオルブライト家に転移して俺に手渡してくれる。


 さぁっ! どうぞ!


「いや個性は出ないでしょ。だってこの宿に狐族の女の人居るし」


「なんですと!? どこにっ!?」


「厨房」


 同じ萌え属性は持つべきではないと語るツグミは、そう言ってカチューシャを受け取ることなく明後日の方向を指さした。


「さぁ~て、猫の手食堂の料理指導係であるこの俺がちょっくら温泉宿にも口出しさせてもらおうかなぁ~」


 俺はごく自然な流れで厨房へと向かう。


「「「・・・・」」」


「手取り足取り尾っぽ取り、調理技術を伝授しましょうかね~」


「「「・・・・・・」」」


 周りは全員冷めた目をしているけど、俺の心は初めての狐さんを想って燃えているぜ!


 だからフィーネ、ニーナ、その手を放せ。


 君等に本気で拘束されると身動き1つ取れないから。



 ・・・・ダメでした。


「まぁ狐さんが料理してくれるのも加味して、ここをダアト1の温泉宿だと認めてやろう」


「「あざっス!」」


 その朗報に手を取り合って喜ぶバンとツグミは、早速スタンプ台を設置する場所を相談し始めた。


 たぶん『温泉に入ったら』とか『土産物をいくら以上買ったら』って条件が付くのだろう。


 不満が出ない程度にしてほしいものである。



 そんな不安の残る『精霊の宿』、仕方なくスタンプラリー2か所目に決定。


 香辛料が手に入ったらそれでもさらに注目度は上がるだろうし、妥協枠としては十分かな。



 仕事があると言う町長達と別れた俺達は、引き続きスタンプラリー候補地を探すのであった。

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