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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
十五章 黒猫の刻
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閑話 神獣生活

 ・・・・。


 ・・・・・・わたし、ニーナ。


 ・・・・・・・・・・・・おしまい。


 え? 尺が足りない? 神獣になってからの事を話せ?


 わかった。




 15歳で猫人族から神獣に進化したわたしは、今までと変わらずに食堂でウェイトレスをしてる。


 自分でも10歳のつもりだったからルークに本当の年齢を教えられて少し驚いたけど、遅い時間まで働けたり、お母さんの許可が無くても色々申請出来るから便利になっただけ。


 ・・・・あと結婚も。


 ルークがわたしを見ながら合法ロリがどうこうブツブツ言ってたから、きっと『ロリ』はわたしの事を指す言葉。


 恋愛対象として見てくれてるみたいだから嬉しい。


 神獣は『元の種族から強くなった存在』って聞いたからわたしは子供も産めるし、その子供が神獣になるわけでもないみたいだから安心。


 周りを見てて思うけど、やっぱり普通が一番。



 今の立場になるまで色々と紆余曲折があった。


 わたしがウェイトレスを続ける事は当然として、神獣の扱いをどうするのかが問題になったから。


 この事を公表するか食堂メンバーで話し合ったけど、『ロア商会と言う巨大な組織なら神獣の1人や2人居ても不思議じゃない』って結論が出たから隠すことなく神獣ウェイトレスとして働いてる。


 わたしはどっちでも良かったから言われるがままに従っただけ。


 迷惑を掛ける人が居るなら叩きのめすし、わたし達で対処出来ないようならフィーネに言えば解決するから。


 変わった事と言えば、神獣を一目見ようとお客さんが増えた事。


 みっちゃんがそうだけど、国の重鎮でないと知り合えないような神獣が街の食堂で働いていたら自然とこうなるらしい。


 普通はダンジョンの奥でひっそりと暮らすって聞いたけど、それは退屈すると思う。


 あ、みっちゃんは神獣の先輩としての心得を教えてもらうために王都から呼んだ。


「デザートと言えば龍菓子だろう!? 龍フルーツを出してもいいんだぞ!? いや出そうっ!!」


「だから何度も言ってるニャ・・・・龍菓子は商店や銭湯でお土産として販売してるし、食後のデザート向きじゃないって」


「食す機会は多い方がいいんだ!」


「ニャ~。面倒臭いニャ~。誰かユキさんを呼んでくるニャ」


 でも食堂の新しいデザートを提案するだけで有意義な話は聞けなかった。


 わたしもデザートには向かないと思う。


 実際、皆から反対されてこの提案は採用されず、納得のいかないみっちゃんがいつまでも食い下がるから、ユキが王都へ強制送還したのは記憶に新しい。


 神獣限定の逆召喚魔法・・・・便利。



「神獣定食おまちーっ!」


 今ユチが運んできたのも神獣を売りにした新メニュー。


 わたしがミンチにしたハンバーグと、皮を剥いたエビフライが入った定食。


 やってる事は今までと変わってないけど、わたしが好きな料理なのと、神獣様が手を加えた食材ってだけで人気爆発してる。


 凄い魔力が込められていると信じられてるみたい。


 ちなみにわたしは何も力を使ってない。誰でもやるような下ごしらえをしてるだけ。


 それでもお母さんとユチが「毎日がウハウハだニャー。ぼろ儲けだニャー」と言いながら売上アップを喜んでるから良しとする。



「おらぁっ! 神獣ってのどいつだ!?」


「1名様ご案内~♪」


 それともう1つ増えたのは挑戦者。


 今までもたまにあった飲食無料を賭けた挑戦が『神獣と戦ってみよう』と名前を変えて、これまた人気爆発中。


 ほとんどの人が負けても喜んでいるのは、わたしが神獣の力を使ってると思われてるから。


 たぶんそんな力はない。


 ただ今回の人はそれとは違う名前を売りたい冒険者か護衛か貴族。


「・・・・えい」


「ぐはぁ!」


 もちろん手加減はしない。


 あ、するけどしない。


 ・・・・?


 怪我をさせないように、する・・・・調子に乗らないように叩きのめす・・・・負けは、しない・・・・力を過信して無茶をさせないように力の差を教え込む・・・・だから手加減は・・・・する?


 ・・・・・・・・わたしに説明力を求める方が間違ってる。




 神獣の力は本当に凄い。


 だから手加減を間違える事も多くて、慣れるまで皆に迷惑を掛けた。


 その度に落ち込むわたしを皆「体が急に成長したから仕方ないニャ」と慰めてくれたけど、そう言う次元じゃない。


 例えばお客さんがフォークを落としそうになった時。


 今までだったら手を伸ばしてキャッチ出来そうなら伸ばしてたけど、同じ事を今のわたしがしたら確実にキャッチしてしまう。


 目の前にある物を取る感覚で手を伸ばすと、周りからしたら瞬間移動したように見えるらしい。


 ・・・・店内の端から端までテーブルや椅子を吹き飛ばして。


 力を持て余すとはまさにこの事。


 だから緊急事態以外は通路を歩くように心掛けている。


 走ったら突風が巻き起こるから歩く。




 休日は体を鍛えてる。


 基本はベーさんのダンジョンに潜って、手が空いていたらフィーネやユキに戦闘訓練をしてもらう。


 神獣になってから精霊術が使えるようになった。


 相変わらず魔術は日常生活レベルでしか使えないけど、わたしが何かしようとすると精霊達が協力してくれる。


 あと魔力が桁違いに上がり続けているから、慣れるまでは木のコップを持った瞬間に粉砕したり、椅子を持ち上げたら天井に突き刺さったりした。


 どっちも凄い丈夫な素材って聞いてたけど神獣の力はそれ以上らしい。


 だからそれも秘密特訓中。



 これは力を使いこなす訓練と同時にヨシュアの開発でもある。


 ベーさんが地面を掘って、そこをフィーネが魔術で圧縮して溝を作るから、わたしも真似して拳を叩きつけて溝を作る。


 下水道を作ってるらしいけど詳しくは知らない。


 これが中々難しくて、慣れれば手をかざすだけで重力魔術が使えると言うけど、今のわたしは物理攻撃に頼るしかない。


 作業は誰も居ない深夜にフィーネの結界内で行うから失敗してもバレない、大丈夫。


 何度か道路を陥没させたし、何件か建物を壊したし、3回ほど地下深くまで貫いて魔獣が飛び出して来たけど大丈夫。


「私の結界が無ければヨシュアが滅んでいますね」


「クラッシャーニーナ・・・・爆誕ですー」


 ・・・・大丈夫。今まで稼いだお金で弁償したから大丈夫。


 どうせ使い道無かったから貯金残高が銀貨1枚でも大丈夫。


 ルーク達が予定してる夏休みの王都旅行について行こうとして、旅行代が無くて断られたけど・・・・大丈夫。



 ・・・・・・・・じゃない。


 また置いて行かれる、ぐすっ。



「いらっしゃいませ・・・・猫の手食堂へようそこ」


 噛んでない。これは今流行の挨拶、だから噛んでない。神獣が噛むなんてあり得ない。


 わたしは失敗しないパーフェクト神獣ニーナ。


 ・・・・ごめんなさい、噛みました。


 こんな神獣が働くお店は今日も大繁盛している。


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